- 著者
-
及川 恵
坂本 真士
- 出版者
- 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.1, pp.106-119, 2007-03
本研究では,認知行動療法の理論に基づき,抑うつ予防を目的とした心理教育プログラムを考案し,その効果を検討した。プログラムでは,大学の心理学関連の講義時間を活用し,計7回の介入授業を実施した。プログラムの効果を検討するため,プログラム実施前後に,介入群と統制群に対して,抑うつに関連する思考や情動にうまく対処することができるという確信,すなわち抑うつ対処の自己効力感と複数の適応指標からなる質問紙を実施した。まず,各授業終了時の感想シートの検討から,授業内容はよく理解され,興味関心を持って臨める内容であったと思われる。次に,抑うつ対処の自己効力感を従属変数とし,群と時期を独立変数とする二要因分散分析を行った。その結果,交互作用が有意であり,介入群は統制群に比べ,プログラム実施後に効力感が増加していることが示された。下位目標ごとの検討においても概ね同様の結果が得られ,本プログラムの有効性が示唆された。なお,プログラムの間接的な効果を把握するため,自己効力感と適応指標の変化量の相関を検討した結果,介入群において自己効力感の増加が現状満足感の増加と関連することが示唆された。