著者
犬束 信一 若松 宣一 崎原 盛貴 土井 豊 丹羽 金一郎
出版者
朝日大学
雑誌
岐阜歯科学会雑誌 (ISSN:03850072)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.13-20, 2004-11-20

各咀嚼サイクルにおいて顎関節部荷重がいつ最大値を示すかという問いに対して明確な解答を得るために,さつまいもを咀嚼運動中の一匹の日本サルの顎関節部荷重と両側咬筋筋電図を同時測定した.ハイドロキシアパタイトとチタン酸ジルコン酸鉛セラミックスから構成される微小圧力センサーをサルの左側下顎頭前上方部にインプラントした.圧力センサー出力と筋電図との関係から,各咀嚼サイクルにおける最大荷重は,両側咬筋筋電図において筋活動休止期で発生した.咀嚼相解析の結果,Phase-2,すなわち作業側咬筋筋活動が休止し始める点から最大荷重が発生する点までの期間,の平均値は左側咀嚼では45.3msec,右側咀嚼では55.3msecであった.また,このPhase-2の期間は咀嚼周期にかかわらずほぼ一定であり,左側咀嚼(作業側顎関節)の方が右側咀嚼(非作業側顎関節)の場合よりも変動が小さいことが分かった.これらの結果から,サルの安定した片側咀嚼運動では,下顎頭前上方部に作用する最大荷重は咬合相の終末に発生し,さらにこの期間は咬合相において歯が咬合接触する期間と考えられる.
著者
若生 理佳 西本 尚樹 上杉 正人 寺下 貴美 小笠原 克彦
出版者
日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.1025-1031, 2009-08-20

The purpose of this study was to develop an automated acquisition support for the semantics of abbreviations and evaluate its performance with respect to academic articles. Our goal was to support the maintenance of an institution-specific semantics inventory for abbreviations on a continuous basis. We retrieved articles from MEDLINE with the keyword "Liver [MeSH]," and 100 abstracts were randomly selected. Abbreviations and their full forms were retrieved using original Java software based on the following rules. (1) Searching the parentheses in the abstracts, the words inside the parentheses were retrieved as "INNER" and the words in front of the parentheses were retrieved as "OUTER." (2) Matching rules, such as whether the first characters of INNER and OUTER were the same. (3) If the words satisfied the conditions stated at (2), INNER was saved as the abbreviation and OUTER as the full form. Performance was manually evaluated by two graduate students and a radiologist. Of the 165 pairs of abbreviations and full forms that were obtained, 145 (87.9%) constituted correct matches.
著者
王 大慶 福井 幸夫 伊藤 哲也 中島 員洋 加藤 四郎 内貴 正治 栗村 敬 若宮 伸隆
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.567-572, 1990-06-15

ハムガニツウ・ダイハー(HD)抗原は, Nーグリコリルノイラミン酸を抗原決定基とする異好抗原であり, ヒト・ニワトリ以外の動物血清に存在することが知られている. 今回, 我々は, 9種の動物血清(牛胎児, 子牛, 馬, 山羊, 猿, 家兎, モルモット, ラット, マウス)を用いて, SDS-PAGE, Western blottingを行い, アビジン・ビオチン・アルカリホスファターゼ法を用いた高感度免疫染色により, HD抗原糖蛋白を検出した. HD抗原は, 血清蛋白中では, 銀染色の感度限界程度の微量蛋白であり, 動物によって, その分子量に多様性が認められた. 又, 牛血清では, 加齢による新しいHD蛋白の出現が, 認められた. これらの動物血清におけるHD抗原糖蛋白は, 糖脂質同様, "血清病"を惹起する可能性のあることが示唆された.
著者
森脇 和郎 鈴木 仁 酒泉 満 松井 正文 米川 博通 土屋 公幸 原田 正史 若菜 茂晴 小原 良孝
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1989

日本産野生動物種には、日本列島の生物地理学的な位置づけを反映して独自の分化を遂げたものが少なくない。これらの起源を解明することは、日本の研究者が日本に生息する種を対象にするという「自国に目を向ける立場」を別にしても興味深い。従来、日本産野生物動種については形態的分析に基づく分類学的および生態学的な研究がおもに行われてきたが、この方法論だけではこれら野生種の起源を解明することは難しい。近年著しい進歩を遂げた分子遺伝学的解析法は、集団遺伝学的な種の捉え型と相まってこの問題の解決に大きな力を発揮することが期待される。一方、わが国における人口の増加、経済活動の増大に伴う国土の開発、自然環境の汚染などによって、自然界における野生動物種の分布が改変され、時にはそれらの生存する脅かされるに至った現状を注視すれば、日本産野生種の分布や起源を検討するタイミングは今をおいてない。本研究は、日本産野生動物種の中から各分類群に属する代表的な動物種を選び出し、種内変異や近緑グループとの関係を明らかにして従来の分類体系を再検討するとともに、系統分類学および生態的に異なる動物種の起源について総合的に比較検討することを目的としている。ハツカネズミ・イモリ・メダカ・ウニ・ホヤなど日本に古くから生息する動物種は生物実験材料としての実用性と将来性に富む素材であり、実験動物の開発・利用という観点からもその重要性は見過ごすことはできない。野生種の起源を遺伝学的な観点から解明する研究は、必然的に種分化の遺伝機構にも踏み込むことになろう。この機構の基盤にはHybrid dysgenesisという現象にみられるように、その根底には発生機構、生殖機構の遺伝的制御という問題も包含しており、今後の生物学の新しい展開への有効な基盤となる可能性を秘めている。
著者
濱西 知子 若松 尚美 貝沼 圭二 高橋 節子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.326-332, 2000-08-20
被引用文献数
1

サゴ澱粉の高濃度澱粉ゲルの老化特性を知る目的でサゴおよびとうもろこし、馬鈴薯、タビオカ、加工小麦澱粉を用いてゲルの凍結解凍安定性について比較した。ゲルの調製法は攪拌加熱法について静置加熱と比較し、加工小麦澱粉を添加した結果についても実験を行った。高濃度ゲル食品としてわらび餅を調製し、官能評価を行ない食味評価と物性との関係について検討した。1)調製直後の各種高濃度ゲルの硬さの差は僅少であった。2)高濃度ゲルの調製法としての攪拌加熱法は、静置加熱法に比べて、凍結・解凍を繰返した際の硬さ、離水量の増加が緩慢であり、老化が抑制された。また、加工小麦澱粉ゲルの老化は認められなかった。3)天然澱粉に加工小麦澱粉を20%添加することにより、凍結・解凍サイクルにおける硬さ、離水量の増加が抑えられ、特にサゴ澱粉において老化抑制効果が顕著であった。4)評価法による官能評価から硬さ、弾力性、べたつき、総合評価の項目でサゴ澱粉は嗜好性が高く、次いで馬鈴薯澱粉が好まれた。5)嗜好性の高かったサゴおよび馬鈴薯澱粉を用いて官能評価を行なった結果、サゴ澱粉は攪拌加熱法が馬鈴薯澱粉の場合は静置加熱法がより好まれ、澱粉の種類により攪拌が食味特性に及ぼす影響の異なることが明らかとなった。本研究を行なうにあたり平成7年度財団法人飯島記念食品科学振興財団より研究助成をいただきました。ここに深く感謝の意を表します。
著者
佐藤 和之 菅原 若奈 前田 理佳子 松田 陽子 水野 義道 米田 正人
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.85-86, 2001-03-31

1995年1月の阪神・淡路大震災以来,私たちは被災した外国人や外国人対応機関からの聞き取りを行ってきた。一連の研究から明らかになったことは,(1)多言語での情報提供より,彼らにも理解できる程度の日本語で情報を伝える方が現実的ということであった。そしてまた,一人でも多くの外国人を情報弱者という立場から救うためには,(2)身の安全と当座の生活確保のための緊急性の高い情報をいかに厳選し,(3)いかにわかりやすい表現で伝えるかということであった。このような言語的対策の研究成果として,私たちは1999年3月に『災害時に使う外国人のための日本語案文-ラジオや掲示物などに使うやさしい日本語表現-』と『災害が起こったときに外国人を助けるためのマニュアル(弘前版)』を作成し,初・中級程度のやさしい日本語表現を使っての情報提供が有益であるとの提案を行った。やさしい日本語表現を用いて,外国人被験者(日本語能力が初級から中級程度)へ聴解実験を行ったところ,通常の文では約30%であった理解率が,やさしい日本語の文では90%以上になるなど,理解率は著しく向上した。発表では,72時間情報の意味(もっとも混乱した時間帯での情報とは何か),伝えるべき情報の種類と発信時間(災害発生時に外国人にも伝えるべき情報,緊急性の高い情報の種類と発信時間),やさしい日本語の構文(わかりやすく伝えるための構文の提案),使用できる語彙(買い物やバスの利用ができる程度の日本語語彙の選定と言い替えの方法),音声情報の読み方(ポーズの効用やスピード),使用すべき文字種(漢字仮名交じり文かローマ字文か),シンボルマークの使用(雑多な掲示物の中で外国人の目をひくための表現方法),コミュニティ版(弘前市を実例としたマニュアルの構成と内容)といったことについての試論を報告した。
著者
若山 忠明 関根 由喜夫
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.243-248, 2003-08-20

The polyphenol oxidase (PPO) activity in the leaves, stalk or flesh, and core or peel of seven vegetables was determined, and the temperature, time and pH value required for the thermal inactivation of the enzyme were investigated. The PPO activity was highest at the bottom of the stalk in spinach, celery and komatsuna and in the core of cabbage, while the PPO activity in radish, carrot, and onion was highest in the peel. The enzyme activity was rapidly decreased by incubating for 10min at a temperature above 50℃ for celery and 60℃ for spinach, cabbage and komatsuna, whereas the carrot PPO activity was gradually decreased above 60℃ and reduced to 19% by heating at 70℃ for 10min. The enzyme obtained from carrot was the most heat resistant, requiring 59.3min at 65℃ for 90% reduction of the activity. The z value of PPO prepared from five vegetables ranged from 6.1℃ to 11.5℃. A change in pH from 5.5 to 4.0 resulted in a substantial reduction in the D value of radish PPO.
著者
若山 和樹 篠崎 志美 杉山 登志郎 山田 智子
出版者
一般社団法人 日本小児精神神経学会
雑誌
小児の精神と神経 (ISSN:05599040)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.129-137, 2023-07-01 (Released:2023-07-14)
参考文献数
16

自閉スペクトラム症(ASD)の症例に併存した解離性同一性障害(DID)の症例を集積し比較検討した.その結果,深刻なトラウマ体験がみられないにも関わらずファンタジーの没頭の延長上にDIDが生じた症例が存在することが確認された.その一方で,重大なトラウマ的体験があり,30人から50人以上など,極めて多くの数の部分人格が認められる症例の存在に気づき,われわれはSTP (Status Tot Personalities)解離と命名した.症例の検討から,トラウマ被曝の重症化に伴いDIDは重症化することが明らかになった.ASDに併存したDIDは,ASD独自のまとまりに欠けた自己意識のあり方を基盤にして生じること,その基盤の上にさまざまなレベルのトラウマ体験が絡むことで,独自のDIDが作られるという可能性を検討した.
著者
西園 昌久 高橋 流里子 対馬 節子 松永 智子 福屋 靖子 土屋 滋 大貫 稔 高橋 美智 浅野 ふみぢ 小松崎 房枝 鈴木 小津江 平山 清武 中田 福市 鈴木 信 壁島 あや子 名嘉 幸一 鵜飼 照喜 福永 康継 浪川 昭子 高田 みつ子 岩渕 勉 森脇 浩一 加藤 謙二 早川 邦弘 森岡 信行 津田 司 平野 寛 渡辺 洋一郎 伴 信太郎 木戸 友幸 木下 清二 山田 寛保 福原 俊一 北井 暁子 小泉 俊三 今中 孝信 柏原 貞夫 渡辺 晃 俣野 一郎 村上 穆 柴崎 信吾 加畑 治 西崎 統 大宮 彬男 岩崎 徹也 奥宮 暁子 鈴木 妙 貝森 則子 大橋 ミツ 川井 浩 石川 友衛 加世田 正和 宮澤 多恵子 古賀 知行 西川 眞八 桜井 勇 三宅 史郎 北野 周作 竹洞 勝 北郷 朝衛 橋本 信也 斉藤 宣彦 石田 清 畑尾 正彦 平川 顕名 山本 浩司 庄村 東洋 島田 恒治 前川 喜平 久保 浩一 鈴木 勝 今中 雄一 木内 貴弘 朝倉 由加利 荻原 典和 若松 弘之 石崎 達郎 後藤 敏 田中 智之 小林 泰一郎 宮下 政子 飯田 年保 奥山 尚 中川 米造 永田 勝太郎 池見 酉次郎 村山 良介 河野 友信 G. S. Wagner 伊藤 幸郎 中村 多恵子 内田 玲子 永留 てる子 石原 敏子 河原 照子 石原 満子 平山 正実 中野 康平 鴨下 重彦 大道 久 中村 晃 倉光 秀麿 織畑 秀夫 鈴木 忠 馬渕 原吾 木村 恒人 大地 哲郎 宮崎 保 松嶋 喬 桜田 恵右 西尾 利一 森 忠三 宮森 正 奥野 正孝 江尻 崇 前沢 政次 大川 藤夫 関口 忠司 吉新 通康 岡田 正資 池田 博 釜野 安昭 高畠 由隆 高山 千史 吉村 望 小田 利通 川崎 孝一 堀 原一 山根 至二 小森 亮 小林 建一 田中 直樹 国府田 守雄 高橋 宣胖 島田 甚五郎 丸地 信弘 松田 正己 永井 友二郎 向平 淳 中嶌 義麿 鎮西 忠信 岡田 究 赤澤 淳平 大西 勝也 後藤 淳郎 下浦 範輔 上田 武 川西 正広 山室 隆夫 岡部 保 鳥居 有人 日向野 晃一 田宮 幸一 菅野 二郎 黒川 一郎 恩村 雄太 青木 高志 宮田 亮 高野 純一 藤井 正三 武内 恵輔 南須原 浩一 佐々木 亨 浜向 賢司 本田 麺康 中川 昌一 小松 作蔵 東 匡伸 小野寺 壮吉 土谷 茂樹 岡 国臣 那須 郁夫 有田 清三郎 斎藤 泰一 清水 強 真島 英信 村岡 亮 梅田 典嗣 下条 ゑみ 松枝 啓 林 茂樹 森 一博 星野 恵津夫 正田 良介 黒沢 進 大和 滋 丸山 稔之 織田 敏次 千先 康二 田中 勧 瓜生田 曜造 尾形 利郎 細田 四郎 上田 智 尾島 昭次 大鐘 稔彦 小倉 脩 林 博史 島 澄夫 小池 晃 笹岡 俊邦 磯村 孝二 岩崎 栄 鈴木 荘一 吉崎 正義 平田 耕造
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.145-173, 1984-06-25 (Released:2011-08-11)
著者
原田 一敏 松原 茂 神庭 信幸 澤田 むつ代 沖松 健次郎 和田 浩 小山 弓弦葉 行徳 真一郎 三浦 定俊 早川 康弘 若杉 準治 谷口 耕生 村重 寧 田沢 裕賀 小林 達朗 原田 一敏
出版者
独立行政法人国立博物館東京国立博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

国宝・法隆寺献納宝物聖徳太子絵伝、全10面について場面内容の同定と描写内容の精査、当初の地である綾地の精査を行った。また高精細デジタル写真の撮影、1面ごとの合成を行い、あわせてX線フィルムをデジタル化し、同様に合成することにより、両者を対照可能なデータとする基本資料の作成を行った。
著者
都築 政起 若杉 昇
出版者
Japanese Association for Laboratory Animal Science
雑誌
Experimental Animals (ISSN:00075124)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.137-144, 1988-04-01 (Released:2010-08-25)
参考文献数
9
被引用文献数
3 3

ニホンウズラの新しい突然変異「back-drawer」は, 腹部を覗き込むようにして首を腹側に強く曲げ, しゃがみ込んだ姿勢で, 常時後ずさりをする行動を示し, 時折前方に回転する。この異常は, 孵化時から8週齢の間に発症し, 症状は一時的な発作として出現するのではなく, 一定期間持続した。発症個体は3つのタイプに分けられ, 1つは, 孵化時既に症状を示しており5日齢以前に死亡するもので, 他の2つは2週齢時以降に発症し, 発症後早期に死亡するもの, および長期間生存するものであった。後者では, 症状が漸次軽減し, やがて正常個体との区別が困難となるものもあった。雄は, 外見的に性成熟に達した後も, 異常行動を示す期間は繁殖力をもたないが, 回復後は繁殖力をもつようになる。一方, 雌はほとんど産卵せず早期に死亡する傾向がある。後ずさり形質は, 常染色体性の2対の劣性遺伝子によって支配されていると考えられる。
著者
若旅 正弘 高崎 友香 沼田 憲治
出版者
脳機能とリハビリテーション研究会
雑誌
脳科学とリハビリテーション (ISSN:13490044)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.29-35, 2015-07-03 (Released:2018-11-02)

今回,橋梗塞後に認知機能障害を呈した症例を経験したため報告する.症例は60歳代,女性,橋に限局した脳梗塞を発症した.発症後3週目において,病前には認められなかった種々の行為・行動の異常が観察された.症例の背景,観察所見,神経心理学的検査の結果から,症例は今回の橋梗塞により認知機能障害(注意障害,記銘力障害,遂行機能障害)を呈したと考えられた.行為・行動の異常,認知機能障害は発症後13週目においても残存しており,そのためADL,IADLの一部に見守りを要したと考えられた.脳幹損傷後に認知機能障害を呈した症例の報告は少なく,慢性期まで経過を追ったものは極めて稀である.したがって,本症例報告は貴重かつ興味深い報告であると思われる.
著者
百合 邦子 坂口 俊二 鍋田 理恵 久下 浩史 若山 育郎
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.237-249, 2014-05-30 (Released:2014-10-01)
参考文献数
25

目的:本研究では、若年女性の冷え症に対する温筒灸治療の効果を、膝陽関(GB33)穴と三陰交(SP6)穴との比較試験で検討した。方法:対象は女子大学生13名(平均年齢20.7±1.3歳)とした。対象者を坂口らの判別分析による判定法に身長を考慮し、膝陽関群(6名)と三陰交群(7名)とに割り付けた。1週間の前観察期間を経て、介入期間には各経穴について温筒灸(長安NEO、山正)1~2壮を週2回で4週間行った。介入期間終了後2週間を追跡期間とした。評価には冷えを含む14症状の6件法と冷えの程度をVisual Analogue Scale (VAS)で回答する独自の評価票(冷え日記)を用いた。結果:13名中3名は前観察期間終了後に脱落し、解析対象は両群とも5名となった。2群間で年齢、身長、体重、BMI、VAS、愁訴得点などの初期値に有意差はみられなかった。VASおよび愁訴得点は、何れも群間と試験期間との間に交互作用はみられなかった。群別では、両群ともVASは前観察期間に比して介入期間、追跡期間とも有意な変化はみられなかった。愁訴得点については、両群とも介入開始より漸次減少したが、膝陽関群で介入期間3・4週目、三陰交群では介入期間4週目と追跡2週目で前観察期間と比して有意に減少した。また、愁訴得点を項目別に検討すると、膝陽関群には肩こり、口の乾きに、三陰交群には肩こり、口の乾き、イライラで有意差がみられた。具体的には、膝陽関群では肩こりは追跡期間1・2週目で有意に減少し、口の乾きは介入期間3・4週目で有意に減少した。一方、三陰交群では、肩こりは介入期間2・4週目、追跡期間1・2週目で有意に減少し、口の乾きは介入期間4週目、追跡期間2週目において、イライラは介入期間1・2・4週目に有意な減少を示した。結語:若年女性の冷え症に対する温筒灸治療は、膝陽関穴、三陰交穴ともに外気温が低下しても冷え症を悪化させることなく、随伴愁訴を改善させることが示唆された。
著者
西野 泰代 若本 純子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.21-31, 2022 (Released:2022-04-25)
参考文献数
37
被引用文献数
3 3

This study investigated whether there are differences in bystander behavior when bullying is witnessed. We evaluated the number and types of bystander behaviors by means of the OBVQ, and then examined the psychological characteristics of the different bystander behaviors. 269 Japanese elementary school students and 503 junior high school students completed questionnaires assessing empathic concern, peer conformity, moral disengagement, authenticity and satisfaction in classes, global self-worth, and how they would respond if they observed a peer being bullied. The results of a multinomial logistic regression analysis and ANOVA demonstrated that there would be some types of bystander behavior with common characteristics such as empathic concern and developmental differences. Moreover, the results also showed that two types of behaviors, of which one indicated the most negative psychological state, might be caused by peer conformity. Other behaviors might be caused by moral disengagement and contain some subordinate modes owing to regulatory effects of peer conformity, such as pretending to be unaware of bullying. The practical implications of bystander behavior are discussed.
著者
西藤 奈菜子 川端 康雄 若林 暁子 吉川 真衣 金沢 徹文 寺嶋 繁典 米田 博
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.64-74, 2021 (Released:2021-01-01)
参考文献数
23

本研究では, P-Fスタディを用いて, 併存疾患の背景に存在する診断閾下の自閉スペクトラム症 (Autism Spectrum Disorder : ASD) のアセスメント可能性について検討した. P-Fスタディの量的分析の結果, 閾下ASD群は非ASD臨床群に比して評定不能のU反応が多く認められた. 質的分析では, 閾下ASD群のU反応において, 「対処困難」 「状況承認」 「自己本位」 「状況誤認」 の4つの特徴が, 全24場面に対する回答内容において, 「過度な他責」 「共感に乏しい自己主張」 「状況に不適当な発言」 「違和感のある語用」 の4つの特徴が認められた. また, 閾下ASD群は非ASD臨床群に比して, U反応の 「状況誤認」, 回答内容の 「状況に不適当な発言」 「違和感のある語用」 が多く認められた. P-Fスタディには, 診断閾下のASD者が有する一見しただけでは表面化しにくい対人交流の課題が反映されやすい可能性があり, 二次的な症状の背景にある診断閾下のASDの把握に有用であると考えられる.
著者
外山 恵里 関 ゆかり 高橋 里佳 梅原 郁美 若山 曉美 七部 史 阿部 考助 下村 嘉一
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.213-218, 2014 (Released:2015-03-19)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

【目的】アトロピン硫酸塩点眼薬(以下アトロピン)による屈折検査は弱視や斜視の治療に不可欠な検査であるが、副作用の発現が報告され注意が必要である。今回アトロピンによる副作用の発現率と症状について検討した。【対象及び方法】対象は2008年4月から2011年3月の3年間に屈折検査のためアトロピンを点眼した387例とした。初めて点眼した症例は387例中326例(84.2%)、2回目以上の症例は61例(15.8%)であった。点眼薬の濃度は3歳未満が0.5%、3歳以上は1%を基準とし、1日2回7日間行った。処方時に点眼による作用と副作用、点眼時の涙嚢部圧迫の必要性を説明した。副作用については発現率、発現時期、症状、濃度や年齢、他の疾患の合併の影響について検討した。【結果】初めて点眼した症例の副作用の発現は18例(5.5%)、このうち7例が点眼を中止した。症状は発熱が最も多く、点眼開始4日以内の発現が多かった。発熱や顔面紅潮は7月と8月の発現が他の期間より有意に高かった。副作用が発現した症例に他の疾患の合併はなかった。濃度別の副作用の発現は、0.5%は212例中12例(5.7%)、1%は114例中6例(5.3%)で有意な差はなかった(p>0.05)。年齢、性別による副作用の発現も有意な差はなかった(p>0.05)。2回目以上の症例の副作用の発現は61例中1例(1.6%)であった。【結論】アトロピンによる副作用の発現率は5.5%で、症状は発熱が多く、点眼薬の濃度、年齢、性別による影響はなかった。
著者
立瀬 剛志 石若 夏季 大野 将輝 関根 道和
出版者
地域生活学研究会
雑誌
地域生活学研究 (ISSN:21869022)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.1-9, 2022 (Released:2022-09-02)
参考文献数
10

2020 年、COVID-19 の感染拡大及びその拡大防止策により日常生活は大きく変化し、人々の直接的な繋がりも制限されるに至った。またコロナ禍は自殺の傾向にも影響を与え、自殺率が 10 年ぶりに増加に転じた。そこで今回、コロナ禍における自殺率及びその変動と社会資源や生活状況といった因子との関連性を確かめるため、社会統計データを用い都道府県単位でのコロナ禍における自殺率の格差を説明する要因を分析した。重回帰分析の結果、NHK 料金支払い率が高く、女性の就労時間等が長い都道府県ほど男性の自殺変化率は増加し、趣味・娯楽時間や学業時間、そして男性の家事時間が長い都道府県ほど女性の自殺変化率が増加していた。また関連要因として抽出された指標は、女性よりも男性で少なく決定係数も小さい結果となった。今回の結果から、コロナ禍における働き方や自分の生活時間などの変化に加え、学習時間や NHK 支払い率といった県民の堅実性といった側面からもコロナ禍の自殺背景を捉えることが重要と考えられる。