著者
三村 均 山岸 功
出版者
日本イオン交換学会
雑誌
日本イオン交換学会誌 (ISSN:0915860X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.6-20, 2012 (Released:2012-02-02)
参考文献数
40
被引用文献数
16 15

東日本大震災により発生した福島第一原子力発電所事故においては,海水等冷却材の原子炉注入により,原子炉およびタービン建屋内の地下の溜まり水や,敷地内のトレンチなどに放射性物質を多く含んだ数万トン規模の高レベル汚染水が発生し,作業障害や環境汚染を起こしており,今後 20 万トン以上になると予想されている。2011 年 12 月の時点で,循環注水冷却システムにより冷温停止が達成されているが,固体廃棄物(ゼオライト,不溶性フェロシアン化物スラッジ,結晶性シリコチタネート (CST)) の処理および処分は未定である。特に,汚染水中のセシウムの高除染用吸着剤として使用されている不溶性フェロシアン化物および結晶性シリコチタネート (CST) の処理・処分に関しては,過去にもほとんど実績がないことから,今後の重要な課題となっている。本稿では,循環注水冷却システムの構成と進捗状況,およびセシウムの高除染用吸着剤としての不溶性フェロシアン化物および CST の物性および Cs に対する選択的な吸着特性について紹介し,これら固体廃棄物の処理・処分および今後の課題について述べる。
著者
小泉 正樹 尾形 昌男 吉野 雅則 三浦 克洋 山岸 征嗣 徳永 昭 田尻 孝
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.52-53, 2009-12-10 (Released:2013-07-29)
参考文献数
3

大腸切除術後に生じた吻合部狭窄のために通過障害をきたし,内視鏡的バルーン拡張術で治療した7症例について検討した。7症例中3例において再拡張を要したが,最終的にはすべての症例で通過障害の改善を得た。狭窄の発生率は2.1%で,吻合法では器械吻合に多く,結腸手術に比して直腸手術で多かった。内視鏡的バルーン拡張術は有用な治療法であった。
著者
橋口 大介 山岸 哲
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.161-170, 1981

In winter, brown dippers are mainly solitary and exclusive in relationship with adjacent conspecific individuals. They drive other individuals out of their surrounding spaces along stream by threat (warning call, confronting) or aggressive behavior (chasing flight). The area along the stream, where a dipper can find others approaching is limited, and this area is defended as a territory. Some individuals are observed within narrow ranges (Sedentary type), and they held stable territorial ranges. On the other hand, others (Nomadic type) live within more extensive ranges, and change their territorial ranges day by day. Roosting individuals in upstream areas must be nomadic ones and they come downstream for feeding during the daytime.
著者
山口 淳一 大場 有功 金田 美恵 内田 紀代美 石川 洋 鈴木 公典 八木 毅典 佐々木 結花 山岸 文雄
出版者
一般社団法人 日本結核病学会
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.82, no.8, pp.629-634, 2007-08-15 (Released:2011-05-24)
参考文献数
8

〔目的〕定期外健康診断にクォンティフェロン ® TB-2G検査(以下QFT検査)を応用する際の留意点を明らかにすることを目的とする。〔対象と方法〕30代男性の肺結核患者(bII2,ガフキー9号,咳症状1.5カ月)を端緒として実施した会社の定期外健康診断の経過と結果を分析する。〔結果〕40歳未満の43名に対して,2カ月後の定期外健康診断において,ツベルクリン反応検査,QFT検査・胸部エックス線検査を行い,6カ月後の定期外健康診断において,胸部エックス線検査を実施した。また,9カ月後に2回目のQFT検査および胸部CT検査を実施した。2カ月後のツベルクリン反応検査は二峰性の分布を示し,QFT検査では10名が陽性,2名が疑陽性であった。QFT検査陽性・疑陽性の12名を化学予防としていたところ,6カ月後の胸部エックス線検査で,QFT陰性者から2名の肺結核患者が確認され,さらに9カ月後の胸部CT検査により5名の発病者が確認された。2回目のQFT検査では,発病者7名のうち3名が陽性または疑陽性であった。〔考察と結論〕QFT検査の結核患者における感度は80~90%とされており,偽陰性の可能性は無視できない。今回の経験を踏まえ,集団定期外健康診断において,QFT陽性・疑陽性者の割合が高かったり,ツベルクリン反応が明らかな二峰性の分布を示すなど,感染者が多数含まれている可能性が濃厚な集団では,以下に留意することが必要と考えられる。(1) 化学予防の対象者は,QFT検査結果のみでなく,ツベルクリン反応検査,接触状況などを総合的に判断して決定すべきである。(2)QFT検査陰性だった者についても,胸部X線検査の経過観察を行うべきである。
著者
勝矢 淳雄 藤井 健 河野 勝彦 山岸 博 野村 哲郎 遊磨 正秀
出版者
京都産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

上賀茂の住民と協働して北大路魯山人生誕地石碑を建立した。反対者への対応の仕方とその波及効果について多くの知見を得た。京都の特産のミズナがスグキナの作物としての成立に関与した可能性が示せた。ナミテントウは、60年前の結果と比べ、日本全土で暖地に適した二紋型の割合が増えていることを明らかにした。台風域内で、風の左右非対称性を明らかにした。近年の河川改修がアユ産卵場を失う可能性のあることを示唆した。
著者
島宗 理 中島 定彦 井上 雅彦 遠藤 清香 井澤 信三 奥田 健次 北川 公路 佐藤 隆弘 清水 裕文 霜田 浩信 高畑 庄蔵 田島 裕之 土屋 立 野呂 文行 服巻 繁 武藤 崇 山岸 直基 米山 直樹
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.174-208, 2003-09-05

行動分析士認定協会(Behavior Analyst Certification Board : BACB)は、国際行動分析学会(Association for Behavior Analysis : International)が公認し、支援している、行動分析学に基づいた臨床活動に携わる実践家を認定する非営利団体である。本資料ではBACBの資格認定システムを紹介し、実践家の職能を分析、定義したタスクリストの全訳を掲載する。タスクリストを検討することで行動分析家の専門性を明確にして、我が国における今後の人材育成やサービスの提供システムについて、検討を始めるきっかけをつくることが本資料の目的である。
著者
山岸 敬和
出版者
南山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

政治学の枠組みで医療制度の歴史的発展をオバマケアを含めて分析する試みは、多くは見られず、特に退役軍人医療サービスを分析枠組みに含むものは存在しない。本申請研究は歴史的制度論という分析的枠組みを用いながら日米の医療制度の発展を論じようとするものであり、このような手法で日米を比較しようとする研究は類を見ない。申請期間中、4冊の著書、5本の論文、4件の学会発表、国内外の講演による成果発表の機会を得、1960年代から現在のオバマ改革に至る日米の医療制度の政治的・社会的変化について考察を深め、今後我が国における医療保険制度の議論を進めるための助けとなるよう、著書、論文の形で還元することができた。
著者
山岸 みどり
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、高大連携の期待と現実のズレに注目し、日本における高大連携の事例を収集し、質的および数量的分析を行った。成功事例の特徴、実施体制やプログラム内容の実態などの分析結果から、「高大連携」を促進する要因と阻外する要因を明確にすることができた。日本の高大連携活動の大半は、高校と大学が対等に共通の問題の解決に取り組む「共働」ではなく、それぞれの必要に基づく「協力」関係であることが明らかになった。高大連携活動についての組織間関係論的な視点からの考察は、今後の日本の高大連携を有効に機能させるための組織・運営や環境条件など明らかにするために重要であることが示唆された。

2 0 0 0 OA 漢文譚

著者
山岸輯光 講述
出版者
奎文館
巻号頁・発行日
1916
著者
山岸 治男
出版者
大分大学
雑誌
生涯学習教育研究センター紀要
巻号頁・発行日
vol.5, pp.17-24, 2005-03

21世紀社会の目標の1つとして、しばしば「福祉社会」の実現が主張される。それには、社会的合意過程において民主主義が成熟しなければならないが多数の市民が責任ある態度で社会参画し、相互合意による相互援助活動を自覚的に継続するには、市民一人ひとりが生涯各期において年齢相応の学習を重ね、社会を構成する一市民としての自覚を高める必要がある。本稿はこうした学習を促す社会システムとしての教育のありかたを検討するものである。
著者
山岸 明彦
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.108-116, 2011-06-25
被引用文献数
3

火星の環境は過酷であるが,地球の微生物の中には火星環境で生存可能な物も存在する.火星での大気中メタンの発見は,火星においてメタンを酸化する菌の存在可能性を検討課題として提起してきた.著者ら(MELOS生命探査サブグループ)はメタン発生地域やその近傍では,火星表面下数cmで微生物が現在も存在しているのではないかという可能性を提起している.我々は蛍光顕微鏡とアミノ酸分析による火星生命探査を提案している.蛍光顕微鏡を用いることによって,DNAやRNAを持たない生物の細胞を極めて高感度で検出できる.アミノ酸の種類と鏡像異性(DL)を解析することによって,その生物の由来に関する情報を得ることができる.
著者
口田 圭吾 八巻 邦次 山岸 敏宏 水間 豊
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.121-128, 1992
被引用文献数
1 1

牛枝肉規格は,牛肉の価値を判断する上で重要な指標となるが,その判定は,スタンダードを基準にしているものの,肉眼的方法により行なわれている,また,脂肪交雑の粒子の大きさおよび形状なども,肉質の判定において重要な要因となっている.本研究では,それらの形質をコンピュータ画像解析により数値化する方法を検討した.また,1975年から1988年までの14年間に実施された,黒毛和種および日本短角種産肉能力間接検定時に撮影されたロース芯断面の写真に対して,開発した方法を適用し,得られた画像解析値に関する遺伝的パラメータを算出し,従来の格付による評価値と画像解析値との比較を行なった.遺伝的パラメータの推定にはHARVEYのLSMLMW(1986)を使用し,要因として年次-検定場,年次-検定場内種雄牛および検定開始時日齢への1次および2次の回帰をとりあげた.黒毛和種および日本短角種のロース芯断面内脂肪割合はそれぞれ7.88%,5.18%であり品種間の有意性が認められた.また,脂肪交雑粒子の大きさを示す面積値および形を表す形状値は両品種で有意差が認められなかった.画像解析で算出したロース芯断面内脂肪割合の遺伝率は黒毛和種が1.09,日本短角種が0.45であった.画像解析で算出した脂肪割合と格付による脂肪交雑評点との間の表型相関は,黒毛和種が0.63と比較的高かったものの,日本短角種では0.14と非常に低い値を示した.このことは,脂肪交雑程度が低い品種に対する肉眼による格付の難しさを示唆しているものと考えた.
著者
三村 均 山岸 功 秋葉 健一
出版者
東北大学
雑誌
東北大學選鑛製錬研究所彙報 (ISSN:0040876X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-7, 1988-09-30

The selective removal of Cs and Sr from high-activity-level water (HALW) has been studied by the use of various zeolites. The rate of adsorption of Cs and Sr increased with a decrease in size of zeolite particles, and the adsorption reached almost 100% after 5 h and 10 h of shaking for Cs and Sr, respectively. High distribution coefficients of Cs (K_<Cs>=10^4〜10^5) were obtained in the solution/zeolite ratio (V/m) region of about 300 to 1000. The presence of sodium ion fairly affected the distribution of Cs^+ and Sr^<2+>, and K_d values decreased with increasing concentration of Na^+. While the presence of boron almost had no effect on the distribution of Cs ; high K_<Cs> values (K_<Cs>≧10^5) were obtained below 5000 ppm of boron. Distribution coefficients of Cs and Sr were also independent of the equilibrium pH in neutral and alkaline regions at the ionic strength of 0.1. The removal of Cs and Sr from simulated HALW was effectively achieved by the use of mixed zeolites, and the K_d value was 7.0×10^3ml/g at the mixing ratio of 48/52 of X/chabazite.high-activity-level watercesiumstrontiumadsorption ratedistribution coefficientboronmixing ratiomixed zeolite
著者
山岸 明子
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.130-135, 2006-03

本稿では,高等養護学校でおこった2人の少年の思いがけない変化を描いた山田洋次監督の映画「学校II」をとりあげ,何が2人の少年を変えたのか,そこに教師の働きかけ・教育はどう関与していたのかを教育心理学の観点から分析し,それに基づいて大人は子供にどのようにかかわったらいいのかについての考察を行った。教師の熱心な働きかけによっても変わらなかった2人の少年が立ち直った要因として,1)教師ではなく仲間からの思いがけない働きかけ 2)少年たちの気持を理解しようとし,共感的にかかわる教師の対応 3)自分にも何かができるということの経験,4)教師による学習や自己統制への指導,が抽出された。以上の分析に基づき,子どもの発達的変化を促すものとして,大人との暖かく支持的な関係,親密な仲間や様々な他者との交流(子どもが他者をケアするような関係も含めて)が重要であり,そこで受容感や自分が有効性をもち必要とされている存在なのだという自己効力感を経験することが子どもを変えることが指摘され,更に子どもの能動性・自発性にもとづく教育だけでなく,時には大人が主導的にやらせて子どもに基本的な力をもたせて,自発的にやろうとした時にできるように準備を整えておくことの必要性が論じられた。
著者
山岸 みどり 山岸 俊男 結城 雅樹 山岸 俊男 大沼 進 山岸 みどり
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は、まず第1に、インターネットを通した国際共同実験システムを構築し、そして第2に、そのシステムを用いた国際比較実験を実施する中で、現在予想される困難への対処法を関発すると同時に、予め予想困難な新たな問題の所在を明らかにすることにある。この目的を達成するために、平成11年度には、実験システムの基本プラットフォームの作成に向けた作業が進められ、基本プラットフォームの原型版が作成された。平成12年度には、この基本プラットフォーム上で実行する国際比較社会実験の具体的計画を進め、いくつかの実験が試験的に実施された。まず、時差の少ない日本とオーストラリア間で最初の実験が実施され、インターネットを通しての同時参加型実験の実施に伴う多くの困難な問題の存在が明らかにされた。最も困難な問題は、インターネットを通したコミュニケーションの不安定性に関する問題であり、瞬時の反応を必要とする同時参加型実験の実施に際しては様々な工夫が必要となることが明らかとなった。今回の実験は瞬時の反応を必要としないため、実験はそのまま実施されたが、コミュニケーションの安定性を増すためのいくつかのプログラミング上の工夫・改良が進められた。またオーストラリア側の研究グループがプログラミングに関するサポートを十分に有していないためにいくつかの問題が生じたが、日本側のグループが現地に出向くことで問題は解決された。今後国際共同実験システムを拡張するに際して、現地でのプログラミングサポートの体制を作っておく必要があることが明らかとなった。この点は今後の課題である。平成13年度には、アメリカのコーネル大学との間で、瞬時の反応を必要とする共同参加型の実験が実施され、複数の研究室を結ぶ国際実験の完全実施が実現した。
著者
山岸 健
出版者
作新学院大学
雑誌
作新学院大学人間文化学部紀要 (ISSN:13480626)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.15-36, 2006-03-23

人間は、これまでなんとさまざまな仕方と方法で人間の生活と生存がそこで可能となるような居場所、身心のくつろぎと安らぎが得られるところ、よりどころと支えとなるような舞台、まさにトポスを築きつづけてきたことだろう。住居としての家や庭は、人びとの日々の暮らしにおいて、まことに大切なトポスだったのであり、家や庭に情熱を傾注した人びとは、決して少なくなかったのである。洋の東西にわたってさまざまな庭や庭園が見られるが、庭とは、本来、パラダイス、楽園だったのだ。家族生活は、家庭生活と結ばれているといえるだろう。グループやグループ・ライフは、トポスや風景に根をおろしているといっても過言ではないだろう。人びとが、私たちの誰もが、そこで生きている世界は、社会的文化的世界、人間的世界、日常的世界だが、きわめて人間的な表情と姿を見せながら、このような世界においてクローズ・アップされてくる人間の風景こそ庭なのである。庭は、自然と文化の微妙な融合、自然に根ざした人間のモニュメンタルなトポス、まさに記念碑、モニュメントそのものなのである。庭は、目の楽しみと慰めにすぎない光景ではない。視野ばかりか、聴覚の野、嗅覚の野、手で触れることができる野など、さまざまな野があるのである。庭と呼ばれる造形や形象、風景には、音が漂い流れており、トポスとしての、道としての庭においては、水の音や風の音が、また、香りや匂いが、体験されるのである。サウンドスケープ、音の風景は、さまざまな庭、ほとんど人間の眺めともいえる庭においても体験されるのである。人間は、なんとさまざまな仕方で、時間、空間、それぞれを意味づけるために心をくだいてきたことだろう。どのような生活においてであろうと、人間は、庭や庭に相当するものを求めつづけてきたのである。庭の片隅、片隅には、人びとの思いが、にじみ出ているといってもよいだろう。ジャンケレヴィッチは、郷愁を時の香りと呼んだが、人間の庭には、時の香りが満ち満ちているように思われる。庭は特別に注目される記憶のトポス、記憶のよりどころなのである。正岡子規においての庭、柳田國男の庭園芸術と庭へのアプローチ、クローズ・アップされてくるさまざまな庭は、表情、雰囲気、風景は、まことにさまざまだが、いずれも人間にとってまことに興味深い鏡なのである。文化と自然、人間と自然、人間的なトポス、時間と空間、人びとがそこで生きている日常的世界、人間の生活と生存……このようなモチーフへのアプローチを試みようとするときには、庭は、有力なひとつの糸口になるのである。庭とは、人間の感性と想像力、イマジネーション、ヴィジョンに磨きがかけられるトポスだが、庭で体験される道は、なかなか魅力的だ。庭の道は、道の晴れ舞台なのである。庭が借景を迎え入れる舞台となっていることがある。枯山水と呼ばれる庭がある。水の庭がある。すべての庭は、風の庭といえるだろう。庭は、アートの衣をまとった自然なのである。音の庭がある。庭で体験される音の風景がある。意味のなかで生きている人間にとって、庭は、奥深い意味のトポスではないかと思う。庭は、人間に生存のチャンスを与えてくれるトポスなのである。