著者
羽二生 久夫 小山 省三
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

未熟児網膜症(ROP)モデルマウスにおける血管新生とその後の退縮・毛細血管再形成までのメカニズムの解明するために、我々はまず、出生後(P)7〜12日目に高酸素暴露を行ってROPモデルマウスを作製した。血管新生とその後の退縮・毛細血管再形成をフルオロセイン潅流後に、蛍光顕微鏡下で確認し、P14(相対的低酸素時)、P17(血管新生最大時)、P21(新生血管退縮時)、P28(毛細血管形成時)の4時系列とさらにP35の1時系列を加えてマウス網膜サンプルの採取と同時系列のコントロール網膜の採取も行った。時系列毎に4個の網膜を1回の2次元電気泳動のサンプルとして網膜を採取、さらに1群につき6回の2次元電気泳動を行う分として合計で240網膜を採取して、2次元電気泳動を行った。泳動ゲルはクーマシーブリリアントブルーで染色し、各群6枚の電気泳動ゲル、合計60枚のゲルの画像解析を行い、各ゲルで600個以上のタンパク質スポットを検出した。その後、各時系列のコントロールと比較し、ROP群で2倍以上、かつ有意差のあるゲル上のスポットを抽出したところ、それぞれの時系列で複数のスポットが見つかり、現在、質量分析計でそのタンパク質の同定を行っている。これとは別に、発達途中で一時的に発現上昇するNDRG1のROPモデルマウスでの発現変化も調べたところ、発現上昇がみられ、血管新生への関与が示唆された。一方で、血管新生機序の別の観点から、糖尿病網膜症モデルラットを作製し、こちらも2,12週での比較を行い、タンパク質の同定を完了した。これらのタンパク質の中には、直接血管新生に関わるという報告のあるタンパク質は見つからなかったが、いくつかのストレス反応性タンパク質の発現変化があり、血管新生前にストレス反応性タンパク質の関与が示唆された。
著者
佐藤 和夫 井谷 惠子 橋本 紀子 木村 涼子 小山 静子 片岡 洋子
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、日本が男女共同参画社会をめざすためには、男女共学、共修がどのように実施されるべきかについて、高校を対象に分析検討を行った。男女共学、共修は男女平等教育にとって必要な基礎的条件ではあるが、隠れたカリキュラムにおけるジェンダーに無自覚なまま共学、共修を実施しても、共学、共修がただちに男女平等教育には結びつかない。そのため、男女共学や共修の現状を明らかにしながら、男女平等をつくるための共学、共修とはどうあるべきなのかについて、以下の3つの調査領域における研究において析出した。1,福島県の男女共学化および共修の現状調査福島県は、男女共同参画社会の実現のための施策の一環として、長らく残っていた別学高校をすべて共学化した。その共学化実現過程や高校の現状について、聞き取りと観察および質問紙調査を組み合わせて分析、考察した。2,関西(大阪)の私立高校の共学化戦略と共学、別学の現状調査福島県とは対照的に公立高校はすべて共学だった大阪府では、私立高校が別学校を提供してきた。近年、共学化が進んでいる大阪の私立学校での別学、共学の経営戦略および生徒への質問紙調査によって、共学、別学の比較検討を行った。3,高校での体育共習の指導場面の観察調査男女共修の高校の体育の授業場面において、教師の声かけが生徒が男子か女子かで異なること、そこに教師のジェンダー観があらわれ、ジェンダーの利用と再生産が行われていることなどについて、授業観察の分析を行った。
著者
雨宮 宏 小山 孝一郎
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.25-33, 1990-03

本報告は1988年1月25日11時に内の浦から打ち上げられたK-9M-81号ロケットにより観測された電離層正イオン密度および熱的電子のエネルギー分布に関する。今回の測定では真空封じファラデーカップを使用し特に電子の高エネルギー尾部の測定に重点を置いた。正イオン電流は90kmから, 熱的電子の高エネルギー尾部は170km以上の高度で観測出来た。正イオン飽和電流と電子温度計のデータから求めたプラズマ密度を従来の冬の同じ時刻のデータと比較した。F層では比較的再現性の良い密度分布が得られたが, E層は従来のデータより多少くい違いを示した。
著者
小山 孝一郎 雨宮 宏 Piel A. Thiemann H.
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.3-23, 1990-03

高度100km∿120km付近において電子温度を中性ガス温度より高くする熱電子の加熱機構を探るため1988年1月25日, 1月26日日本標準時間午前11時にK-9M-81号機及びS-310-18号機がそれぞれ発射された。太陽電波束は1月25日, 26日はそれぞれ94.9,93.5で太陽黒点数は33及び44であった。K-9M-81号機において得られた電子温度は高度100kmではほぼ中性ガス温度を示し, S-310-18号機においては高電子温度層が見られ, 層中の最大電子温度は700Kであった。両者の違いはSq電流系の目玉からの距離によるものと考えられる。
著者
前川 覚 太田 仁 菊池 彦光 小山田 明 松平 和之 石田 憲二
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

スピンが規則格子上に位置しながらもスピン間相互作用が競合する幾何学的フラストレート磁性体として、三角格子、かごめ格子、パイロクロア格子等の新磁性体を探索・合成して、核磁気共鳴、磁化、比熱、ESR測定等の実験をおこない、フラストレーションに起因する新しいタイプの相転移や秩序状態の発見と、その状態と機構の解明を行った。特にフラストレーションに量子効果が加わることにより生じる新奇な状態に注目して、量子スピン液体や特異な中間秩序状態、近藤スクリーニング部分無秩序状態を発見し、その特異なスピン状態を明らかにした。
著者
小山 弓弦葉
出版者
独立行政法人国立博物館東京国立博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

「辻が花染」とは、中世に行われた日本独特の染織技法で、現代では中世の染め模様を指す言葉として定着している。しかし中世の文献にある「辻が花染」と現存する資料とは同一ではないと言われ、その実態は全く明らかにされていない。本研究では、従来通説だった文字資料の解釈について再検討を試み、これまで曖昧だった「辻が花染」の定義をより明確にすることが第一の目的である。そこで、今年度は、近代から現代にかけての染織史研究(あるいは日本風俗史研究上の服飾史研究)図書を中心に資料を収集し、研究史上に現われる「辻が花染」という用語の使用過程を追った。中世染め模様である「辻が花染」と呼ばれる伝存資料について、素材・色・技法・模様構成といった諸要素を詳細に調査し、体系立てられたデータに従って中世の染め模様の編年基準を設定するため、今年度は、京都国立博物館、山形・櫛引町黒川能上座、岐阜・関市春日神社、千葉・国立歴史民俗博物館、大阪・藤田美術館、名古屋市・徳川美術館の各所に所蔵される「辻が花染」関連資料を調査した。撮影可能な作品に関しては、デジタル一眼レフカメラで撮影し、実測調査を行った。調査報告書作成のため、昨年に引き続き、調査データのデジタル化作業を進めた。調査によって収集された画像資料はコンピュータに一括管理し、デジタル・データとして保存した。同時に、ファイル・メーカーに素材・色・技法・模様構成に関する情報を順次入力し、データの構築を進めた。入力された調査データは整理し、順次校正を行った。計画では、今年度中に調査報告書を製本する予定であったが、調査報告書を作成するための予算が十分に確保できなかったため、今年度に編集した報告書用データは、来年度東京国立博物館で発行する『平成18年度東京国立博物館紀要』に掲載することとした。また、これらのデータをさらに蓄積し有効に活用できるよう、これまでの調査した資料を個別にCD-RWに収めた。
著者
平川 一臣 松岡 憲知 高橋 裕平 先山 徹 小山内 康人 田中 幸生
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.206-229, 1987-11

第28次南極地域観測隊のセールロンダーネ山地地学調査は, 山地中央部において, 1月7日から2月10日にかけて実施された。調査はJARE-26,-27の調査地域内に限定し, 精査を旨とした。スノーモービルの活用と天候に恵まれ, ほぼ予定どおりの調査を行うことができた。この報告では, 主として行動とその問題点について記載するとともに行動中の気象表を提示する。地学調査の成果については別途に詳しく報告することとし, 概略を記すにとどめる。なお, 今次行動にはベルギー国から2人の地球科学者が交換科学者として参加し, 氷河地形学的調査を行った。
著者
百瀬 今朝雄 高島 正人 小山田 和夫 北村 行遠 坂詰 秀一 中尾 尭
出版者
立正大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1990

本年度は、研究成果の総まとめを目標に、実地調査を主体とする活動を展開した。その作業は次のとおりである。1)妙顕寺古文書の分類・整理についての基礎方針を確立すべく、京都周辺諸寺の宝物帳を検討することにより、これを定立した。2)上の基本方針に基いて、妙顕寺文書の分類・整理する作業を入念に行い、「妙顕寺文書」の体系化を仕上げた。3)文化庁の助力を得て、「妙顕寺文書」の全体を再確認するとともに、目録を作成して、国指定文化財の審議資料に提出した。4)妙顕寺文書の保存方針を立て、和紙製の封筒や包紙を用いて、これを厳重に包装することにより、古文書の保存テストを行い、好成果を得た。5)金石文の調査と研究を、本圀寺・妙顕寺・妙覚寺・頂妙寺等の墓地を対象として行い、中世の墓塔・碑などを数多く発見し、形態分類・銘文の分類・時代の変遷等の基本資料を得た。6)京都諸寺院の動向について、公家の日記等の記録における記事を集成し、これを古文書と対照しながら、京都の社会情況の中で再評価を試みた。7)典籍については、法華経典籍について検討を加え、『法華経験記』を中心として、その体系化に努め、また11世紀から13世紀における比叡山延暦寺においての僧伝編纂についても考察を加えた。以上のような作業を通して、京都におけるおおよその法華系文書・典籍等についての見通しをつけた。
著者
和田 由紀子 小山 聡子 本間 昭子 松岡 長子 葛綿 隆子 桑野 タイ子
出版者
新潟青陵大学・新潟青陵大学短期大学部
雑誌
新潟青陵大学紀要 (ISSN:13461737)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.209-218, 2004-03-10
被引用文献数
2

本研究では、経験を通して習得する「看護業務の作業効率を高める要因」を明らかにすることを目的として、臨床における看護業務を作業の順序性・効率性・連続性の視点からそのすすめ方の実際を調査し検討した。対象は経験年数18年目と21年目の看護師各1名であり、休日と平日の8:30から11:30までの全行動について、VTRとチェックリストで連続的に撮影し記録した。病棟内各場所への移動、受け持ち患者間の移動及び看護業務を実施する順序性等について検討したところ、両者に情報収集に関する移動、頻度、時間、活用等で差異が認められた。今後、さらに質的検討を加えることにより看護業務を計画的かつ効率的にすすめる教育訓練に役立てられることが示唆された。
著者
柳井 晴夫 亀井 智子 中山 和弘 松谷 美和子 岩本 幹子 佐伯 圭一郎 副島 和彦 中野 正孝 中山 洋子 西田 みゆき 藤本 栄子 安ヶ平 伸枝 井上 智子 麻原 きよみ 井部 俊子 及川 郁子 大久保 暢子 小口 江美子 片岡 弥恵子 萱間 真美 鶴若 麻理 林 直子 廣瀬 清人 森 明子 奥 裕美 外崎 明子 伊藤 圭 荘島 宏二郎 植田 喜久子 太田 喜久子 中村 洋一 菅田 勝也 島津 明人 金城 芳秀 小林 康江 小山 眞理子 鶴田 恵子 佐藤 千史 志自岐 康子 鈴木 美和 高木 廣文 西川 浩昭 西山 悦子 野嶋 佐由美 水野 敏子 山本 武志 大熊 恵子 留目 宏美 石井 秀宗 大久保 智也 加納 尚美 工藤 真由美 佐々木 幾美 本田 彰子 隆 朋也 中村 知靖 吉田 千史 西出 りつ子 宮武 陽子 西崎 祐史 山野 泰彦 牛山 杏子 小泉 麗 大西 淳子 松本 文奈 鶴見 紘子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

近年、看護系大学の急増と医療の高度化に伴い、卒業までに取得すべき看護実践能力の評価の重要性が増加している。その一環として、臨地実習に入る直前の段階までに看護学生が取得すべき知識・能力を正しく評価しておくことは看護実習の適正化のための急務の課題である。このような状況に鑑み、申請者は、2008~2010年に科学研究費補助金を受け、看護系大学の学生が臨地実習以前に必要とされる知識・能力の有無を検証することを目的として、看護学18領域から約1500の多肢選択式形式の設問を作成し、730名の学生に紙筆形式のモニター試験、および、220名の学生に対するコンピュータ試験(CBT:Computer Based Testing)を実施し、その結果を比較し、全国看護系大学共用のコンピュータ試験の有用性を確認した。
著者
程 子学 程 同軍 小山 明夫
出版者
会津大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

資源の割り当て問題は分散処理環境における重要な問題の一つとして知られており、多くの研究がなされています。また、ネットワーク環境の劇的な発展に伴い、様々な分散協調型のアプリケーションが開発されています。分散協調型のアプリケーションの上では、協調して動作するプロセスやユーザが一つのグループとして、動作するものとみることができます。複数のグループが同時にそれぞれなんらかの動作を行う場合、異なるグループに属するプロセス同士の間で資源競合が生ずる場合があり、そこで資源の割り当てが不適切に行われた場合、いくつかのグループの動作に支障がきたす危険性があります。そういった新たな形態の資源競合は、古くからある解決の手法では、十分に対処することができず、またその解決法に関する研究は、あまり十分には行われていませんでした。私どもは、従来の資源割り当て問題を拡張した「プロセスグループに対する資源割り当て問題」という問題を提起し、その分散的解決法に関する研究を行って参りました。本研究では、今までの研究結果を踏まえて、まず、資源の容量を超えない範囲で複数のプロセスによる資源の共向利用の時に、有効な割り当て手法として、割り込まれたプロセスに悪い影響を与えなく、全体的な効率が向上できる割り込みによる資源割り当て方法を提案しました。そして、予約済みや使用中の資源を他のプロセスに譲り合うために、別の利用可能な資源を予約・使用するという譲り合いによる資源割り当ての方法を提案し、資源を要求する複数プロセスの平均待ち時間を短縮する研究を行いました。さらに、複数のプロセスグループがあるタスクを平行に実行することを想定するグループ間の資源割り当てモデルを提案しました。最後に、提案された手法を実際のアプリケーションにどのように適用するかを検討するために、携帯電話のチャンネルの割り当てについて考察しました。開発された割り込み手法や譲り合い手法をプロセスグループに関するモデルに導入するために、いろいろと試みましたが、まだ十分な結果が得られていません。将来の課題として残されております。
著者
小山 信明 小川 恭男
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.264-270, 1994-10-31
被引用文献数
3

ネザサの全面開花が生育に及ぼす影響を,阿蘇北外輪山域のネザサ型放牧草地(標高920m)を対象に,1991-1992年にかけて調査した。(1)1991年の出穂稈数は0本/m^2であったが,1992年の出穂稈数は1420-2204本/m^2で全面開花した。(2)最大地上部重は,1991年には274.4-297.5gDM/m^2であったが,1992年は64.5-69.8gDM/m^2で前年の約23%にすぎなかった。(3)地下部重は,1991年の4月には1823-1909gDM/m^2であったが,8月には1776-1897gDM/m^2と少なく,11月には2173-2536gDM/m^2と再び増加した。一万1992年では4-11月にかけて減少し,特に8-11月にかけて多量の枯死がみられた。このため1992年4月21日には地下部生存部分重は1609-2093gDM/m^2あったが,11月13日には24-60gDM/m^2と約2%に減少した。(4)窒素年間吸収量は,1991年では4.40-5.15gN/m^2であった。しかし,1992年は-8.30--10.67gN/m^2で,多量の窒素がネザサから失われた。以上の結果から,全面開花するとネザサの生育は地上部・地下部ともに低下し,更に夏-秋にかけて地下部が多量に枯死し,それに伴ってネザサから多量の貯蔵窒素が失われた。
著者
佐藤孝三 小松 実 小山 善文 松崎 悟 神田 一伸
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.76, pp.37-42, 2000-08-05
被引用文献数
8

このところ社会における高齢者福祉が強く叫ばれている。それと共に、障害者に対する福祉の意識も高まりを見せている。急成長を遂げてきたコンピュータを用いた情報化技術を福祉の分野に応用しようとする試みも多く見られるようになってきた。障害者に対する情報提供に情報機器は不可欠であるが、中でも視覚障害者の社会参加を支援するシステムは、点字を応用した技術が基礎となっている。ここでは、開発中の視覚障害者への音楽情報の提供、音楽情報の発信を指向した点字楽譜作成システム「Braille MUSIC Sheet System」の概要について述べる。In recent years, the vitalization of a getting aged welfare is strongly expected as a social problem. Simultaneously, consciousness of welfare against a handicapped person also has been increased. Applications of information technology to welfare fields have been developed rapidly. The information processing devices are indispensable for an information supply against a vision handicapped person. For a system to support a social participation of a vision handicapped parson, the technology to deal Braille becomes the main theme of this fields. In this article, we describe about the Braille score making system (Braille MUSIC Sheet System) that can dispatch a supply and transmit the information of music to a vision handicapped person. We can get Braille output by Braille printer with this system, as converting a score into Braille code.
著者
知念 直紹 友安 一夫 小山 晃 保坂 哲也
出版者
防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

数学的に(特に幾何学的に)重要なコクセター群について研究を行い、コクセター群が幾何的に作用する非正曲率空間あるいは双曲空間の理想境界の位相的性質、具体的にはその境界が位相的にフラクタルの構造をもつ必要十分条件、コクセター群の境界として位相的普遍空間の構成、コクセター群への分解定理の拡張についての研究成果が得られた。また、空間のコンパクト化の剰余の固定点と深い関係がある写像のカラーリングについて調べ、局所有限なグラフ上の同相写像のカラーリング数を決定するための必要かつ十分条件の研究成果が得られた。
著者
小山 雄佑 越桐 國雄
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. V, 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.25-37, 2006-09-29
被引用文献数
1

平成10年の学習指導要領の改定では,学校週5日制や総合的な学習の時間が導入された。これに伴い小中学校では教科内容が従来に比べて3割程度削減され,これが児童生徒の学力低下をもたらしているという議論がある。教育内容の削減は,教科書の記述量にも反映されるが,一方で,教科書の表現自体が変化しているとの指摘がある。そこで,小学校理科教科書の体様のうち特に,図,表,絵,写真などの図画像表現がどのように変化してきたかを,昭和33年から平成10年までの40年間5期にわたる学習指導要領に対応した教科書について調査した。これにより,図画像表現が占める割合が増加してきたことが定量的に確認された。また,理科における学年別,領域別の図画像表現の違いやその変遷が示される。
著者
井田 喜明 長田 昇 沢田 宗久 小山 悦郎 鍵山 恒臣
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.p325-345, 1989-09
被引用文献数
5

火山噴火予知計画の一環として,地震研究所では,草津白根山の湯釜,涸釜,水釜火口の周囲に,6観測点からなる常設的な火山観測網を展開した.観測の中心は地震動であるが,地中温度,噴気温度,電気伝導度についても,連続観測を試行している.観測データは,無線テレメータにより,東京の地震研究所まで常時伝送される.地震研究所で受信したデータは,富士山や伊豆大島のデータと一緒に,ミニコンピュータにより,リアル・タイムで処理される.地震動のデータは,先ず振巾のレベルにより,次にノイズレベルや着震時刻も考慮して,地震かどうかの判定がなされる.更に,周辺の広域徴小地震観測網のデータと比較して,火山内部の地震かどうかが判断される.震源はオフラインで計算され,データに最もフィットするP波速度として2.5km/sが得られた.草津白根山では,1988年9月末から10月にかけて,火山性地震がやや群発的に発生した.その震源は,水釜火口南東部に集中した.その後,地震の震源は浅くなり,ほぼ同じ地点で間欠的な火山性微動が活発化した.1989年1月6日になると,連続的な微動が湯釜火口付近で起こり,24時間近くも継続した.それに伴って,湯釜火口の北西火口壁の付近の湖面下で,熱水か水蒸気(又は水蒸気を主体とする火山ガス)の急激な噴出があり,若干の火山灰が火口湖面およびその近傍に散布された.この小噴火の後には,震源が水釜火口南東部に集中する傾向は弱まった.水釜火口の南東部における火山性地震と火山性微動の活動は,マグマや水蒸気の移動と対応し,1月6日の小噴火の準備過程であったと推定される.A permanent network system for observations of volcanic activities have been installed in the vicinity of the Yugama, Karegama and Mizugama craters of Kusatsu-Shirane volcano. The system provides seismological data as well as preliminary results of continuous observations of underground temperatures, fumarolic temperatures and underground electric conductivities. All the data are continuously transmitted to the Earthquake Research Institute by a radio-wave telemetering system. The data are subject to real time processing in a mini-computer along with data of Fuji and Izu-Oshima volcanoes. Seismic events are first picked up, based on the amplitude level of the ground motions, and then examined in more detail, taking into account the noise levels, the arrival times and whether it occurred inside or outside the volcanic area. In the calculation of hypocenters, a P-wave seismic velocity of 2.5 km/s, which is best fit to the arrival times of the seismic waves, is assumed. Swarm-like seismic activity was observed from the end of September through October, 1988 at Kusatsu-Shirane volcano. Most of the determined hypocenters during this activity were concentrated below a specific point southeast of the Mizugama crater. In the following period, hypocenters were shifted to the shallower part of the same area, and the episodic volcanic tremors were more frequent. On January 6, 1989, a continuous volcanic tremor suddenly occurred and lasted for almost 24 hours. This tremor was accompanied by a silent extrusion of hot steam or water at the northwest part of Yugama crater with a small amount of volcanic ash distributed over the Yugama crater lake. After this small eruptive event, the hypocenters of volcanic earthquakes became more scattered. It is inferred that the volcanic earthquakes and tremors centered southeast of the Mizugama crater reflect the underground migration of magma or hot steam, and were precursors of the eruptive event on January 6.
著者
吉田 勝 奥平 敬元 有馬 真 古山 勝彦 加々美 寛雄 小山内 康人
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1)平成11年度と12年度の2年間ににかけて、インド原生代変動帯を主題とし、UNESCO-IUGS-共催事業国際地質対比計画(IGCP)No.368プロジェクトの総括研究を行った。補助金によって蛍光X線分析装置と走査電子顕微鏡を購入し、後者には既存のEDXを装着し、研究地域の岩石・鉱物の分析的研究を行い、多くの成果を得た。インド楯状地及び関連地域の内いくつかの重要地域の野外研究を実施した。インドから科学者2名を招聘し、同位体年代分析あるいはインド原生代変動帯に関する全般的な情報提供を頂いた。また、インドの研究協力者らによってインド半島原生代変動帯の重要地域の地質研究成果のとりまとめが行われた。これらによってインド亜大陸の原生代変動帯に関する広く新しい知見が得られ、多くの国際集会に参加して研究発表、討詮及び研究のまとめを行った。2)これらの研究の結果、インドの原生代変動帯はメソ原生代のロディニア・東ゴンドワナの集合テクトニクスで重要な役割を演じたこと、ネオ原生代には基本的には再変動であったことが示された。最近Powellら(Gondwana Research 4,PP.736-737)などによって東ゴンドワナのネオ原生代集合モデルが提案されているが、我々の研究成果は、この新しいモデルはさらに精密な検討を要することを強く示唆している。3)これらの研究成果は研究分担者、協力者らによって国際誌等での学術論文公表135編・国際シンポジウムなどでの研究発表59題、国際誌特別号や学会メモアなど18冊の論文集冊などとして公表され、或いは印刷中である。4)本研究の成果報告書として「インドの原生代変動帯:IGCP-368の研究成果」(英文、GRG/GIGE Misc.Pub No.15)が発行された。本書は全376頁で、第1章:東ゴンドワナ研究の最近の進歩、2章:東ゴンドワナのテクトニクス、3章:インド半島のテクトニクス、岩石とミネラリゼーション、4章:アフリカと周辺地域のテクトニクス、岩石とミネラリゼーション、5章:南極のテクトニクスと岩石・6章:その他のゴンドワナ地域の地質、7章:IGCP-368プロジェクトの活動-国際シンポジウムとフィールドワークショップ-から成り、公表論文リスト、講演リスト、文部省提出書類ファイル一式が付録として付けられている。