著者
河本 洋一 和田 辰也 山本 一成 藤原 章 宮脇 杜
出版者
札幌国際大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、ヒューマンビートボックスがどのように発祥し発展を遂げてきたかを、世界的に活躍するビートボクサーの様々な演奏記録から明らかにした。その結果、ヒューマンビートボックスは、ヒップホップ文化の音楽の中で、人間の音声器官を使用して既存の楽器や様々な装置の音を模倣したことが始まりであり、発祥は1984年頃であることが明らかとなった。また、日本においては2000年に入ってから日本人として初めて世界的に認知されたビートボクサーAFRAの登場によって、急速に発展を遂げたことがわかった。今後はアーカイブの分析のためのコーパスの作成が急務である。
著者
樋脇 治
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

近年、磁場が生体へ及ぼす作用のひとつとして脳の松果体で産生されるホルモンであるメラトニンの量が磁場により影響を受けることが明らかにされてきている。通常メラトニンは昼間よりも夜間に盛んに産生されるが磁場照射により夜間のメラトニン産生が抑制されることがラット等を使った実験により確かめられている。本研究では、生体への静磁場・変動磁場の影響について特に体内時計の中枢である視交叉上核の電気活動に着目した。磁場が生体へ影響を及ぼす過程には視交叉上核が重要な位置を占めていると考えられるが、まだ磁場と視交叉上核の関連についてはほとんど研究が行なわれていない。まず、静磁場の視交叉上核の電気活動への影響を調べた。強度100μTの静磁場を体軸方向・水平面内で体軸と垂直方向・鉛直方向の3方向に生成した。立ち上がり10秒・立ち下がり10秒・期間5分の磁場を30分間隔でそれぞれの方向に照射した。このときの視交叉上核における自発インパルス数を計測した。その結果、視交叉上核のインパルス数は吻側・尾側・右側・左側方向の水平方向の磁場照射に対して増加するものの背側・腹側方向の鉛直方向の磁場照射に対しては変化しなかった。次に、商用周波数磁場の照射実験として、50Hz,Peak-to-Peak40μTの磁場を照射する実験を行った。地磁気と同程度の強度である40μTの鉛直下向きの直流磁場に加え、50Hz磁場の方向が、体軸と平行な方向(X軸方向)、水平面内で体軸と垂直な方向(Y軸方向)、鉛直方向(Z軸方向)になるように磁場を照射する実験をそれぞれ行った。その結果、Z軸方向に50Hz磁場を照射した実験では視交叉上核の概日リズムに変化は見られなかったが、XおよびY軸方向に50Hz磁場を照射した場合,視交叉上核の慨日リズムに顕著な乱れが観察された。
著者
松井 秀樹 富澤 一仁 大守 伊織 西木 禎一 松下 正之
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

近年、脳内ホルモンの未知の生理作用が大きな脚光を浴びている。オキシトシンは出産、授乳時に子宮収縮や射乳を促すホルモンとして知られている。一方、同ホルモンについては脳内特に辺縁系にも多数のオキシトシン受容体が発現しており、オキシトシンの脳内における働きが注目されている。我々は海馬におけるオキシトシンの作用に注目して解析を行い、授乳中の母親マウスではオキシトシンにより記憶学習能力が向上することをすでに報告している。一方、近年オキシトシンによる不安情動調節作用が報告され注目されているが、そのメカニズムについては不明な点が多い。この基盤研究Bでは扁桃体機能に注目し、不安情動の調節機構を検索した。マウスを閉所に強制的に長時間閉じ込めるストレス負荷を行い行動解析すると、約一週間程度でストレス耐性を獲得する。この耐性獲得機構が扁桃体ニューロンにおいて、オキシトシンの分泌とRgs2と呼ばれるシグナル伝達系を介して制御されているとの仮説を証明した。本研究で得られた成果を今後さらに発展させ、in vivoで扁桃体へのRgs2遺伝子トランスフェクションやRNAiによる発現抑制などを行い、行動学的解析も用いて抗不安、抗ストレス作用の機構の解明を行う研究につなげてゆく予定である。今後この研究の発展により不安情動の新しい制御機構が可能となり、新しい治療法開発への糸口が開かれることと期待される。この意味でも本研究は大きな成果を上げることが出来た。
著者
日高 庸晴 津田 聡子 土屋 菜歩
出版者
宝塚大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2023-04-01

夜の繁華街を来訪する若者を対象にした申請者の過年度調査では、感染予防の知識や検査に関する情報が十分に届いておらず、過去6ヶ月間のセックスパートナーの数は複数かつ、予防行動の実践は概して低率であることがわかっている。一方で“夜の街”で繰り広げられる人間関係や性関係とそれに関連する暴力・性暴力への予防介入研究の報告はほとんどなく、“夜の街”の実態に即した健康教育の実施が圧倒的に不足している。男性を主たる対象に、強引なナンパ・アルコール・性交渉は暴力になり得ること、加害者にならないような行動様式や交際規範を涵養することも、“夜の街”の若者たちへ予防の観点から介入を行う上で重要な視点である。
著者
村澤 昌崇 椿 美智子 松繁 寿和 清水 裕士 筒井 淳也 林 岳彦 宮田 弘一 中尾 走 樊 怡舟
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

本研究は,因果推論の勃興を契機とし,社会科学の半ば慣習的な統計分析が再考を迫られると認識した.そこで,従来は因果分析とされたが,厳密には因果推論ではない分析を仮に“説明”とし,その再定義,モデル評価,係数の解釈に関する新たな理論を構築する.この取組について、社会科学の方法論について深遠な議論を展開している専門家、心理学、経済学、統計科学、データサイエンスを代表する専門家と共同し議論を深めていく。併せて、新たな実験的調査を実施し、得られた情報に関して、新たな"解釈"の可能性を検討する。
著者
山本 健一 鄭 雄一 光嶋 勲 大庭 伸介 矢野 文子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)が異所性骨化や石灰沈着性腱炎の治療に奏功するという報告があるがその基礎的研究報告はなく、メカニズムは不明。本研究ではH2ブロッカーを介した腱の石灰化抑制のメカニズムを基礎的に調査した。H2ブロッカーの中でも力価の高いファモチジンを選択し、in vitroで腱由来細胞TTD6と骨芽細胞系細胞MC3T3-E1においてファモチジンが石灰化抑制することを確認。次にin vivoでアキレス腱が異所性石灰するTTWマウスを用い、ファモチジンが異所性石灰を抑制することを証明。以上よりファモチジンが異所性石灰化に対する治療薬として基礎的にもその効果が証明された。
著者
中村 純作 堀田 秀吾 朝尾 幸次郎 梅咲 敦子 松田 憲 津熊 良政 野澤 和典 東 照二 山添 孝夫 佐藤 佳奈 宮浦 陽子 山本 香里 濱中 千裕 霜村 憲司
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

我が国中等教育の英語教科書のモニターコーパスを更新、補充、新たにアジア諸国の英語教科書を追加したコーパスを構築し、教科書研究のための環境づくりを行った上、教科書の内容(語彙、構文、文法項目、トピック、社会文化的要素等)を中心に質的・量的比較を行い日本の英語教育に欠けている点を指摘した。また、我が国を含めたアジア諸国の英語教育の実態と課題を検討し、我が国英語教育の問題点、今後の方向性などを考えるための国際シンポジウム、英語教育での新しい試みに関する知見を共有するための英語教育公開講演会、ワークショップなども開催、これらをまとめた報告書を出版した。
著者
宮口 英樹 石附 智奈美 宮口 幸治 西田 征治 安永 正則
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

DSM‐5による発達性協調運動症(DCD)は、生活年齢における日常生活の諸活動を著しく妨害していると表記されるが、日常生活では多岐にわたる認知機能が要求されるため、身体運動を中心とした介入プログラムでは、日常生活活動の遂行能力を実際に改善するかどうか検証はされていない。そこで本研究では、認知機能トレーニングを包含した介入プログラムを独自に開発し、医療少年院入院少年のうちDCDを有する対象者に3ヶ月間10回実施した。効果検証は、日常生活活動の運動とプロセス技能を定量的に観察評価するAMPSを用い、介入前後で有意なスコアの改善が認められた。
著者
欅田 尚樹
出版者
産業医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

トリチウム水1回曝露の急性影響に関してはマウスを用いた実験により自由水の代謝を高めることにより体内よりのトリチウムの排泄促進とそれに伴う各種生物学的影響の低減を観察し報告してきた。しかし体内に取り込まれたトリチウム水は有機結合型トリチウムに置き換えられたり、また食物等を介し有機結合型トリチウムの状態で体内に摂取される可能性もある。有機結合型トリチウムはトリチウム水と異なり一度体内に取り込まれると生物学的半減期が長く体内からの排泄が遅いことが知られている。また有機結合型トリチウムによる被曝に関する影響低減法の系統だった研究はほとんどされていない。そこで本研究では自由水トリチウムだけでなく有機結合型トリチウムの体内動態を変化させることにより被曝影響の低減化を検討した。これまでの実験結果を踏まえB6C3F1マウスを使用した。1)マウスに経口的にトリチウムラベルのアミノ酸、脂肪酸、ヌクレオシドすなわち3H-リジン、3H-パルミチン酸、3H-チミジンを投与した。2)排泄促進処理としては治療薬として幅広く使用され安全性の確立している甲状腺ホルモンのサイロキシンあるいはカテコラミンの一種エピネフリンを連日投与した。3)上記マウスを専用ラック内で飼育し、経時的に新鮮尿を採取し、尿中トリチウム濃度を測定した。また10日後に屠殺解剖し、各臓器を摘出、サンプルオキシダイザーで処理し臓器中のトリチウム濃度を比較した。その結果、尿中トリチウム濃度は、軽減化傾向にあったが有意ではなかった。一方、サイロキシン、エピネフリンいずれの処置群でも、脾臓、腎臓、大腿骨、筋肉中などの臓器中のトリチウム濃度が低下していた。したがって、これら代謝亢進剤により有機結合型トリチウム対外排泄の促進が図れる可能性が示唆された。
著者
永島 育
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2023-04-25

多宗教・多民族帝国であったオスマン帝国は、19世紀から20世紀にかけて発生した叛乱や紛争の末に、陸軍による治安維持、さらには強制移住や虐殺など、民衆への暴力を伴いながら崩壊した。東欧・中東を支配したオスマン帝国が、暴力的に清算された過程を明らかにすることは、テロや紛争等の暴力という課題を抱える現代の東欧・中東を理解する上で、欠かせない問いである。本研究は、治安維持のための軍事作戦時、民衆への暴力の主体となったオスマン陸軍将兵の体験、そして暴力体験の報道等における再定義を分析する。これにより本研究は、陸軍将校はなぜ過剰なまでの暴力でオスマン帝国の清算を実行したのかという点を明らかにする。
著者
高山 真 中澤 徹 劉 孟林 檜森 紀子 門馬 靖武 菊地 章子 志賀 由己浩
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、健常者を対象に、漢方薬当帰芍薬散、桂枝茯苓丸を単回投与した際の眼底血流促進効果をレーザースペックルフローグラフィ(LSFG)検査等により評価し、その効果を検討する(研究①)、正常眼圧緑内障患者を対象に、通常の眼科的治療に漢方薬を追加内服した際の効果を検討する(研究②)ことにより、正常眼圧緑内障に対する漢方薬による治療の有効性を明らかにすることである。研究実績の概要:研究①については、前年度までで研究が終了し、学会や論文等による発表を行った。研究②については、本年度も対象者に漢方薬による治療追加を行うデータ収集を行った。平成30年3月31日時点で、正常眼圧緑内障の女性12名がエントリーされた。1名が除外基準により該当した。11名に対し6ヶ月間当帰芍薬散の投薬を行い、全11例がこれを完了した。中間解析では、9名17眼について、母集団の解析、および当帰芍薬散単回投与前後の眼底血流の検討を行った。その結果、母集団の検討では漢方医学的に「血虚」(末梢血流障害、冷え症)と診断された症例が多く、正常眼圧緑内障の病態である眼底血流低下と合致すると考察された。また、眼底血流の解析では、当帰芍薬散服用後に、7眼で眼底血流の上昇を認めた。血流が上昇した症例は、漢方医学的に血虚のスコアが高い傾向がみられ、正常眼圧緑内障と漢方医学的「血虚」の病態との関連、そして当帰芍薬散がそうした症例の眼底血流を上昇させる可能性が示唆された。有害事象の検討では、1名に軽微な腹部違和感が出現したが、服薬を継続し症状は軽快した。本研究に関連し、眼底血流が著明に改善した症例の発表、論文発表を行った。
著者
片山 春菜
出版者
広島大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2022-08-31

ブラックホールは,極めて重力が強いため光でさえ抜け出すことができない天体である.そのブラックホールに吸い込まれた物体の情報が消去されるのか保持されるのかは,ブラックホールの情報パラドックスとして知られ,相対論と量子論の理論体系の統一に向けた課題である.本研究では,超伝導量子回路上で創生された擬似的ブラックホールを用いて,量子情報科学的アプローチによってブラックホールの情報パラドックスの解明を試みる.
著者
川道 武男 川道 武男
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

長野県浅間山中腹標高1500mにて巣箱を252個設置して,巣箱内にいたヤマネとヒメネズミを捕獲し,マイクロチップや超小型発信機で2年間追跡した.2年間で,ヤマネ80頭,ヒメネズミ302頭を捕獲し,個体識別し,4月から11月まで,ほぼ毎日巣箱を見回った.ヤマネ:非冬眠期間中は,日中の休息場として巣箱を転々と渡り歩いていた.そのため,平均行動圏面積は広く,雌0.5ha,雄1.52haであり,雌同士だけが殆ど重複していなかった.成獣密度は約0.7頭/haで,性比はほぼ1対1であった.2歳以上の個体がメスで44%,雄で64%を占め,長寿命が示唆された.冬眠開始と終了の時期は,気温・性別・体重に左右されており,繁殖開始時期と出産回数は冬眠終了時期に影響されていた.ヒメネズミ:巣箱は主に繁殖巣として利用した.平均行動圏面積は雌0.1ha,雄0.14haであった.成獣の雌雄間に親密なつがい関係が見られ,大きな雄は大きな雌とペアを形成していた.出産期は春と秋の2回あり,母の体重と出産直後の仔の平均体重とには,正の相関関係が認められた.春の出産期では,大きな雌が早くに出産して,性比が雄に偏っていた.春に生まれた娘の一部は,性成熟後も母親の行動圏内かその周辺に留まって繁殖した.秋の出産期に産んだ母メスとその娘の体重と数には負の相関関係が認められた.ヤマネとヒメネズミの関係:ヒメネズミとヤマネもしくはアカネズミとの同居があった.異種間の同居は全てヒメネズミが巣材を運んだ巣箱で起こった.
著者
國分 功一郎 熊谷 晋一郎 千葉 雅也 松本 卓也
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

自閉症の医学的研究は、近年、次々と新しい事実・データを明らかにしており、それらの理論化が必要とされている。また近年の研究により、二十世紀フランスの哲学者ジル・ドゥルーズの思想の自閉症的側面が明らかにされつつある。本研究は両者を融合させ、人間についての新しい理論を作り出すことを目指している。哲学の研究者二人と、病院勤務の経験のある二人の医学研究者が共同で研究を行う点にこの研究課題の特徴がある。二〇世紀、哲学は精神分析学と強く結びついて発展した。それに対し、医学あるいは一般医療と哲学との交流は稀であったと思われる。本研究課題は、文医融合という研究の可能性を探るものでもある。
著者
近藤 一博 岡 直美
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

うつ病などのストレス関連疾患の原因としてストレスレジリエンスの低下が重要視されている。しかし、ストレスレジリエンスのメカニズムには不明な点が多い。最近我々は、ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)が潜伏感染時に産生するタンパク質SITH-1を発見し、HHV-6 SITH-1がストレス応答を亢進させることで、うつ病の原因となることを見いだした。本研究は、SITH-1によるストレスレジリエンス低下機構の生物学的側面を明らかにし、ストレス関連疾患予防のための分子基盤を得ることを目的とする。
著者
中郡 翔太郎
出版者
帯広畜産大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

鯨類は海洋生態系における高次捕食者であり、しばしば海洋環境の健全性や変動の指標として用いられる。近年、鯨類を取り巻く環境は人間活動により大きく変化しており、申請者が行ってきた北海道周辺海域に生息する鯨類の疾患調査においても多様な疾患が見つかっていることから、野生鯨類の健康状態は悪化していると考えられる。しかしながら、今まで行ってきた調査では疾患の有無は見出せたものの、それら疾患の背景要因は依然として不明な点が多く、病態の解明が課題として残った。そこで、本研究では、異物代謝を担う肝臓に着目し、アミロイドーシスや肝吸虫症をはじめとする各種肝病変の病態および機序解明を試みる。
著者
北條 芳隆 後藤 明 関口 和寛 細井 浩志 瀬川 拓郎 吉田 二美 辻田 淳一郎 高田 裕行 石村 智 田中 禎昭
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

考古学に天文学的手法を導入する研究領域を考古天文考と呼ぶが、この手法を日本列島の考古資料・文献史料の分析と解釈に適用すれば、従来の認知論的考察や景観史的把握には飛躍的な進展が期待される。この目的を達成するために、本研究では考古学・文献史学・天文学の各専門分野を横断させた研究体制を構築する。その上で天体現象と関わる歴史的諸事象に対する統合的分析法の構築を目指す。琉球列島を含む日本列島各地に遺された遺跡や各地の民俗例、海洋航海民の天体運行利用法の実態を解明する。こうした検討作業を基礎に、本研究は天体運行や天文現象に対する人類の認知特性とその日本列島的な特性を追求するものである。
著者
土屋 賢治 松本 かおり 金山 尚裕 鈴木 勝昭 中村 和彦 松崎 秀夫 辻井 正次 武井 教使 宮地 泰士 伊東 宏晃
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

背景と目的自閉症スペクトラム障害(ASD)の危険因子として父親の高年齢が指摘されている。今年度の本研究では、父親の高年齢が児の認知発達にどのような影響を与えるかについて、本研究では、父親の年齢という非遺伝的要因の発症への寄与を、関連因子の評価を交えて、prospectiveおよびretrospective二つの方向を交えた疫学的探索的研究を行った。方法(1)Retrospective研究:自閉症・アスペルガー障害または特定不能の広汎性発達障害(ASD)と診断され総IQが70以上の84名(5~27歳、女性14名)、精神科診断を持たない208名(5~34歳,女性104名)から、臨床情報を取得するとともに、母子手帳を通じて両親の生年月日を確認し、出生時の父親・母親の年齢とASD診断との統計学的関連をロジスティック回帰分析を用いて検討した。(2)Prospective研究:浜松医科大学医学部附属病院産婦人科(静岡県浜松市東区)および加藤産婦人科(静岡県浜松市浜北区)の2病院を2007年11月19日より2009年7月1日までに妊婦検診を目的に受診し、研究への参加の同意が得られた全妊婦780名と、その妊婦より出生した児809名を対象とした。この児を最長3年3ヶ月追跡し、Mullen Scales of Early Learningを用いて、運動発達および認知発達(視覚受容、微細運動、受容言語、表出言語)を3~4ケ月ごとに繰り返し測定した。また、父親の年齢と関連する生物学的要因として、生殖補助医療に関するデータを収集し、関連を解析した。結果とまとめ(1)出生時の父親の年齢が高いほど、児のASD診断のリスクが高いことが示された。母親の年齢には同様の関連は見られなかった。出生時の父親の年齢とASD診断のリスクとの関連の強さは、母親の年齢や出生順位、性別、自身の年齢を考慮に入れても変わらなかった。(2)粗大運動、視覚受容、微細運動、表出言語の発達、発達指標の到達、ASD疑い診断に、出生時の父親の年齢は統計学的に有意な関連をしていなかった。しかし、生殖補助医療の有無(なし、IVF、ICSI)は、いずれの発達変数においても、なし-IVF-ICSIの順に発達が遅れる傾向が認められた。欠損値に対する配慮からStructural equation modelingによって解析を進めたが、サンプル数の限界のため、父親の年齢と生殖補助医療の交互作用については言及できなかった。結論父親の年齢とASD発症リスクの生物学的基盤としての生殖補助医療の関与を確定することはできなかった。しかし、その可能性が示唆されるデータが一部から得られた。
著者
三角 順一 青木 一雄 海老根 直之
出版者
大分大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本研究は牛乳中の女性ホルモンが人体に影響を及ぼすか否かについて検討しようとしたものである。市販の牛乳の75%は妊娠中の乳牛から搾乳されている。しかし、牛乳中の種類別β-エストラジオールの濃度に関する報告はこれまで行われていない。今回、牛乳を18,000rpm60分間超遠心し、乳清を蒸発乾固の後、0.1M酢酸ナトリウム緩衝液に溶解、β-グルクロニダーゼを加えて加水分解し、希釈エタノールに溶解した後、3,300rpm30分間遠心分離してその上清を再び蒸発乾燥固し、10%メタノールに溶解、ELISAキットを用いて吸光度からホルモン濃度を測定した。その結果、種類別牛乳、低脂肪乳、特濃、ナイトミルク各4サンプルの平均値と標準偏差はそれぞれ50.0±11.3、64.7±7.8、64.4±4.8、66.3±11.2ng/ml乳清であった。20-35歳の成人男性11名に対して牛乳1lを飲用してもらった。飲用前30分、1時間、および90分後に血清中のエストステロン(E1)、エストラジオール(E2)、テストステロン(Tステロン)の濃度変化について検討した結果、男性9名の血中E1、E2濃度は飲用後60分で最高値に達し、平均値で65.2pg/mlおよび47.2pg/mlとなった。これは前値と比較して、E1で57.2%、E2で46.3%増加していた。一方、血中Tステロン値は前値5.14、30分値3.46、1時間後3.25ng/mlと低下が見られた。体脂肪率とTステロン値(前値)との間には負の相関(r=0.87)があった。また、別の調査においては、男性12名のE2値は17.6〜56.8pg/mlに分布していた。Tステロン値は2.07〜6.76ng/ml、平均値と標準偏差は4.2±1.37ng/mlであった。女性6名のTステロン値は0,21〜0.77ng/ml、平均値と標準偏差は0.41±0.22ng/mlであった。Tステロン/E2比の値は女性では0.15〜0.35、男性では6.7〜29.5であった。47〜60歳の月経のなくなった女性28名を2群に分け、3ヶ月間1日に2本(400ml)の牛乳を飲用してもらい、飲用前と3ヵ月後のE2、Tステロン濃度を測定した結果、飲用前のE2は未飲用群の11.6±9.1に対し、飲用群では9.6±4.2ng/ml、3ヶ月後未飲用群12.2±4.3に対し、飲用群では13.6±6.5ng/mlと著しい上昇がみられた。E2/Tes比も未飲用群は0.5→0.5と変化がみられなかったが、飲用群では0.4→0.6と50%の増加がみられ有意差があった。(P<0.05)。