著者
中野 賢
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

分子通信とは、化学信号や化学反応を利用したバイオナノマシンのための通信方式であり、近年、情報通信分野において、新しい通信技術として注目を集めている。本研究では、様々な分子通信方式の設計や性能評価、および、応用設計や概念実証を行い、分子通信を通信の技術として確立することを目標としている。また、IEEEのワーキンググループと協力をして、分子通信方式の国際標準を策定することも目指している。この目標にむけて、初年度となる平成29年度には、以下の研究を実施した。・分子通信の医療応用の検討:細胞等で実装するバイオナノマシンが分子通信を介して協調的に動作し、標的となる腫瘍細胞の検出や治療を行う協調型ドラッグデリバリ方式について検討した。このような協調型ドラッグデリバリ方式の数理モデルを構築し、数値シミュレーションによって、提案方式の性能を調査した。また、概念実証のための実験系の設計、顕微鏡観察のための実験環境の構築、生細胞を利用した予備的な実験を行った。・分子通信方式の設計と評価:分子信号の時間変化(波形)を利用して情報を伝播する、新しい分子通信方式を提案した。従来の通信方式のように搬送波の振幅や周波数を利用して情報を伝播するが、化学反応の結果に生じる複雑な形状の信号波形を利用することで、一つの波形に複数の振幅や周波数を載せて情報を伝播できる通信方式を考えた。また、分子信号が伝播する方向を制御するためのチャネルスイッチの設計や計算機シミュレーションによる性能評価も行った。
著者
周藤 芳幸 金山 弥平 長田 年弘 師尾 晶子 高橋 亮介 田澤 恵子 佐藤 昇 大林 京子 田中 創 藤井 崇 安川 晴基 芳賀 京子 中野 智章
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

当該年度は、前プロジェクト「古代地中海世界における知の伝達の諸形態」の最終年度に当たっており、そこで既に策定されていた研究計画を着実に進めるとともに、現プロジェクト「古代地中海世界における知の動態と文化的記憶」の本格的な展開に向けて新たな模索を行った。具体的には、図像による知の伝達の諸相を明らかにするために、図像班を中心に研究会「死者を記念する―古代ギリシアの葬礼制度と美術に関する研究」を開催し、陶器画による情報の伝達について多方面からの共同研究を行った。また、9月3日から7日にかけて、国外の大学や研究機関から古代地中海文化研究の最先端で活躍している13名の研究者を招聘し、そこに本共同研究のメンバーのほぼ全員が参加する形で、第4回日欧古代地中海世界コロキアム「古代地中海世界における知の伝達と組織化」を名古屋大学で開催した。このコロキアムでは、古代ギリシアの歴史家の情報源、情報を記録する数字の表記法、文字の使用と記憶との関係、会計記録の宗教上の意義、法知識や公会議記録の伝承のメカニズム、異文化間の知識の伝達を通じた集団アイデンティティの形成、神殿などのモニュメントを通じた植民市と母市との間の伝達など、古代地中海世界で観察される知の動態をめぐる様々な問題が議論されたが、そこからは、新プロジェクトの課題に関して豊富なアイディアと示唆を得ることができた。これについては、その成果の出版計画の中でさらに検討を重ね、今後の研究の展開にあたって参考にする予定である。これに加えて、当該年度には、知の伝承に関する基礎データを獲得するためにエジプトでフィールドワークを行ったほか、9月にはダラム大学名誉教授のピーター・ローズ博士、年度末にはオックスフォード大学のニコラス・パーセル教授の講演会を企画・開催するなど、国際的なネットワークの強化にも努めた。
著者
石井 直方 中里 浩一 佐々木 一茂 小笠原 理紀 田村 優樹 越智 英輔
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

加齢性筋減弱症 (サルコペニア)に伴う速筋線維特異的萎縮と線維数減少、結合組織増生などの質的変化の機序はいまだ不明である。本研究では、サルコペニア動物モデル、およびヒトを対象とし、筋線維タイプ、ミトコンドリア、筋サテライト細胞、運動神経、結合組織における質的変化とその要因に関する知見を得るとともに、それらに対するレジスタンス運動の効果を検証する。
著者
武部 啓 五十棲 泰人 巽 純子 宮越 順二 八木 孝司
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

高圧送電線から放出される電磁場が白血病、脳腫瘍などを誘発するおそれがある、との疫学研究(アメリカ、スウェーデン)を実験的に支持することができるか、を明らかにするのが本研究の目的である。最大出力400ミリテスラ(4000ガウス)、50ミリテスラ(500ガウス)、5ミリテスラ(50ガウス)の3装置を作成し、哺乳動物(ヒト、ハムスター)細胞を用いて、(1)突然変異の誘発、(2)遺伝子発現の促進について調べた。すでに前年度までに、両者とも400ミリテスラでは確実に上昇がみられることを確認しているが、本年度は低出力、長時間ばく露の影響を明らかにすることに重点をおいた。もっとも感度が高いチャイニーズハムスター細胞を5ミリテスラ照射で最大13週間連続ばく露したが、突然変異の上昇はみられなかった。遺伝子発現の上昇はこれまで電磁場単独ではみとめられていなかったが、チャイニーズハムスター細胞では400ミリテスラでNOR-1遺伝子の発現が促進された。その発現は処理時間が5時間のところで高くなり、その後処理を続けると低下した。突然変異の型については、自然に生じる突然変異のDNA塩基配列の変化と電磁場(400ミリテスラ)誘発による突然変異とでは著しく異なっており、電磁場特有の変化がみられた。遺伝子損傷は、DNAへの直接の作用ではなく、DNA複製のエラーを高める間接的な効果であることが、DNA合成阻害実験からわかった。本研究によって、きわめて高密度の電磁場は、遺伝子に損傷を与えることが示されたが、低密度・長時間(マイクロテスラ)では人体に有害であるという証拠はない、とのこれまでの定説を支持する結果である。
著者
大島 堅一 上園 昌武 木村 啓二 歌川 学 稲田 義久 林 大祐 竹濱 朝美 安田 陽 高村 ゆかり 金森 絵里 高橋 洋
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

1.システム改革と市場設計に関する研究:電力システム改革の背景にあるエネルギー転換や世界的なエネルギー政策の構造改革について調査し、日本の状況との比較検討を行った。また、エネルギー転換の一環として世界的に盛り上がる国際連系線について、電力システム改革の観点から研究した。2.地域分散型エネルギーの普及、省エネルギーの促進政策研究:地域分散型エネルギーの普及については、特に欧州の国際連系線の潮流分析や市場取引状況について定量的評価を行なった。また国内の系統連系問題に関して主に不適切なリスク転嫁の観点から、参入障壁について分析を行った。 省エネルギーの促進政策の研究については、対策技術種類と可能性、対策の地域経済効果、技術普及の際の専門的知見活用法について検討した。3.新しいビジネスと電力会社の経営への影響に関する研究:電力の小売全面自由化の影響にいて整理・分析し、その研究成果の一部を「会計面からみた小売電気事業者の動向」として学会報告した。加えて2020年4月からの発送電分離と小売部門における規制料金の撤廃の電力会社の経営面に与える影響について制度面ならびに国際比較の観点から分析を行った。4.エネルギーコストに関する研究:昨年度の研究成果を踏まえて、風力発電事業者複数社等への追加ヒアリング調査を行い、疑問点の解決を図った。加えて、原子力のコストについて、現時点での新たな知見に基づく再計算と、電力システム改革下における原子力支援策についての分析を行った。5.経済的インパクトに関する研究: 2005年版福島県産業連関表を拡張し、再生可能エネルギー発電部門を明示化する作業を行い、拡張産業連関表の「雛形」を完成させた。これを福島県の実情を反映したものにするための準備作業として、風力、太陽光、小水力、バイオマス、地熱の業界団体・専門家に対してヒアリングを行った。
著者
村上 勝三 宮崎 隆 小泉 義之 香川 知晶 西村 哲一 安藤 正人 佐々木 周 持田 辰郎
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は、デカルト研究の世界的な仕事の一部を担い、その新しい質を提示するとともに、すべての哲学研究に新たな基礎を提供すべく、『省察』の「反論と答弁」について共同研究を行うことであった。このことを遂行するために、平成7年度から9年度までの三年間の研究の総纏めとして、今年度は、すべての個別研究を完成させるとともに、研究成果報告書を作成した。その概要は以下の通りである。1.「第一反論・答弁」および「第二反論・答弁」の校訂版を作成した。1641年の初版、AT版との異同を明らかにしながら1642年第二版を再現したものであり、世界的に見ても始めての試みである。これらは、TOKORO Takefumi, Les textes des 《Meditationes》, Chuo University Press, 1994に準拠している。2.『省察』「反論・答弁」をめぐる諸問題のテクスト的典拠を挙げ、諸家の伝統になっている、あるいはなりつつある解釈について論じる問題論的研究を完成させた。その目次的概要は次の通りである。(1)「順序・論証方式・叙述様式」(2)「デカルトの懐疑について」(3)「『省察』「反論・答弁」と「永遠真理創造」説」(4)「『省察』「反論と答弁」における「意志」を巡る議論」(5)「神に至るもう一つの道」(6)「デカルトにおける神学と哲学」(7)「反論と答弁」における「観念」について3.「第七反論・答弁」の翻訳を完成させた。これは本邦初訳である。夏の合宿への他領域の研究者、若手研究者の参加は、本研究の成果のいっそうの充実に寄与するところ大であった。
著者
大沢 真理
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は日本に視座を置き、ドイツとの対比に焦点を当てて、危機・災害とレジリエンスの比較ジェンダー分析をおこなうものである。生活保障システムにおいて類似点が多い日独両国が、金融経済危機を契機に、異なる軌道をたどるようになったという仮説を設けており、社会的投資戦略を軸とすることによって、両国の分岐を定量的に明らかにすることができた。そうした成果を、国際学会での招待報告や国際会議での基調講演、日本学術会議第177回総会特別講演等を通じて発信し、有益なコメントを得て研究を深めた。国際学会・会議での報告は、①韓日経済政策研究フォーラムにおける招待報告「“誰もが活躍する”ための課題」(9月);②世界社会科学フォーラムのパラレル分科会CS7-01 における“Poverty Reduction is a Vital Way of ‘Investment in Society’”(9月);③ドイツ日本研究所ワークショップにおける招待報告“Issues for ‘Society5.0’, Poverty Reduction is a Vital Way of ‘Investment in Society’”;④千葉大学「未来型公正社会研究」第5回国際シンポジウム「グローバルな福祉社会の構想力―東アジアの介護・ジェンダー・移民―」における基調講演「社会政策の逆機能とジェンダー:少子高齢化は「国難」か」(12月)など。本研究ではまた、2018年2月に都道府県・市区町村を対象として「2017年度女性・地域住民から見た防災・災害リスク削減策に関するアンケート調査」を実施した。2018年度はその結果の分析を進め、2019年2月1日に第30回東京大学社会科学研究所シンポジウムとして結果等の報告を行った。同シンポの要旨とアンケート調査結果を編集し、社会科学研究所研究シリーズ66号として刊行した。
著者
小松 和彦 板橋 作美 常光 徹 小馬 徹 徳田 和夫 關 一敏 内田 忠賢 高田 衛
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

三年計画の研究は以下の四つのテーマに従って展開され、成果がまとめられた。(1)怪談・妖怪関係資料の収集及び民俗調査:全国各地(青森・東京・福島・千葉・石川・富山・新潟・愛知・京都・香川・愛媛・高知・福岡・長崎・沖縄等)でおこない、報告書(冊子体)に各分担者が三年間の調査・研究をまとめた。(2)怪異伝承データベース構築のための事例収業とカード化:民俗学関係雑誌さらには近世の随筆から妖怪・怪異関連の記事を抜き出し、情報カードの作成を行なった。作成した情報カードの件数は13,364件にのぼり、それらの書誌情報のコンピュータ入力を終了した。一般公開をみこした怪異伝承データベースの利用方法についての議論は今後の課題であるが、民俗学における妖怪・怪異研究の動向把握など現時点でも幅広い活用が期待できる。(3)怪異・妖怪研究の研究動向調査:網羅的な文献リストを作成した。また追加で妖怪・怪異研究に従事している外国人研究者のリストを調査可能な限りにおいて作成した。今回の調査で、日本の妖怪・怪異は近年関心を集め続けてきたことがわかった。.今後予定しているインターネットを通じた怪異伝承データベースの公開は国際的に価値の高い情報発信となることが予想される。(4)一般公開:本研究の成果の一部は、国立歴史民俗博物館の企画展「異界万華鏡」に生かされた。またSCS討論会「異界ルネッサンス」を催した。これは国際日本文化研究センターと国立歴史民俗博物館の間で衛星中継による公開テレビ討諭会である。いずれも一般入場者からの高い関心を得た。
著者
角田 篤泰 松浦 好治 外山 勝彦 小川 泰弘
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

e-Legislation(電子立法)の方法論の研究とこれに基づく支援システムの提供を行った。その結果として、条例・規則(=例規)のデータベース・システムを開発・提供し、全国の約半数の自治体で利用されるようになった。これによって自治体の立法作業に役立つことができた。このデータベースは我が国で初めての大規模な例規データベースであり、実際にその統計情報なども発表して、例規を定量分析できる学問的基盤を与えることにもなった。このシステムにはスーパーコンピュータを利用した例規分類機能や立法作業の支援機能も装備されている。さらに、この研究過程で法政策の形式的記述方法や定義条項の執筆方法論も提案した。
著者
山本 健二 浅尾 哲次 赤峰 昭文 中西 博 TETSUJI Asao 浅尾 哲治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

歯周病の主要な病原性細菌Porphyromonas gingivalis(以後ジンジバリス菌)は自身の生存戦略に必須の物質として2つの主要なシステインプロテアーゼArg-gingipain(Rgp)とLys-gingipain(Kgp)を産生している。両酵素は細胞内外に存在し多様な機能を果たしている。細胞外にあっては、両酵素は歯周組織を直接したり、宿主の生体防御機構を破壊したりして歯周病原性を発現する一方、菌体にあっては自身の成長・増殖に必須のヘムやアミノ酸の獲得や菌体表層蛋白質の具プロセシング、血球凝集素活性やヘモグロビン結合活性などに強く貢献していることが明らかにされた。本研究の目的は、両酵素のこうした多様な機能の詳細な機能の解明を通じて、これらを薬物標的とした創薬研究を推進することにあった。とくに本研究では、Rgpに対する特異的な天然ならびに人工の阻害剤が探索され、それらの有効性を検定するとともに歯周病治療薬として実用化していくための具体的な方法論が検討された。天然の阻害物質としては、土壌の放線菌FA-70株の培養物中に本酵素活性を阻害する物質(FA-70C1と命名)を同定・単離し、構造を決定した。本物質は構造式C_<27>H_<43>N_9O_7で表され、分子量606の新規物質であった。またヒト唾液中にRgpを阻害する物質としてヒスタチンが同定された。ヒスタチンを含む宿主蛋白質のRgpによるペプチド結合の切断特異性に基づいて10種類以上のオリゴペプチドが合成され、その中から、Rgpを強く阻害するトリペプチド化合物(KYT-1と命名)を見出した。FA-70C1およびKYT-1はともにRgp活性を10^<-8>Mで80%以上阻害するのに対し、宿主のシステインプロテアーゼのカテプシンB、L、K、Sは同じ濃度で50%以下の阻害しか示さなかった。また、両阻害剤はRgpがもつコラーゲン分解能や免疫グロブリン分解能を強く阻害した。
著者
南 武志 武内 章記 高橋 和也 今津 節生 徳田 誠志 寺沢 薫 河野 一隆 島崎 英彦 豊 遙秋 河野 摩耶
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

弥生時代後半から古墳時代に重点を置き、墳墓より出土した朱の産地推定を硫黄・鉛・水銀同位体分析から行った。その結果、北部九州では古墳時代に入っても中国産朱と思われる朱が一部の墳墓に用いられていたが、それ以外の地域では古墳時代に入る前から国内産の朱が墳墓に使用されていた可能性が高く、古墳時代前期には東北地方まで畿内産の朱がもたらされたと考えられる。以上より、朱の同位体分析により古墳時代黎明期の権力推移が考察され、考古学分野に一石を投じることができたと考える。
著者
高橋 一男 堀田 泰司 芦沢 真五 北村 友人 黒田 一雄 廣里 恭史 小幡 浩司 新田 功 太田 浩 関山 健 花田 真吾 小早川 裕子 田中 祐輔
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成29年度の研究はNAFSA年次大会(アメリカ)、EAIE年次大会(スペイン)、第6回APEC高等教育協力会議(ロシア)、AIEC年次大会(オーストラリア)、CBIE(カナダ)、APAIE(シンガポール)などに出席し、UMAPを中心としたアジア太平洋地域における学生交流に関する発表を行うとともに、国際会議・大会に出席している政府関係者及び、大学関係者に対するヒアリングを行い、国の政策と大学の国際戦略の関係について分析を行った。その中でも、特に英語圏であるカナダとアメリカが、UMAPへの参加を表明するなど、学生交流に関する新たな関心と問題意識が生まれていることが確認できた。8月18、19日にはUMAP国際事務局を担当する東洋大学、留学生教育学会と連携し、カナダ、アメリカ、オーストラリアから学生交流に関する専門家を招聘し、国際フォーラムとワークショップを開催した。アジア太平洋諸国の大学がどのような大学間連携を模索しているか、というニーズ調査を推進するための意見交換をおこなった。また、オーストラリア、カナダ、米国など発足当初のUMAPには参加していた英語圏諸国から関係機関の代表に参加を得て、今後、これらの国からUMAPへの参加を得ていくための課題検証について意見交換をおこなった。本フォーラムとワークショップには国内外の大学教員、大学職員、政府関係者等の150人を超える参加を得られた。2月15日、19日、3月26日にUMAPタスクフォース会議を開催し、本科研メンバーと各国国内委員会の代表が意見交換を行った。その中で、UMAPに実際に係る専門家に対し行ったSWOT分析や、日本国内のUMAP参加大学、非参加大学に対するUMAPに関するアンケート調査の分析を行い、今後のUMAPプログラムの発展に寄与するいくつかのアクションプランが提言された。
著者
渡邊 明義 津田 徹英 早川 泰弘 三浦 定俊 淺湫 毅 中村 康 佐野 千絵 斎藤 英俊
出版者
独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

彩色文化財の技法と材料について、日本とドイツの美術史研究者、伝統技術者、自然科学者が共同して研究調査を行った。研究期間中は互いの研究者が双方の国を毎年一回ずつ訪問し、あらかじめ選定しておいた現地で詳細な調査を行い、シンポジウムを開催し討議を行うなどして研究をすすめた。研究対象は、ドイツ側では主に南ドイツ(バイエルン地方)の中世彩色木造彫刻を取り上げたが、日本側では彫刻に限らず、絵画、工芸、建造物など広く関心を持って調査を行った。また彩色文化財そのものだけでなく、彩色に用いる顔料の製造工場や、金箔工房など、また各地の修復工房や作業現場でも調査研究を行い、彩色材料やその技法、修復技術への応用などについても相互の理解を深めるようにした。顔料分析については、ドイツにおいてはサンプリングによる試料の分析を積極的に行ったが、わが国の文化財については試料採取が困難なために、現場で試料を採取しないでそのまま顔料分析できるポータブル蛍光X線装置を開発した。この手法は対象作品表面からの測定になるため、彩色層に顔料を混合して用いているのか複数の顔料層か分析結果からだけでは判別できないが、実体顕微鏡を用いた観察と組み合わせることによって、確度の高い情報を得ることができた。本研究を通して、報告書に示すように多くの研究成果をあげることができた。一例としては、源氏物語絵巻物の顔料分析を初めて行い、白色顔料に従来想定されていた鉛を含む白色顔料(おそらく鉛白)だけでなく、カルシウムを含むもの(おそらく胡粉)、軽元素しか含まないもの(おそらく白土)、それにこれまで知られていなかった水銀を含む顔料の4種類を用いていることや、日本の彫刻彩色に緑色顔料として岩緑青以外に、砒素と銅を含むものや軽元素だけの顔料を用いていることを、初めて明らかにしたなどをあげることができる。
著者
岩坂 泰信 張 代洲 小林 史尚 牧 輝弥 柿川 真紀子 洪 天祥
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

タクラマカン砂漠での気球観測では上空に浮遊する黄砂の約10%が微生物と合体していた。黄砂が偏西風帯にまで舞い上がった時点ですでに微生物を付着させている可能性が高い。能登半島での観測は、黄砂濃度上昇時に微生物濃度が上昇し「黄砂とともに大気圏を移動している」ことを強く示唆した。立山山頂付近の積雪の黄砂層の微生物多様性はタクラマカン砂漠のものと高い類似性があり、砂塵発生源地からの長距離移動・拡散を示唆した。
著者
近藤 成一 海老澤 衷 稲葉 伸道 本多 博之 柳原 敏昭 高橋 敏子 遠藤 基郎 渡邉 正男 神野 潔 野村 朋弘 金子 拓 西田 友広 遠藤 珠紀 山田 太造 岡本 隆明
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

未刊古文書釈文作成のための協調作業環境を構築することにより、未刊古文書の釈文を歴史学のコミュニティにおいて協同で行うことを提起し、史料編纂のあり方について新たな可能性を模索するとともに、歴史学のコミュニティの実体形成にも寄与する基礎とした。釈文作成のために外部から自由な書き込みを許す部分と、作成された成果を史料編纂所の管理のもとに公開する部分を構築し、前者から後者にデータを選択して移行するシステムを設けた。
著者
小屋口 剛博 眞木 雅之 鈴木 雄治郎 小園 誠史 萬年 一剛 前坂 剛
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

爆発的火山噴火に伴う火山灰拡散過程は,航空機航行障害の原因となるため,その高精度観測と予測が急がれる. 本研究では,申請者らが開発した3次元噴煙モデルとレーダ観測技術を応用し,「供給源の物理過程を考慮した火山灰移流拡散モデル」を開発した.具体的には,3次元噴煙ダイナミクス・火山灰輸送カップリングモデルの開発,火山灰移流拡散モデルに基づく逆解析手法の開発,レーダ観測による空中火山灰粒子分布の推定法の開発を行った.また,これらのモデルや解析手法を,霧島2011年噴火や最近の桜島の火山爆発などに伴う噴煙に適用した.
著者
佐伯 仁志 大澤 裕 橋爪 隆 樋口 亮介 宇賀 克也 森田 宏樹 神作 裕之 白石 忠志 山本 隆司
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本件研究は、経済活動における違法行為に対する制裁手段の在り方について、刑事制裁と非刑事法的な規制手段とを比較しつつ、多角的な検討を加えるものである。具体的な研究成果としては、①刑事法上の過失概念と民事法上の過失概念の関係、②公務員の過失責任の限界、③銀行取引における違法行為の処理、④金融商品取引法における罰則の解釈、⑤独占禁止法におけるサンクションの在り方などの問題について、検討を加えることができた。
著者
木内 貴弘 大津 洋 石川 ひろの 岡田 昌史 辰巳 治之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

クリニックなど小規模医療機関等、治験や臨床試験に参加したいがシステム負担が大きく参加協力が難しかった施設においても本研究成果を利活用することにより従来に比較し容易に治験や臨床研究に参加できる環境を提供できる道が開けた。これにより疾患に依存して、その当該疾患の研究に、より適している施設に試験参加協力の上、臨床研究を効率的に推進可能な対象施設範囲が広がった。UMINセンターが持つ全国集計サーバーへ匿名化した臨床試験情報を安全かつ効率的に収集できる対象がこれまでの大規模病院のみならずクリニック等小規模医療機関まで広がった。
著者
磯谷 順一 谷井 孝至 小野田 忍 寺地 徳之 川原田 洋 角谷 均 Fedor Jelezko
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

室温量子スピンとして優れたNVセンダ同士の相互作用に着目した。量子レジスタの多量子ビット化をめざして、短い距離(~13 nm)のNVセンダ配列を規則的なナノホール配列をもつマスク注入により作製する技術を開発した。平均距離~5nmの高濃度NVセンタを作製し、離散的時間結晶の生成を室温で実証した。単一NVセンタにもナノホール注入を応用し、量子センサー・アレイを作製した。量子アルゴリズムを高磁場測定と組み合わせたナノNMRにおいて超微量の試料のケミカルシフトを観測する高分解能を達成した。高品質結晶合成により、結晶中の離れた位置のSiV-センタから識別できない単一光子を発生することに成功した。
著者
住吉 朋彦 堀川 貴司 河野 貴美子 小倉 慈司 陳 捷 金 文京 佐藤 道生 大木 康 高橋 智 山田 尚子 上原 究一 永冨 青地 會谷 佳光
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近世以前の日本における学術の基礎を提供した漢籍(中国の古典)について、宮内庁書陵部の蔵書を実地に調査し、伝存する原本の意義と、日本文化への貢献について考察するための基本情報を整理し、学術的検討を加えた。上記の研究に伴い、23名の研究者による、のべ759日間、626部7232点の原本調査を実施し、172部8705点について書誌データの定位を行う一方、229部9145点、279123齣に及ぶ全文のデジタル影像データを作成した。これらの研究成果を共有するため、最重要文献138部8054点を選び、書誌と全文影像のデータベースを統合する、デジタルアーカイブ「宮内庁書陵部収蔵漢籍集覧」をウェブに公開した。