著者
有井 敬治 三ツ井 貴夫 川村 和之 橋 逸郎 梶 龍兒
出版者
独立行政法人国立病院機構徳島病院(臨床研究部)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

最近、太極拳がパーキンソン病の症状を改善させることが報告されている。我々はパーキンソン病をはじめとした神経難病に対する独自のリハビリテーションを開始した。その中で、パーキンソン病のための独自の太極拳メニューを考案し、入院患者のリハビリテーションに取り入れている。本研究は、入院患者のみならず外来患者も自宅で容易にトレーニングできるようにするための太極拳DVDを作成することを計画した。その結果、前回作成した初級編DVDと平行してして、比較的軽症で自立度の高い患者を対象にした上級編パーキンソン病太極拳DVDを製作した。これにより個々の障害程度に合わせた太極拳運動のセルフトレーニングが可能になった。
著者
梶原 智之
出版者
大阪大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2018-08-24

2020年の東京五輪に向けて、機械翻訳の精度向上が急務である。従来の機械翻訳は、翻訳文と正解文の単語単位の一致率を最大化する訓練を行ってきたが、この正解文は数ある正しい翻訳の表現の一例に過ぎない。本研究では、マルチモーダル品質推定によって正解文の表現に依存しない訓練を行い、機械翻訳を高度化する。本研究の背景には、対訳などの大規模なテキストとテキストの対応データが一部の言語でしか利用できない一方で、SNSの普及により画像とテキストの対応データが多くの言語で大規模に利用できるという利点がある。
著者
小西 いずみ
出版者
東京都立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度は以下の研究を行なった。1.面接調査の結果の分析:奈良田の伝統的方言の音韻・語彙・文法および言語生活について,これまで行った調査のデータを整理し,分析した。また,高年層男性話者1名による,特徴的な音韻・音声を含む単語の発話や,文法上の特徴を含む短文(主に国立国語研究所編『方言文法全国地図』1〜6集の質問文を参考にした)の発話を録音し,文字化・分析した。2.自然談話の収集とその分析:奈良田方言の高年層女性話者1名による昔話の語り,高年層話者どうしによる自然対話を収録し,その文字化・共通語訳付与を行なうとともに,そこに現れる音韻・語彙・文法上の特徴を分析した。3.奈良田方言について触れた書籍,研究論文,新聞・雑誌の記事データベースを作成した。また,その内容について,奈良田方言研究史という視点,方言研究が地域住民の言語意識に与える影響という視点から分析・考察した。4.成果の発表:(1)上の1,2で得た音声を電子化・編集し,奈良田方言音声データベースを作成した。その一部をHTML化し,web上で公開しており,また,同様の内容を収めたDVD-ROMを作成し,調査地や研究機関に配布する予定。(2)上の1,2,3の成果にもとづき,近年の奈良田方言のアクセント変化および方言併用・切替の状況について,考察した(小林隆編『シリーズ方言学』岩波書店に掲載予定)。
著者
北村 歳治 佐藤 次高 店田 廣文 桜井 啓子 山崎 芳男 吉村 作治 長谷川 奏 及川 靖広 鴨川 明子 高橋 謙三 保坂 修司 北村 歳治
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

1)系譜研究:農業分野では精糖技術の復元、窯業分野ではイスラム陶器の分析研究、薬学分野では医薬技術と社会意識との接点の研究を通して、前イスラムの時代から近代直前期まで幅広い時代のイスラム技術の系譜が紐解かれた。2)広域研究:中東イスラム、東南アジア、中央アジアの動向分析を通して、地域に育まれた豊かな経済が新たな資源の登場によって消滅していく過程や、イスラム圏の各地でITがさまざまな形で積極的に利用されている動向も明らかになった。
著者
水上 雅晴 小幡 敏行 鶴成 久章 名和 敏光 末永 高康 武田 時昌 石井 行雄 近藤 浩之 高田 宗平
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

平成29年度も年号資料の調査と考察を継続するかたわら、研究組織の構成メンバーは、国内外での学会に積極的に参加し、研究報告を行った。特筆すべきは、国立歴史民俗博物館において、三つの大きな行事を実行したことである。それは特集展示「年号と朝廷」、歴博フォーラム「年号と日本文化」、国際シンポジウム「年号と東アジアの思想と文化」である。特集展示を実施するためには、展示物の選定、展示パネル、解説シートや広報用ポスターの作成など多岐にわたる準備が必要であったが、研究組織として十分な協力体制を築くことができたので、研究成果を社会に還元する上で大きな意味を持つ事業を成功させることができた。研究報告がなされた歴博フォーラムと国際シンポジウムにも多くの参加者が集まり、研究成果を可視化し共有する面で大きな進展が見られた。同じく二十名を超える研究者からの報告がなされた国際シンポジウムは、報告者の中から第二回目を実施してほしいと声が挙がってきたばかりか、参加者として会場にいた出版社の編集者から論文集出版に関する相談がなされたほどの盛況であった。そこで、当初の計画には無かったが、次年度にも年号に関する学術会議を開催することに加え、論文集の出版準備も進めることを決めた。これまで三年間準備を進めてきた年号資料の影印出版事業が『日本漢学珍稀文献集成(年号之部)』(上海社会科学出版社)全5冊、5千頁が本年度内に出版されたことで、研究計画を構成する大きな柱の一つが完成した。収録した資料に対する解題を日中二カ国語で記したので、国際的な学術成果の発信も行うことができた。
著者
柿嶌 眞 保坂 健太郎 阿部 淳一ピーター 大村 嘉人
出版者
筑波大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

福島第一原子力発電所の事故から4年間、自然界における放射性物質の動向を解明するため、茨城県(つくば市を中心に)、福島県、栃木県、宮崎県、千葉県などできのこ類、地衣類、植物寄生菌類の放射能の生物モニタリングを行なった。その結果、きのこ類では腐生性よりは菌根性の方が放射能が高く、地衣類ではきのこよりも平均的に10倍高く、事実上放射性セシウムのミニホットスポットである。植物寄生菌類では特にサツキツツジもち病菌の罹病葉が健全葉より2倍高いことが明らかになった。一般的な傾向として事故後2年まで菌類や地衣類の放射性セシウムの放射能は徐々に減少したが、現在は、放射能はほぼ安定し、減少率が低い。
著者
泉 美貴 檜垣 祐子 檜垣 祐子
出版者
東京医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本邦では, 多くの女性医師が早期に離職しており, 昨今の医師不足の一因である可能性があるが, その詳細なデータは存在しなかった. 本調査は2校の私立医科大学を卒業した女性医師全員に郵送法によるアンケート調査を実施した. 離職を経験したことのある女性医師は73%に達し, その85%が卒後10年以内に離職していた. 原因は, 妊娠・出産との両立の困難な労働環境であった. 一方, 常勤の女性医師で, 助手以上の役職に就いている医師は, 12.4%, 教授は1人もいなかった. 女性医師が継続的な就労を可能とする労働環境の整備が急務であると考えられた.
著者
今津 節生 森田 稔 河野 一隆 鳥越 俊行 市元 塁 樋口 隆康 廣川 守
出版者
独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、九州国立博物館に設置した文化財用の大型X線CTおよび精密三次元デジタイザを活用し、非接触非破壊で中国古代青銅器の構造を解析することによって、製作技法の研究を飛躍的に進めることを目的にしている。これを達成するために、世界有数の中国古代青銅器を保有する泉屋博古館(住友コレクション180点)と協力し、中国古代青銅器の内部構造データを系統的に集積した三次元デジタルアーカイブを構築した。研究成果として、国内外の学会で研究発表を行った。また、一般市民への研究成果公開として、アジアが誇る卓越した古代技術を分かり易く紹介する展示会を開催した。
著者
岩本 馨 松山 恵 岸 泰子 初田 香成
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

平成29年度は前年度に議論した大方針をふまえて、より具体的なレベルでの項目検討を行った。計3回の研究会を開催したが、今年度は分担者の松山恵が在外研究で日本を離れていたので、研究会での議論は他の3人で行い、松山とは事前・事後のメールによって議論を共有し、意見交換を行うかたちをとった。まず第1回研究会は2017年7月4日に京都工芸繊維大学で開催した。この日は全員が図化のパイロット版を作成して持ち寄り、構成について議論を行った。図化にさいしては、都市史の通史的把握上基本となる図と、詳細・分析的な図を作成し、また時代や地域を横断するような分析も行うという方針を定めた。また基軸となる縮尺を定めることで、異なる項目間の図版の比較にも留意することとした。つづいて第2回研究会は9月26日に京都工芸繊維大学で開催した。この日は第1回の議論をふまえて、岸が古代・中世、岩本が近世、松山が近現代(前半)、初田が近現代(後半)を担当として、図化すべき項目案を作成し、持ち寄り議論を行った。このときの項目案はひとまず網羅的に列挙したものであったので、第3回研究会を12月15日に京都府立大学にて開催し、項目数の絞り込みと具体的な作図対象候補についてさらに詳細な議論を行った。ここでは、地方都市研究の成果の盛り込み、隣接他分野の視点の必要性について議論がなされた。今年度の議論により、図化の小方針も固まったので、最終年度はいよいよ個別の項目について、研究者を招いての議論と作図を進めていきたい。
著者
坂口 英
出版者
岡山大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

本研究ではまずはじめに,後腸発酵動物(モルモット,デグー,オオミミマウス,マーラ,ヌートリア,ハムスター,ハタネズミ,ラット,ウサギ)のADF消化率と消化管内容物滞留時間との関係を検討した.その結果,繊維の消化能力は微生物発酵槽である大腸の内容物貯留能に支配されるが,それぞれの動物の消化管によって異なる貯留機能が備わっており,繊維消化能はその機能に応じて異なることが示された.また,ウサギの消化管機能は飼料の物理性,特に粒子サイズに大きく影響され,飼料繊維の消化率の変動は他の後腸発酵動物とは異なった要因によってもたらされることが明らかになった.次に,異なる大腸内容物貯留機能と繊維消化能力を備えた動物種間で,消化管内微生物活性にどのような違いがあるかを検討するために,同一飼料を与えたラット,モルモット,オオミミマウスの大腸内容物中の繊維分解菌数,有機酸組成,大腸内微生物の繊維分解活性等を調べた.繊維分解菌数は繊維消化能力の高いモルモットが必ずしも多くなく,短鎖脂肪酸組成,短鎖脂肪酸総量,セルロース分解活性にも動物種間差が認められ,これら3動物種の盲腸内セルロース分解菌の種類と性質に差異があることが示された.しかしながら繊維の消化能力とこれらの微生物に関わる測定結果との一定の関係はつかめなかった.以上のように本研究で調べた齧歯類間の繊維消化能力の違いは,動物の持つ盲腸内セルロース分解菌数と活性からだけでは説明することはできないことが示唆された.繊維分解の動物種間差は,セルロース分解菌群が存在する発酵槽(盲腸)へ流入する内容物(基質)の質的な違い,セルロース分解菌を効率よく保持できる消化管構造と機能の有無などによってもたらされるものと考えられる.
著者
吉澤 孝幸
出版者
大仙市立大曲中学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

1. 研究目的 : 本研究では、授業改善の手段として「CAN-DOリスト」を取り入れることで、生徒のスピーキング力や教師の組織的な指導力の向上にどのような効果が見られるのかを検証することを目的とした。2. 研究方法 : 研究を実施するにあたり「拠点校・協力校制度」を活用し、拠点校及び協力校2校の中学3年生247名を対象とした。共通の実践内容として、スピーキングの前に原稿を書かず、メモから英文を口頭で構成するという手法を取り入れ8ヶ月間授業を実践した。拠点校においては「CAN-DOリスト」を到達目標として生徒に意識させ指導を行った実験群と「CAN-DOリスト」を評価の手段にのみ活用した統制群に分け授業を行った。これら試みを量的に検証する手段として、4技能で構成される外部テストを活用した。3. 研究成果 : ライティングにおいて生徒が書いた「文の数」、スピーキングテストにおける「アティチュード」の得点、そして「英語の問いに対する応答」の正答率において、実験群の方が統計的に有意に高い傾向が見られた。次に、共通の指導に対して、拠点校と協力校の生徒間で意識の差が生じるのかを検証するために質問紙を実施しクロス集計を行った。その結果、3校の生徒間でリッカート尺度の積極的肯定的回答に有意差は認められず、3校とも積極的肯定の割合が高いことが認められた。このことから、導入した指導方法は、拠点校・協力校とも同じ程度の影響をもって取り入れられたことが明らかになった。本研究から「CAN-DOリスト」は4技能以外の情意面にも影響を与え、教室における積極的な行動様式を生み出す可能性を示すことができたことは大いに意義があったと言える。また、拠点校が協力校への波及効果の程度や、受け入れ側の教員はどのような意識をもっているかを明らかにできたことで、今後の事業を継続していく上でも有用な情報となると考えている。
著者
宇田川 真之
出版者
公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

災害の危険を知らせる防災情報は、音声で伝達されることが一般的であり、聴覚障害者には届かないことが多い。さらに、高齢の聴覚障害者は手話を第一言語とし、難解な文章による防災情報の理解ば困難な者も少なくない。そこで、聴覚障害者にわかりやすいこと、適切な防災行動を促進すること、行政機関が実務的に作成・発信できることの3つを要件とした文章とイラストによるFAXを試作し、必要となる情報項目・表現・構成等を明らかにした。
著者
竹村 和久 岩満 優美
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

これまで描画や風景構成法は、解釈における客観性が乏しいという問題ががあったため、本研究では、社会的認知を測定するための投影的方法ついての統計的画像解析技法を提案した。本研究では、(1)画像の走査と分割、(2)濃度ヒストグラム法(GLHM)、空間濃度レベル依存法(SGLDM)、濃度レベル差分法GLDM)などのテクスチャー解析、(3)特異値分解、(4)フーリエ解析、(5)風景構成画や描画の心理的解釈という手続きである。我々は、今回提案した統計的画像解析で分析を行い、心理過程を考察した。併用した不安や抑うつに関する心理テストなどからも、これらの画像特徴との関係性があることがわかった。
著者
星 史雄
出版者
北里大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

ネコ組織からAGPC法を用いてTotal-RNAを抽出し、Oligo-dTラテックスビーズ法を用いてmRNAを精製した後、ネコKlf4、Oct3/4、Sox2、およびAQP2遺伝子クローニングに成功した。ネコKlf4、Oct3/4、およびSox2は、pCl-neo Mammalian Vectorに挿入され、ネコ皮膚の初代線維芽細胞に導入を試みたが、iPS細胞の作出はできなかった。ネコAQP2は、pTrancer-EF-Bsdに挿入し、CrFK細胞と293細胞に導入したところ少数ではあるが、高発現GFP細胞が分離でき、有意に水分吸収量の増加がみられた。
著者
池澤 優 近藤 光博 藤原 聖子 島薗 進 市川 裕 矢野 秀武 川瀬 貴也 高橋 原 塩尻 和子 大久保 教宏 鈴木 健郎 鶴岡 賀雄 久保田 浩 林 淳 伊達 聖伸 奥山 倫明 江川 純一 星野 靖二 住家 正芳 井上 まどか 冨澤 かな
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、欧米において成立した近代的宗教概念とそれに基づく宗教研究が、世界各地、特に非欧米社会においてそのまま受容されたのか、それとも各地域独自の宗教伝統に基づく宗教概念と宗教研究が存在しているのかをサーヴェイし、従来宗教学の名で呼ばれてきた普遍的視座とは異なる形態の知が可能であるかどうかを考察した。対象国・地域は日本、中国、韓国、インド、東南アジア、中東イスラーム圏、イスラエル、北米、中南米、ヨーロッパである。
著者
信岡 尚道
出版者
茨城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本年度は海浜侵食が最も顕著になる、台風や非常に強い高潮・高波来襲時の海浜流予測を流砂系全体で行えるようにモデル開発を行った.特にWave-setupが高潮時の水位に大きく寄与し、流れ場に大きく影響することを明らかにした。次に実地形への適応の検証を実施した.2005年にアメリカを襲ったハリケーンカトリーナに対しては、水位を精度よく追算でき、流れの場の予測も本モデルで可能である.2006年10月に茨城県沖を通過した爆弾低気圧に伴う高潮の追算については、十分な精度が得ることはできなかった.精度が得られなかった原因を解明するために、通常の波浪でも発生し海浜流と一体となる現象、Wave Setupの予測が問題であるか、風の吸上げ、風の吹寄せ、エクマン輸送が問題であるのかの検討を行った.この計算では2つの領域、一つは流砂系を網羅するもの,もうひとつは観測地点がある大洗港を含む狭い領域にとした.後者では、計算メッシュ幅を可能な限り小さくして、計算メッシュによる誤差を除外できる.大領域と小領域での計算された水位の差はWave Setupにあり、大領域での計算結果に問題があること、それは風の場の変化と複雑な地形に対応した波浪場を十分に再現できないためと推測された.以上の結果から、日本の海岸地形に流砂系全体の海浜流モデルを適応するには、日本の複雑な海岸線および海底地形を考慮できる波浪場および流れ場の計算座標系の開発が新たに必要であるといえる.