著者
石田 竜弘 異島 優 安藤 英紀
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

中分子医薬品であるバイオ医薬品の経口投与技術の開発が切望されている。最大のバリアである小腸での吸収性を改善させるため、界面活性剤、キレート剤などの透過促進剤が提案されてきたが、中分子医薬品の吸収改善には至っておらず、実用化に進む可能性のある技術の開発は未達である。本研究では、バイオ・医療応用がなされていないイオン液体をキャリアとし、腸管上皮細胞の突破という最も大きな課題を解決し、中分子医薬品の経口投与法を開発する。
著者
三宅 昭良
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

今回の研究によって、エズラ・パウンドのファシズム傾斜の全容、ウィリアム・ダッドリー・ペリーの心霊主義とファシズムの関係、ペリーのパウンドにあたえた影響は解明できた。パウンドにおいては<アメリカ>という問題がきわめて重要である。理想の<アメリカ>が現実の歴史と政治から失われてゆく思いから、ファシズムと反ユダヤ主義に傾倒してゆくのであった。その課程で、ペリーの「南北戦争とリンカーンの死の秘密」という論文を読んだことが、パウンドにとっては決定的であった。南北戦争というアメリカ史上最大の国家的危機がユダヤ人による陰謀であったという暴論に衝撃を受け、「ユダヤ人問題」の研究に彼ははいるのである。その意味でペリーの反ユダヤ主義が詩人にあたえた影響は重大である。ペリーのファシズムは反ユダヤ主義思想、銀シャツ党の活動、心霊主義、経済改革論の4つの柱から成る。今回の研究では銀シャツ党の活動の概要、心霊主義の核心、そして心霊主義と反ユダヤ主義、さらに経済改革論とそれらの関係の解明を試みた。彼の人種理論はグラントなどの黄禍論的人種主義と同種のものであるが、それに宇宙論的妄想をかぶせたところにその特徴がある。すなわち、地上にさまざまな人種が存在するのは、宇宙から人類の祖先が移住してきたところに原因があるとする説である。そしてユダヤ人を含む黄色人種は「優秀な支配人種たる白人種を脅かす危険な存在」という、例の黄禍論に接続するのである。また、ペリーの経済改革論は実行不可能な空想的ユートピアにすぎず、オカルト的人種論と同じメンタリティの所産であることがよく分かる内容である。そしてこの建設的価値が彼の反ユダヤ主義を支えるもうひとつの思想的軸なのである。
著者
川脇 沙織(田中沙織) 大竹 文雄 成本 迅 山田 克宣
出版者
株式会社国際電気通信基礎技術研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

満足度・幸福度が生物学的指標で記述できるかを検証した。経済的な満足度を測定する実験課題の作成および脳活動データ、経済学・社会・生物学的属性データを収集し、経済学・社会・生物学的属性と満足度に関連する脳活動との関係を明らかにした。頭頂皮質と線条体が主観的効用の表現にかかわり、また島皮質と背外側前頭前野が社会的効用にかかわりかつ性別という個人属性によってその活動が異なることを明らかにした。これらの幸福度に関わる脳部位の具体的な機能の検証を行うためにfMRIによるニューロフィードバック実験を検討し、主観的効用に関わる線条体の活動の変化とそれに伴う意思決定行動の変化を示唆する予備的な結果を得た。
著者
苅部 甚一
出版者
近畿大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

H30年度は,放射性ストロンチウム(Sr)汚染地域を流れる請戸川の上流域の小河川において,環境試料(河川水,魚類,河川周辺の土壌等)の採集を行い,土壌,河川水,魚類(骨)に含まれる放射性Sr濃度の時間変化および移行プロセスについて検討した.その結果,H30年度に採取した土壌,河川水,魚類の骨の放射性Sr(Sr-90)濃度がH27,28年度の値とそれほど変わっていないことが明らかとなった.また,この小河川の下流域と源流部の湧水,土壌のSr-90濃度を調べたところ,H28年に採取した小河川下流部の河川水におけるSr-90濃度に比べて下流域の湧水が高く,源流域の湧水は低いという傾向を示した.同時に採取した土壌のSr-90は下流域が高く,源流域で低い結果となった.このことは,この小河川における福島第一原子力発電所事故由来の放射性Srの供給源の一つとして,この小河川下流域に広く分布するSr-90を高濃度に含む土壌が考えられ,それらの土壌から湧水を通じて原発事故由来の放射性Srが小河川に供給されている可能性を示している.以上の結果から,請戸川上流域の一部地域では,未だに土壌中に多くの原発事故由来の放射性Srが残存し,そこから湧水等を通じて河川へと放射性Srが移行していること,そして,最終的にその河川に生息する生物(魚類)への移行が続いていることが考えられる.河川への原発事故由来の放射性Sr供給源の一つと考えられる土壌のSr-90濃度の低下傾向が確認できていないため,今後もこの地域における放射性Sr濃度が高い状況が続く可能性が考えられ,放射性Srの今後の挙動を把握するためにも長期的な調査の継続が必要だろう.
著者
國枝 武和
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究課題では、耐性能力の異なる複数のクマムシのゲノム・トランスクリプトームデータを基に新規耐性遺伝子の探索を進めている。本年度は、乾燥耐性の非常に高いクマムシ種で常時高発現し、耐性誘導型のクマムシでは乾燥暴露によって発現が有意に誘導される新規タンパク質を同定し、RNAi 法を用いて同タンパク質のクマムシの乾燥耐性への寄与を検証した。同タンパク質は相同性検索においてクマムシ類の一部の配列とは明瞭な相同性を示すものの、クマムシ以外の生物に由来する配列には相同性が見出されず、クマムシ類に固有のタンパク質であることが判明した。耐性の高いクマムシの同タンパク質に対する抗体を作成し、細胞内局在を解析した。また、同種では RNAi による耐性への影響は観察されなかったが、耐性誘導型のクマムシを用いたRNAi実験では、乾燥・給水を特定の条件で行った際に乾眠後の回復率が有意に低下することが分かった。同タンパク質は乾燥からの生体分子の保護に寄与していることが考えられる。また、前年度までに同定していたクマシム固有のDNA防護タンパク質Dsupについて、より詳細な生化学的な解析を行ったほか、DNA やヌクレオソームと混合した状態で分子間力顕微鏡を用いた解析を行い、それぞれに対する結合様式を明らかにした。特にヌクレオソームに対してはDNA単体よりもより低濃度で顕著な形態変化を誘導することを見出し、Dsupがヒストンと協調してDNAに結合/高次構造を変化させることを明らかにした。
著者
氏家 等 村上 孝一 出利葉 浩司 小林 考二 矢島 睿
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

積雪地帯における伝統的有形民俗資料の比較研究調査は, カンジキと除雪具を対象に青森県, 岩手県, 福島県, 秋田県, 山形県, 富山県, 石川県, 福井県, 長野県, 北海道を中心に調査を行った.カンジキは, いわゆる竹を曲げた単輪型が本州における共通した形態であった. 中でも新潟県山間部, 北陸地方を中心に分布するスカリとその類似型は最も大型のカンジキであり, スカリの上にさらに小型のカンジキをはくといった重複型は, 豪雪地帯における最も大きな特色であった.これに対し, 北海道では前輪と後輪で構成するいわゆる複輪型のカンジキが主流であった. また, 新潟県山間部から移住した人々の場合も, 単輪型のカンジキよりも複輪型カンジキを使用している. このことは, 両地域における雪質の相異が最も大きな要因と考えられる.北海道アイヌが使用したヒョウタン型カンジキは, 岩手県北部, 青森県南部にも分布していた. しかし, この関連性については, 今回の調査でも解明できなかった. また, 八戸市是川遺跡出土のカンジキは, カンジキであるかどうかが問題であり, これらの問題を解明するてがかりにはならなかった. 本州における除雪具は, 一枚板で製作する雪ベラ, コスキ(木鋤)が主流であった. 柄が2m前後ある長いものは, 岩手県から北陸地方の山間部にみられ, 屋根の雪おろしに使用するものであった. また, 日本海沿岸部, 山間部の雪ベラは, ブナ材を使用することも大きな特色であった.これに対し, 北海道では, 箱型状の雪ベラが主流であった. また, 1枚板のコスキを使用していた人々も移住後は箱状の除雪具を使用している. これらの要因もやはり雪質の相異によるものと考えられる.
著者
和田 洋一郎 神吉 康晴 興梠 貴英 大田 佳宏
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究において、我々は動脈硬化初期病変のモデルである炎症性刺激によって刺激した内皮細胞における遺伝子発現の誘導と収束のメカニズムを研究した。誘導された転写におけるRNA産生を詳細に観察し、RNAポリメレースII(PolII)の局在変化を経時的に観測したところ、刺激が加わるとmRNA産生に先立って、組織化されたPolIIによる転写が転写開始点から遺伝子終末まで進行していた。この時転写誘導される代表的遺伝子群において、遠隔相互作用が引き起こされていた。ヒストン修飾や主要転写因子の結合部位情報と、全ゲノムクロマチン相互作用解析によってクロマチン構造変化を検討したところ、刺激開始直後から遺伝子間、制御領域間での相互作用がダイナミックに変動している様子が明らかになり、炎症刺激以外でも普遍的な原理であることが示された。
著者
渋谷 健司 Rahman Mizanur 野村 周平 田淵 貴大 山本 依志子 坂元 晴香 齋藤 英子 米岡 大輔 井上 真奈美 永田 知映 西浦 博
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

死亡・障害を含む包括的かつ比較可能な保健アウトカム(Burden of Disease:疾病負荷)の分析は、保健政策立案や研究開発の優先順位決定に必須の情報であるが、我が国では政策への活用は未だ限定的である。本研究は、研究代表者らによるこれまでの日本における全国及び都道府県レベルの疾病負荷に関する研究成果をさらに発展させ、最新の疾病負荷推計を用いて、現在懸案事項となっている主な施策(地域医療構想、医療費、健康格差、医療の質、医師の働き方改革、イノベーション戦略)に直接資する分析を行う。さらに、分析結果をより多くの政策立案者や研究者、一般の方が利用できるように分析データのビジュアル化を推進する。
著者
北山 峰生 藤原 学 竹村 忠洋 山岡 邦章
出版者
奈良県立橿原考古学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

煉瓦の製作技術を反映する痕跡が、製品の外面にどのように現れるかを確認した。その視点にもとづき、明治時代から大正時代にかけての、煉瓦生産の技術的推移を検討した。その結果、一般に言われているような生産工程の機械化は、関西地方では一般的ではないことが明らかとなった。このことから、従来の研究で構築された大手企業の記録に基づく枠組みでは、産業の実態を捉えられていないことを指摘できる。
著者
齋藤 文俊
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、明治初期という、漢文訓読体が優勢であった時代に、「日本語」がどのように意識されていたのかを明らかにするため、漢訳聖書の影響をうけて翻訳された複数の「聖書」を資料としてとりあげ、漢文訓読語法や当時の俗語などの「やさしい日本語」がどのようにその中に含まれているのかを調査していく。また、同じように漢訳聖書の影響を受けた、近代の韓国(朝鮮)語訳聖書の場合と比較考察していくことにより、多角的に明治初期における「日本語意識」の形成過程を明らかにしていくことを目指している。2年目である平成30年度においても、明治期における聖書翻訳に関する先行研究の整理を行うとともに、基本資料の収集と整理を行い、データベース作成準備を行った。これらの作業は、3年目の平成31年(令和元年)度においても継続して行っていく。さらに、今年度においては、聖書以外の翻訳小説にも調査範囲を広げ、特に、漢文訓読体で翻訳された『欧洲奇事花柳春話』と、和文体で書かれた『通俗花柳春話』を対照させ、その中で用いられている漢文訓読語法を調査することにより、両者に見られる日本語意識についても考察を行った。その成果の一部は、「明治初期における聖書の翻訳と日本語意識──漢文訓読語法「欲ス」を例に──」(沖森卓也教授退職記念『歴史言語学の射程』2018年11月、三省堂、PP.497-506)として発表した。明治初期には、このように、同一の内容を漢文訓読体で記したものと、「通俗」という角書を付して、易しい文体で記した小説類が複数存在するので、それらを調査することにより、明治初期の日本語意識を解明していくことが可能になる。
著者
関根 達人 榎森 進 菊池 勇夫 中村 和之 北野 信彦 深澤 百合子 谷川 章雄 藤澤 良祐 朽木 量 長谷川 成一 奈良 貴史
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

中世・近世の多様な考古資料と文献史料の両方から、津軽海峡・宗谷海峡を越えたヒトとモノの移動の実態を明らかにすることで、歴史上、「蝦夷地」と呼ばれた北海道・サハリン・千島地域へ和人がいつ、いかなる形で進出したかを解明した。その上で、「蝦夷地」が政治的・経済的に内国化されていくプロセスを詳らかにし、そうした和人や日本製品の蝦夷地進出が、アイヌ文化の形成と変容にどのような影響を与えたか考察を行った。
著者
関 明穂 鈴木 久雄 中塚 幹也
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

性同一性障害の人の体力・運動能力測定を前年度に引き続き実施した。これまでに測定に協力していただいたのは20歳代のトランス女性で、全員がホルモン療法を受けていた。測定を行った人の体格、体力・運動能力測定の結果は、同年代の男性・女性の基準値がオーバーラップしている範囲内であったが、測定数が少ないため、さらに例数を増やして検討を行う必要がある。また、性同一性障害・トランスジェンダーの人がマラソン大会に参加することについてのアンケート調査を、大会の主催者を対象として実施した。449件(回収率47%)の回答のうち、時間計測を行っていて男女別の種目があるとの回答があった395大会について分析した。これまでに性同一性障害・トランスジェンダーの人が参加したことがあるとの回答が14大会(3.6%)からあった。もし、性同一性障害・トランスジェンダーの人から「男女どちらのカテゴリーで参加可能か」との問い合わせがあった場合、どう回答するかを聞いたところ、「本人の申告する性別で参加してもらう」が約4割で最も多く、次いで「その人の状況に応じて判断する」「戸籍上の性別で参加してもらう」の順であった。また、性同一性障害・トランスジェンダーの人がマラソン大会に参加する場合に問題が生じる可能性があることとして、約8割が「更衣室」を、約6割が「トイレ」「上位入賞時の扱い」「男女どちらのカテゴリーで参加するか」と回答していた。マラソンは順位を争う競技スポーツの側面と、多くの市民ランナーが参加する健康スポーツの側面とを有している。マラソン大会の主催者は健康スポーツの観点から多くの人に本人の希望に添った形で参加してもらいたいとの思いがある一方で、競技スポーツの観点から競技の公平性を保つために、どのような条件で性同一性障害・トランスジェンダーの人の参加を認めるのがよいのかが課題であると考えているものと思われた。
著者
成田 年
出版者
星薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

慢性疼痛は適切な初期治療ストラテジーを見出せない場合において、長期的な遺伝子変動を伴った難治性の疾患となる。近年、様々な孤発性難治疾患の発現メカニズムとしてゲノムに書かれた遺伝情報が変更されることなく、個体発生や細胞分化の過程において遺伝子発現が制御される、いわゆる「エピジェネティクス」現象が注目されるようになってきている。本研究では、慢性疼痛におけるエピジェネティクス修飾の網羅的解析を行うことで、エピジェネティクス修飾による細胞の長期的基質変化が慢性疼痛の発現に寄与することを明らかにした。
著者
塚本 康浩
出版者
京都府立大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

マウスやウサギの蛋白質はヒトとの類似性が高いために、ヒト由来抗原に対する抗体が作製困難となる場合が多くある。また、哺乳類を用いた抗体作製はコストが高いために、抗体の工業的使用には不適とされている。本研究では哺乳類とかけ離れている大型鳥類“ダチョウ"に焦点を当て、哺乳類(マウスやウサギ)では作製することが出来ない有用抗体を、高精度でかつ低コスト・大量に作製する方法を見出し、これにより、ロット間差の少ない優れた医療用抗体(獣医畜産および医学領域における診断用・治療用)の供給へと実用化をはかることを目的とした。特に、癌治療用抗体、感染症・食中毒病原体検出用抗体の大量作製法の開発を試みた。本年度は、肺癌細胞に強発現する細胞接着分子SC1に対するダチョウ抗体を作製し、動物実験による癌治療効果を検証した。その結果、ダチョウ抗体の投与により肺癌細胞の転移が抑制されることを見出した。今後、治療薬としての有用性を詳細に検討する必要がある。特に、ダチョウ抗体分子を酵素により切断し低分子化することで個体投与における安全性をあげる必要性がある。さらに、ノロウイルスの組み替え蛋白をバキュロウイルスベクターを用いた実験系により作製し、それを抗原としてダチョウに免疫することで産卵されたダチョウ卵の卵黄よりノロウイルス特異抗体を大量に回収することに成功した。今後、ノロウイルス診断および予防用薬品としての応用化を図っていく予定である。
著者
佐藤 征弥 瀬田 勝哉
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、イチョウが日本に伝来し、広がっていった歴史をDNA分析や木にまつわる伝説を調査することにより明らかにすることを試みた。そして日本、韓国、中国でイチョウのDNAタイプの相違点を見いだし、伝播ルートについて考察した。また巨樹の文献史料の調査により、日本と朝鮮半島におけるイチョウや他の巨樹の伝説の相違点を見つけ、その背景にある文化や歴史の違いを明らかにした。
著者
日下 渉 初鹿野 直美 伊賀 司 小島 敬裕 宮脇 聡史 今村 真央 日向 伸介 北村 由美 新ヶ江 章友 青山 薫 小田 なら 田村 慶子 岡本 正明
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

世界各地の国家と市民社会は、性的マイノリティに対して「黙認」「抑圧」「矯正」「支援」など多様な対応をとってきた。なぜ国家と市民社会による性的マイノリティへの対応は、かくも多様なのか。一般に西洋では、民主主義と自由な市民社会が性的マイノリティの権利拡大に寄与するとされる。しかし東南アジアでは、性的マイノリティの権利要求は、民主主義体制のもとで何十年も放置されたり(フィリピン)、暴力的な弾圧されたり(インドネシア)、一党独裁制や軍政の下で進展を見せたり(ベトナム、タイ)、権威主義体制下で限定的に認められることもある(シンガポール)。このように、性的マイノリティの権利拡大の異なる程度は、政治体制の違いや市民社会の自由度からでは説明できない。本研究では、諸国家と市民社会による性的マイノリティへの異なる対応は、国民国家の正統性を支える「象徴」として、彼女/彼らがどのように利用されているかによって説明できるのではないかと仮説を立てて研究してきた。本年度は、6月にアジア政経学会において「アジアにおける性的マイノリティの政治:家族・宗教・国家」と題したパネルを開き、田村慶子が台湾とシンガポールについて、伊賀司がマレーシアについて、宮脇聡史がフィリピンについて、それぞれの事例を報告した。10月中旬には合宿を行い、2日間にわたってメンバー全員が報告を行い、共通の課題について徹底的に議論した。10月末には、マレーシアからPang Khee Teik氏 、インドネシアからAbdul Muiz氏を招いて、国際ワークショップを開催した。翌年2月にも、マレーシアからtan beng hui氏、フィリピンからJohn Andrew G. Evangelista氏、オーストラリアからPeter A. Jackson氏、タイからAnjana Suvarananda氏を招聘して、国際ワークショップを開催した。
著者
乾 敏郎 得丸 定子
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

催眠の認知神経科学的研究をレビューし、催眠研究において暗示の効果が脳活動のどのような側面に現れるのかを整理検討した。さらに、最近の瞑想の認知神経科学的研究をレビューし、瞑想初心者vs.熟練者との比較を通し、静止vs.瞑想状態におけるデフォールトモードネットワーク(DMN)内の機能的結合度、脳各領域における活性化/非活性化、共振性、結合度などを検討した。これらをふまえて、自由エネルギー原理に基づくそれらの脳内メカニズムに関する統一理論を提案した。