著者
関 源太郎 高 哲男 姫野 順一 岩下 伸朗 荒川 章義 江里口 拓
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

20世紀イギリスの経済社会改良思想は、19世紀末に古典的リベラリズムの時代的限界を打破するべく登場したニュー・リベラリズムの形成とその後の戦前・戦後における多様な展開、1980年代の一時的消失、20世紀末の再生という動的過程を基軸に理解することができる。その際、特に注目すべきは、(1)ニュー・リベラリズムの形成はリッチーの社会進化論が大きな契機となったこと、(2)その展開は戦前・戦後期のマーシャル、ピグー、トーニー、ウェッブ夫妻、ケインズらの経済社会改良思想にも伺うことができること、(3)1980年代サッチャー政権下で消失した観を呈した経済社会改良思想におけるニュー・リベラリズムの伝統は、サッチャー政権の諸政策を推し進めようとしたメジャー保守党政権が新たに提起した市場への政府介入を推し進め、新らたに変化した時代環境に適用したニュー・レイバー労働党政権によって1990年代末に再生されたということである。
著者
木村 光江 前田 雅英 亀井 源太郎
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は,強姦罪,強制わいせつ罪の他,児童買春等処罰法,ドメスティック・バイオレンス防止法(DV防止法),ストーカー規制法,さらに人身売買罪を含む,主として女性を被害者とする犯罪行為を取り上げ,その実態並びに法整備についての検討を行ったものである。まず,強姦罪・強制わいせつ罪については,本研究実施期間中の平成16年に,刑法典改正により重罰化が実施された。本研究では,このような重罰化の背景には,性犯罪に対する国民の意識の変化があることを明らかとした。すなわち,このような変化は,単に性犯罪を「性的自己決定に対する罪」「性的自由に対する罪」とする考え方から,女性の尊厳に対する重大な侵害を伴う「性的暴行・脅迫罪」とする理解へと変化したことの現れであると理解すべきなのである。このような理解の変化は,児童買春等処罰法,DV防止法,ストーカー規制法という一連の特別法制定の延長線上にある。これらの特別法は,従来,「犯罪」とはみなされてこなかった行為類型について,明確に処罰化したものである。女性を被害者とする行為に対して,国民は,より厳格な処罰を求めるようになってきたのである。本研究では,特に,特別法についてその実態を踏まえて分析・検討を行った。その結果,DV防止法,ストーカー規制法においては,刑罰以上に,その前段階としての接近禁止命令や退去命令,警察による警告が極めて有効であることが明らかとなった。ストーカー規制法に基づく,警察による援助も急増しており,これらが効果を発揮していることが分かる。刑罰以前の手段が有効であることは,人身売買に関する分析・検討からも窺われる。すなわち,人身売買罪の制定自体が諸外国に向けたわが国の姿勢を示すものとして重要であることは明白である。しかし,実質的には,特に風俗営業適性化法の改正などにより,人身売買の温床となる営業事態を取り締まることの重要性が明らかとなった。
著者
大谷 雅夫 川合 康三 宇佐美 文理 大槻 信 伊藤 伸江 森 真理子 齋藤 茂 金光 桂子 緑川 英樹 森 真理子 齋藤 茂 大谷 俊太 深沢 眞二 楊 昆鵬 愛甲 弘志 乾 源俊 浅見 洋二 中本 大 神作 研一 長谷川 千尋 中島 貴奈 日下 幸男 原田 直枝 小山 順子 福井 辰彦 稲垣 裕史 伊崎 孝幸 竹島 一希 中村 健史 好川 聡 橋本 正俊 二宮 美那子 檜垣 泰代 川崎 佐知子 有松 遼一 畑中 さやか 山田 理恵 本多 潤子 大山 和哉
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

室町時代の和漢聯句作品を広く収集し、それらを研究分担者ほか研究会参加者が分担して翻字し、『室町前期和漢聯句資料集』(2008年3月)、『室町後期和漢聯句資料集』(2010年3月)の二冊の資料集を臨川書店より刊行した。また、その中の二つの和漢聯句百韻を研究会において会読した上で、詳細な注釈を作成してそれを『良基・絶海・義満等一座和漢聯句譯注』(臨川書店、2009年3月)および『看聞日記紙背和漢聯句譯注』(臨川書店、2011年2月)として出版した。
著者
海野 徳仁 平田 直 小菅 正裕 松島 健 飯尾 能久 鷺谷 威 笠原 稔 丸井 英明 田中 淳 岡田 知己 浅野 陽一 今泉 俊文 三浦 哲 源栄 正人 纐纈 一起 福岡 浩 渥美 公秀 大矢根 淳 吉井 博明
出版者
東北大学
巻号頁・発行日
2008

臨時余震観測から本震時には西傾斜の震源断層が主に活動したが、それと直交する東傾斜の余震活動もみられた。震源域直下の深さ30~40kmには低速度域が広く存在しており、そこから3本の低速度域が地表の活火山にまで続いていた。GPS観測データから本震時すべりは岩手・宮城県境付近で最も大きかった。本震後の顕著な余効すべりは震源断層の浅部延長で発生し、地震時すべりと余効すべりは相補的である。強震動データでは0.1~0.3秒の短周期成分が卓越していため震度6弱の割には建物被害が少なかった。
著者
栗原 英見 佐藤 勉 鴨井 久一 石川 烈 花田 信弘 伊藤 公一 村山 洋二 岩山 幸雄 丹羽 源男
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

唾液を用いた歯周病検査の開発について多角的に検討した.侵襲性歯周炎患者においてPorphyromonas gingivalis(P.g)に対するfgA抗体産生がみられ,唾液中の特異的IgA抗体測定によってP.g感染を検出できる可能性を示した.PCR(polymerase chain reaction)法での唾液を使った歯周病原性細胞検査が可能であることを明らかにした.血清とActinobacillus actinomycelemcomltans(A.a)の外膜タンパク(Omp)が強く反応した歯周病患者の唾液を使って,A.aのOmpを抗原としたfgAレベルでのA.a感染の同定を行う有効な手段を示した.Streptococcus-anginasus(S.a)をPCR法で特異的に検出する技術を確立し,上皮組織の抗菌ペプチド(hBD-2)とS.aの関連によって,S.aが病原性を示す際に必要な分子メカニズムの一端を解明した.歯周治療によりインスリン抵抗性や血糖コントロールを改善した糖尿病患者モデルを使うことで,唾液を用いた歯周病検査の開発に利用できることを明らかにした.糖尿病患者の唾液を検体とした生化学検査によって歯周疾患群と歯周疾患なし群とで有意差をは認めず,糖尿病と歯周疾患の関連性を明らかにすることはできなかった.唾液中の好中球のエラスターゼ活性や活性酸素産性能は歯周疾患の病態やリスク判定に有用である可能性を明らかにした.唾液中のMMP-8量の測定から,その活性型の値によって歯周疾患活動性の高い患者を特定できることを明らかにした.健常者に比べ歯周病患者では唾液中の酸化ストレス産物(8-OhdG)が有意に高く,歯周病診断の検査項目として有用なことを明らかにした.歯槽骨代謝マーカーとして有用性の示唆されている硫酸化グリコサミノグリカン(S-GAG)について,唾液での測定を行ったが測定できなかった.
著者
中村 源一郎
出版者
東京工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では、障害者の歩行において、足裏荷重の変化を測定し診断できる機器の試作を行った。足裏荷重を検出するセンサとして、動的な力を加えると力の大きさと速度に比例して電圧が生じる圧電高分子フィルム、東京センサ製ピエゾフィルムFLDT1-028K(以下PVDFフィルム)を使用した。足裏荷重によってPVDFフィルムに良好な変形を生じるように、発泡ゴム製靴中敷きに接着し荷重の集中するつま先、かかとに重点的に配置、片足当り10箇所へ配置し、床面の凹凸の影響が少ない厚底の市販靴に挿入した。PVDFフィルムから出力された電圧は、バッテリー駆動が可能で両足20チャンネルの電圧出力を同時に記録出来るデータロガー(グラフテック株式会社midi LOGGER GL800)を用いて測定した。実験は体育館に設置した直線歩行レーン15mを歩行し、被験者背面に装着したデータロガーでフィルムからの電圧を記録、同時に歩行軌道・状態をビデオカメラで記録した。視覚情報から歩行状態を補正させないために、通常の歩行実験と併せて、アイマスク着用による無視界状態での歩行実験を行ない次のような結果を得た。1)歩行の基本的な動作の中で足裏各部の電圧(荷重)の大小の測定ができた。2)足裏各部の接地タイミングを測定できた。3)アイマスク着用によるデータ上の変化は見られなかったが、軌道の乱れをビデオカメラ記録した。これらの結果から、圧電高分子フィルム(PVDF)フィルムを利用して、自由に歩行しながらデータ採集の出来る足裏荷重測定具を試作し、試作装置を使いた各歩行実験において診断に必要な足裏の荷重の大小、時間的関係、歩行状態を測定・記録することが出来た。今後、本試作装置で測定した電圧を速度、加速度へ変換し歩行映像あわせた定量的評価が行える実用的な装置を目指す。
著者
小谷 泰則 石井 源信
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究ではfMRIと脳波を用いて、メンタルトレーニングの効果を評価し、脳活動モデルをもとにした新たなメンタルトレーニング・プログラムを開発することを目的とした。本研究では、まずこれまでの日本において行われたメンタル・トレーニング研究に関して歴史的な経緯を含め、文献レビューを行った。さらに、近年の脳科学研究における内容を参考に「メンタル・トレーニングの生理心理学的メカニズムについて文献研究を通して仮説を立てた。研究1では、被験者は、大学スキー選手を対象とし、メンタルトレーニング・プログラム実施の前と実施後にそれぞれスキー滑走イメージ中の脳活動をfMRIを用いて測定した。研究2では、イメージ及び集中力、動機づけのトレーニングのトレーニングプログラム実施の前後に脳波を測定し、研究3では、動機づけと関連する脳活動について研究を行った。その結果、メンタルトレーニング・プログラムに対して以下のような新たな示唆を見いだすことができた:(1)イメージトレーニングでは、実際の運動学習場面や日常のトレーニング場面と同様に、Step by step的なイメージの内容を想起させることが重要である。(2)時付けを高めるプログラムでは、個々のトレーニング課題に明確で具体的な数値目標を設定し、その目標の何パーセントを達成できたかという「正しくて詳しいフィードバック情報」を与えることが重要であると言える。(3)また、本研究のfMRIを用いた実験から、脳の島皮質が情動をともなう情報と関連していることが示された。島皮質は、体制感覚の情報を処理し、それを意識化する働きをしていると考えられている。そのため、リラクセーショントレーニングとして、選手の心拍が低下したといった身体の安静化への意識付けが情動のコントロールに非常に効果的であることが示された。
著者
藤原 源吉
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.130-139, 2004-04-01

我が国の民間航空機の整備に信頼性管理方式を導入して以来,筆者は幾多の航空機事故に直面し,さまざまな信頼性管理の問題点を経験した.当解説は,これらの問題点はどこにあったのかを示し,反省すべき点の幾つかを指摘した.
著者
山口 梅太郎 茂木 源人 山冨 二郎
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1990

わが国の石灰石鉱山では、数100mにも達する長大な立坑を利用した露天採掘が行われる。近年になって、ようやく、この立坑内での岩石塊の挙動が解明されるようになってきたが、これらの研究を踏まえて、立坑に投入された鉱石(石灰石)の品位調整を行うことの可能性を得ることを試みた。鉱石は、立坑ヘトラックで運ばれて投入されるので、トラック毎の品位変動が立坑排出口での品位変動にどう影響するかを、立坑現場での実験とこれをモデル化した実験とによって観測し、さらに立坑内での鉱石の挙動のシミュレ-ションによって解析した。その結果1.垂直立坑システムよりも、斜坑システムにおける方が鉱石の混合が促進される。2.斜坑システムの混合特性は鉱石の粒径によって異なる。これは斜坑内において粒度偏析がおきるためと考えられる。3.斜坑システム内の混合特性は、斜坑内での鉱石の降下挙動、とくに不連続性による混合特性と、シュ-トホッパ-部におけるファンネルフロ-に起因する混合特性の合成したものと考えられる。4.斜坑システム内での鉱石の降下挙動は、単純な速度分布を仮定することによってモデル化することができる。5.これによって、鉱石立坑における鉱石の混合特性の推定が可能になった。6.鉱石立坑が使用年月と共に拡大して、容量が変化した場合の混合特性の変化を求めることができた。7.投入鉱石の品位変動が立坑の排出口でどうなるかのシミュレ-ションを行った。等を結論として得ることができた。
著者
泉田 洋一 立川 雅司 加古 敏之 新山 陽子 青柳 斉 生源寺 眞一 茂野 隆一 坂下 明彦 川手 督也 荒幡 克己
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、日本の農業・農村経済学の成果を個別関連学会の活動成果総体として分析すると同時に、共通課題を抽出して、その方向性を見極めんとするものである。具体的には14の農業経済関連学会の成果を時系列的に分析し、共通課題の抽出にあたっては、各学会の学会誌掲載論文の形態分析、会員へのアンケート調査に加えて、国際農業経済学会、韓国、台湾、中国の農業経済学会の動向についても詳細な分析を行った。成果は拡大しているものの国際化や情報化への対応等における課題が浮き彫りになっており、関連学会間の相互補完(複合結合)が必要となる。
著者
張 星源
出版者
岡山大学大学院社会文化科学研究科
雑誌
北東アジア経済研究 (ISSN:18808476)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-16, 2009-03-26

本稿では、アメリカUSPTOに登録された各国の特許情報に基づき、日本を始め、アメリカ、ヨーロッパおよびアジア諸国・地域における情報技術に関連するイノベーションの国際比較を行った。得られた結果は以下のように要約できる。特許の登録件数では、アメリカ、日本、EU15カ国の順に多いが、最近では、アジア各国の成長が著しい。また、フィンランドやアイランドのような情報化先進国とともに、日本や韓国のICT特許の特化係数が最も高いことが分かる。特許一件当たりの引用回数により特許の質をみると、アメリカの被引用件数が最も多く、日本とEU がこれに次ぎ、アジア諸国の引用される回数は少ない。技術スピルオーバーについては、アメリカとアジアは、他国よりイノベーションの成果を吸収しているのに対し、日本とEUは逆に他国にイノベーション成果を流出させているといえる。
著者
望月 源 本田 岳夫 奥村 学
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.37-38, 1995-09-20
被引用文献数
2

語義曖昧性解消などに使用される代表的な機械可読の日本語シソーラスには、国立国語研究所の分類語彙表[4](以下、[分類])と、角川書店の角川類語新辞典[5](以下、[角川])が挙げられる。これらは人手により、異なる語彙分類基準で構築されている。本稿では我々の語彙的結束性[1]に基づいた語義曖昧性解消アルゴリズム[3]を両シソーラスそれぞれを用いて実装し、実際のテキストで曖昧性解消の実験を行なう。その結果から、語彙的結束性に基づく語義曖昧性解消の観点からシソーラスの比較を行なう。
著者
源栄 正人 大野 晋 佐藤 健 寺田 賢二郎 篠澤 洋太郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本成果報告書は、平成18年度と平成19年度の2ヵ年の研究成果もまとめたものである。内容的には、緊急地震速報と構造物のモニタリングとの連動により付加価値を高め、更なる信頼性の向上と実用性の向上を計るためのシステム開発を行ったものである。主な研究項目として、(1)構造物の耐震モニタリング機能と連動した警報システムの開発、(2)地域の地盤環境を考慮した地震動予測精度の向上、(3)病院における実証試験による有効利用の検討、(4)学校における実証試験による有効利用の検討を行った。(1)については、建物のモニタリングのための常時作動している地震観測(オンライン地震観測)システムを設置し、この地震計による現地地震情報と、緊急地震速報の両方を連動したシステムの開発を行い、東北大学工学研科の人間・環境系建物および宮城県沖地震の際に地震波到来の早い石巻市牡鹿総合支所庁舎(旧鮎川町役場)で実証試験を行った。(2)については、仙台市域の表層地盤構造と深部地盤構造のデータベースの構築を行うとともに、牡鹿総合支所で観測された記録のP波の立ち上がり部の波形からニューラルネットワークを用いて仙台市域の地震動を高精度に予測する方法を検討した。(3)については、東北大学病院における緊急地震速報の利活用について、同病院においてアンケート調査を実施するとともに、ニーズに基づく利活用システムの提案を行った。(4)については、教育モードとして組み入れるべく素材に関する調査を行なうとともに、地域で予測される被害モードを想定した災害シミュレーションを動画の作成と活用法を検討した。学校における緊急地震速報の利活用の啓蒙と教育現場におけるニーズ調査のために宮城県域と首都圏の649校を対象としたアンケート調査を実施した。
著者
川田 浩一 押切 源一
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

加法的問題に付随する例外集合の密度評価を与えるWooleyの方法を応用する際,DavenportのDiminishing range methodが効力を発揮する場面があることを発見した.この方法は,様々な加法的問題に適用することができ,とくに3乗数及び4乗数のWaring問題に付随する例外集合に対する新しい密度評価等の成果を得た.また,素数か,または2つの素数の積であるような8個の自然数の3乗の和として,充分大きい全ての自然数を表せることを示した.