著者
坂本 知昭 片山(池上) 礼子
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
pp.19J01, (Released:2019-04-23)
被引用文献数
1 1

サツマイモ「兼六」は塊根にβ-カロテンを含む特徴がある良食味品種で,1930年代に石川県農事試験場で選抜された.苗条および塊根の形態的特徴が「安納いも」のそれらと酷似していたため,「安納いも」5品種・系統と「兼六」の比較を試みた.「兼六」,「安納3号」,「安納イモ4」,「安納紅」,「安納こがね」の成葉はいずれも波・歯状心臓形で,新梢頂葉にはアントシアニンが蓄積し紫色を呈していたが,「安納イモ1」の成葉は複欠刻深裂で頂葉は緑色だった.「兼六」,「安納3号」,「安納紅」の塊根皮色は紅であったのに対し「安納イモ4」と「安納こがね」は白であったが,これら5品種・系統の塊根にはβ-カロテンの蓄積が認められた.一方「安納イモ1」の塊根皮色は赤紫で条溝が多かったほか塊根にβ-カロテンは含まれていなかった.27の識別断片を用いたCleaved Amplified Polymorphic Sequence(CAPS)法によるDNA品種識別では「兼六」と「兼六」を交配親に作出された「泉13号」および「クリマサリ」さらにその後代品種「ベニアズマ」の識別はできたものの,「兼六」と「安納3号」,「安納イモ4」,「安納紅」,「安納こがね」の識別はできなかった.45の識別断片を用いたRandom Amplified Polymorphic DNA(RAPD)法によるDNA品種識別では「兼六」と「泉13号」,「クリマサリ」,「ベニアズマ」だけでなく「安納イモ4」および「安納こがね」の識別も可能となったが,「兼六」と「安納3号」,「安納紅」の識別はできなかった.以上の結果と「安納いも」が戦後の種子島で見出された在来系統であった経緯を考え合わせると,「安納いも」のルーツはかつて全国に普及していたとされる「兼六」ではないかと結論づけられた.
著者
齋藤 努 坂本 稔 高塚 秀治
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.177, pp.127-178, 2012-11-30

宮城県に在住する刀匠・九代法華三郎信房氏とご子息の栄喜氏のご協力により,代々継承している作刀技術のうち,「卸し鉄」「折り返し鍛錬」「焼き入れ」の3つについて,自然科学的な観点から調査を行い,下記の諸点が明らかになった。卸し鉄では,同じ炉を使い,ほとんど同じような動作をしているのに,軟鉄への浸炭と銑鉄からの脱炭という正反対の反応を起こすことができる。両者において,炉内ではまったく異なるメカニズムが働いていると推測される。すなわち,軟鉄の浸炭では,炉の上部で固体の鉄に炭素が吸収され,融点が下がって半溶融状態となり,炉底に垂れ落ちていく。炉底ではできるだけ風があたらないようにして,脱炭が起こらないようにする。一方,銑鉄の脱炭では,炉の上部で鉄が溶解して液体状態になり,炉底に少しずつ流れ落ちていく。炉底では羽口からの風があたるようにして,鉄中の炭素を燃焼させ,炭素濃度を下げる。折り返し鍛錬において,折り返し回数が増えるにつれて,炭素濃度の均一化されていく様子が観察された。参考文献などにある「折り返し鍛錬によって介在物が減少していく」という現象は確認されず,鍛接面に生じるものもスラグに由来するものも,折り返し回数が増えるほど小さくなり均一に分散されていくことがわかった。鍛造開始時の加熱温度については,仮着けでも泥沸かしでも,鉄の炭素濃度に応じて異なる傾向がみられた。また仮着けと泥沸かしの工程では,加熱温度,作業を行う温度,作業継続時間に相違がみられた。これはそれぞれの工程での目的と刀匠の意識が反映されているものと考えられた。焼き入れにおいて,沸と匂を作りわける場合の加熱温度の違いを実験的に確認できた。これは刀匠の感覚とも整合的であった。また焼刃土の下の鉄の温度の測定により,焼刃土が地部の徐冷に役立っていることが確認された。
著者
河野 貴美子 坂本 政道 世一 秀雄 高木 治 小久保 秀之 山本 幹男
出版者
国際生命情報科学会
雑誌
Journal of International Society of Life Information Science (ISSN:13419226)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.34-39, 2013-03-01

意識探究プログラムとして知られるヘミシンクは、左右の耳にわずかに異なる周波数の音を聞かせることにより、深くリラックスした状態を作り出し、通常と異なる意識状態に導くことが容易な方法とされている。著者らは、今まで様々な変性意識状態下の脳波を検討してきた。今回、5名のヘミシンクトレーナーの脳波計測からヘミシンク聴取による脳の変化を検討することを試みた。後頭部のα波平均振幅値は、セッション中に減少し、軽眠を思わせたが、各帯域含有率で、α帯域における比率が大きく減少していたわけではなく、通常の入眠時とは異なると思われた。β帯域含有率はフォーカスレベルF10とFl2で、交互に変化する様子が見られ、刺激音のうなり周波数との関係を示唆させた。左右脳波のコヒーレンス値が聴取時に大きくなる傾向が見られたが、セッション中に後頭から前頭にかけて位相同期的な瞑想様脳波が見られた被験者も複数おり、瞑想に近い状態を容易に実現することで、コヒーレンスが高くなっていることも考えられた。
著者
小野 尚子 田中 一光 木脇 佐代子 井上 雅貴 霜田 佳彦 大野 正芳 坂本 直哉 石川 麻倫 山本 桂子 清水 勇一 清水 亜衣 松野 吉宏
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.593-601, 2020-05-24

●「考える内視鏡診断」のポイント通常観察では・多彩な内視鏡像が同時に観察される.・非上皮性腫瘍としての性質(粘膜下腫瘍様)が観察され,蚕食像はなく,硬さが目立たない.拡大内視鏡観察では・腫瘍浸潤により腺管構造が破壊された無構造領域や異常血管が観察される.・間質の細胞浸潤により窩間が引き延ばされ,腺管の膨化所見がみられることがある.・前述の特徴を捉え,狙撃生検を行うことで,診断能は向上する.・治療後に腺管構造や上皮下毛細血管の回復が観察され,治療後評価にも有用である.
著者
池田 真利子 坂本 優紀 中川 紗智 太田 慧 杉本 興運 卯田 卓矢
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.207-226, 2019 (Released:2020-03-25)
参考文献数
74

本稿は,隣接諸領域において長らく術語となってきた景観を夜との関係から考察することで,景観論に若干の考察を加えることを目的とする。景観の原語とされるラントシャフトは,自然科学分野にて紹介され,方法論的発展の必要と相まって視覚的・静態的・形態的に捉えられた。他方の人文学領域においては,景観・風景の使い分けがなされてきたが,1970年代の景観の有するモダニティに対する批判的検討以降も視覚的題材がその考察の主体であった。夜を光の不在で定義すると,人間が視覚で地表面を捉えることのできない夜の地域の姿が浮かび上がってくる。これは,視覚を頂点とするヒエラルキ−を再考することでもある。同時に夜に可視化される光と闇に,近代以降,人間は都市・自然らしさという意味を見出してもきた。それは,光で演出する行為であり,星空を見る行為でもある。現代はその双方が自然と都市に混在するのである。
著者
坂本 進
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
2007-12

制度:新 ; 文部省報告番号:甲2514号 ; 学位の種類:博士(学術) ; 授与年月日:2007/12/6 ; 早大学位記番号:新4642
著者
坂本 邦暢
出版者
日本科学史学会
雑誌
科学史研究. 第II期 (ISSN:00227692)
巻号頁・発行日
vol.50, no.257, pp.31-36, 2011-03-25
被引用文献数
2

Francis Bacon was a major early modern critic of Aristotelianism. In addressing its matter theory, he mainly attacked the concept of prime matter, which, for many Aristotelians, was deprived of any attribute. He denied this doctrine on the basis of the inseparability of matter from its quantity and power. By examining theological and natural philosophical dimensions of this idea, this paper reveals the close interconnection among various fields of knowledge in Bacon's thought.
著者
坂本 勉
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.142-147, 2009 (Released:2010-06-11)
参考文献数
10

Although “symmetry in language” may be related to the origin of the language, many linguists do not seem to show interest in this problem. Why do linguists not show interest in symmetry? There seem to be at least three reasons. (1) Concerning “reference”, there have been many disputes in the philosophy of language. Nowadays, more complex problems than symmetry attract researchers in the field of semantics. (2) Saussure pointed out that the system of language does not concern the symmetry between “thing and name”. (3) For linguists, a more important research theme is the elucidation of the relationships between the elements inside the language structure.
著者
春成 秀爾 小林 謙一 坂本 稔 今村 峯雄 尾嵜 大真 藤尾 慎一郎 西本 豊弘
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.163, pp.133-176, 2011-03

奈良県桜井市箸墓古墳・東田大塚・矢塚・纏向石塚および纏向遺跡群・大福遺跡・上ノ庄遺跡で出土した木材・種実・土器付着物を対象に,加速器質量分析法による炭素14年代測定を行い,それらを年輪年代が判明している日本産樹木の炭素14年代にもとづいて較正して得た古墳出現期の年代について考察した結果について報告する。その目的は,最古古墳,弥生墳丘墓および集落跡ならびに併行する時期の出土試料の炭素14年代に基づいて,これらの遺跡の年代を調べ,統合することで弥生後期から古墳時代にかけての年代を推定することである。基本的には桜井市纏向遺跡群などの測定結果を,日本産樹木年輪の炭素14年代に基づいた較正曲線と照合することによって個々の試料の年代を推定したが,その際に出土状況からみた遺構との関係(纏向石塚・東田大塚・箸墓古墳の築造中,直後,後)による先後関係によって検討を行った。そして土器型式および古墳の築造過程の年代を推定した。その結果,古墳出現期の箸墓古墳が築造された直後の年代を西暦240~260年と判断した。
著者
金森 悟 坂本 宣明 白田 千佳子 海野 賀央 江口 泰正 山下 奈々 北島 文子 厚美 直孝 小林 宏明 高家 望 福田 洋
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.79-86, 2021-02-28 (Released:2021-03-10)
参考文献数
6

目的:筆者らは,多職種産業保健スタッフの研究会にて「コロナは世界・健康教育・ヘルスプロモーションをどう変えたのか?」というテーマで夏季セミナーを開催した.本報告ではセミナーの開催概要を紹介するとともに,参加者によるセミナーの評価について報告する.方法:2020年9月13日に多職種産業保健スタッフの研究会のコーディネーター12名がセミナーを開催した.参加形態はZoomを用いたオンライン形式とした.全体の構成は第I部に基調講演,第II部は産業保健の現場からの話題提供,第III部は「オンラインの対面型コミュニケーションツールで可能になったことや新たな使い方」についてのグループワークとした.セミナーの評価を行うため,参加者を対象にGoogle formを用いた質問票調査を実施した.結果:参加者は71名,調査への回答者は52名(73.2%)であった.回答者のうち女性が69.2%,年代では40代が34.6%,職業では看護職が53.8%であった.各部について参考になったという者は80.8~96.2%であった.学んだことを今後に活用していこうと思う者は94.2%,全体について満足であった者は96.2%であった.結論:本セミナーでは,新型コロナウイルス流行下での健康教育やヘルスプロモーションの意義や事例,可能性が議論された.参加者のほとんどがセミナーに満足し,本セミナーの開催は意義があった.
著者
玉田 敦子 安藤 隆穂 石井 洋二郎 深貝 保則 坂本 貴志 隠岐 さや香 畠山 達 三枝 大修 井関 麻帆 飯田 賢穂
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

18世紀ヨーロッパにおいては各国の覇権争いが苛烈になる中で古典古代の表象が積極的に利用された。 本研究では研究課題の核心をなす学術的「問い」として(I)「近代とは何か?」、(II)「近代国家の形成、特にその文化的アイデンティティの形成において、古典古代の表象は如何なる役割を果たしたのか?」という2点を設定し、代表者、分担者のこれまでの文献研究を発展させる形で展開していく。
著者
向江 亮 木方 真理子 小林 和幸 坂本 大樹
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
日本エネルギー学会誌 (ISSN:09168753)
巻号頁・発行日
vol.99, no.3, pp.28-40, 2020-03-20 (Released:2020-03-31)
参考文献数
13

本研究の目的は,人々の冷暖房などのエネルギー利用に対する態度や省エネルギー行動が,熱中症やヒートショックの健康への影響についての認識や対策の実施とどのように関連しているかについて検討を行うことであった。本研究では,2018年2月に実施した旧東京電力供給エリア内の住民を対象としたライフスタイルに関する調査に回答した3066名を対象として二次分析を行った。ロジスティック回帰分析の結果,住宅の建築年や健康への態度・行動,冷暖房への態度・行動,省エネ行動が,熱中症やヒートショックの健康への影響の認識や対策実施と関連することが示された。また,熱中症とヒートショックでは,関連の仕方に違いが見られることも示された。一方で,利用できるデータの限界によって,その検討は十分なものではなかった。今後は,項目や方法を洗練させ,より具体的な検討ができるように研究を発展させていくとともに,生活者の行動促進に向けた具体的な施策の立案とその検証が求められる。
著者
千葉 隆司 貞升 健志 長島 真美 熊谷 遼太 河上 麻美代 浅倉 弘幸 内田 悠太 加來 英美子 糟谷 文 北村 有里恵 小杉 知宏 鈴木 愛 永野 美由紀 長谷川 道弥 林 真輝 林 志直 原田 幸子 藤原 卓士 森 功次 矢尾板 優 山崎 貴子 有吉 司 安中 めぐみ 内谷 友美 神門 幸大 小林 甲斐 長谷川 乃映瑠 水戸部 森歌 三宅 啓文 横山 敬子 吉田 勲 浅山 睦子 井田 美樹 上原 さとみ 小野 明日香 河村 真保 小西 典子 小林 真紀子 齊木 大 下島 優香子 鈴木 淳 西野 由香里 村上 昴 森田 加奈 吉丸 祥平 木本 佳那 新藤 哲也 堀田 彩乃 小林 千種 大塚 健治 吉川 聡一 笹本 剛生 稲葉 涼太 小峯 宏之 佐伯 祐樹 坂本 美穂 塩田 寛子 鈴木 淳子 鈴木 俊也 高久 靖弘 寺岡 大輔 中村 絢 成瀬 敦子 西山 麗 吉田 正雄 茂木 友里 飯田 春香 伊賀 千紘 大久保 智子 木下 輝昭 小杉 有希 斎藤 育江 高橋 久美子 立石 恭也 田中 優 田部井 由紀子 角田 徳子 三関 詞久 渡邊 喜美代 生嶋 清美 雑賀 絢 鈴木 仁 田中 豊人 長澤 明道 中村 麻里 平松 恭子 北條 幹 守安 貴子 石川 貴敏 石川 智子 江田 稔 岡田 麻友 草深 明子 篠原 由起子 新開 敬行 宗村 佳子 中坪 直樹 浜島 知子 野口 俊久 新井 英人 後藤 克己 吉原 俊文 廣瀬 豊 吉村 和久
出版者
東京都健康安全研究センター
雑誌
東京都健康安全研究センター研究年報 (ISSN:13489046)
巻号頁・発行日
no.71, pp.39-46, 2020
著者
喜馬 佳也乃 坂本 優紀 川添 航 佐藤 壮太 松井 圭介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

<b>1.はじめに<br> </b>「聖地巡礼」とはアニメや漫画の舞台となった場所をファンが訪問するコンテンツ・ツールズムの一形態である.大石(2011)によると,こうした「聖地巡礼」行動の歴史は2002年に制作された『おねがい☆ティーチャー』に端を発し,この背景には情報を共有するためのインターネット,そして現地の写真とアニメの描写を比較するためデジタルカメラとHDDレコーダーといったデジタル画像処理技術の普及が必要であったとされる.2010年代以降,アニメや漫画といったサブカルチャーコンテンツの一般化が進展する中,SNSとスマートフォンの普及により,ますます情報の共有,発信が盛んとなってきている.これに伴い「聖地巡礼」行動も隆盛を極め,地域活性化の一資源として注目されるに至っている.本研究では,こうした「聖地巡礼」行動の一大訪問先となった茨城県大洗町において,そこを訪れる巡礼をファンの属性や訪問回数,訪問先などを分析し,「聖地巡礼」を行うファンの変化を明らかにする.<br><br><b>2.大洗町とアニメ</b>「ガールズ&パンツァー」<b> </b><br> アニメ「ガールズ&パンツァー」は,架空のスポーツである戦車道に取り組む少女たちを描いた作品である.登場人物のほとんどを美少女キャラクターが占めるいわゆる「萌え」作品であると同時に,戦車といったミリタリー要素,そして「スポ根」と表現されうるストーリー展開を併せた点が特徴とされる.2012年10月から深夜帯で放送され,2015年には劇場版が上映された.2017年12月以降も劇場作品が制作され続けており,続編の多さからも人気作品であることが伺える.<br> 大洗はこの作品の主人公の所属する高校が立地し,作中にもアニメ本編,劇場版ともに戦車による試合の会場として登場する.大洗町のマリンタワーやアウトレットといったランドスケープが登場する以外にも,市街地の商店街内を戦車が駆け巡るなど,広範囲にわたって描写される.作中の背景描写は実際の大洗町を詳細に描いたものであり,ファンを引き付ける要素となっている.<br><br><b>3.大洗町を訪れるファンの分析</b><br> 大洗町を訪れるファンのほとんどは男性であり,年齢は10代から50代まで幅広い.劇場版の放映後に大洗を訪問したというファンが半数以上を占めている.訪問地は訪問回数と一部相関関係が見られ,商店街はほぼ全員が訪れる一方,アウトレットやマリンタワーには来訪頻度が少ないファンが訪れる傾向にある.商店街はアニメに直接描写された場所であるが,来訪頻度が高いファンには行きつけの店や馴染みの店としての意味も付与され,アニメの舞台として特別な場所という意味付けから,日常の一部にシフトしていったものと捉えられる.ファンの男性たちを顧客として受け入れる商店街の態度は,村田(2000)の疎外する場所とは逆の状況が生まれているとも指摘でき,こうした受容の結果,「聖地巡礼」を契機とした移住者の存在も確認される.
著者
喜馬 佳也乃 坂本 優紀 川添 航 佐藤 壮太 松井 圭介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2018年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.000328, 2018 (Released:2018-06-27)

1.はじめに 「聖地巡礼」とはアニメや漫画の舞台となった場所をファンが訪問するコンテンツ・ツールズムの一形態である.大石(2011)によると,こうした「聖地巡礼」行動の歴史は2002年に制作された『おねがい☆ティーチャー』に端を発し,この背景には情報を共有するためのインターネット,そして現地の写真とアニメの描写を比較するためデジタルカメラとHDDレコーダーといったデジタル画像処理技術の普及が必要であったとされる.2010年代以降,アニメや漫画といったサブカルチャーコンテンツの一般化が進展する中,SNSとスマートフォンの普及により,ますます情報の共有,発信が盛んとなってきている.これに伴い「聖地巡礼」行動も隆盛を極め,地域活性化の一資源として注目されるに至っている.本研究では,こうした「聖地巡礼」行動の一大訪問先となった茨城県大洗町において,そこを訪れる巡礼をファンの属性や訪問回数,訪問先などを分析し,「聖地巡礼」を行うファンの変化を明らかにする.2.大洗町とアニメ「ガールズ&パンツァー」 アニメ「ガールズ&パンツァー」は,架空のスポーツである戦車道に取り組む少女たちを描いた作品である.登場人物のほとんどを美少女キャラクターが占めるいわゆる「萌え」作品であると同時に,戦車といったミリタリー要素,そして「スポ根」と表現されうるストーリー展開を併せた点が特徴とされる.2012年10月から深夜帯で放送され,2015年には劇場版が上映された.2017年12月以降も劇場作品が制作され続けており,続編の多さからも人気作品であることが伺える. 大洗はこの作品の主人公の所属する高校が立地し,作中にもアニメ本編,劇場版ともに戦車による試合の会場として登場する.大洗町のマリンタワーやアウトレットといったランドスケープが登場する以外にも,市街地の商店街内を戦車が駆け巡るなど,広範囲にわたって描写される.作中の背景描写は実際の大洗町を詳細に描いたものであり,ファンを引き付ける要素となっている.3.大洗町を訪れるファンの分析 大洗町を訪れるファンのほとんどは男性であり,年齢は10代から50代まで幅広い.劇場版の放映後に大洗を訪問したというファンが半数以上を占めている.訪問地は訪問回数と一部相関関係が見られ,商店街はほぼ全員が訪れる一方,アウトレットやマリンタワーには来訪頻度が少ないファンが訪れる傾向にある.商店街はアニメに直接描写された場所であるが,来訪頻度が高いファンには行きつけの店や馴染みの店としての意味も付与され,アニメの舞台として特別な場所という意味付けから,日常の一部にシフトしていったものと捉えられる.ファンの男性たちを顧客として受け入れる商店街の態度は,村田(2000)の疎外する場所とは逆の状況が生まれているとも指摘でき,こうした受容の結果,「聖地巡礼」を契機とした移住者の存在も確認される.
著者
古谷 圭一 田中 勇武 竹本 和夫 坂本 和彦 江見 準 瀧島 任
出版者
東京理科大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1990

本研究の主眼は、1.吸入粒子の呼吸器内沈着挙動の理論的実験的研究、2.呼吸器内に取り込まれた吸入粒子の種類、部位、沈着量、溶解量の評価、3.吸入粒子のフェイトアナリシスと生体影響評価である。第1のテーマに関して、人体呼吸器を16部に区別、これへの吸入エアロゾル粒子吸着とクリアランスを計算できる簡易式を開発し、その有効性を確認した、(高橋幹)、肺胞領域での吸入空気と肺内残存粒子の混合沈着機構をシミュレートできる不均一伸縮場ガラスシェル肺胞モデルを作成し、その影響が0.1μm付近の粒子に大きいことを明かにした。(江見)、第2のテーマに関して、化学形態の異なるNi化合物粒子吸入膜露実験を行ない、クリアランス期をおいて各臓器でのNi滞留量を比較した。(田中)、吸入エアロゾルスペーサーの効果をエアロゾル粒子数、粒径分布を測定し、4μm以下の小粒子を吸入させるためには大スペーサーが効果的であると結論した。(瀧島)病理解剖例を用い、人肺組織、肺門リンパ腺中の金属元素分析を行い、呼吸器病変、生活歴との相関を調査した。(竹本)気道鋳型モデル、微細気管内挿管法、吸入実験、培養肺マクロファージ試験管内実験など新手法を用い、NiO,石炭フライアッシュ,放射性BaSO_4,放射性Fe(OH)_3等微粒子の沈着量,毒性,溶解性,除去作用を明かにした。(高橋テ)、第3のテーマに関して、硫化ニッケル石炭フライアッシュの各種培養液への溶解挙動を明らかにした。(古谷)、フラッシュ脱離・質量分析法を開発し、ラット肺中数ngのPHAの定量に成功した。(飯田)レーザー励起蛍光・ミセル動電クロマト法を開発し、fgのPHA定量を可能とした。(今坂)モデル肺液へのPHA溶解度を測定する装置を開発し、生体影響評価に役立つ結果を得た。(坂本)本研究は、10名の相互の協力により、共通試料の提供、専門知識、設備の利用により、きわめて新しい成果を得ることが出来た。
著者
坂本 英俊 松村 道孝 佐藤 健介 山口 敏彦
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学会九州支部講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2005, no.58, pp.9-10, 2005-03

現代社会において、けん銃による犯罪は年々増加の一途をたどっている。けん銃の犯罪において、弾丸がどのけん銃から発射されたものなのかを特定することは事件の解決において最も重要なものである。また弾丸が発砲事件において唯一の証拠となることも少なくない。現在一般的に行われている捜査は、現場から発射された弾丸と薬きょうを回収し、その弾丸の発射痕を調べ、使用された銃器を特定するという方法である。 本研究では、弾丸が対象物に垂直に衝突した場合、衝突により弾丸がどのように変形したのかを見るため、試射実験を行い、試射実験後に回収した弾丸の寸法測定を行った。また弾丸の変形解析および試射対象物の変形形状を調べることにより、変形・破壊挙動の検討を行った。さらにLS-DYNAを用いて銃弾の衝突解析を行い、試射実験後の弾丸の3D計測結果と比較検討した。