著者
山本 雅裕
出版者
大阪大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

TLR非依存的にIFN-γが産生される分子機序について、T.cruzi感染により引き起こされる宿主の細胞内カルシウムイオンの濃度上昇が関与しているかどうかを検討する目的で、FK506を用いてカルシウムシグナルを阻害したところ、T.cruzi感染によるIFN-γ産生が減少した。また、FK506がカルシニューリンの阻害剤であることから、カルシニューリンの下流に存在するNFATc1のT.cruzi感染によるIFN-γ産生における役割について検討したところ、T.cruzi感染によりNFATc1が核移行し、さらにNFATc1欠損細胞においてはT.cruzi感染によるIFN-γ産生が減少した。さらに、NFATc1欠損樹状細胞はT.cruzi感染による活性化が著しく減弱した。以上のことから、T.cruzi感染後TLR非依存的にNFATc1を介して自然免疫担当細胞よりIFN-γが産生され宿主自然免疫応答が惹起されることが判明した。これらの結果より、T.cruzi感染に対し宿主がTLR依存的・非依存的な自然免疫応答を引き起こす防御機構を有していることが明らかとなった。
著者
加藤 ひろし 岩並 和敏 坂上 竜資 本郷 興人 佃 宣和 川浪 雅光 向中野 浩
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

2年間にわたり歯周病患者のBruxismと咬合性外傷、歯周組織破壊の実態を明確にする目的で研究を進め、次の成果を得た。(1)K6Diagnostic Systemを用いて中程度以上の歯周病患者の顎運動と筋活動を分析した結果、歯周炎患者正常者に比べ閉口運動終末速度と咬みしめ時の筋活動電位が低下しており、歯周炎の進行と対合歯との咬合接触部位の減少にともなってさらに低くなる傾向を示した。(2)睡眠中の顎動運記録装置を作製し、睡眠中の顎運動、咬筋活動、咬合接触状態、咬合接触音を記録し分析した結果、BruxismはAタイプ(grindingに相当)、Bタイプ(clenchingに相当)、Cタイプ(A,Bタイプ以外)に分類でき、Bruxism自覚者はAタイプ、無自覚者はBタイプの出現率が高く、この差が自覚の有無と関係していると思われた。(3)患者が自宅でBruxism(睡眠中の咬筋活動・歯の接触・grinding音)を記録し分析するシステムの改良を行い、ディスポ-ザブルシ-ル型電極と発光ダイオ-ド表示モニタ-装置の使用により正確な記録が可能となった。(4)Bruxismによって生じる咬合性外傷と炎症が合併した場合の歯周組織の変化を明らかにするために,カニクイザル2頭の臼歯を4群にわけて、炎症と咬合性外傷を引き起こし、14週と28週間、臨床的ならびに病理組織学的に観察した結果、歯間水平線維が細胞浸潤により破壊された状態に、咬合性外傷が合併すると、炎症は急速に進行し、高度歯周炎となることが示唆された。(5)Bruxismの原因となる早期接触の客観的診査の目的で、Tースキャンシステムを歯周病患者で検討した結果、センサ-を咬合接触が不安定で誤差が生じやすく、咬合力の弱い者や動揺歯では咬合接触を正確に判定できないなどの問題があり、改良の必要なことが明らかとなった。今後さらにBruxismの客観的診断法と治療法の確立を目指して研究を進めていきたいと考えている。
著者
吉成 啓子 齋藤 兆古 岩崎 晴美 友末 亮三 松前 祐司 堀井 清之
出版者
白百合女子大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2001

スポーツ動作の解析は,高速度カメラ,筋電図,加速度計などを用いて行われてきた.しかし,その手法は比較研究が中心であり,「熟練者の動作」=「巧みな動作」という主観的・経験的議論にとどまることが多い.そこで本研究では,スポーツ動作としてテニスのサーブを選択し,画像の固有パターン認識手法を用いて,「巧みな動作」を科学的・客観的に判断することを試みた.その結果,テニスのサーブ・フォームにおける上級者と初級者の本質的相違が,画像の固有パターン認識手法によって抽出可能である,ということが明らかになった.方法,結果,考察の要点をまとめると次のようになる.「方法」スポーツ動作の中の不変量を,画像の固有パターン認識手法を用いて定量化することを検討した.被検者は,上級者として男子テニス選手1名,初級者としてテニス歴半年未満の男子1名の合計2名とした.各被検者は,縦状に緑,赤,青の3色に色分けされたウェアを着装し,最大努力のフラット・サーブを行った.サーブ動作を測方に設置したデジタルビデオカメラを用いて毎秒30コマで撮影した.「結果と考察」テニスのサーブにおいては,フォワード・スウィングの際の脊柱を中心とした身体の回旋速度を大きくするために,テイクバック時に上体をいったん後方に捻り,"タメ"を作ることが重要であるとされている.上級者初級者とも,赤・青・緑の色の部分のみを取り出した画像を解析した結果,3次元空間画素分布表示の場合は色の少ない部分はグラフ上に表示されず,こうした動きの本質的な相違のみを表示できるということが分かった.このことは,画像の固有パターン認識手法が,従来主観により論じられてきた「巧みな動作」を客観的に検討する手法として有効である,ということを示している.
著者
森田 健宏
出版者
夙川学院短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では幼児期のメディア利用について(1)現行の幼児向けメディア機器のインタフェースデザインと操作性について、(2)一般的なPCがどの時期から利用可能かを、幼児向け機器からの移行教育のための基礎的研究を目的に調査している。まず、研究1では、現行の幼児向け機器としてS社製およびE社製の幼児向けコンピュータをサンプルに、デスクトップの構成調査とユーザビリティ検証を初期利用者を対象に行った。主な結果は、S社製については基本的にペンタブレットの操作スタイルであることから、初期利用者にとってユーティリティ性、習熟容易性に優れているが、モニタ画面と操作パネルの視点移動頻度は少なく操作パネルに長く注視しやすいことが確認された。一方、E社製については、マウス及びキーボードによる操作で各アイテムに子ども向けキャラクターデザインが利用されていることから長時間利用が好まれていたが、習熟までの視点移動頻度が高いこと、アイコン選択などのマウス操作にプレなどの誤操作が見られた。次に、入力デバイスの操作性について、マウス、ペンタブレット、および手描きによる円描写の操作内容を実験的に比較検討した。その結果、カーソルを始点へ同定させる所要時間がマウスはペンタブレットやクレヨンよりも多く要すること、円模写の軌跡からマウスとペンタブレットでは異なる部分で操作が困難となることなどが確認された。一方、研究2では、デスクトップ上のフォルダとファイルの操作、フォルダの階層性の理解について調査を行った。その結果、3歳児の場合、上位階層において階層性が視認できるデザインであれば内包される対象が特定できるが、フォルダの内包性が視認できず、かつ下位層でもフォルダデザインに変化がない場合、3階層以上のファイル特定は困難であるが、フォルダの色ラベリングの効果によりファイル特定が可能になるケースもあったことなどが確認された。
著者
石崎 俊子 佐藤 弘毅
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

携帯電話日本語学習サイトの構築と実践を通して利用実態と利用動向を明らかにした。学習環境の常設性、学習ニーズに関する即時性、学習の接続性という役割を十分果たしていると言える反面、文字の入力と問題形式に問題があったことから、日本語初級学習者にはページ移動及び日本語入力のない問題形式、つまり穴埋め問題を活用すると効果的に学習できると分析する。
著者
ウィワッタナカンタン ユパナ 浅子 和美 北村 行伸 小田切 宏之 岡室 博之 伊藤 秀史 福田 慎一 小幡 績 寺西 重郎 伊藤 秀史 福田 慎一 小幡 績 久保 克行
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究プロジェクトは、東アジアにおける企業の大株主のさまざまな役割について明らかにした。企業を支配している大株主は、ファミリー、銀行、政府であり、モニタリング、企業・グループの組織構造、所有・経営権の構造、政界進出等の大株主の行動が、企業パフォーマンスに与える影響を動学的に分析した。これらの企業レベルの行動は、経済政策、経済危機といったマクロ経済レベルにまで影響を与えていることがわかった。
著者
斎藤 茂子
出版者
自治医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

-2SD以下で明らかなGH分泌不全のない低身長患者に対し、インフォームドコンセントを得てミトコンドリアDNA(mtDNA)検査を行った。家族歴のある低身長のみの患者8名、低身長+精神遅滞患者(てんかん合併患者含む)12名、MELAS患者5名(全例低身長あり)、Leigh脳症患者7名(全例低身長あり)、低身長+中枢神経症状+高乳酸血症(MELASやLeigh脳症の画像所見なし)2名の計34名を対象とした。従来、mtDNAの点変異が報告されている塩基部位の変異についてPCR-RFLPを行い、変異の有無を確認した。低身長+精神遅滞(軽度)の患者のうち、母親が糖尿病である例および母親に難聴がある例、それぞれ1名ずつの検体からはmtDNAのシークエンスを行った。MELAS患者の約80%、糖尿病患者の1%に認められるmtDNA塩基番号3243のA-G変異(3243変異)が、MELAS4名(80%)、Leigh脳症1名に認められた。MELAS患者のうち1名は低身長で受診し、高乳酸血症とmtDNA変異が認められ頭痛などの症状出現と脳波異常等をあわせて診断された。低身長のみまたは低身長+精神遅滞の患者では3243変異は認められなかった。シークエンスを行った2例についてもmtDNA変異は見いだせなかった。家族性低身長は多くの遺伝子群が関与する多因子遺伝と考えられ、mtDNA単独では説明できない。しかし、我々の検討で3243変異が発見された症例のうち低身長が主訴である例も存在しており、患者のインフォームドコンセントが得られればmtDNAの検索を行うことが望ましい。また、3243変異は家族性低身長単独の患者の中には認められないものの、糖尿病、MELAS、Leigh脳症といった多様な臨床像を示した。今後この変異によってもたらされる機能障害についての研究をすすめたいと考えている。
著者
岩下 明裕 宇山 智彦 帯谷 知可 吉田 修 荒井 幸康 石井 明 中野 潤三 金 成浩 荒井 信雄 田村 慶子 前田 弘毅
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究の実践的な成果は、第1に中国とロシアの国境問題解決法、「フィフティ・フィフティ(係争地をわけあう)」が、日本とロシアなど他の国境問題へ応用できるかどうかを検証し、その可能性を具体的に提言したこと、第2に中国とロシアの国境地域の協力組織として生まれた上海協力機構が中央アジアのみならず、南アジアや西アジアといったユーラシア全体の広がりのなかで発展し、日米欧との協力により、これがユーラシアの新しい秩序形成の一翼を担いうることを検証したことにある。また本研究の理論的な成果は、第1にロシアや中国といった多くの国と国境を共有している「国境大国」は、米国など国境によってその政策が規定されることの少ない大国と異なる対外指向をもつことを析出し、第2に国境ファクターに大きく規定される中ロ関係が、そうではない米ロ関係や米中関係とは異なっており、米ロ中印などの四角形のなかで、構成される三角形が国境を共有するかどうかで異なる機能を果たすことを実証したことにある。
著者
森 道哉
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、環境政治という切り口から戦後の日本の政治過程を捉え直すことを目標とし、それに向けて理論志向の事例研究を積み重ねようとした。具体的には、T.J.ロウィによる政策類型論の再検討および事例研究の方法の探求を理論上の課題とし、その視角のもとで複数の事例の過程追跡を行うことを実証上の課題としたのである。結果として、共時的かつ通時的な観点から政治過程を記述するための方向性を示唆することができ、また、環境規制の問題としてのアスベストの管理に関する事例の分析を通じて「目標」の一端も明らかにできた。
著者
宮下 陽子 (2009) 関口 陽子 (2007-2008)
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

申請者は研究実施計画に基づき、以下の研究を実施した。現代トルコの右派民族政党である民族主義者行動党(MHP)の組織とイデオロギーに関する研究を前年度及び前々年度に行い、主に論文の形で発表してきたが、今年度はMHPと思想的傾向は類似しつつも国家政党として長らくトルコを支配してきた共和人民党(CHP)を研究対象とした。その際、CHPのイデオロギーにおけるナショナリズム認識の変化はやはり既に確認したため、そのイデオロギー変化を実施した党エリートの変遷の有無について今年は確認し、学会発表の形で発表した。発表では、党イデオロギー変化の起こった時代、同時並行して党幹部の顔ぶれにも明確な変化が起こっていたこと、それは明らかに党内の権力闘争に起因することを明らかにした。前々年に行った党イデオロギーに関する研究成果と併せて、党内の権力闘争が党イデオロギーの変化に便乗し、党幹部の変化をもたらしたこと、それが第二共和制下での政党再編に繋がったと結論付けた。年度末に行った海外調査ではトルコ国外(主に中央ユーラシア諸国)における団体の活動に関する新聞や雑誌記事の収集、刊行物の購入を目的とする資料収集をイスタンブル市にて行った。これらの資料から、90年代以降国外での諸団体の活動が活発化したこと、それらは学校の開校や企業進出といった民間団体の活動に拠るところが大きいことが判明した。また、中でもイスラーム色の強さが特徴であることが分かった。
著者
菅沼 雅美 葛原 隆
出版者
埼玉県立がんセンター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ピロリ菌が分泌する発がん因子Tipαの受容体としてヌクレオリンを同定した。ヌクレオリンは本来核小体に局在するタンパク質であるが、胃がん細胞では異常に細胞表面に局在したヌクレオリンがTipαの受容体・輸送体として機能し、TipαによるTNF-α遺伝子発現亢進に関与することを明らかにした。胃がんの発症過程でヌクレオリンが細胞表面に異常に局在した細胞にTipαが作用してがん化を促進すると解釈する。ヌクレオリンとTipαとの相互作用は新しい胃がん発症機構である。
著者
川崎 政人 若槻 壮市 加藤 龍一 五十嵐 教之 平木 雅彦 松垣 直宏 山田 悠介 鈴木 喜大 RAHIGHI Simin ROHAIM Ahmed
出版者
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

NF-κBは、免疫、炎症、抗アポトーシスなどに関わる様々な遺伝子の転写を活性化する転写因子であり、NEMOにより活性化される。NEMOはLys63結合ユビキチン鎖と結合すると報告されていたが、意外なことにユビキチンが直列につながったタンデムユビキチン鎖により強く結合してNF-κBを活性化することが判明した。タンデムユビキチンとNEMOの複合体の結晶構造解析の結果、NEMOはコイルドコイル二量体の両面で2分子のタンデムユビキチンを対称的に結合しており、NEMOによるユビキチン鎖の選択的認識機構が明らかになった。
著者
佐藤 夏雄 山岸 久雄 宮岡 宏 門倉 昭 岡田 雅樹 小野 高幸 細川 敬祐 江尻 全機 田口 真 岡野 章一 元場 哲郎 田口 真 海老原 祐輔 利根川 豊 岡野 章一
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

オーロラは南北両半球の極域で起こっているが、その形が似ている場合や全く異なる場合がある。南極昭和基地と北極域アイスランドは1 本の磁力線で結ばれた共役点ペアの位置関係にある。この利点を最大限活用してのオーロラの形状や動きを同時観測し、南北半球間の対称性・非対称性の特性を研究してきた。特に、爆発的オーロラ現象のオーロラ・ブレイクアップとその回復期に出現する点滅型の脈動オーロラに注目して観測研究を行なった。交付額
著者
門倉 正美 岡本 能里子 奥泉 香
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

国際語用論大会(2009)および社会言語科学会大会(2010)での発表、「リテラシーとメディア・リテラシー」シンポジウム(2010)の開催等によって、言語教育における「見て理解するviewing(ビューイング)」要素の重要性を強調することができた。特に、視覚表現(例えば絵や写真など)と文字表現が複合した意味表現の理解のあり方、つまり「視解+読解」という意味での「視読解」の探究の端緒を切り開くことができた。
著者
中谷 武嗣 山岡 哲二 藤里 俊哉
出版者
国立循環器病センター(研究所)
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

体重約10kgのクラウン系ミニブタから下行大動脈(内径5mm、長さ10cm)を清潔下で摘出し、冷間等方圧印加装置にて超高圧を印加(980MPa、10min)することによって細胞を破壊した後、DNase及びRNaseを含む生理食塩水にて洗浄した。続けて、エラスチンの除去は、凍結乾燥して真空熱架橋後、エラスターゼ溶液内に浸漬することで消化した。この際、エラスターゼ処理時間を変化させることで、残存エラスチン量を調節しその効果を検討した。また、リン脂質の除去は、二酸化炭素を用いた超臨界流体処理によって行った。二酸化炭素に若干量のアルコールをエントレーナとして添加することによって、リン脂質を効果的に抽出することができた。得られた脱細胞化血管にブタ血管内皮細胞および平滑筋細胞を播種し、独自に開発した回転培養装置を、平滑筋細胞は組織内への細胞播種システムを基本とした。回転培養装置では表面のみでの細胞増殖が認められたため、内皮細胞へと応用した。組織はイブヘの細胞播種は、3D細胞インジェクターを利用して可能となったが、その後のリアクター培養による効率よい増殖効率までは至らなかった。作成した脱細胞化血管を1cm^2程度に分割し、ラット背部皮下に埋め込むことにより、脱細胞血管の最大の問題である石灰化の検討を行った。1〜3ヶ月経過後に摘出して、X線CT、および、元素分析による石灰化量を行った。その結果、脱エラスチン処理、および、冷間等方圧印加処理後の洗浄液からカルシウムイオンあるいはリン酸イオンを除去することで、石灰化を効率よく抑制できる可能性が見いだされ、ブタ移植実験により検証を進めている。
著者
山岡 哲二 馬原 淳
出版者
独立行政法人国立循環器病研究センター
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2008

フローサイトメーター(FACS)や磁気ビーズ法(MACS)より簡便で、かつ、特異細胞表面マーカーの「密度」に依存した連続的な分離が可能で、さらに、従来法のように幹細胞を抗体などで標識する必要のない新たな幹細胞分離用細胞ローリングカラムを開発した。白血球はその表面糖鎖と血管内腔のセレクチン分子との連続的な相互作用により、血管内壁をローリングすることで炎症部位へと集積する。本研究では、この細胞ローリング現象を応用して、幹細胞表面マーカーに対する特異抗体を内腔面に固定化したチューブ状カラムを作製し、単離間葉系幹細胞(MSC)を表面マーカー密度で分離し、各分画に存在する幹細胞の分化能特性を詳細に検討することで、従来よりさらに純度の増した幹細胞画分の分離を可能にした。また、非特異的相互作用を強く抑制するベタイン構造を表面抗体固定化部位に導入する事で、非特異的な強い細胞の相互作用が抑制され安定な細胞ローリングを再現することが可能となった。
著者
安仁屋 政武 幸島 司郎 小林 俊一 成瀬 廉二 白岩 孝行 リベラ アンドレ カサッサ ジーノ 和泉 薫
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

1998年は北パタゴニア氷原のソレール氷河とソレール河谷を対象とした研究が行われ、以下のような知見を得た。完新世の氷河変動の研究では、ソレール氷河とソレール河谷のモレイン分布調査から、ヤンガー・ドライアス(約10,500前)と2000BPの氷期が推定されるが、詳しくは年代測定結果が出るのを待っている。ソレール氷河では流動、表面プロファイル、歪みを調査し、さらに水文観測と気象観測を行い、氷河のダイナミクスとの関係を考察した。これにより、底面辷りが流動に大きな割合を占めていることが示された。さらに表面プロファイルの測定から、1985年以来、42m±5m表面高度が減少したことが判明した。年平均に直すと3.2m±5mである。1998年撮影の北パタゴニア氷原溢流氷河末端の空中写真から、1995年(前回調査)以後の氷河変動を抽出した。これによると、1つの氷河(サン・ラファエル氷河)を除き全てが後退していた。さらに1999年撮影の空中写真からは興味深いことが判明した。それは1990年以降唯一前進していたサン・ラファエル氷河が、1998年から1999年にかけて後退したことである。このことから、1990年以降の前進は、従来考えられていた1970年代の雨量増加というよりも、フィヨルドの地形と氷河ダイナミクスによる公算が大きくなった。1999年度の調査は南氷原のティンダール氷河の涵養域(標高1760m)でボーリングを行い、現地観察に加えて46mのアイス・コアの採取に成功した。詳しい化学分析はこれからである。ペリート・モレーノ氷河では写真測量によるカーピング活動の記録と氷河流動の推定、さらに湖面の津波観測によるカービング量の推定を行った。また、氷河周辺の湖の水深を測定した結果、深いところで80m程度であった。同じく、ウプサラ氷河が流入しているBrazo Upsalaの水深を測定したが、深いところは700m近くあり、氷河のカービングとダイナミクス、後退などを解析する上で重要なデータとなる。
著者
岸田 孝弥 久宗 周二 石井 満 武井 昭
出版者
高崎経済大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究における自動券売機調査の操作時間については、押しボタン式でも高年齢者は、中年層や青年層よりも時間がかかっていた。タッチパネル式にになると、中・高年齢層の操作時間は、青年層や子供らの年齢層との間で有意差が認められた。中・高年齢層はタッチパネル式の操作に手こずっている様子がうかがわれた。中途視覚障害者の自動券売機の利用状況についての調査では、87名の中途視覚障害者と56名の晴眼者に同一の質問を行い問題点を明らかにした。タッチパネル式自動券売機の障害者対応機器として設置されている音声ガイドは、使用経験のある障害者は58.1%に過ぎず、利用できない障害者が16.3%いた。テンキー入力装置については使用経験者は、52.3%に留まっており、利用できなかった人も23.3%いた。実際に切符を購入する際に、タッチパネル式の券売機を利用すると答えた視覚障害者は25.3%に過ぎず、62.7%がボタン式の券売機を利用していた事実をしると、タッチパネル式自動券売機の使いにくさをうかがい知ることができた。なお、視覚障害者が利用する頻度の多い現行のボタン式自動券売機でも料金表示の大きさについては82.0%の障害者が悪いと評価していた。障害者にやさしい自動券売機を設計することの必要性が分かった。この調査結果をもとに、弱視者12名について、タッチパネル式自動券売機の利用時の行動分析について実験的研究を行った。弱視者によると、タッチパネルの背景色は、橙、ボタンの色は黒の組み合わせが最も良い評価された。ボタンの形については、弱視者の立場から考えると、大きいものが明らかに良いとされていたが、実用性や社会的な適応性から考えると、余り大きさだけにこだわるわけにはいかない。となるとボタンごとの間隔や文字の間隔を工夫することが必要であろう。最後に男女大学生10名、弱視者8名により、ATMのユーザビリティについて実験を行った。タッチパネル式ATMの電話型および計算機型の入力方式について検討したところ、数字の1にオレンジの色を着色した色付にすると操作性が上することがわかった。しかし、この程度では弱視に対してはそれほどのサポートにはならないことも確められた。自動販売機のレベルに、自動券売機やATMが近づくために、現場、現物、現実をベースとした地道な調査による開発のための資料の収集が必要となろう。
著者
湯山 賢一 西山 厚 鈴木 喜博 岩田 茂樹 内藤 栄 稲本 泰生 吉澤 悟 宮崎 幹子 谷口 耕生 野尻 忠 研清水 健 岩戸 晶子 斎木 涼子 北澤 菜月 永井 洋之 中島 博 有賀 祥隆 前園 実知雄 東野 治之 根立 研介 藤岡 穣 高橋 照彦 山崎 隆之 梶谷 亮治 杉本 一樹 成瀬 正和 尾形 充彦 西川 明彦 森實 久美子 原 瑛莉子
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

「奈良朝仏教美術の主要作例、もしくはその国際性を考える上で重要な周辺作例の中から対象とする文化財を選定し、それらに関する基礎資料を学界の共有財産として提供する」という目的に沿って調査研究を行い、22年度末に5部構成・2分冊からなる研究成果報告書を刊行した。薬師寺に伝来した藤田美術館所蔵大般若経(魚養経)全387巻の撮影及び書誌的データの集成、蛍光X線分析による香取神宮所蔵海獣葡萄鏡や東大寺金堂鎮壇具の成分分析を通した制作地の特定などが、代表的な成果である。
著者
小林 和人 小林 憲太 甲斐 信行 八十島 安伸
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題では、イムノトキシン細胞標的法を利用して、弁別学習の発現における2種類の線条体投射経路の行動生理学的な役割を解析した。線条体-黒質路を除去したマウスの解析から、線条体-黒質路は、主に、弁別学習の反応速度の促進に関与し、反応の正答率には顕著な影響を及ぼさないことが示唆された。また、線条体―淡蒼球路を除去したラットの解析から、線条体-淡蒼球路は、弁別学習の正答率の向上に主要な役割を持ち、反応速度には顕著な影響を及ぼさないことが示唆された。