著者
与謝野 有紀 林 直保子 都築 一治 三隅 一百 岩間 暁子 佐藤 嘉倫
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、経済資本、人的資本、文化資本に続く第4の資本としての社会関係資本の形成プロセスと機能について、社会的諸資源、近隣ネットワークや社会参加といったライフスタイルとの関連で理論的、実証的に明らかにしようとするものである。手法としては、質問紙調査、実験、コンピュータ・シミュレーション、フィールドワークをもちいた。また、2004年1月に面接調査法による調査を行い、ランダムにサンプル1000ケースに対して707ケースの回収をみた。日本での社会関係資本に関する本格的な面接調査は本調査が最初であり、日本の社会関係資本の状況を知る上での基礎データを提供するとともに、他の手法と補完しながら、以下の知見を最終的に得た。(1)社会関係資本の主要素として一般的信頼感に焦点を絞って解析した結果、信頼の生成メカニズムに関する現行の主要理論(「信頼の解き放ち理論」)のプロセスは、日本では一切確認されない(2)一般的信頼感の生成のためには、近隣ネットワーク、自主的な参加を前提とするクラブへの参加など、中間集団に対するコミットメント関係の形成が重要であり、これらの中間集団において醸成された個別的な信頼感は、他者一般に対する信頼感を形成する重要な基礎となる。また、この知見は共分散構造分析によるデータ解析とコンピュータ・シミュレーションによって同時に確認されており、頑健性が高い。(3)社会関係資本の形成のための投資と回収のプロセスを「社会関係基盤」概念を提出することで定式化し、さらに近畿調査データを用いて、この点を実証し、社会関係資本のセーフティーネットとしての機能と階層固定化機能の両者を確認した。(4)社会関係基盤については、フィールドワークからも投資、回収概念の高い適用可能性が確認された。これらの研究成果については、論文、著書のほか、日独先端科学技術会議(学術振興会・フンボルト財団共催)や本研究を中心に企画された第39回数理社会学会シンポジウムで報告されている。
著者
直江 眞一 朝治 啓三 井内 太郎 國方 敬治 苑田 亜矢 都築 彰 沢田 裕治 吉武 憲司
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、イギリス(イングランドのみならずスコットランドおよびウェールズも含む)中世史および近世史における諸史資料を、総合的・学際的・系統的に検討し、あわせて諸史資料の解釈を通して、イギリス中・近世史の再構成を試みたものである。研究分担者の間では、史資料を、[1]文書の性格に応じて、統治・行政文書(都築)、荘園関連文書(宮城)、証書(中村)、叙述史料(有光)、私文書(森下)に分類する一方、[2]発行主体に応じて、国王裁判文書(澤田)、国王立法関連文書(苑田)、国王宮廷関連文書(吉武)、国家財政関係文書(井内)、貴族家政文書(朝治)、領主支配関連文書(國方)、ジェントリ関連文書(新井)に一応分類することによって、全体として体系性を保つようにした。研究代表者および研究分担者はそれぞれ、研究対象とする史資料に関するマニュスクリプトをはじめとする1次史料に関する情報を国内外の図書館・文書館から収集し、それらを分析・整理する一方で、とりわけ研究会における共同討議を重視した。毎年度2回、研究期間全体で8回開催された研究会の活動を通して、史資料に関する情報の共有化、さらには各史資料の間での形態・様式・機能・伝来状況の比較研究等、個人レヴェルでの研究では到達しえない研究組織全体としてのイギリス中・近世史資料に関する知見の拡大を得ることができた。また、毎年度3名がイギリスに出張し、史資料の調査・収集および学会ないし研究会における研究成果の発表あるいはイギリス在住研究者との意見交換等を通して、研究の深化を図ることができた。
著者
大高 泉 鶴岡 義彦 江口 勇治 藤田 剛志 井田 仁康 服部 環 郡司 賀透 山本 容子 板橋 夏樹 鈴木 宏昭 布施 達治 大嶌 竜午 柳本 高秀 宮本 直樹 泉 直志 芹澤 翔太 石崎 友規 遠藤 優介 花吉 直子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究プロジェクトは、日本、ドイツ、イギリス、アメリカ等のESD(持続可能性のための教育)としての環境教育の展開を探り、実践、効果の一端を探った。具体的には、ドイツの環境教育の40年間の展開を探り、持続可能性を標榜するドイツの環境教育の動向を解明した。また、ESDとしての環境教育政策やその一般的特質、意義と課題を解明した。さらに、12の事例に基づきイギリスや日本の環境教育の広範な取り組みの特質を解明した。
著者
薩摩 雅登 竹内 順一 稲葉 政満 薩摩 雅登 横溝 廣子 古田 亮 佐藤 真実子 松村 智郁子 竹内 順一
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

東京藝術大学大学美術館では、明治期の音楽録音資料・蝋管を212本所蔵している。しかしながら、経年変化とカビにより保存状態が悪く、音楽資料としての価値を失いつつある。そのため、その保存体制として、アモルデン水溶液による蝋管の洗浄、収納棚やトランクの薫蒸、針接触方式のデジタル再録音機・アーキフォン(Archeophone)により124本の音源の再録音を行った。また、蝋管の基礎調査として、国内や海外の各機関や個人コレクターを対象としたアンケート調査および実地調査にて、収蔵環境や音源のデジタル化、蝋管の公開の手法、関連する最先端の情報を収集した。さらに、明治期の蝋管や蓄音機に関する新聞記事および広告を調査し、当時の社会状況を把握した。現在に至るまで断片的な研究しか行われていなかったが、本研究において、蝋管に関する情報を集約した。
著者
入野 俊夫 河原 英紀 津崎 実 西村 竜一
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

音声知覚の基盤となる聴知覚特性を明確にし、数理的な理論の構築/検証を行った。1)寸法・形状知覚:発声方法による寸法弁別閾の違いが無いことや時間特性を明確にした。2)聴覚フィルタ特性/難聴者・健聴者の聴知覚特性:聴覚フィルタの周波数選択性や圧縮特性の同時測定と、模擬難聴を実現できる枠組みを世界に先駆けて開発した。3)機能的磁気共鳴像(fMRI)実験:音声からの寸法知覚の情報処理の座に関して知見を得た。4)音声知覚モデル化/音声・音響処理:理論的な背景をもとに話者の声道長推定が精度良くできることを示した。また、知覚的音響処理の改善も行った。
著者
陣内 正敬 真田 信治 友定 賢治
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

日本におけるコミュニケーションの地域性と、関西方言や関西的コミュニケーションの広がりを探るために、平成12年度〜平成14年度にかけて、全国の主要6都市において多人数臨地アンケート調査を実施した。回答者は世代と性を考慮した計1275名に及んだ(大阪177、広島185、高知150、福岡144、名古屋202、東京417)。収集した資料はすべて表計算ソフト(エクセル)に入力し、データベースとして活用できる形にした。調査結果の成果のひとつとして、関西的なコミュニケーションの受け入れには各都市で同様な世代差が見られ、若者世代ほどその傾向が強いことが分かった。なお、共同研究者による調査報告とその考察を成果報告書の形で刊行した(『研究成果報告書No.1』)。また併せて、調査データベースの一部も紙媒体の形で刊行した(『研究成果報告書No.2』)。この他、研究分担者の高橋を中心に、関西弁や関西コミュニケーションの広がりに関する電子言語地図を作成した。次のHPで公開中である(URL:http://home.hiroshima-u.ac.jp/hoogen)。また、研究分担者の岸江を中心に、主要6都市調査で収録された「道教え談話」を電子化し、6都市30話者2場面の計60談話を収めたCD-ROMを作成した(談話音声とその談話テキストを含む)。この談話は、21世紀初頭の各都市における年配層や若年層が、くだけた場面と改まった場面でどのような話し言葉を用いているかを記録した保存資料としての価値もある。
著者
北垣 郁雄 大膳 司 永岡 慶三 匹田 篤 村澤 昌崇
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ファジィ理論の一つであるファジィ測度は、評価問題の解決への応用が期待されていた。当時、理論的な進展は見られていても、システム開発への応用や評価対象ごとの評価の特質や応用時の課題の検討が進んでいなかった。標記の課題名に含まれる「複眼評価」とは、評価対象の性質、評価の観点・基準など、評価を取り巻く諸要素の変動によって「評価値」が変わり得るという状況を想定し、評価値に幅が存在するという特徴を活かした評価方法を指している。そのような評価は、物理量よりも心理量の計測で関心が持たれることが多い。なぜならば、心理量としての評価値には、本来的にあいまいさが存在するからである。アンケートに即して述べるならば、客観的な事実調査よりも意識調査の分析において、複眼的な要素が多分に含まれると思われる。以上のような背景のもとに、本研究課題では、複眼評価の特質をまとめている。一つの評価対象に対しても、当該評価システムの構築にあたって複眼的な評価の数理を開発するとともに、評価の領域を広げて複眼評価自体の特質をつかむことを目的とする。複眼評価の研究は、「捉えなおし」の研究と呼んでも良い。そのような観点から、複眼評価という特徴を生かした電子アンケートの構築・分析論理をまとめた。その論理では、評価論理にファジィ理論を導入し、アンケート処理システムに資する複眼的アルゴリズムを用いた。また、これまでの諸研究成果を複眼評価という点で捉えなおすという工夫も試みた。そして、評価行為を伴う種々の研究素材(高等教育研究、グループウェア、e-learning、メディア研究など)において、複眼評価の可能性と問題点を整理した。
著者
諸岡 晴美 北村 潔和 鳥海 清司 諸岡 英雄 中橋 美幸
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、高弾性衣料として、女性ファンデーション、レッグウェア、スポーツウェアを取り上げ、繊維組成・糸構造・編構造、衣料のデザイン・カッティング・サイズの各因子と衣服圧強度・衣服圧分布との関係を検討するとともに、その衣服圧が人体生理に及ぼす影響を、従来の静止時に加えて運動時・活動時について、さらに若年層に加えて中高齢層をも対象に検討を行った。また、レッグウェアについては、従来軽視されがちだった色柄などの審美特性についても重点的に検討するなど、本研究においては、生理的にも心理的にも健康で快適な高弾性衣料のための基礎的研究から具体的な設計指針を導出し、開発研究にまで繋げることを目的として、被服材料学的、人間工学的、被服生理学・運動生理学的、感性工学的観点から総合的・複合的に解析した。当該期間の研究成果は以下の通りである。1.女性ファンデーションとして、ウェストニッパーおよびブラジャーを取り上げ、衣服圧に及ぼす要因を明らかにする一方、衣服圧が人体生理・心理に及ぼす影響を明らかにした。また、ファンデーション素材の熱特性と温熱的決適性についても検討した。2.レッグウェアとして、サポートタイプパンティストッキング(パンスト)および紳士用靴下の圧的快適性に関する研究を行った。また、審美特性としてパンストの透明感、色彩と縞柄の視感、パンストの構造特性と審美特性との関係を明らかにした。3.スポーツ時の人体生理に関する基礎的研究に加え、歩行・走行時の脚部疲労を軽減しうる圧分布を明確化した。また、腕伸展運動および膝関節運動時に活動筋を支援しうる圧分布のあり方を、弾性テープを用いた数種のテーピング効果を解析することにより明らかにした。4.その他、シリンダー方式による脚型着圧測定装置の開発や高機能性付与素材の効果の検証等を行った。以上の研究は、報文21報、投稿中2報の他、5報を投稿準備中、1件の特許出願を予定している。これらのことから、本研究の目的は十分に達成されたと考えられる。
著者
池上 良正 中村 生雄 井上 治代 岡田 真美子 佐藤 弘夫 兵藤 裕己 松尾 剛次 池上 良正 中村 生雄
出版者
駒澤大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

「供養の文化」を日本の民俗宗教の重要な特徴のひとつとして位置づけることによって、古代・中世から近現代にいたる、その歴史的変遷の一端を解明することができた。さらに、フィールドワークを通して、中国・韓国を含めた現代の東アジア地域における「供養の文化」の活性化や変貌の実態を明らかにした。
著者
河合 望
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、古代エジプト新王国時代の王墓の副葬品を総合的に研究し、葬制の一端を明らかにすることを目的とした。中でも早稲田大学が1991年より調査を継続している王家の谷・西谷のアメンヘテプ3世王墓出土の副葬品の研究を中心にエジプトおよび欧米の博物館・美術館で調査研究を実施した。また自らが発掘調査を手がけたラメセス2世の孫娘イシスネフェルトの墓出土の副葬品の研究等も実施した。これらの研究により、新王国時代の王および王の埋葬にかんする理解を深めることができた。
著者
高野 忠 戸田 知朗 遠山 文雄 佐々木 進
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

レーザレーダの探知能力は、レーザの出力と送受信の光アンテナの性能に強く影響される。しかもレーザの放射パターンは、暗点が無くなるべく一様であることが必要である。従来の1W級の大出力レーザをワイヤレス応用すると、パターンが乱れているために性能が著しく劣化してしまう事を、実験により示した。そして最も有望なブロードエリアレーザにおいて、パターンの平滑化を実現するための設計法を導いた。高性能光アンテナについて、製作誤差に強い鏡面修整法として、給電系のレンズと副反射鏡を修整することを考案した。その効果を、シミュレーションにより明らかにした。複数のレーザからの放射光を空間的に重畳することにより、強い照射光および受信光を得られる。更に単一レーザ光で問題になるスペックル効果を、制御することが可能である。これらのことを、実験的に明らかにした。
著者
仲地 博 江上 能義 高良 鉄美 佐藤 学 島袋 純 宗前 清貞 前津 栄健 徳田 博人
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、2001年より続いた3年間の研究であり、まず、その研究軌跡を記しておく。初年度上半期は、理念的・基礎的テーマについて研究成果の交流(報告書No1)を行い、初年度下半期は、市町村自治基本条例のモデル素案の作成(報告書No2)を行った。2年目上半期は、市町村自治の実態の分析とともにモデル条例の深化(報告書No3)をはかった。2年目下半期は、沖縄県レベルの自治の在り方に主たる焦点をあて、自治の理念と動態を広い視野から検討すべく、この分野の第一線の研究者を招き研究の交流を行った(報告書No4)。最終年度の上半期は、沖縄の自治構想の歴史的研究を集中的に行った。同時に研究会を3つの班(主として政治学研究者からなる班、憲法研究者からなる班、行政法研究者からなる班)に分けそれぞれの分野からの自治構想を研究した(報告書No5)。下半期は、その成果を受け、3つの構想を中心とするシンポジウム、さらに、それを踏まえ、「沖縄自治州基本法」の研究会が継続的に行われた。それは約半年の議論をへて、県レベルの新自治制度の構想案としてまとめ上げられた。他方で、研究者一人一人の自治基本条例及び自治基本法に関する研究成果を最終的な研究論文の取りまとめが行われた。それは、構想案とともに最終報告書(報告書No6)に掲載されている。本研究は、住民自治の基本原則を明文化するという目的を有する自治基本条例もしくは基本法であるという性質上、住民、自治体職員や議員の参加を広く呼びかけ、今期も広く一般に公開した。合併問題、財政危機のように自治の大きな転換期にあたって、本研究に関連する地元メディアの関心も高く3年間で約90本に及ぶ関連記事が掲載された。また、80回に及ぶ研究定例会等への学外者・市民の参加は、延べ5千人を超え、確実に自治に対する意識の転換をもたらした。そのような成果を、科学の地域貢献としても評価可能である。
著者
吉村 豊雄 三澤 純 稲葉 継陽 足立 啓二 山田 雅彦 松本 寿三郎
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究の中心をなす日本史研究班は、16・17年度に引き続いて、熊本大学が収蔵する日本最大の前近代組織体文書たる永青文書所蔵の細川家文書(細川家の大名家文書)のなかで、藩制の基幹文書となっている「覚帳」「町在」の系統解析に全力をあげつつ、前近代日本社会・日本行政の到達形態について実態的な成果を出すことに努めた。その結果、「覚帳」の系統的解析を通して驚くべき成果を得た。すなわち、本研究で明らかになってきたのは、日本近世の領主制が農村社会の自律的運営能力の立脚する方向で、次第に農村社会からの上申事案・上申文書の処理を業務とする割合を強め、ついには農村社会からの上申文書を中央行政機構における稟議制の起案書として、地方行政に関わる政策形成を行うに至るという、従来、想像もされてこなかった19世紀、幕末の行政段階である。熊本藩では、18世紀以降、こうした傾向を強め、中央行政機構では、こうした状況に対応した行政処理・文書処理のシステムを整備し、19世紀段階には農村社会からの上申文書を起案書とし、中央行政機構の稟議制に基づく地方行政を展開している。本研究において主対象とした熊本藩の中央官庁帳簿たる「覚帳」は、こうした歴史的推移をたどる。同時に、中央行政機構の稟議にかかった上伸事案は、農村社会で無数に生成される要望・嘆願の類いのごく一部であり、その多くは中央行政機構に上申されることなく、農村社会の段階で処理・解決されている。18世紀後半以降の地方行政は、農村社会の政策提案能力に依存しつつ、領主支配の根幹に関わる事案について上申させ、これを稟議処理し、執行することで成り立っていたと言える。
著者
吉田 裕 糟谷 憲一 池 享 渡辺 治 加藤 哲郎 李 成市 中村 政則
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.平成14〜17年度の各年度に、分担研究者がそれぞれの分担研究を推進するために、韓国及び日本各地において史料調査・収集を行った。2.分担研究者が集う共同研究会を18回開催し、日本史、朝鮮史、日朝関係史に関する報告・討論を行った。また研究の進め方、総括のために分担研究者による会議を7回行った。3.共同研究の総括と、韓国の日本史・朝鮮史研究者(ソウル大学校等に所属している)との研究交流のために、2002年8月23日〜25日、2003年8月22日〜24日、2004年8月20日〜22日、2005年8月26日〜28日に、第5回〜第8回の日韓歴史共同研究プロジェクトシンポジウム(2002年・2004年は一橋大学において、2003年・2005年はソウル大学校において)開催した。日韓両国における歴史研究の現状と課題に関して相互に認識を深めるため、日本史、朝鮮史、日朝関係史上の重要な論点を逐次取り上げて、率直に議論を行っていくという方針により、毎回の準備と報告・討論が行われた。報告数は第5回〜第8回を通じて20本であり、韓国側は12本、日本側は8本である。4.シンポジウムを通じて、日韓両国の研究者のあいだで、「東アジア世界」という視座を設定して、日本社会と朝鮮社会を比較するという方法が有効であることを確認しあうことができた。今後も比較研究をさらに推進・深化させるために、平成18年度に向けて「日本・朝鮮間の相互認識に関する歴史的研究」という共同研究を準備することとなった。5.糟谷憲一が編集担当となり、第5回〜第8回シンポジウムの報告書を作成し印刷した。
著者
柳川 堯 小西 貞則 百武 弘登 内田 雅之 二宮 嘉行 川口 淳 長山 淳哉 野中 美祐
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

高次因果モデリングの有力な手法として、グラフィカルモデリングが提案されているが、連続変量の場合多次元正規分布が仮定されており、制約的でしかも線形関係だけが対象とされている。これを、高次非線形因果モデリングに拡張することを狙って順位相関係数を利用する理論を発展させ手法を開発した。また、分担者の協力を得てその計算アルゴリズムを開発しシミュレーションを行いその有効性を評価した。さらに、共同研究者から提供されたデータに適用し乳幼児の甲状腺機能、免疫機能に与える環境汚染物質のインパクトを明らかにした。その他、潜在構造モデルを用いる離散型変数、連続型変数混在の場合のグラフィカルモデリング、時系列データに関するグラフィカルモデリング、ノンパラメトリック共分散分析のグラフィカルモデリングに関して分担者と共同研究を行い、いくつかの価値ある結果を得た。これに関する基礎研究においても、以下のような成果をえた。・超高次元データから有益な情報やパターンを抽出するための手法開発に取り組み,基底展開法を用いた次元圧縮と圧縮したデータ集合に基づく識別・判別問題を定式化し,新しい解析手法を提唱した.開発した解析手法をシステム工学,生命科学の分野の問題に応用し,その有効性を立証した.・繰り返し測定値に対する非線形モデルのパラメータの関数について、コントロールとの多重比較のための同時信頼区間の近似を与え、その精度をシミュレーションにより検証した。・小さな拡散をもつ拡散過程に従う離散観測データから,未知のドリフトパラメータを推定する研究を行った.具体的には,条件付き期待値をIto-Taylor展開を用いて近似することにより近似マルチンゲール推定関数を構成した.それから得られる推定量が非常に弱い条件の下で漸近有効性をもつことを証明した.
著者
林 光緒
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

居眠り運転による交通事故、夜勤中の産業事故や医療事故など、疲労と睡眠不足による居眠り事故は枚挙に暇がない。これらの事故は生命にかかわる問題だけに早急な対処法を講じる必要がある。筆者らは、これまで日中の覚醒水準の向上を図る方法として短時間仮眠法を提唱してきた。本研究は短時間仮眠法の実用化に向けて短時間仮眠法の洗練化をはかったものである。特に最適な仮眠環境の構築と、最適な仮眠取得のタイミングを明らかにすることを目的として実施された。仮眠後には、却って眠気が強くなったり作業成績が低下したりする睡眠慣性の影響が残る。睡眠慣性は徐波睡眠から覚醒すると強くなるため、短時間仮眠後の睡眠慣性を低減させるには、徐波睡眠に達しないよう仮眠内容をコントロールすることが必須となる。そこで、短時間仮眠の睡眠内容を検討したところ、若年成人の場合は20〜30分間の仮眠でもそのうちの43%の仮眠に徐波睡眠が出現し、15〜20分間の仮眠でも23%の仮眠に徐波睡眠が出現していた。しかし、15分以内の仮眠であれば徐波睡眠は出現しなかったことから、短時間仮眠の長さは、15分以下にすることが望ましいことが明らかになった。また、徐波睡眠を含まない短時間仮眠は睡眠段階1と睡眠段階2だけで構成されているが、睡眠段階1だけでは効果がなく、少なくとも睡眠段階2が3分出現することが必須であることも明らかとなった。このときの仮眠の長さは9分間であったことから、適切な仮眠の長さは19〜15分であるということが明らかとなった。さらに居眠り運転事故の予防のために車輌で仮眠をとる場合は、シート角度(座面と背面との角度)を150度に倒すこと、仮眠時間を15分間とすることがより効果が高いことを明らかにした。入眠までに約5分かかることを考慮すると、車輌シートで仮眠をとる際は、20分間の仮眠時間を確保することが必要であることを明らかにした。
著者
横川 公子 田口 理恵 角野 幸博 佐藤 浩司 笹原 亮二 森 理恵 井上 雅人 佐藤 健二
出版者
武庫川女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

国立民族学博物館所蔵の大村しげコレクションは、元の所有者が日々の暮らしの中で蓄積した生活財のほぼ全容をもって構成される。今までの調査によって、個々の生活財について詳細な情報が記録され、全体像を表すエクセルファイルと画像データのCDを発行すると同時に、調査の過程で発見された特徴的な傾向や、研究者の問題意識にしたがってモノから見えてきた見解等について、『国立民族学博物館研究報告書SERS68』(2007.3)を発刊した。その主たる内容は以下のように一覧できる。「大村しげの都心居住」「収納家具とその中身の配置について」「おばんざいの道具立て」「おばんざいの流布について」「おばんざいの思想について」「大村しげの衣類・履物について」「文筆家としての大村しげの思想について」等々である。さらにもうひとつの課題である、生活主体が抱いているモノをめぐる生活の価値については、関係者へのインタビューと著作を参照することによって再現し、これについても取りまとめて公刊する(横川公子編『大村しげ京都町家暮らし』河出書房新社、2007.6予定)。以下のような見通しを得ることができた。所有者の生活の経時的変化に対応する生活財のまとまり、および生活財の空間的な所在を再現することによって、所有者と時間的・空間的な生活財の位置との関わりや暮らしの思想を再現できた。さらに拝観チケット・食べ物屋のメニューやチラシなどの遺品から、所有者のお出かけ行動の内容と京都市内外における行動範囲や行動スタイルが判明し、都心居住者としての生活を再現することができた。同様に、主にインタビュー調査とフィールド調査によって晩年に居住したバリ島における行動や行動範囲・行動スタイルを再現した。物書きとしての用品として大量の原稿や校正刷り、原稿用紙、筆記用具、著書など、及び父親の家業であった仕出し屋の道具類や多様な贈答品の蓄積から、京都や祇園という地域の固有の暮らしを再現、等々。モノと著作による暮らしの内側からの発信は、観光都市・京都イメージとは異なる、都会暮らしの現実感覚があぶりだされてくる。
著者
中野 綾美 池添 志乃 益守 かづき 高谷 恭子 首藤 ひとみ 佐東 美緒
出版者
高知県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

子どもの脳死に直面した家族が辿る苦悩に満ちた意思決定プロセスを支えるケアガイドラインの開発を目的とした。臓器提供を行った家族の 10 編の手記、子どもの看取り又は臓器移植をした家族への看護を看護師 13 名に面接調査し質的に分析した。その結果と家族看護エンパワーメントガイドラインを活用し、研究者と小児看護や家族支援 CNS、小児救急看護 CN の 12 名でブレインストーミングを実施した結果、家族が子どもの最善を考えるケアガイドラインを検討し、今後、洗練化が課題である。
著者
小川 孔輔 阿部 周造 西尾 チヅル 青木 道代 竹内 淑恵 酒井 理
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

(1)消費者調査2004年、東京都内の青果店店頭において、東京地場産野菜・有機野菜・特栽野菜についての消費者調査を行った(アンケート用紙配布、回答郵送方式、有効票数686票、有効回答率34.3%)。データから、回答者の76%は有機や減農薬・減化学肥料栽培野菜に関心を持っている一方、「東京」の地場野菜についての認知や評価は低く、43%が地場産野菜へのプレミアム価格の支払い意志をもたなか、った(小川・酒井)。調査の自由回答部分は、テキスト・マイニングの手法で解析したところ、消費者は有機と減農薬野菜の違いをはっきり認識しておらず、知覚している消費者は有機への不信感が大きいことがわかった(西尾・竹内)。また、これらの野菜購入動機の背景にある知覚されたベネフィットは、個人間で異なっていた。消費者の態度を分析すると、「有機」は独立したカテゴリーというより、「一般野菜」との関係で、相対的な評価により購買されている(阿部)。(2)視察・専門家による講義国内外の有機農産物の生産・流通・認証の実情を調べるため、筑波や中国・山東省、.オランダ、合衆国の小売り「ホールフーズ」(小川2005)などの視察を行った。また、エクスパートによるレクチャーも企画した。講師はイオン(「グリーンアイ」)、イトーヨーカドー(「顔が見える野菜。」)、ワタミファーム、イーアグリ、首都圏コープGPS、認証機関SEQの各社の野菜生産・流通の最前線の専門家で、講義は講義録にまとめられた(小川・青木2006)。(3)その他2004年、アジア消費者調査学会(ACR>で、研究メンバー全員が韓国で学会発表を行った。その他、研究の基礎となる資料の収集整理を行い、有機農産物と食の安全性に関する文献レビューを発表した(小川、2004,2005)。関連文献数百点に要約をつけた文献データベースが作成された。
著者
吉岡 みね子 KOVITHAVATATTAPHONG Chotiros
出版者
天理大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

平成14年度〜平成17年度実施計画にそって研究を実施し、目的としていた極めて貴重な以下の研究成果を得た。また本研究成果を基盤にしたさらに高次元の課題で、本研究の集大成化を図る今後の研究方針が得られたことは、今後の国の内外の研究に少なからず資するものと確信する。1.学術資料としての文芸誌の調査、収集、再評価を図る実証的研究、及び研究対象の原本、文学作品、関連文学作品、文献史料の調査、収集の成果所在不明であった当該文芸誌『アクソーンサーン』や『ワンナカディーサーン』について、その所在、内容(発行年、巻、号数等)の確認ができ、マイクロジャケットで入手後、CD化した。また関連文芸誌『エーカチョン』、『スパープブルット』、『セーナースックサー・レ・ペーウィッタヤーサート』、『ラックウィッタヤー』をマイクロフィルムで入手、研究対象の原本、文学作品、関連文学作品、文献史料についても調査と収集を積極的に図り、成果を充実化させた。2.タイ側共同研究者、及び国の内外の専門家より助言、レクチャーを聴講資料の入手、分析、考察、研究成果の公開等についてタイ、及びイギリスの専門家より助言、レクチャーを拝受し、また意見交換を行った。3.思想、文化、歴史観点からの新しい研究アプローチによる分析、考察、及び研究成果の公開上記入手資料を分析、考察し、成果の一部を英文で執筆した。また研究内容の充実と国際化を図るため、研究過程での成果、及び関連作家について国の内外で発表した(2003年、タイ国立開発行政大学院大学他)。さらに国際学会EUROSEA(2004年)をはじめ、国の内外の学会、研究会に積極的に参加し、研究の視野を広げ、学際研究の向上に努めた。4.関連作家の文学活動追究:セーニー・サオワポン作『敗者の勝利』の翻訳出版学術界のみならず、研究成果の社会への還元、及びタイ、日本両国の友好と文化理解促進という観点から、タイ文学史上の上記名作を翻訳出版した。