著者
餘利野 直人
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では,(1)電力システムの構造変化と信頼性の低下,(2)電圧・無効電力制御の潜在能力の評価法が存在しないこと、(3)競争環境下における電圧・無効電力制御の計画法や調達法の不備、という現状に対して解を与えることを目的として研究を遂行した。研究成果は以下のようにまとめられる。想定故障に対して無効電力制御機器の制御動作を組み込んだシステム状態遷移モデルを構築し、多数の想定故障に対して指定した信頼度レベルを実現する設備計画手法を開発した。ここでは大停電を回避する最終手段は負荷遮断であることに着目し、想定故障毎に負荷遮断量および負荷遮断コストを算出し、指定した想定故障に対して供給信頼度を維持するための設備投資および制御実施を含めた全体コスト(年間コスト換算値)を最小化している。無効電力は平常時の送電損失の低減、想定故障に対する信頼性維持、送電可能容量の増加などに寄与するので、上記計画法に基づいて、無効電力価値の算出法を検討した結果、上記の無効電力の効用は、等価な有効電力の価値に置き換えることで、無効電力の実質的な価値として提示できることを示した。さらに無効電力供給の市場調達法に関して、英国の長期契約を前提とした入札方式をモデルとして、改良型市場調達モデルの検討も行った。本研究のアプローチは、従来にない大規模かつ非線形な混合整数計画問題として定式化されているため、計算のロバスト性や計算時間の観点から種々の検討を行い、計算アルゴリズムの効率化を図っている。また、上記の研究に関連して、無効電力機器を含めた制御器のロバストな設計法、停電事故の波及に甚大な影響を及ぼしたモーリレー不必要動作を回避するための効果的な系統制御法、自然エネルギー電源や分散電源を含む系統経済性・信頼性評価法、電力系統効率運用および監視技術についても成果が得られた。
著者
松田 毅 中山 康雄 加藤 雅人 長坂 一郎 茶谷 直人
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

我が国の哲学会においてはいぜん十分には認知されていない「メレオロジーとオントロジー」の主題群に関して、古代から現代を貫く概念と問題の連関・発展についての見通しを得た。また、「部分と全体」の問題と関わりの深い哲学者たちに焦点を定めた、これまで未開拓であった哲学史的分析とそれを基盤にした諸問題に関する現代的探究により、特に生命や心の存在論的探求への「部分と全体」の観点からのアプローチの有効性と可能性とが示された。
著者
加藤 久典
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

食品を摂取した動物がどのような応答を示すかを、多数の分子を網羅的に解析するオミクス解析という手法で解析した。遺伝子発現量、タンパク質量、代謝物量など、様々な網羅的解析を組み合わせた。この方向の研究を推進するためのデータベースや解析ツールを改良し、その有効性を実証した。食品のみならず、運動や日内リズムなど関係する生活習慣の影響も合わせて解析することに成功した。
著者
杉岡 直人 森本 佳樹
出版者
北星学園大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.現地調査の結果をまとめると、現状の公私協働の展開は、きわめて無原則的に取り組まれており、とくに行政職員にとまどいを与えながら、行政だけが公共を担ってきた時代から市民自身による公共の実践や市民と行政の協働としての公共へシフトするという合理的、歴史的過程において、検証を必要としながらも後戻りはできない現実を迎えている。2.ステイクホルダー理論からみた公私協働モデルは、行政と市民のパートナーシップを基調とする自治体経営のなかで、新たな公共を創造するものとして実践されているが、行政の相手となる市民は多様であり、代表性も担保されているわけではない。多くはNPOや市民活動として登場しているものをパートナーとしている。これはコミュニティを守る自覚を有する市民のエンパワメントが行政にとっての課題となる以上、ある程度は避けられない問題である。しかし、行政について市民=パートナーを具体的に特定化しようとしても取り上げるテーマが多様である以上、特定セクションのスタッフに裁量がゆだねられる。そこに議会の位置づけがあいまいになり、議会制度の逆機能がパートナーシップを生み出す一方で、パートナーシップの形成と展開および実施に対するモニタリングが不可欠のプロセスが必要となる。3.海外調査の結果(フィンランド)をみると行政は専門職としての市長(マネジャー)が議会によって招かれ、実務上の成果をあげることを求められている。議会メンバーも報酬を受けとる要素が少ないボランティアとしての性格が強いために、相互にチェック機能が働く構造となっている。この点からみると日本の公私協働モデルは、議会機能の形骸化と行政の硬直化を克服する妥協の産物といえる。
著者
野田 公夫 足立 泰紀 足立 芳宏 伊藤 淳史 大田 伊久雄 岡田 知弘 坂根 嘉弘 白木沢 旭児
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

1930年代日本において、経済的価値を生み出す源として「資源」という言葉がクローズアップされたが、とくに戦争準備の過程に強く規定されたところに大きな特徴があった。農林業は持続性を犠牲にして戦争に総動員されるとともに、工業原料にめぐまれない日本では「あらゆる農産物の軍需資源化」という特異な事態をうんだ。これは、アメリカはもちろん、同じ敗戦国であるドイツとも異なる現象であり、当時の日本経済が巨大寡占企業を生み出しながら就業人口の半ばを農業が占める農業国家であるという奇形的構造をとっていたことの反映であると考えられる。
著者
西谷 修 中山 智香子 真島 一郎 土佐 弘之 崎山 政毅 森元 庸介
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

折からの東日本大震災と福島第一原発事故は研究課題を先鋭化するかたちで起こり、これを受けて、グローバル化した世界における〈オイコス〉再検討という課題を、 現代の文明的ともいうべき災害や核技術の諸問題、さらに近年注目されている「脱成長」のヴィジョンに結び付け、主としてフランスの論者たちとの交流を通じて〈技術・産業・経済〉システムの飽和の問題として明らかにした。その内容や、そこから引き出される展望については、下に列記した雑誌諸論文や以下の刊行物に示した。『〈経済〉を審問する』(せりか書房)、報告書『核のある世界』(A5、100p.)『自発的隷従を撃つ』(A5、121p.)
著者
西井 龍映 小西 貞則 坂田 年男 秦 攀 二宮 嘉行 増田 弘毅 田中 章司郎 二宮 嘉行 増田 弘毅 田中 章司郎 清水 邦夫 江口 真透 内田 雅之
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

超高次元データにも適応可能な分類手法が近年求められている.そこで柔軟な判別境界を表現できて過学習となりにくいbagging型AdaBoostを提案した.また地球環境空間データの解析のため,空間依存性をマルコフ確率場でモデル化し,森林被覆率の判別問題や回帰問題,土地被覆割合の推定手法を考察した.なお統計モデル選択のための情報量基準についての専門書を出版した.
著者
竹沢 尚一郎 坂井 信三 仲谷 英夫 中野 尚夫
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度は、本研究の最終年度でもあり、夏に研究会を開催して、本年度の研究計画と研究報告書についての打ち合わせをおこなった。本年度は、竹沢と仲谷の二人が、西アフリカ・マリ共和国での現地調査をおこなった。これには、現地研究協力者であるマリ文化省文化財保護局の局長テレバ・トゴラと、同文化財保護課長ママドゥ・シセも参加し、マリ東部のガオ地区で、2003年11月下旬から2004年1月下旬まで約72日間考古学発掘調査に従事した。これにより、西アフリカのサバンナ地帯で初めて、総石造りの建造物が出土した。規模については、20mX28mまで拡大して発掘をおこなったが、全容を解明するには程遠いほど巨大な建造物である。また時代的には、2年前におこなったガオ地区のサネ遺跡の土器との比較により、西暦7世紀から11世紀と推測される。この建造物に用いられた石については、いまだ特定はできていないが、ガオ近郊には産出されないものであることは確実であり、遠方より運ばれたものであることは確実である。ガオ地区は、中世のアラビア語文献によれば、ガーナ王国と並んで最初の黒人王国が成立した土地であり、今回の発見は、規模や材料、時代などの点から、西アフリカで発掘された最古の王宮の跡である可能性がきわめて高い。今回の成果は、規模、材料、時期のいずれの点においても、これまで西アフリカで実施された考古学発掘の成果としては類を見ないものであり、これまで謎とされていた時代の西アフリカ史の解明に大きく貢献するはずである。また、社会組織の成層化という社会人類学の重要な課題に対しても、大きな貢献をなすものと考えられる。
著者
熊谷 敦史 メイルマノフ セリック 大津留 晶 高村 昇 柴田 義貞 山下 俊一
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

現地で得られたセミパラチンスク周辺地域での検診結果情報をもとに、検診結果と精密検査・治療の現状把握を行った。平成22年には、甲状腺結節が認められた場合に治療にあたるセメイ州立がんセンターから病理医を招へいし、同時に同センターで切除された甲状腺腫瘍標本を用いて、病理組織解析、53BP1蛋白の発現解析を行った。平成23年には、セメイ州立がんセンターから病理医、診断センターからデータベース担当者を招へいし、標本追加して病理解析による放射線発がん影響の解析を進め、甲状腺精密検査結果データと、疫学センターからのカザフスタン全土の癌疫学データを合わせ旧セミパラチンスク核実験場周辺地域の発がん傾向分析をまとめる予定であった。しかしながら、平成23年3月11日に発生した東日本大震災に引き続く東京電力福島第1原子力発電所事故のため、研究代表者ならびにメイルマノフ・セリックをのぞく研究分担者は全て被ばく医療専門家として福島県に繰り返し派遣され支援にあたってきたため、研究期間内に予定された研究完遂が困難となった。
著者
木村 幹 浅羽 祐樹 金 世徳 田中 悟 酒井 亨
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究が明らかにしたのは、全斗煥政権が当時の状況に対して、如何なる主観的認識を持ち、どう対処しようとしたか、それが結果として、当時の韓国社会におけるどのようなイデオロギー的変化を齎したか、である。その結果は次のように要約する事が出来る。1)同政権は1980年代初頭における政治的弾圧をも駆使した結果得られた、政治的安定を大きく評価し、ゆえに多少の民主化運動の許容は、政権の基盤を揺るがさないものと考えた。2)政権内部にではこのような理解には大きな対立はなかった。3)しかしながら、実際にはこの結果行われた民主化運動は政権側の予想を超えて拡大した。4)この誤算が韓国の民主化実現に大きく貢献した。
著者
中村 俊春 根立 研介 森 雅彦 河上 繁樹 安田 篤生 加須屋 誠 森 雅彦 河上 繁樹 安田 篤生 加須屋 誠 平川 佳世 深谷 訓子 皿井 舞 吉田 朋子 剱持 あずさ
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、近代的な展覧会制度が確立する18世紀以前のいわゆる前近代の日本・東洋および西洋で行われた「つかのまの展示」について、作品調査および関連史料の分析に基づき個別事例を精査するとともに、比較研究の視点を交えつつ、各々に関して同時代の宗教観、経済活動、政治的文脈、社会状況等に照らした詳細な考察を行った。その結果、今後、本領域において指標的な役割を果しうる包括的な成果を得た。
著者
遠藤 織枝 桜井 隆 陳 力衛 劉 頴 CHEN Liwei LIU Ying
出版者
文教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

中国女文字の保存を考える2004年の現地調査での女文字の実情を報告する。調査に訪れた2週間後に伝承者陽換宜が死去して、この文字を伝統的方法で習得し、娘時代に実際にこの文字をコミュニケーション手段として用いた人はいなくなった。緊急によりよい保存の方法を講じなければいけないときにきている。調査の結果、伝統的な文字とは変形した文字が盛んに書かれていること、そのような書き手を現地政府が重用していること、昔の女性の文字に最も近い文字を書く何艶新が生活に追われて文字から離れてきていることがわかった。女文字の保存にとって望ましい状況ではないことが憂慮される。この文字の歴史や規模について、3000年以上の歴史がある、2000字以上の文字があるというような誇張された大げさな言説がインターネット、新聞などに流布している。この文字を、昔の女性たちが使い・伝えた、本来の姿に近い姿で保存することが望ましいが、以上のような根拠のない無責任な言説は、本来の女文字の姿を歪めかねない。こうした事態を軌道修正し、合理的・科学的に考究し合って共通理解を得ることが肝要と考えて、中国と日本との研究者の共同主催でシンポジウムを開いた。両国研究者が一堂に会して、同じ対象についてそれぞれの研究を発表し合い、真摯に討論する機会が得られた。女文字の研究方法や歴史に対する考え方にも共通の理解が得られたことは大きな成果であった。
著者
小原 嘉明 佐藤 俊幸
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

標記の研究課題を追求するために、下記の(1)から(3)の研究を行い、それぞれ下記の成果を得た。(1)ユーラシア大陸内とその近辺の島嶼における「まぼろし色」(紫外色)の翅の雌の分布についてこれについての概要を知るために、「自然史博物館」(ロンドン、イギリス)と「Zoologisches Forshungsmuseum Alexander Koenig博物館」(ボン、ドイツ)に所蔵されている関係地域のモンシロチョウ標本の紫外線写真を撮って紫外線の反射の有無および反射の強さを調査した。その結果、紫外線を反射する翅を有する雌はユーラシア大陸の東の沿海部のみにおいて観察されたこと、その他の、ヨーロッパ、中央アジア、地中海に面したアフリカ北部、およびカナリア諸島とキプロス島には観察されないこと分かった。(2)「まぼろし色」の翅を有する雌の進化について上記の結果と、紫外色の発現条件(幼虫時の長日条件)に基づいて、紫外色翅を有する雌のユーラシア大陸内での進化を追求するために、同大陸とその周辺の地域においてモンシロチョウを採集し、それから得た幼虫を長日条件下で飼育し、得られた雌成虫の翅の紫外色の有無およびその強度を調査した。その結果上記(1)の推測が支持された。すなわち、イギリスからキエフ(ウクライナ)間のヨーロッパでは紫外色を有する雌が見られないこと、北京(中国)およびソウル(韓国)から広州(中国)に及ぶ沿海部と台北(台湾)においてのみ紫外色を有する雌が棲息していることが分かった。またこれらの地域では紫外色を有する雌と有しない雌が混在していることも分かった。これらの結果から、紫外色を有する雌はユーラシア大陸の東方の沿海部近辺において進化したことが示唆された。(3)紫外色の遺伝機構について紫外色翅を有しないオランダのモンシロチョウと、それを有する日本のモンシロチョウを交雑して得られた結果を分析した結果、紫外色は複数の遺伝子座の遺伝子によって支配されていることが示唆された。
著者
柴田 清 渡辺 一哉 笠井 由紀 滝口 泰之 渡辺 一哉
出版者
千葉工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では深海における沈船中残存油の微生物分解処理の可能性を検討するために、高圧下におけるフェノールの微生物分解について実験的に調査した。その結果、Pseudomonas stutzeri単離株を用いた場合、海表面条件下ではフェノール分解が進行することが確認されたが、2.0MPa~5.0MPa加圧下では分解の進行が確認できなかった。一方、深海泥試料を添加した場合は常圧よりも加圧下の方が分解の進行が速いことが観察され、深海環境下でも有機物の微生物分解が進行する可能性が示された。
著者
吉田 学 吉田 薫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

受精の過程において精子の運動能・受精能が調節されるメカニズムについて解明することを目的とし、本課題においては、主に精子走化性運動調節機構、及び精漿による精子の受精能調節機構の2点に研究内容を絞って研究を推進した。そして、精子走化性においては精子誘引物質による精子鞭毛内Ca^(2+)濃度上昇が鞭毛運動の変化となり、走化性運動に顕著な方向転換となっていること、マウス精子の受精能獲得は精漿タンパク質SVS2が精子表面のガングリオシドGM1と結合することで抑制されること、ヒト精子の受精能抑制は精漿タンパク質SgとZn^(2+)により制御されていることなどが明らかとなった。
著者
寺田 護 竹添 裕高 石井 明 記野 秀人 大野 民生 MOHAMED Abdu CHAN Boon T. NORHAYATI Mo NOOV HayatiM
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

3年間の研究期間において、不法移民についてはネゲリ・センビラン州レンゲンにある抑留キャンプ、合法移民についてはセランガ州にあるカレー島のヤシ油プランテーションで、それぞれ3回、計6回の調査を実施した。被験者数は総計で741名であり、その内訳は不法移民308名、合法移民221名、マレーシア人労働者212名であった。不法移民についてはインドネシアが157名と過半数を占め、以下3名のアフリカ人の他はすべてアジア諸国からの移民であった。合法移民はほとんどがインドネシア人であった。また、マレーシア人はマレー系、先住民、インド系に区別できた。全体として不法移民が他の群に比べ寄生虫感染率が高かったが、中でも病原性原虫および外部寄生虫の感染率が高く、主に衛生状態の悪さを反映する結果と思われた。合法移民については不顕性マラリアが多く見られたことが特徴であったが、追跡調査で調べられた4名の被験者はいずれも陰性であった。これは母国への一時帰国に伴って感染した典型的な輸入寄生虫症と考えられた。対照群ではそれぞれの民族性に由来する生活習慣の違いが寄生虫感染にも反映していると考えられた。不法移民では出身国や職業の違いが感染状況にも反映され、移民の寄生虫相を考える上では重要な指標であることが示唆された。全体を通してマレーシアには見られない輸入寄生虫症は見つからなかったが、移民の持ち込む寄生虫はマレーシアの寄生虫感染を一定のレベルに維持するような働きを持つことが考えられた。また、合法移民は自由に国内を行き来できることから、感染を広める上で大きな役割を果たす可能性が示唆された。入国時あるいは定期的な健康診断がこうした輸入寄生虫症の対策として重要であると考えられた。
著者
徳光 永輔
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の目的は、大きな電荷密度を誘起できる強誘電体または高誘電率材料を用いて、面積を可変できる酸化物伝導体の電極構造を提案し、これを利用して集積化可能な小型・高性能の可変容量キャパシタを実現することである。本研究では、まず提案する素子を実現するための強誘電体(Bi,La)4Ti3O12(BLT)膜形成条件の最適化と溶液プロセスによる高誘電率材料の探索を実施した。次にITOまたはIn2O3をチャネルに用いた薄膜トランジスタ型の素子を試作して動作検証を行い、約1500%のゲート電圧による容量変化を実現した。さらに素子のスイッチング特性の改善およびナノインプリントを用いた素子の微細化を実施した。
著者
高津 光洋 福永 龍繁 中園 一郎 吉岡 尚文 西 克治 前田 均 三澤 章吾
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

わが国では,乳幼児の突然死に対し安易に乳幼児突然死症候群(SIDS)と診断され,特に剖検せず,あるいは剖検所見を無視したSIDS診断も多い.このような状況から脱却するために,本研究班は文科省科研費の補助のもとに,平成11年3月「SIDS診断の法医病理学的原則に関する提言」を報告した.今回の目的はこの提言による乳幼児死亡例の死因診断を検証し,提言内容を再検討することにある.前回各大学から収集した乳幼児突然死剖検例307例中122例がSIDS群と診断されていたが,提言に従ってretrospectiveに再検討した結果,SIDSと診断せざるを得なかったのは14例であった.これは全対象例307例の5%,SIDS群の11.5%にすぎなかった.提言前後の乳幼児死亡の推移を厚労省人口動態統計で検討したところ,SIDSはほぼ半減していた.乳児死亡自体が減少しているものの,安易なSIDS診断に対して提言が警鐘となったと思われる.次に乳幼児剖検例における死因診断において,客観的根拠となり得る診断指標について,剖検所見のみならず中毒学的,病態生理・生化学的,微生物学的検査を含め検討し,窒息死と肺感染症の死因診断根拠を提示した.更に,臓器重量,溢血点の有無等の剖検所見について死因別に検討し,死因診断と死亡過程の病態分析のための客観的指標として病理形態的所見の定量分析が有用であることを示唆した.更に,実際の裁判例において提言内容を積極的に鑑定や意見書等で主張してきた.又,乳幼児急死例における虐待,揺さぶり症候群,ライ症候群など死因判定の難しい疾患についても注意を喚起した.わが国では乳幼児死亡例の剖検例が少なく,本研究年度を越えて提言の更なる検証と死因診断の客観的根拠に関する研究の必要性を認識している.
著者
竹内 伸直 大久保 寛 高山 正和
出版者
秋田県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

地震発生に関連すると予想される大気電気変動信号は非常に微弱であるため,大型静電アンテナを製作してこの微弱な変動信号を観測することを計画し,大型静電アンテナ建設など具体的な観測システムの整備を行った。静電アンテナの近傍には,観測信号を記録するデータ処理システムを収納するための観測小屋を設置し,空調機の導入により無人で長期間の観測を可能としている。観測点として(1)秋田県本荘市の秋田県立大学本荘キャンパス,(2)秋田県協和町の秋田県立大学セミナーハウス,(3)秋田県仙南村の農村広場の3カ所を選定し,大型静電アンテナ他の観測設備の設置を完了した。平成12年8月から大型静電アンテナの豪雪地での耐気候テスト,観測システム全体の調整および試験的なデータ収集を継続し,本研究の2年目となる平成13年度から本格的な観測を継続して行ってきた。観測期間中の平成13年12月2日の22時2分ころ,岩手県内陸南部の地下深く発生した地震は,秋田県内全域で震度3以上の揺れとなり,本研究で準備した3箇所の観測点で,地震波に伴う各種の変動信号を観測することに成功した。主な結果は,以下の通りである。(1)3観測点で地震波伝搬時に地電位差変動,大気電気変動信号が観測できる。(2)観測点により変動信号の振幅が大きく異なる。(3)地電位差変動信号の発生と大気電気変動信号の発生には密接な関係が認められる。(4)観測点の地層状態が変動信号の発生に大きな影響を与えていると推測できる。本研究で得られた観測結果およびこれまでに得られた研究結果をもとにして,地震波伝搬時の地電位差変動の発生モデルをより明確にすることが出来た。すなわち,地下水面の位置と埋設電極の配置の違いにより,発生する地電位差変動信号の大きさが異なる。したがって,地下水面からの地下水の流動による電位の発生が地電位差変動の原因とすることが出来る。
著者
岡部 卓 小林 理 西村 貴之
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究の目的は、生活保護受給有子世帯を対象とし貧困の再生産(世代間継承)解消の観点から学習・進学支援に関する研究を行うことであった。以上の研究目的を踏まえて、本研究事業では以下3つの研究が実施された。第1に、生活保護受給世帯の養育者に対する調査(アンケート調査・インタビュー調査)ならびに支援者調査(ソーシャルワーカー、関係機関)を実施し、その結果を分析している。分析結果からは、養育者や子どもの直面する課題などが析出された。第2に、受給有子世帯に対する支援プログラムを、神奈川県と共同で開発した。第3に、プログラムの効果を測る評価指標を開発し実際に効果測定を行っている。