著者
王 道洪 高木 伸之 渡邉 貞司
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

雷の前兆現象の解明を目的に2005年と2006年の夏季にそれぞれチベット雷について総合観測実験を行った。それらの観測データを解析して、以下の知見が得られた。1.チベット雷雲は夕方から深夜にかけて発生することが殆どである。雷活動は雷雲によって随分異なる。雷が多い雷雲では一分間20回以上の雷放電が観測されており、少ない雷雲では全放電数が数回程度にとどまる。2.2005年度観測できた雷雲の殆どは地上で主たる正極性電界を示したが、2006年度観測できた雷雲の殆どが地上で主たる負極性の電界を示した。前者の場合、雷の9割以上が雲放電であり、落雷の数が極めて少ない。後者の場合、普通の夏季雷雲と同じ、落雷が2〜3割合を示す。普通の雷雲の下部に正極性のポケットチャージがあり、これが落雷を誘発するとされている。正極性電界を示すチベット雷雲の場合、このポケットチャージはむしろ主電荷領域であり、その下に落雷を誘発する逆極性のマイナスポケットチャージがない。これは正極性電界を示すチベット雷雲において落雷があまり発生しない原因と推測している。3.雷の開始場所は明らかに高度が高い層と低い層に分かれており、それぞれの場合、その後の雷放電リーダが異なる特性を示す。雷の開始に関して、負極性リーダが見かけ上最初に伸びるとの説が主流になっているが、今回の研究では始めて正極性リーダのものと負極性リーダのものと両方が存在することを突き止めた。4.雷雲の発達段階によっては落雷の割合が随分異なり、落雷しやすい電荷構造が明らかに存在すると考えられる。
著者
廣瀬 昌博 花田 英輔 竹村 匡正 吉原 博幸 今中 雄一 岡本 和也 中林 愛恵 本田 順一 江上 廣一 津田 佳彦
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

各医療機関には膨大なインシデントレポートデータが蓄積されているが、インシデントによって発生するあらたな医療費、とくにその多くを占める転倒・転落事例とともに一般事例についても追加的医療費を算出するとともに疫学的側面を明らかにすることができた。また、機械学習法を繰り返すことで、インシデントレポートの自動分類や最適に分類される精緻化が可能であることが分かった。
著者
武田 雅哉 東田 雅博 立川 健治 杉本 淑彦 竹中 亨 斉藤 大紀
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究においては、画報や映画など、ビジュアルな資料を主たる研究対象としてとして検討を行なってきたが、ヨーロッパと中国および日本の、それぞれの資料に描かれた、それぞれにとっての「外国人」「外国文物」についての検証を、多角的に進めることができた。その過程で、当初の研究対象である「外国人イメージ」をさらに拡大させ、われわれの関心は、都市、政治、制度、物語、科学技術など、広く外国伝来のものに対するイメージを探る方向にも、展開していった。最終的な研究成果報告書においては、「日清・日露戦争時期におけるイギリスの画報に見るアジアイメージ」、「日本の馬匹改良に見る外国イメージ」、「エジプト遠征の記憶に見るアラブ・イスラームのイメージ」、「ドイツの画報に見るアジアイメージ」、「中国清末民初期の画報から文化大革命時期の刷り物に見る鉄道事故のイメージ」、「日本の流行歌に見いだされる上海のイメージ」、「近世ヨーロッパが見た日本の法制度」、「1930年代ハリウッド映画に見られる中国人イメージ」が、研究代表者・分担者および協力者による成果として文章化され、報告されている。3年にわたる研究会を通して、われわれは、互いに研究分野の異なる研究者が、ひとつの図像資料に目を向けて意見交換をしあうことの有効性を痛感した。それぞれが使用する言語の壁を越え、図像というオブジェの解読をめぐって知恵を出し合うという研究のスタイルは、今後の展開においても、そのまま継承されるであろう。今後はまた、英国と中国、日本と中国など、異なる地域において刊行された画報が、同一事件(戦争など)について、それぞれどのように報道されているかを、図像、テキストともに詳細に併読、検討することなども行なっていきたい。
著者
岡田 博美 六浦 光一 榎原 博之 大月 一弘 棟安 実治 和田 友孝 堀井 康史
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、主に車両間/モバイル端末間情報通信に特化した未来型ネットワーク構築技術として、基地局や情報センタなどの情報通信インフラを用いず、数Km程度のエリア内で移動中の車両やモバイル端末間で、アドホックな通信ネットワークを瞬時に構築し、リアルタイム交通情報やホットな地域情報、事故・災害情報などを、不特定なユーザ間で必要に応じて自由に交換する、新たなネットワーク機能の実現である。これは移動中の未知で不特定なユーザ間で情報交換し各種の周辺情報を即時に獲得しようとするものであり、以下の解決すべき技術的課題が挙げられる。A)高速移動する車両問で瞬時にネットワーク構築。B)エリアが不特定で時々刻々変化するため、ポータルサイトやWebサイトを利用不可。C)問い合わせる相手が不明。URLやアドレス・車両番号が未知。D)文書や音楽・映像などタイトル・キーワード類で識別される情報とは異なり、必要とする発生事故情報や車両情報などを明確に定義不可。本研究者らは、この課題の解決を目的としてコンテンツ指向型通信という斬新な情報通信方式を提案し、方式動作アルゴリズムの考案・開発を行った。具体的には、1)周辺を走行する車両間で即時に位置情報を交換し、車両問の衝突回避を行う、2)車両一歩行者間で同様の情報交換を実現し歩行者交通事故を劇的に減少、3)近辺の道路トラピックを各走行車両がリアルタイムでモニタし、相互に告知、4)突発的な地震・火災やテロ・銃乱射などが発生した場合、現場近辺に居合わせた人々の行動を情報通信でモニタし、その発生や避難・救助などを即時に表示、を可能とするシステム開発を行った。アルゴリズム開発の多くはコンピュータ上でのシミュレーションで検証したが、車両間通信ならびに車両一歩行者間通信については複数の実車両を用いて実装化し、実証実験により動作確認とその有効性の検証を行った。
著者
中田 高 渡辺 満久 鈴木 康弘 後藤 秀昭 徳山 英一 佐竹 健治 隈元 崇
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

近い将来M8クラスの巨大地震が発生すると予測される南海トラフ沿いの海域を対象に、高い分解能の立体視画像を用いて地形解析を行ない、地震発生源となる活断層の位置・形状、連続性を詳細に解明した。これをもとに活断層と歴史地震との対応関係を検討し、これまで連動型・非連動型として概念的に把握されていたプレート境界型巨大地震像に対して、発生場所や地震規模の予測精度向上に資する基本的な資料を整備した。
著者
石田 正昭 徳田 博美 波夛野 豪 石井 敦
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本とドイツの農村地域社会は大いに異なっている。ドイツには市民がいるが、日本には住民がいる。行政への依存においても態度の違いがある。われわれはこうした違いを日常生活の中から解明しようと試みる。調査結果によれば、日本よりもドイツにおいて、市民活動における3つの原則(自己統治の原則、補完性の原則、共同経済の原則)がより徹底していることが観察される。
著者
諸岡 晴美 北村 潔和 鳥海 清司 諸岡 英雄 眞鍋 郁代 中橋 美幸
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ストレス社会・高齢社会を迎え, 健康で快適な生活の遂行が希求され, "人にやさしい" 製品の開発が求められている. 本研究では, 脳波, 心電図, 筋電図, 連続血圧, 呼吸代謝, 体温, 皮膚性状, 発汗挙動などの生理生体情報を測定し, 繊維製品からの刺激と生体信号との対応関係を解析するとともに, 感性工学的手法を用いて, 諸機能(筋機能, 代謝機能, 体温調節機能, 皮膚組織の弾力など)の低下を伴う高齢者対応の繊維製品についての基礎的研究および具体的な設計指針の導出と製品開発を行った.
著者
鎌田 直人 安江 恒 角張 嘉孝 向井 讓 小谷 二郎 角張 嘉孝 向井 譲 小谷 二郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

ブナの結実に関係する要因として虫害としいなが重要である。しいなの原因として、近交弱 勢の影響が示唆されていたが、有効花粉親数(Nep) 値が低い母樹ほどしいなが多いという本研 究でも指示された。種子生産は年輪生長にはほとんど影響していなかった。しいなや虫害種子 の結実コストは、健全種子の約40%と推定された。しいなや虫害種子が多いと、結実コスト/ 開花コスト比が低くなり、開花数の年次変動が小さくなることによって、開花数の変動が小さ くなり、結果として虫害率が高くなるという悪循環に陥っている可能性が示唆された。
著者
小峯 和明 渡辺 憲司 米井 力也 増尾 伸一郎
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1国内のキリシタン文学関連の資料調査と収集立教大学海老沢文庫の前近代及び明治期のキリシタン文学関連資料の悉皆調査を行い、書誌データをまとめた。また、上智大学キリシタン文庫の前近代及び中国を中心とする東アジアのキリシタン文学関連の資料調査を行い、書誌データをまとめた。沖縄のキリシタン文学関係の調査及び踏査を行った。2海外のキリシタン文学関連の資料調査と収集パリ国立図書館の中国を主とするキリシタン文学関連の資料調査を行い、目録を整備し、書誌データをまとめ、伝本研究を行った。また、韓国教会史研究所、ソウル大学の朝鮮時代のキリシタン文学関連の資料調査を行い、伝本研究を行った。3海外における国際シンポジウムの開催アルザス日本学研究所で「キリシタン文学と日欧交流」のテーマで国際シンポジウムを行った。また、韓国外国語大学で「東アジアの日本文学研究」のテーマで国際シンポジウムを行った。以上、日本と西洋との一対一対応にとどまらない東アジアにまたがる多面的な次元でのキリシタン文学・文化の様相が解明できた。キリシタン文学を軸にひろく東西交流文学を対象とする新しい領域が開拓でき、海外の研究者との共同研究の体制も確立し、今後の研究推進のおおきな足がかりを得られた。
著者
河合 千恵子 佐々木 正宏
出版者
桜美林大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

「配偶者と死別した高齢者の長期縦断研究」の第4回目の調査を実施し、生存対象者のほとんどが悲嘆から回復していたことが確認された。9年間で初回調査時のおよそ30%が死亡しており、生命予後に関連する因子がコックス回帰分析により明らかにされた。配偶者との人生を語る介入プログラムが実施され、人間的成長を促進する効果が示された。このプログラムへの参加は配偶者との死別により変わってしまった世界の意味構造を再構成する機会となったかもしれない。
著者
鈴木 隆介 西田 治文 小口 千明 田中 幸哉
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

蛇紋岩で構成される山地(以下,蛇紋岩山地と略称)は,一般にそれに隣接する非蛇紋岩山地に比べて,(1)相対高度が高く,(2)谷密度が著しく低く,(3)尾根が丸く,山地斜面が緩傾斜であり,(4)浅い滑り面をもつ地すべりが多い,といった特異な削剥地形を示す.蛇紋岩山地の,そのような特異な削剥地形の成因を解明するために,以下の研究をした.北海道敏音知周辺,北上山地宮守地域,京都府大江山を中心に,自然露頭および大規模な砕石場において,現地岩石物性試験(弾性波速度,貫入硬度,シュミットロックハンマー反発度,浸透能,節理密度),室内での新鮮岩および風化物質の岩石物性試験(圧縮・圧裂引張・剪断強度,密度,間隙率,間隙径分布,P波・S波速度,定水位透水係数)ならびに鉱物分析を行った.蛇紋岩の節理密度は,深部では節理の多い部分と少ない部分が複雑に混在しているが,地表に近いほど節理密度が大きくなる.また,日本の主要な蛇紋岩山地についての地形計測によると,蛇紋岩山地の平均高度は蛇紋岩体の面積が約10km^2より大きい場合には周囲の非蛇紋岩山地より高いが,それより小さい場合には逆に低い,ことが判明した.このような蛇紋岩山地の削剥地形の特徴は,蛇紋岩の特異な岩石物性を反映した,次のような削剥過程に起因すると考えた.蛇紋岩の強大な残留応力が削剥に伴う除荷作用によって解放されるために,蛇紋岩が膨張して,引っ張り割れ目が増加して節理密度が増加し,蛇紋岩は葉片状さらに塊状に破砕する.そのため,葉片状,塊状,礫状の蛇紋岩は高透水性を示すので,地表水が浸透しやすくなり,谷は浅く,谷密度が低くなる.一方,風化すると,蛇紋岩は吸水膨張するので,表層部に浅い地すべりを発生しやすくなるので,斜面は緩傾斜になる.その削剥過程における雪達磨効果のために,大規模な蛇紋岩体ほど高い山地を形成している.
著者
鈴木 晃仁 脇村 孝平 飯島 渉 橋本 明 杉田 聡 渡部 幹夫 山下 麻衣 渡部 幹夫 山下 麻衣 猪飼 修平 永島 剛
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

19世紀後半から20世紀前半にかけての日本における「健康転換」を、当時の先進国と日本の植民地を含めた広域の文脈で検討した。制度・行政的な側面と、社会的な側面の双方を分析し、日本の健康転換が、前近代社会としては疾病構造の点では比較的恵まれている状況で、市場が優越し公共の医療が未発達である状況において、欧米の制度を調整しながら受容したものであったことを明らかにした。
著者
平川 幸子 中山 修一 相原 玲二 永田 成文 NU Nu Wai
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、テレビ会議システムを日本の高等学校に設置し、環境問題などの地球的な課題に関する問題解決型の教材を開発し、外国の高等学校との間で実際に教材を用いた実験を行って、その効果を実証することを目的に、平成16年度から18年度までの3年間で研究を行った。日本では広島県立安芸府中高等学校が実験に協力し、その姉妹校であるハワイのメリノール高校とオーストラリアのベド・ポールディング高校がカウンターパートとして参加した。教材の開発と実験は、平成17年9月に地球温暖化(3年生中心)、18年1月に平和(2年生中心)、平成18年9月に地球温暖化(3年生中心)をテーマに3回行った。最初の交流では、手作りのタイムマシンなどを使って映像的には盛り上がったが、生徒の思考力を高める問題解決型の交流を行うことはできなかった。また、第2回の平和に関する交流では、フロアの生徒への準備が不足していたため、具体的にイラクでの戦争などの話になると十分に理解することができなかった。生徒の「英語能力を高めなければ」「世界の情勢を知らなければ」という意欲を高めることに役立ったことがアンケート調査から実証されたが、問題解決型の学習教材としては不十分であった。この反省を踏まえ、第3回の教材開発では、温暖化防止のためのサマータイムの導入の是非を、コスト、リスク、対費用効果などの基本概念を踏まえて代表チームがディベートを行い、フロアの生徒やオーストラリアの生徒にどちらの意見に賛成するかの意見を表明させる形式を取った。また、日本側の生徒にも十分な準備を行い、基礎知識と英語能力を身に付けさせた。その結果、既にサマータイムを導入しているオーストラリアの状況を質問してその答を自分の意見の理由に取り入れたり、コストや対費用効果などの考えを加味したりして、生徒の視野が広がり、思考が深まったことが実証できた。
著者
細田 亜津子 左海 冬彦 左海 冬彦 細田 亜津子 高橋 彰夫
出版者
長崎国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

研究成果の概要(和文):「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の一つである五島列島は、美しい景観と文化的景観を有している。しかし島の過疎化と高齢化は進んでいる。今後世界遺産登録後に予想される交流人口の増加は、この問題の解決になる一方、保全については島の人たちが将来担っていく必要がある。そのため島の異分野の老若男女の人々が交流しネットワークを作ることができた。島の景観と世界遺産を保護しながら自分たちで島の将来と町づくりを担っていく基礎を、島と島の地域間、人と人が協力してつくることができた。
著者
班目 春樹 木村 浩 古田 一雄 田邉 朋行 長野 浩司 鈴木 達治郎 谷口 武俊 中村 進 高嶋 隆太 稲村 智昌 西脇 由弘
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

わが国における原子力開発利用の歴史はおよそ半世紀になる。この間、わが国における原子力規制はその規制構造を殆ど変えることなく今日にいたっている。このため、現在の原子力規制は合理性・実効性を欠き、信頼醸成を阻害する原子力システムをもたらしている。そこで、本研究では、原子力安全規制に関する知的インフラに関連する論点に焦点をあてて分析を実施し、原子力規制に関する適切なガバナンスを実現するためのフィールドの創出と論点の整理・政策提言を行った。
著者
大島 慶一郎 若土 正曉 江淵 直人 三寺 史夫 深町 康
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

海水・海氷・油の流動予測の基盤となる3次元海洋モデルを開発・高精度化した。最終的には、分解能1/12度で、日本海と太平洋の海水交換も含み、日々の風応力と月平均の海面熱フラックスによって駆動されるモデルを開発した。係留系及び海洋レーダーより取得した測流データとモデルとの比較・検討により、東樺太海流・宗谷暖流に関しては非常に再現性のよいモデルを開発することができた。このモデルに粒子追跡法を取り入れて、サハリン油田起源の海水の漂流拡散を調べた。水平拡散の効果は、Markov-chain modelを仮定したランダムウォークを用いて取り入れた。表面下15mでは粒子の漂流はほとんど海流(東樺太海流)で決まり、粒子は東樺太海流に乗って樺太東を南下しあまり拡散せずに北海道沖に達する。表層(0m)では、風による漂流効果も受けるので、サハリン沖の粒子の漂流は卓越風の風向に大きく依存する。沖向き成分の風が強い年は、表面の粒子は東樺太海流の主流からはずれ、北海道沖まで到達する粒子の割合は大きく減じる。アムール川起源の汚染物質の流動予測も同様に行い、東樺太海流による輸送効果の重要性が示された。2006年2・3月に起こった知床沿岸への油まみれ海鳥の漂着問題に、後方粒子追跡実験を適用し、死骸は11-12月のサハリン沿岸から流れてきた可能性が高いことを示した。潮流による拡散効果を正しく評価するために、主要4分潮のオホーツク海の3次元海洋潮流モデルを、観測との比較・検討に基づいて作成した。この潮汐モデルと上記の風成駆動モデルを組み合わせて粒子追跡実験を行うことで、より正確な流動予測モデルとなる。オホーツク海の海氷予測に関しては、その最大面積を予測するモデルを提出した。秋の北西部の気温とカムチャッカ沖の海面水温を用いることで、3ヶ月前の時点で、高い確度で最大海氷面積を予測できることを示した。
著者
本庄 比佐子 内山 雅生 久保 亨 曽田 三郎 奥村 哲 弁納 才一 三谷 孝
出版者
(財)東洋文庫
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

第1次大戦時、ドイツの膠州湾租借地を攻略した日本は、青島守備軍を編成して占領地統治を行い、青島及び山東鉄道を中心に諸権益の拡張を図った。そのために青島守備軍などが行った山東地域の実態調査を通して日本の山東経営を検討すること、及びそれらの調査資料を利用しつつ山東地域を中心に当時の中国の政治・経済・社会について総合的な考察を行うことを目的とした。外務省外交史料館・防衛省防衛研究所図書館・山口大学東亜経済研究所を中心に10ヶ所の諸機関で資料調査を行い、青島守備軍民政部鉄道部の『調査資料』シリーズや『山東鉄道調査報告』シリーズなどを含め、約160点の資料を明らかにすることができた。その結果を「青島守備軍編刊書・報告書目録 附・解題」にまとめ、『研究成果報告書』に収録した。これらの資料は、従来あまり利用されていないが、山東地域を勢力範囲として中国大陸進出を狙った日本の企図を具体的に分析するうえで重要な資料であり、また中国の地方志や経済史の資料としても役立つものである。日本軍の占領体制、ドイツの青島経営、山東鉄道をめぐる諸問題、山東省農民の移民、山東の農産物・工鉱業など、個別のテーマを設けて研究を進めた。その成果をまとめて、第3年度に論文集『日本の青島占領と山東の社会経済 1914-22年』を刊行した。同時に山東社会科学院・青島市社会科学院との学術交流を進め、論文集には山東の研究者からの寄稿も収めることができた。第4年度には、上記の論文集を基礎に、山東の研究者と国内の日本史研究者を招いて国際シンポジウムを開催した。そこでは、実証的な研究の領域において日中の中国史研究者間、また山東地域に関する研究で日本経済史研究者と中国近代史研究者の交流を図ることができた。以上を通して、従来研究の手薄であった日本の青島占領の諸相と、それが1930年代の華北進出に意味をもった点を明らかにすることができた。
著者
永田 茂
出版者
鹿島建設株式会社技術研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

近年発生した地震災害及び大規模事故発生時の重要ライフライン・インフラに関して復旧過程の相互依存関係の実態調査を行い、分析に必要なデータの収集・整理分析を行った。また、実態調査結果に基づいて、メッシュでモデル化した複数ライフラインに関して相互依存性を考慮した機能復旧過程の定量的かつ実務的な解析手法を構築するとともに、首都直下地震などを対象とした事例解析を通じて提案手法の有効性に関する検討を行った。
著者
八村 広三郎 赤間 亮 吉村 ミツ 遠藤 保子 小島 一成 崔 雄 丸茂 美恵子 中村 美奈子 阪田 真己子
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は,舞踊における身体動作の計測と保存のためのアーカイブ技術,およびそのデータに対する数量的解析を行うことを目的としている.ここでは,デジタル画像処理技術で身体動作を精密に計測できる光学式モーションキャプチャ・システムを利用して,舞踊の身体動作データを取得する.キャプチャして得た各種の舞踊動作データを保存し,これを各種の解析や情報処理において活用する。さらに,動作データは解析や処理の研究に使うだけでなく,CGなどでコンテンツとして作成し,教育や広報活動の素材としても利用する.また,新しい芸術表現の可能性を探るものとして,これらのCGによる舞踊動作の表示を,仮想現実感(バーチャルリアリティ:VR)の環境下で活用することも視野に入れて研究活動を行ってきた.解析の結果や,CG・VRでの表現は,舞踊研究者,舞踊家,芸能研究者など,いわゆる文系の研究分担者へフィードバックし,さらに高度で,よい解析結果や,新しい表現の創出を心がけてきた.このように,このプロジェクトの研究は,単に理が文を支えるということだけではなく,文一理の間で情報を巡回させることにより,より深い成果を得るという形を重視してきた.期間内に対象とした舞踊は,日本舞踊と能楽が中心であったが,そのほかにも,アフリカの民族舞踊なども扱った.また,舞踊の種類には限定されないが,一般的に,舞踊という身体表現,あるいは日常動作をも含む身体動作に共通の動作解析手法,たとえば動作のセグメンテーション,動作や動作者の識別,身体動作の類似検索などの手法についても研究を行った.舞踊動作の質を評価する試みとして,舞踊の中の特徴的動作の抽出やラバン動作解析の手法による,動作の評価を行った.さらに,筋電図などの生体情報とモーションキャプチャによる動作データとの同時計測を可能にし,これらに基づいて熟練者と初心者の違いについて明らかにした.
著者
渡邊 嘉二郎 吉永 洋一 正嶋 博
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

1.目的本研究は介護の現場で実用に供しえる無拘束健康モニタシステムの構築を基本目的とし、エアマットレス型センサセンサシステムを提案し、(1)フィールドテスト(試作回路の評価、モニタシステムのフィールドテスト、総合評価)、(2)任意のマットレスへの適用可能性の調査、(3)新たな可能性への展開について実施検討する。2.方法(1)フィールドテストの方法センサ信号処理のための回路をディスクリート部品で構築し、回路の最適運用条件を明らかにする。この回路のもとで、30夜(一晩の平均テスト時間は8時間)のフィールドテストを実施しモニタシステムを総合評価する。(2)任意のマットレスへの適用可能性の調査市販の汎用クッション、床ずれ防止用マットレス、病院用エアマットレス、試作の薄型マットレスなど8種類を越えるマットレスでの本方式の適応可能性を試験する。(3)新たな可能性への展開本在宅介護のための無拘束健康モニタシステムを用いて、睡眠段階の推定のための基本的なデータを収集する。具体的にはR-K法で得られるデータと本モニタシステムで得られるデータの関連をしらべる。3.結果(1)フィールドテスト結果30夜を越えるフィールド試験で本システム(センサ、信号処理回路、エアマットレス、コンピュータ)の物理的な耐久性、信頼性は十分に実用に耐えうる。残される問題はこれらの量産化の検討である。また、このシステムが心理的に受け入れられる条件を明らかにすることである。(2)任意のマットレスヘの適用可能性の調査結果本エアマットレス方式はマットレスの種類によらず安定に動作することが判明した。このことは被験者に違和感を与えず優れた無拘束性を可能にする。またマットレスを安価に実現できる。(3)新たな可能性への展開本システムで得られる生体情報から睡眠段階を推定できる可能性が明らかになった。