著者
西岡 久寿樹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.10, pp.2235-2240, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
5
被引用文献数
2 2

線維筋痛症は中高年の女性を中心に発症原因が不明の特有の全身の筋骨格系を中心とする中枢性の疼痛疾患である.その病態は精神症状から消化管,粘膜症状など多彩な症状を呈する.一方,本症は客観的データが乏しいために診断や病態の把握に困難を招くことも多く,一般内科医やかかりつけ医の臨床的な面での対応は未だ遅れている.最近,厚生労働省の研究班を中心に病因,病態の解明が進められている.
著者
西岡 祖秀
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF INDIAN AND BUDDHIST STUDIES
雑誌
印度學佛教學研究 (ISSN:00194344)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.497-493,1285, 2005

The Chronological Table of Tibetan Buddhist history of 'Jam-dbyangs-bzhad-pa precedes the famous chronological table of Sum-pa-mkhan-po. A feature of both chronological tables is that they were written in acceptance of the legend of the country of Shambhala, as taught in the <i>Kalacakratantra</i>. Namely, they record that the 25th generation Raudracakrin king of the ideal Buddhism kingdom Shambhala will win the final war with Islam, reviving Buddhism. Sum-pa-mkhan-po projects the date of this event to be A. D. 2376.
著者
西岡 大輔 上野 恵子 舟越 光彦 斉藤 雅茂 近藤 尚己
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.7, pp.461-470, 2020-07-15 (Released:2020-07-31)
参考文献数
43

目的 経済的困窮や社会的孤立など,生活困窮状態は健康の社会的リスクであり,医療的ケアの効果を阻害する要因でもある。近年,患者の社会的リスクに対応する医療機関の取り組みが広がりを見せつつあり,その対象者を適切にスクリーニングできる方法の確立が求められる。そこで,医療機関で活用することを想定した生活困窮評価尺度を開発しその妥当性と信頼性の一部を検証した。方法 5つの医療機関を新規に受診した成人を対象に横断研究を実施した。生活困窮に関する25の質問の回答結果を用いて探索的因子分析を行った。反復主因子法により因子数を規定し因子を抽出した。プロマックス回転を用いた。抽出された因子の妥当性と信頼性を検証した。信頼性の検証には標準化クロンバックα係数を算出した。得られた結果から因子負荷量が高い設問を選択し,簡易尺度の問診項目を選定した。結果 対象者は265人であった(回答率:75.1%)。因子分析の結果,経済的困窮と社会的孤立の2因子が抽出され,因子負荷量が0.40以上のものとして,経済的困窮尺度では8問,社会的孤立尺度では5問が主要な設問の候補として抽出された。標準化クロンバックα係数は,経済的困窮尺度で0.88,社会的孤立尺度で0.74であった。さらに,簡易尺度の問診項目を各因子の因子負荷量が高いものから2項目ずつ選定した。すなわち「この1年で,家計の支払い(税金,保険料,通信費,電気代,クレジットカードなど)に困ったことはありますか。」「この1年間に,給与や年金の支給日前に,暮らしに困ることがありましたか。」「友人・知人と連絡する機会はどのくらいありますか。」「家族や親戚と連絡する機会はどのくらいありますか。」であった。考察 医療機関で患者の生活困窮を評価することを想定した尺度を開発し,一定の妥当性・信頼性を確認した。尺度の実用化に向けては,保健・医療・介護・福祉・地域社会の十分な連携のもと,質問項目の回答に対するスコアリングと地域や医療機関の特性に応じた本尺度のカットオフ値の設定,さらなる一般化可能性の検証等が必要である。
著者
西岡 ゆかり 高山 昌子 新野 弘美 横山 誠
雑誌
国際研究論叢 : 大阪国際大学紀要 = OIU journal of international studies (ISSN:09153586)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.1-12, 2021-01-31

Since the 2013 FAO report on the usefulness of insects as foodstuffs, the insect business has become active in various countries of the world. We thought the breeding of insects to be possible for an elderly person with low physical strength in comparison with raising domestic animals such as cows. We also thought the culture of insects might lead to the foundation and regional activation of job opportunities for the socially vulnerable. Therefore, we performed ingredient nourishment analysis on three kinds of insects to examine their usefulness. Additionally, we made two kinds of cake using locusts and performed a sensory test. As a result of the ingredient nourishment analysis, we found that protein, zinc, and copper were present in rich amounts. The sensory test items were: taste, smell, texture, aftertaste, appearance, and a global assessment. All items in the sensory evaluation scored higher than average. As a result of this investigation, it was suggested that insects were promising as foodstuffs. In addition, the possibility that the culture of insects could lead to the employment of the socially vulnerable was shown.
著者
村山優子 向井未来 西岡大 齊藤義仰
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2013論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.873-879, 2013-07-03

2011年3月11日の東日本大震災では、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)による情報交換が活発に行われた。特にTwitterは,行政やマスメディア等の企業が迅速な情報発信のツールとして,ユーザからはリアルタイムな情報収集源として重宝された.しかし,根拠のない噂や悪意のある冗談などのデマ情報のツイートが広く拡散される問題も発生し,ユーザに無用な不安や混乱を招いた.本研究では,ユーザがデマ情報の拡散を防ぐため,リツイートに関する意思決定プロセスのモデル構築を行った.モデルでは,ユーザが興味を持つことがリツイートに非常に大きく関わっていることが示唆された.
著者
小倉 史愛 木村 丈司 宇田 篤史 戸田 飛鳥 赤澤 由子 山本 和宏 五百蔵 武士 西岡 達也 久米 学 槇本 博雄 平井 みどり
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.78-86, 2016-02-10 (Released:2017-02-15)
参考文献数
34
被引用文献数
2 5

Polypharmacy, the co-prescribing of nonessential drugs and inappropriate prescriptions, is a worldwide issue and is a factor affecting the increase in adverse drug reactions, drug-drug and drug-disease state interactions, and the growth in medical spending. In this study, we evaluated the current status of polypharmacy in elderly patients at Kobe University Hospital and the efficacy for screening and intervention against potentially inappropriate medications (PIMs) with the screening tool of older persons' potentially inappropriate prescriptions (STOPP) criteria formulated by a pharmacist. Of 301 study patients, 81 (26.9%) patients with PIMs were identified using the STOPP criteria, and these patients had a significantly higher number of prescribed drugs than other patients. Moreover, there was a correlation between the number of prescribed drugs and the percentage of patients identified using the STOPP criteria. The STOPP criteria identified 125 cases to be PIMs, and the prescriptions were changed for 35 (28%) of them. In 125 cases of PIMs, 61 cases had been strongly recommended prescription changes by pharmacists, of which 32 cases (52.5%) had been changed. Several prescription changes were often associated with the administration of nonsteroidal anti-inflammatory drugs. Based on our findings, we suggest that the STOPP criteria are useful for screening PIMs in Japanese patients and are a helpful tool for managing polypharmacy. The benefits of this approach for pharmacists should be multilaterally evaluated by the assessment of patients and medical economic outcomes in the future.
著者
西岡 千文 亀田 尭宙 佐藤 翔
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.3-20, 2020-02-29 (Released:2020-03-27)
参考文献数
55

学術出版物のオープンアクセスが進展し,自由にアクセス可能な学術情報が蓄積されている.一方,引用データに関しては,機械可読なアクセスのオープン化が遅れている.このような状況を解決するために,I4OC(Initiative for Open Citations)が設立され,オープン・サイテーション,すなわち引用データのオープン化を推進している.本稿では,I4OC の取り組みによって公開された引用データを分析することで,日本におけるオープン・サイテーションの現状の把握を試みる.結果,世界の学術出版物において引用データをオープンにしている文献の割合は24.22%であるのに対して,日本の学術出版物においては18.86%であることが判明した.オープン・サイテーションを推進するための今後の課題として,過去の文献と人文学系分野の文献の引用データの組織化の支援が挙げられる.
著者
江崎 雄治 西岡 八郎 鈴木 透 小池 司朗 山内 昌和 菅 桂太 貴志 匡博
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.255-267, 2013 (Released:2014-03-13)
参考文献数
8
被引用文献数
2

本稿は,国立社会保障・人口問題研究所の『日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計)』の手法と結果について解説するものである.まずコーホート要因法による将来人口推計は,コーホートの安定的な経年変化を将来に延長することをその手法の基礎に置いていることから,少なくとも近い将来に関する限り,かなり高い精度を有することを説明する.2025年までの推計結果については,特に非大都市圏の人口減少の加速とともに,大都市圏郊外地域における急激な高齢化について指摘している.さらに大都市圏では,その後の死亡数の増加により,2040年までの期間に非大都市圏の後を追う形で人口減少局面に入る.
著者
西岡 恵里 船坂 陽子 長濱 通子 鷲尾 文郎 加藤 晋造 松村 武男 市橋 正光
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.97-102, 1996
被引用文献数
3

21歳, 男性。平成6年9月ピラニアの捕獲目的でブラジルのマナオスからネグロ川ぞい約300km上流のジャングルに旅行中, 右上腕を蚊のような虫に刺された。虫刺部に発赤・腫脹を生じるようになり, 中心部には硬結がみられ血漿浸出液を伴う瘻孔を認めるようになった。帰国後近医を受診, 抗生物質を処方され腫脹はやや軽減したが, 右腋窩のリンパ節の腫脹がみられるようになり, その後瘻孔より白色半透明の虫体が出入りするのが目撃された。虫体は捕えようとすると素早く瘻孔にもぐりこんだ。患者自身がでてきた虫体の採取に成功し, 虫体を持参のうえ神戸大学付属病院皮膚科を受診。体長約1.5cm, 白色のとっくり状の虫体で同大医動物学教室にて, ヒトヒフバエのニ齢幼虫と同定された。ヒトヒフバエ(症)は日本土着のものではなく, 中南米からの輸入例が全部を占めている。1974年のKageiらの報告以来本邦12例目となる。最近5&acd;10年間に報告が集中しており, ヒトヒフバエが生息する中南米の熱帯雨林地域への旅行者の激増に伴う発生増加が要因と考えられる。
著者
西岡 心大
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.944-948, 2016 (Released:2016-08-20)
参考文献数
28

リハビリテーション (以下、リハと略) 病院・施設入院患者では40~ 50%に低栄養が認められ、リハアウトカムに悪影響を及ぼす。低栄養を認めるリハ対象者には国際生活機能分類 (以下、ICFと略) に基づきリハと栄養管理を同時に行うリハ栄養管理の考え方が有効だと考えられる。近年、欧州臨床栄養代謝学会および米国静脈経腸栄養学会により、低栄養は飢餓関連、慢性疾患関連、急性疾患/外傷関連の3タイプに整理され、栄養摂取不足のみならず炎症反応が低栄養の進展に寄与していることが明確化された。低栄養を認める場合、これらの成因を評価することは介入戦略の決定や栄養状態の予後予測に役立つ。一方、リハ栄養管理においては低栄養を認める場合、エネルギー必要量には体細胞成分の回復を考慮したエネルギー蓄積量を付加する必要がある。今後、代謝栄養学を踏まえた栄養障害と生活機能障害との関連の検証や、栄養管理とリハを組み合わせる最適な方法論の確立が望まれる。
著者
西岡 秀郎 田口 志麻 山本 勇一 中川 智晴
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.168-170, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
10

アナフィラキシーショックに対する第一選択薬はアドレナリンであり,迅速な投与が死亡率を低下させる。また輸液も重要な治療である。わが国では救急救命士の処置として,アドレナリン自己注射製剤(エピペン®)所持者が自己注射できない場合のエピペン投与,および心肺機能停止前の静脈路確保と輸液が認められている。著者らはアナフィラキシーショックにより意識レベルと血圧の低下を呈した患者に対し,救急救命士がこれらの処置を実施し,症状の改善に寄与した症例を経験した。
著者
西岡 龍一朗 黒田 萌 黒田 格
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.78-80, 2023-06-10 (Released:2023-06-24)
参考文献数
9

筆者らは,学生が主体となり医療系学生と患者が語り合い,笑い合う活動を定期的に継続した.2020年6月から2022年9月まで28回実施した.活動を通し,学生と患者の双方から沸き起こった感情,新たな認識,気づきについて反響が得られた.患者が学生に対し語ることが,学生には省察の機会や患者視点による病の理解を生む一助となり,患者自身には自己の有意味感や病の新たな認識を生むことが示唆された.
著者
馬場 駿吉 高坂 知節 稲村 直樹 佐藤 三吉 鈴木 茂 遠藤 里見 石戸谷 雅子 小野寺 亮 山田 公彦 大久 俊和 荒井 英爾 鈴木 雅明 大山 健二 粟田口 敏一 戸川 清 岡本 美孝 松崎 全成 寺田 修久 喜多村 健 石田 孝 馬場 廣太郎 島田 均 森 朗子 池田 聖 金子 敏郎 今野 昭義 山越 隆行 石井 哲夫 窪田 市世 鍋島 みどり 田口 喜一郎 石山 哲也 中野 雄一 中村 英生 五十嵐 文雄 古川 仭 作本 真 山下 公一 久保田 修 宇佐神 篤 伊藤 博隆 鈴木 元彦 間宮 紳一郎 横田 明 加藤 薫 大屋 靖彦 河合 〓 岩田 重信 横山 尚樹 井畑 克朗 瀧本 勲 稲福 繁 坂倉 康夫 鵜飼 幸太郎 雨皿 亮 山田 弘之 坂倉 健二 平田 圭甫 伊藤 由紀子 村上 泰 竹中 洋 山下 敏夫 久保 伸夫 中井 義明 大橋 淑宏 阪本 浩一 村田 清高 平沢 昌子 原田 康夫 森 直樹 白根 誠 多田 渉 小林 優子 竹林 脩文 河野 嘉彦 夜陣 紘治 平田 思 宮脇 修二 津田 哲也 山下 隆司 二階堂 真史 柿 音高 永澤 容 増田 游 後藤 昭一 西岡 慶子 折田 洋造 東川 康彦 武 浩太郎 進 武幹 前山 忠嗣 百田 統洋 堤 昭一郎 茂木 五郎 川内 秀之 松下 太 吉村 弘之 高田 順子 石川 哮 定永 恭明 大山 勝 松崎 勉 坂本 邦彦 廣田 常治 内薗 明裕 鯵坂 孝二 中島 光好
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.389-405, 1995-03-01
被引用文献数
13 16

The efficacy and safety of Kampo preparation Sho-seiryu-to were studied in a joint double-blind trial in comparison with a placebo. The study was carried out on 220 patients with perennial nasal allergy at 61 hospitals. Granules in a dose of 3 g were administered 3 times daily for 2 weeks. Moderate to high improvement was recorded in 44.6% of the treated patients and in 18.1% of those receiving placebo. The difference is significant (p <0.001). Side effects were noted in 6.5% of the treated patients and in 6.4% of the controls (not a significant deference). The side effects were mild and had no influence on the daily life of the patients.
著者
河合 将志 尾城 孝一 朝岡 誠 西岡 千文 前田 隼 林 正治 山地 一禎
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.260-266, 2022-05-28 (Released:2022-07-01)
参考文献数
7

日本の機関リポジトリによるオープンアクセスを推進するため,図書館は研究者に対して論文の提供依頼をおこなってきたが,そのメリットは不明確であり,提供依頼の成功率は低迷している.こうした現状を踏まえ,本研究では被引用数に着目することにより,日本の機関リポジトリによるオープンアクセスのメリットの存否について検証した.日本の機関リポジトリによるオープンアクセス論文の数は限られるものの,その被引用数と様々なタイプのオープンアクセス論文の被引用数の比較からは,日本の機関リポジトリによるオープンアクセスのメリットは確認できなかった.
著者
西岡 圭子 新井 孝昭
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、「音声言語」対「手話言語」の二項対立図式を越えて進む試みである。伝統的な言語学を方法論とする「手話言語学」は、「手話言語には文字がない」と判断した。しかし、デリダとメルロ=ポンティの思索によれば、空間的であるだけでなく時間的に、間-身体的な表現である手話こそ、原エクリチュールとしてのパロールに他ならない。成人ろう者によるろう児の教育は、文字のある言語の世界に人間のおとなが子どもを導いていく原型である。この視座からの現象学的記述を通して、成人ろう者がろう児に必要不可欠な文化的環境であることの自明性を論じた。
著者
大谷 尚之 井上 一郎 河越 卓司 嶋谷 祐二 三浦 史晴 西岡 健司 中間 泰晴
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.149-156, 2013-03-15 (Released:2013-05-29)
参考文献数
12

【背景と目的】急性大動脈解離は画像診断法や外科的治療法が発達した現在においても死亡率が高く,いかに早期に診断し治療介入ができるかがその転帰を左右する。診断確定には造影CTが有用であるが,単純CTでも内膜石灰化の内方偏位,血腫により満たされた偽腔が大動脈壁に沿って三日月上の高吸収域として認められる所見(crescentic high-attenuation hematoma)など特徴的な画像所見を呈することが知られている。しかし,その出現頻度,単純CTでの診断精度については言及されておらず,単純CTから解離の診断が可能か検討した。【方法】2008年1月から2009年12月までの2年間,当院で急性大動脈解離と診断された54例のうち造影CTが撮影されていない2例,来院時心肺停止5例,他院で解離と診断され当院に転院となった3例を除く44例において来院時に撮影した単純CTを後ろ向きに検討した。内膜石灰化の内方偏位,crescentic high-attenuation hematoma,visible flap,心膜腔内出血4所見のいずれかを単純CTで認める場合に診断可能と評価した。また非解離例37例と比較検討を行った。【結果】44例のうち内膜石灰化の内方偏位を29例(65.9%),crescentic high-attenuation hematomaを33例(75.0%)と非解離例と比較し有意差をもって多くの症例で認めた(p<0.01)。頻度は少ないため有意差はつかなかったがvisible flapは4例(9.1%),心膜腔内出血は5例(11.4%)で認め,44例中40例(90.9%)で単純CTでの大動脈解離診断が可能であった。【結語】単純CTは大動脈解離の診断に有用である。