著者
鈴木 卓治 五島敏芳
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.73, pp.39-40, 2008-07-18

本稿は,アーカイブズの専門家を招いて,アーカイブズとデジタル技術にまつわる最新の状況と課題について理解を深めることを目的とするアーカイブズ小特集 「アーカイブズとデジタル技術の未来を考える」 (全 2 回)における第 2 回パネル討論 「アーカイブズの概念とデジタルアーカイブ」 についての予稿である.アーカイブズの理論的な存在根拠である 「永久保存」 の概念を正しく理解し,アーカイブズとしてのデジタルアーカイブの確立のための必要要件を知ることが今回の目的である.This is a preliminary report of the 2nd panel discussion titled "How will digital archives develop in the future?" In this discussion, we try to study and understand the concept of permanent (archival) value of data on the archives. It is essential ability for future digital archivists to construct "true" digital archives.
著者
峯松 信明 櫻庭 京子 西村 多寿子 喬 宇 朝川 智 鈴木 雅之 齋藤 大輔
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.1, pp.12-26, 2011-01-01

近年の計算機性能の飛躍的な向上により,大規模語彙を対象とした音声認識は実用段階を迎えている.音声合成においても話者性や発話スタイルを制御できる合成方式など,種々の応用場面を念頭においた技術開発が行われている.その一方で,音声工学研究の目的を「人間に匹敵するような」音声言語情報処理能力の計算機実装と考えた場合,人間と機械との間には,今なお,大きな溝があることも指摘されている.本研究ではまず,現在の音声認識・音声合成相当の情報処理を行う人間が現に存在した場合,その人間の挙動は,音声言語の獲得に困難を示す重度自閉症者の挙動と類似するであろうことを指摘する.その上で,(定型発達を遂げた)人間らしい音声情報処理の実現に向けて,現在の音声技術に欠けている基礎技術は何であるのかを幅広い視点から考え,欠損技術の一つとして「音声に含まれる言語的情報を,非言語的情報から音響的に分離して抽出する技術」を主張する.と同時に,その実現に向けて一つの技術的提案を行い,いくつかの実験結果を述べる.
著者
坂野 昇平 平島 崇男 鳥海 光弘 鈴木 尭士 大貫 仁 原 郁夫
出版者
京都大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1986

昭和61年度は, 各自の野外調査と討論会を開いた. 討論会は11月22・23の両日, 京都府立セミナーハウスにて開催した. 参加者は総研メンバー・院生併せて38名に及び, 三波川帯に関する巾広い分野からの話題提供が行われた. 名発表に対して活発な議論が展開され, 大変レベルの高い討論会であった. 原岩年代論・変成相系列・変成年代については大方の意見の一致を見たが, 構造論と熱構造については意見の一致が得られなかった. 特に注目を集めた報告は, 板谷によるK-Ar年代測定であった. 彼は四国中央部汗見川で約70個の年代測定を行ない, 変成度や熱構造との関連を報告した. この研究により, 三波川帯は変成年代測定でも世界的レベルに達した. これ以外では, 横山による, 四国の第三条久万属群からの, 現在露出している三波川変成岩と同じか, それよりも高変成度の岩石由来の礫岩の発見, 高須・上阪による, 四国中央部五良津角内岩体からの異なる熱史を持ったエクロジャイトの発見も注目された. 討論会の発表内容は総研ニュースレターとして印刷し関係者に配布した.昭和62年度は討論会を開くにはやや予算が不足していたので, メンバー各自が野外調査を行うとともに, 自費研修として, 京都・舞鶴・徳島で開かれるオフィオライト野外討論会(昭和63年3月6-15日)に参加することとした. 総研報告書は, 昨年度の討論会の内容をもとに編集中である. また, 三波川変成帯の岩石学を中心とし, 世界各地の高圧変成帯の解説を加えた特集『高圧変成帯の岩石学』を月刊『地球』で発刊することにし, 現在原稿の編集中である. さらに, 三波川帯の原岩論・熱構造・時代論をJournal Metamorphic Geologyの特集号として出版する計画をたて, 編集部の内諾を得ている.
著者
鈴木 政弘
出版者
新潟大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究は,昨年度に引き続いた経年的な研究であるので,調査対象は昨年度と同じ対象で本学歯学部2年生40名とした。アンケートの結果では,19名(約48%)が関節雑音を自覚していた.聴診による客観的診査でも19名で一致していた.保有者の数は昨年と同じであったが,新たに保有者となったものが1名,消失した者が1名いた.関節雑音の性状については,昨年は分類できなかった微妙な性質の雑音に関してもドップラー聴診装置により記録することが可能となった。結果は,reciprocal clickが2名,eminence clickが12名,crepitusが2名,single clickが3名であった.昨年からの変化は,eminence clickからreciprocal clickに変化した者が1名,single clickが新たに発生した者,消失した者がそれぞれ1名ずついた.single clickは,reciprocal clickに移行することも消失することもあることがわかり,初期症状として重要であると考えられた.顎関節部の疼痛に関しては,single clickからreciprocal clickに変化した者1名に認めた.開口障害については,crepitusの2名に認めた.ただし,顕著な開口障害ではなかった.非接触型下顎任意点運動測定装置による下顎運動測定の結果は,臨床症状の変化のある者で下顎運動の変化が大きく,症状の変化のない者は下顎運動の変化も少なかった.single clickの顆頭運動はクリックに対応して小さい軌跡の変化が認められた.single clickからreciprocal clickに変化した者と消失した者との昨年の顆頭運動の違いは,閉口末期の顆頭の回転と移動との関係が前者でやや移動優位の程度が大きかった.single clickが消失した者の今年の顆頭運動は閉口末期の顆頭の移動が正常者の平均と比較してやや大きかった.eminence clickの顆頭運動は左右の協調性の悪いことが特徴であったが1年間の変化は小さかった.crepitusの顆頭運動も1年間の変化は小さかった.来年も経年的変化を分析し,特にsingle clickに着目して検討を行なう予定である.
著者
鈴木 和夫 福田 健二 井出 雄二 宝月 岱造 片桐 一正 佐々木 恵彦 斯波 義宏
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1989

1.材線虫病感染後の光合成・蒸散などのマツの生理的変化と萎凋・枯死機構との関連について検討を加えた結果、これらの生理的変化はキャビテーションが或る程度以上進行した後に、水ストレスの発現と同時に、あるいは、それ以降に生ずる現象であることが明らかにされた。2.材線虫の病原性と電解質の漏出現象との関連について細胞レベルで検討した結果、病原力の強弱に応じてマツ組織への影響が異なり、その強さに応じて電解質の異常な漏出が生じることが明らかにされた。3.材線虫病感染組織で産生されるセルラーゼについて検討した結果、このセルラーゼは真核生物起源であり、生きた細胞からの電解質の漏出を高めることが明らかにされた一方、抵抗性マツでは、この電解質の漏出は殆ど見られない。4.強・弱病原線虫を用いて、マツ組織細胞の応答について組織化学的に検討を加えた結果、DAPI染色によって組織細胞の生死の判定が容易となり、この方法を用いて病原性の差異を判別することが可能となった。5.誘導抵抗性の発現について検討した結果、誘導抵抗性はマツ樹体にストレスがかからない条件下、すなわち気象環境によるストレスと弱病原線虫によるストレスが、あるバランスを保った時にのみ誘導される現象であると考えられた。
著者
鈴木 郁美 原 一夫 新保 仁 松本 裕治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告情報学基礎(FI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.2, pp.65-70, 2009-01-15

コーパスから抽出した文脈情報により作成する専門用語グラフに対し,グラフを辿ることで節点間の類似度を計算する手法を適用し,類義語獲得に応用した.雑誌 「蛋白質・核酸・酵素」 をコーパスとして用いた実験で,コーパスでの出現頻度が少ない専門用語をクエリとして与えた場合,ラプラシアン拡散カーネル行列を用いた手法が比較的高い精度を示した.この結果は,専門性の高いレアな用語を既存のシソーラスに登録する場面において,ラプラシアン行列ベースの手法の有効性を示唆するものである.We apply graph-based methods to problems of biomedical synonym acquisition. Given a graph of biomedical terms constructed from a corpus, the methods calculate term similarities by traversing the graph to capture shared features between nodes. An experimental study shows that, for query terms appearing less than three times in the corpus, the Laplacian diffusion kernel gives better accuracy than the methods based on the adjacency matrix.
著者
鈴木 環
出版者
独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

本研究では、バルカン半島からトルコ、カフカス諸国にいたるまでの黒海周辺地域に残された、中世の東方キリスト教教会・修道院遺構を対象に、「建設技術の地域間交流の解明」、「ポスト社会主義時代の歴史遺産の保存と活用に向けた遺産の評価」という2つのテーマを並行して行う。前者は、ビザンツ文化圏の周縁世界として偏った建築史研究上の位置づけを「地域性」と「技術者交流」という観点から再考することを目的とする。後者は、社会主義時代における宗教遺産の興廃と劇的な周辺環境の変化を経て、今後保存と活用にむけた遺産の再評価を行うことを目的とする。本年度はルーマニア・文化省歴史遺産保存局(ブカレスト)、イオンミンク工科大学にて保存修復に関する資料収集を行い、スチャヴァ、イアシ、アルゲシュの周辺に残る中世教会・修道院遺産を対象にフィールドワークを行った。教会・修道院建設における技術者交流のなかで、ドーム架構にみられるカフカス建築の影響に着目し、その分類を行った。各部屋の用途、平面形式、および壁画のプログラムと用いられるドーム架構の形式との間に相互関連があることを確認し、カフカス建築からの影響とみられる「星型ドーム」の導入と発展過程を知ることができた。またイスラームの影響を受けた装飾の付加、および19世紀のフランス人修復家による増改築・保存修復に着目した事例研究を行った。修復記録、図面および古写真から修復前と現在の姿を対照し、修復の理念と技術に関する時代的特徴を把握した。創建当初の正教の遺産としての価値に対する、他宗教の様式との混在、近代のデザインの介入など、異なる遺産価値を併せ持つ遺産としての評価とが課題となる。
著者
鈴木 薫之
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

昨年度までの研究において,把持,切開,切離処理などの手術作業をリアルタイムに可能にする軟組織モデル,sphere-filled modelの開発を行った.また動物実験において,肝表面変位量とその変位量に応じた押付力の関係を得ることが可能になった.本年度では,このsphere-filled modelを用いて,実際の手術時の臓器に対する触感応答を得ながら作業を進めることをシミュレーション内で可能とするために,圧縮変形時の圧縮点表面変位量と圧力との関係を計測し,これをデータペース化してシミュレーションに反映させた.計測手法として,臓器の形状に応じ解剖学的に決定した点を中心に半径20mmの円形状に圧縮点5点を設定し,指先の太さを想定した直径10mmの円柱状のプローブ先端形状を持つ圧力測定装置を用いることにより,個体差が発生しないような工夫を行った.その結果,複数の実験結果を統合して得られた最大表面変位量は約30mm,最大圧力として約30gf/cm^2となった.また,臓器圧縮,圧縮解放時に応じたヒステリシス特性を有する表面変位量-圧力特性曲線を得,データベース化した.このようにして得られたデータベースの表面変位量を用いて,sphere-filled modelにおける充填球移動総和量をキャリブレーションすることにより,手術シミュレーションにおいて臓器に触れた際の感触を再現した.その結果,実際の臓器変形量に応じた定量的な反力応答能を有する軟組織モデルとなった.本モデルを用いることにより,実際の臓器特性を反映することができ,より実際に近い触感を伴った手術シミュレーションを行えるようになったと考える.
著者
鈴木 雄亮 金子 毅
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.99-105, 2009 (Released:2009-08-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

In this study, the stability of methamphetamine, bromovalerylurea, acetaminophen and salicylic acid in formalin solution was investigated during 90 days. The stability of these drugs was examined in 4 types of formalin solution (10% and 20% concentration pH adjusted formalin (pH7.4) and each concentration pH unadjusted formalin solution) and at 2 temperature conditions (room temperature and cold storage).   Methamphetamine was very stable at cold storage in each formalin solution. In contrast, more than 80% of methamphetamine was converted into its N-methyl derivative, dimethylamphetamine in pH adjusted formalin at room temperature at 90 days. Bromovalerylurea was stable only when in pH unadjusted formalin at cold storage. Under the other conditions, bromovalerylurea was decomposed and observed a compound assumed to be the bromovalerylurea-formaldehyde reaction product by LC/MS. The concentration of acetaminophen was decreased gradually under all conditions and a compound assumed to be the acetaminophen-formaldehyde reaction product was detected by LC/MS and GC/MS. When salicylic acid was stored under all conditions, concentrations of salicylic acid did not change.   Thus, it appears that the stability of drugs varies individually in the presence of formalin and under different conditions (formalin concentration, pH and storage temperature). So, forensic scientists must note when attempting to determine the drugs in the formalin-fixed biological specimens.
著者
鈴木 雅之 玉手 慎也 荒川 薫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SIS, スマートインフォメディアシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.461, pp.101-105, 2009-02-26
被引用文献数
1

近年,ヒトの感性を考慮した工学的システムの研究が注目されている.しかし,現在の感性工学における感性評価は,アンケートなどの個人による主観的評価に基づくものが主であり,これでは評価が曖昧なものとなってしまう.そこで,人間の生体信号などを用い,客観的な評価を行うことが要求される.本稿では,感性に関する客観的評価指標として脳波を用い,文章の黙読時における精神的負荷の評価を行った.解析はα波及びβ波の含有率と主成分分析に基づくものである.この結果,文を構成する文字の大きさと表示媒体により,黙読時の覚醒や精神的負荷には差異が生じることが明らかとなった.
著者
古野 毅 鈴木 徳行 渡辺 暉夫
出版者
島根大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

化石木の珪化過程と形成について組織構造的に研究を行い, 以下の研究成果を得た.1.珪化過程 有機物分析, SEM観察, EPMA分析, X線回析, 光学・偏光顕微鏡観察から化石木の珪化過程と形成を次のように考察できた.(1)細胞内膣中のシリカ鉱物の種類 まずオパールAが材木中に浸透して, オパールCTが沈澱する. その後地質条件により石英に移転する.(2)細胞壁へのシリカ鉱物の侵入と置換 シリカ鉱物の沈積は初めは細胞内膣のみであり, ある時期に壁にも侵入し, 壁物質として置換する. 最終的には壁物質のほとんど大部分がシリカと置換される.(3)細胞壁に残存する有機炭素 細胞壁の有機炭素の残存には有機物の保存性がよい場合と, 早い段階で壁のシリカ置換が進行し, 有機物が見られない場合がある. 前者でも時間の経過などにより次第に有機炭素は消失する.(4)細胞形態 壁のシリカ置換の進行, 有機炭素の減少とともに細胞の形態は徐々に失われていくが, 細胞の形状は痕跡として残る.(5)樹脂様物質の炭素残存 樹脂細胞・放射柔細胞に存在している樹脂様物質の炭素残存が非常によく, 炭素含有の高い物質として化石化している.2.珪化作用における樹脂様物質の役割 樹脂様物質かコハクと同様にC-C鎖式構造を基幹とした物質であり, 付随しているカルボキシル基とフェノール性OH基が周囲のpHを低下させ, 木材中に侵入したシリカ鉱物はその周辺で沈澱しやすくなり, 周囲の壁のシリカ置換を促進させる効果があることや, 豊富なアルキル構造の疎水性により保存性がよいことがわかった.3.珪化木の人工合成 ヒノキー珪酸溶液の反応系に数ヶ月浸漬すると, 仮道管や放射柔細胞の木材細胞中に長い角柱状あるいは円柱状のシリカ鉱物が形成された.
著者
岸野 俊彦 西田 真樹 鈴木 重喜 松田 憲治
出版者
名古屋芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、尾張藩研究の現状が、個別「分野史」に偏り、また「自治体史」により総合化の視点が分断された状況を克服し、個別分野史を総合的に捉えること、現代の自治体によって分断され見えにくくなっている尾張藩という個別藩を近世社会の実際の結び付きの中で、出来る限り総合的に復元するという最も原初的方法によって明らかにすることに力点を置いた。本研究上の意義は、方法論的にはこうした素朴な方法こそが、現在の個別藩研究の上では「新しい」方法であると提起するところにあり、「総合化」をキーワードに研究を統合するところにある。同時に大学等研究機関に所属せず、地域に密着して研究に従事する研究者を組織し、これまで蓄積された個々の知見を「総合化」のキーワードの下に研究内在的にも「総合化」し、新たな研究上の成果の構築に寄与する組織を恒常的に編成することである。上記二つの研究上の意義は支配構造に限らない尾張藩の地域社会や文化構造も視野に入れた新しいスタイルの個別藩研究の成果として『尾張藩社会の総合研究』(2001年3月20日刊、清文堂出版、総頁数600頁)として完結した。
著者
原田 和典 大宮 喜文 松山 賢 鈴木 圭一 土橋 常登 長岡 勉
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

建築物の性能的火災安全設計を行うためには、「設計火源(設計用入力火災)」を設定することから始まる。しかし、建築物内の可燃物の燃焼は、種々の要因により大きなばらつきがあって、告示式で与えられるように一義的なものではない。設計火源は、どのような可燃物を建築設計上考慮すべきか(用途区分別の特性的可燃物配置)という建築計画学としての整理を行った上で、特定された可燃物の燃焼性状を工学的にモデル化することが必要である。本研究においては、建築空間内に存在する可燃物の代表寸法と可燃物間の配置、壁面や柱等の建築要素との位置関係に注目して、建物用途、室用途の組み合わせ毎に、典型的な可燃物の配置パターンを作成すべきことを提案し、例題として事務所の廊下、教育施設の玄関ロビー、鉄道駅などの配置パターンを抽出してモデル化を行った。また、可燃物の燃焼性状に関しては、既往の文献資料を整理して、可燃物の一般的呼称毎に発熱速度曲線を集積して統計処理を行った結果、椅子、ソファ、クリスマスツリーなどの設計火源を提案した。これらを用いて、鉄道駅のプラットホーム構造物の耐火設計ケーススタディを行い、調査結果に基づき可燃物を想定し、燃焼性状の予測を行う標準的方法を提案すると同時に、現時点での知見で不足している点を指摘した。以上の成果は、(社)日本建築学会・防火委員会・火災安全設計小委員会の傘下に設置された「局所火災に対する耐火設計ワーキンググループ」との連携の下に行われ、シンポジウムを開催して成果を公表するとともに、建築設計者の意見を収集した。
著者
鈴木 信治
出版者
日本腰痛学会
雑誌
日本腰痛学会雑誌 (ISSN:13459074)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.59-63, 2005 (Released:2007-12-14)
参考文献数
9
著者
和崎 春日 松田 素二 鈴木 裕之 佐々木 重洋 田渕 六郎 松本 尚之 上田 冨士子 三島 禎子 若林 チヒロ 田中 重好 嶋田 義仁
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

科研共同研究の最終年度にあたり、報告書に向けての総括的なまとめ討論をおこなった。とくに、日本における第1位人口をしめるナイジェリア人と第2位人口のガーナ人の生活動態については、この分野の熟成した研究を共同討論のなかから育てることができた。日本への来住ガーナ人のアフリカ-日本-アフリカという、今まであまり報告されていない新しい移民動態の理論化(若林ちひろ)や、日本に来住したナイジェリア人の大企業従業員になろうとするのではない、起業活動に向かう個人的・野心的なアントルプルヌーシップについての新規な理論化(川田薫)と、まったく情報のなかった、その日本における協力扶助と文化維持のアソシエーション活動の詳細な記述報告(松本尚之)、さらには、アフリカ-日本-アメリカという地球規模のネットワーク形成がナイジェリア人によってなされている動態を、アフリカ移民論のまったく新しい指摘として提示しえた。また、アフリカ人の芸能活動についても、ギニア、マリ、セネガルといった西アフリカ・グリオ音楽文化の「本場」とされる地域からの日本への来住アフリカ人の活動調査と、そのアフリカの母村での活動状況の調査の両方を行い、それをめぐる、やはり新規性に富む、日本ーアフリカ間の何層からもなる往来活動を抽出し、指摘・一般化することができた(鈴木裕之、菅野淑)。こうしたポジティブな活動側面のほかに、ネガティブなHIVをはじめとする病気の実情とそれにむけるホスト社会側からの協力の可能性についても重要な研究糸口を提案している(若林ちひろ)。1年後に『来住アフリカ人の相互扶助と日本人との共生に関する都市人類学的研究』と題して報告書を出版し、この共同研究の成果と今後の継続的発展について、アフリカ学会における集中発表でも熱い期待と高い評価を得た(2008年5月於・龍谷大学)。