著者
吉信 淳 松永 隆佑
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

触媒反応や化学的気相成長など表面反応プロセスを自在に制御し、生成物を望み通りに合成することは、表面科学の究極の目標の一つである。通常の表面プロセスは熱活性化により促進されるが、反応座標に沿った活性化エネルギーを超えることができる極めて少数の分子のみが生成物に至るレアイベントでもある。そのため高温・高圧が必要となっている。本研究では、精密に位相制御が可能な遠赤外から中赤外領域の高強度波長可変テラヘルツパルスにより吸着分子の束縛運動や変形を駆動し、レアイベントである重要な触媒反応や表面プロセスを低温で誘導することを実証し、新たな物質合成の道を切り拓くとこを目指す。
著者
伊藤・山谷 紘子
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

植物に含有される、機能性含硫化合物を高めるためには、植物のイオウ吸収機構および代謝機構を解明することが重要である。そのためには、元来イオウ含有量が多く、機能性の高い植物(作物)を選抜して、代謝や遺伝子発現などを比較生理学的に調べる必要がある。そこで本研究では、機能性含硫化合物を高い濃度で含有している可能性の高いアブラナ科伝統野菜を供試作物として選び、根域イオウ濃度が生育、イオウ含量、イオウ吸収に関与する遺伝子発現量、イオウ同化に関わる酵素活性に及ぼす影響を調べた。研究結果はSoil Science and Plant Nutritionに掲載された。
著者
伊勢 史郎 平原 達也 上野 佳奈子 大谷 真
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

境界要素法によって計算されたHRTF を用いて、頭部運動に対応可能な動的聴覚ディスプレイ(VAD)による定位実験、仮想空間内で動きながら会話が可能な仮想聴空間システムによる評価実験を行った。さらにダミーヘッドが頭部運動に追従するテレヘッドシステムを開発し、音像定位実験を行った。その結果、人間の適応能力を考慮した場合には必ずしも個人のHRTF を利用する必要がなく、HRTF に要求される精度を低減可能であることを示した。
著者
古川 聡 鈴木 豪 緒方 克彦 大島 博 村井 正 村上 敬司 鈴木 健之 阿部 高志 佐藤 勝
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-06-29

本研究では、同意を得た被験者(一度に8人)に2週間、JAXAの閉鎖環境適応訓練設備内に居住してもらい、閉鎖環境に加え密なスケジュールでの模擬科学実験などの負荷を宇宙飛行想定で加え、それらの前中後における唾液や血液サンプルの変化を調べ、閉鎖ストレスによるダメージを客観的に評価できる新規ストレスマーカーを探索した。閉鎖設備実験モデルに特徴的な血中遺伝子発現パターンの変化を明らかにし、また閉鎖滞在に伴うストレスを身体活動量低下とそれ以外の要因による影響に分けて評価することを可能にするストレスマーカー遺伝子候補を絞り込むことができた。
著者
山口 亮子
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、DV加害者の性質を研究し、DVは加害者から被害者への垂直関係だけではなく、子を巻き込み複雑なパターンが複数あることを指摘した。その上で、日本の裁判例を分析し、アメリカの研究を参考に、DVが関わる、離婚、面会交流、監護者指定、養育費、親権制限の問題を検討した。施設訪問や学際的研究を通して、警察、行政の対応の問題点と課題を明らかにした。
著者
鈴木 彌生子
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

アジア太平洋地域における食品トレーサビリティシステムの構築を目的とした国際連合食糧農業機関(FAO)と国際原子力機関(IAEA)の技術協力プロジェクト(RAS5062およびRAS5081)の協力を得て、素性の明確な米試料を各国から収集し、安定同位体比および無機元素組成を明らかにすることで産地判別の可能性を検証した。軽元素(炭素・窒素・酸素および硫黄)・重元素(ストロンチウム)の安定同位体比および18元素の濃度を組み合わせることで、アジア各国の米の産地判別の可能性が示唆された。
著者
深見 哲男 東 亮一
出版者
石川工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

UHFテレビの受信障害が、時々,日本海域に発生している。この受信障害の原因は,水蒸気や黄砂などの環境因子によるダクト伝搬によると思われる。この研究の最終目的は,ダクト伝搬の発生を予報することである。そのため,石川県津幡において日本海側や韓国のTV電波を定常観測すると共に,気象データと測定データを比較した。その結果,ダクト伝搬は,春から夏の晴天時に発生するが,秋から冬にほとんど発生しないことが分かった。そして、天気との相関が非常に強いことが分かった。
著者
金 小海
出版者
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

2019年においては、動物実験で得られた甲状腺の標本の病理診断を終わらせた。標本は大きく2種類に分け、一回照射と連続照射された動物の病理標本からなる。 いずれも胎仔期、1週齢あるいは7週齢の標本に分けており、「過形成」から「腺腫」、「腺癌」までいろんな病理像が観察された。この診断結果に基づいて統計解析を行い、主に線量依存や照射時年齢依存性について有意差があるかどうかを調べた。結果、1週齢のマウスにおいて、放射線照射(一回照射)による甲状腺の腫瘍性病変の増加がコントロール群と比べて有意差があるのを認めた。また、甲状腺腫瘍の発生頻度は線量に依存して増加する傾向であるのも認められた(高線量4Gyでは、胸腺腫とリンパ腫など病変が発 生するため逆に低下)。上記の年齢と線量に依存しての変化は同じ低線量率の動物実験でも行ったが、病理診断結果と統計解析ともにコントロール群と比べ有意差を認められなかった。また、病理診断により病変が観察された一部標本に関しては、放射線による甲状腺がん発がん段階で関与すると推測される遺伝子CLIP2の免疫染色を行った。CLIP2は、人では放射線誘発の甲状腺癌に関与するという報告はあるが、マウスなど動物実験での報告はまだである。今回の免疫染色の結果などは、今後症例を増やし、統計解析まで行う必要性を得られ、グループごとの遺伝子変異解析により放射線誘発甲状腺がんのバイオマーカーの探索は、発がん機構解明のための基礎的情報を得るのに一歩踏み出したことになる。
著者
長谷川 智子
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2020-04-24

網膜色素変性は網膜の神経細胞である視細胞が変性し、視野狭窄や視力低下が進行する難病である。日本では視覚障害原因の第2位を占めるが、視細胞の変性を防ぐ有効な治療法は確立されていない。申請者らは現在までに、分岐鎖アミノ酸が、ストレス下培養細胞での細胞内エネルギー低下を抑制し、細胞死を抑制すること、網膜変性モデルマウスでは視細胞の変性を抑制し、網膜機能の低下を抑制することを明らかにした。本研究では、分岐鎖アミノ酸による神経細胞の細胞死抑制メカニズムを解明し、また、網膜色素変性の変性進行を鋭敏に反映するバイオマーカーを解明することで、分岐鎖アミノ酸を用いた網膜色素変性の新規疾患進行抑制薬の開発を行う。
著者
今関 源成 戸波 江二 西原 博史 石川 健治 毛利 透 小山 剛 戸波 江二 岡田 信弘 市川 正人 西原 博史 石川 健治 小山 剛 江島 晶子 高見 勝利 宍戸 常寿
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

2008年3月, 台湾の憲法・行政法研究者10名を迎え、東京(早稲田大学)で「議院内閣制と大統領制」および「実効的人権保障とその問題点」をテーマとして、第3回共同研究シンポジウムを開催した。2009年3月, 日本の憲法研究者8名が台湾に赴き、台北(台湾大学)で、「公法典範的継受與轉型」をテーマとして、第4回共同研究シンポジウムを開催した。これまでの成果をまとめた論文集の刊行に向けて, 鋭意努力中である。
著者
溝口 恵美子
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

炎症性腸疾患(IBD)における慢性炎症からの腸上皮と癌化にはキチナーゼ様タンパクI型(CHI3L1)が深くかかわっている。我々は汎キチナーゼ阻害剤でキサンチン誘導体の一種であるカフェイン(CAF)がCHI3L1の発現・活性化を抑制することを発見している。本研究では、アゾキシメタン(AOM)誘導性の大腸異形成モデルにおいて、CAFよりもペントキシフィリン(PTXN) によって大腸腫瘤数・腫瘤の大きさが有意に抑制されることが分かった。CAFおよびPTXN同時投与では副作用(例:ショック死)が強いため実験を中断した。今後、PTXNが将来的に大腸癌の予防・治療薬として臨床応用できる可能性が示唆された。
著者
坪木 和久 伊藤 耕介 山田 広幸 堀之内 武 篠田 太郎 高橋 暢宏 清水 慎吾 大東 忠保 南出 将志 辻野 智紀 山口 宗彦
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2021-07-05

台風は自然災害の最大要因であり、なかでも最強カテゴリーのスーパー台風は甚大な被害をもたらす。地球温暖化に伴い、日本本土へのスーパー台風の上陸が懸念されている。しかし台風強度の推定値と予測値の両方に大きな誤差があることが大きな問題となっている。その最大原因は台風が急速に発達する「急速強化」である。さらにそのとき眼の壁雲が二重となる構造がしばしばみられ、その力学的・熱力学的構造が未解明だからである。本研究課題では、スーパー台風が、なぜ、そしてどのように形成されるのか、それにおける急速強化と二重壁雲構造はどのような役割をしているのかを、航空機観測、地上観測、数値シミュレーションの三本柱で解明する。
著者
橋爪 健一
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

ガンマ線をエネルギー源とするシリコン半導体およびテルル化カドミウム半導体を用いた放射線電池を開発し、5%以上のエネルギー変換に成功した。発電効率は、素子の厚さ、照射温度に顕著に依存した。これらの特性は、照射によって生成した電子-正孔のキャリアの寿命、拡散長に起因することが分かった。また、長期照射に伴う発電効率の低下は避けられなかったが、素子の加熱焼鈍によって回復することが分かった。
著者
田中 章浩 板口 典弘
出版者
東京女子大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-06-30

多様な文化的背景をもつ人々のグローバルな交流がますます加速する現代社会において、円滑なコミュニケーションを実現するためには、自身の感情の表出、そして他者の感情の知覚を媒介する顔と身体表現の普遍性と文化特異性を知ることが不可欠である。感情の知覚には顔や身体表現(視覚情報)のみならず、声(聴覚情報)も利用され、感覚間統合が本質的な役割を果たしている。申請者らのこれまでの研究の結果、他者の感情を知覚するとき、欧米人は顔への依存性が高いのに対し、日本人は声への依存性が高いことがわかっている。本計画班では顔・身体・声の認識様式の文化的多様性の根源として、感覚間統合を含む「情報統合」に着目する。そして、幼児期から成人にかけて感情知覚における複数情報統合の様式がどのように変化するのかを比較文化的に検討し、これらの知見を統一的に説明する理論的枠組みの提唱をめざす。2018年度は、日本人の声優位性はどのように獲得され、誘発されるのかを検討し、以下の点が明らかとなった。①母親と子どもの間で声優位性に正の相関が見られ、母親が声優位であるほど、その子どもも声優位で感情を知覚するというように、知覚パターンの発達には身近な大人の影響を受けることが明らかとなった。②日本人では、外集団よりも内集団の話者に対して声優位で感情を捉える傾向が見られた。話者の見た目と言語を操作した感情知覚実験の結果、話者の見た目が日本人でなくとも、日本語を話していれば声優位で感情を知覚することが明らかとなった。トランスカルチャー状況における「異質な他者」とは何かを考察するうえで重要な知見である。③感情表出をする話者に対する注視パターンの発達文化間比較を行ったところ、相手の目領域に視線を向けることが声優位の知覚を形成する可能性が示唆された。
著者
安藤 馨
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

前年度に引き続き、率直に言って、コロナ禍の影響はとりわけ研究の公表に関して本研究においても避けることはできなかった。しかし、事実認定的な法的言明が認定者の動能的な(=非認知的な)心的状態を表出しており、表象主義 representationalism の下で信念がそのようなものとして描かれがちであるような、純粋に認知的な(すなわち、世界をそのまま表象しようとする、世界から心への適合方向のみを有する受動的な)心的状態を表出するものではない、という点についての理解が深められた。すなわち、事実認定的な言明が表出する「pということにして話を先に進めよう being for proceeding as if...」という心的態度がどのようなコミットメントを伴っているかについて、理解が深められた。「p ということにして話を先に進めよう」という主体は、以降の推論において、not p を主張しないというコミットメントを有し、以降の推論において p → q を受け入れた場合には q を主張するというコミットメントを有することになる。他方で、これらのコミットメントは、いわゆる推論主義 inferentialism が、p を主張するという行為に伴うものとして挙げているコミットメントそのものである。したがって、事実認定的な法的言明ではないような、通常の認知的主張については表象主義的な意味論が妥当なものとして成立する一方で、非認知的なコミットメントを伴う事実認定的な法的言明については推論主義的分析が適用可能である、ということができるようになる。これは、「pである」という事実認定的法的言明を「pは法的に正当である」という規範的様相に包まれたものとして分析してきたやり方を大きく離れ、法的言語を意味論レベルで通常の言明と異なった構造を有する特異なものとして分析するという可能性を示すものである。
著者
上野 千鶴子 盛山 和夫 松本 三和夫 吉野 耕作 武川 正吾 佐藤 健二
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

新しい「公共性」の概念をめぐって、公共社会学の理論的な構想を提示し、「自由」や「感情公共性」その応用や展開の可能性を示した。福祉とジェンダーについては定量および定性のふたつの調査を実施し、報告書を刊行した。その調査結果にもとづいて、福祉多元社会における公共性の価値意識を比較検討し、さらた具体的な実践の可能性を求めて、地域福祉、住民参加、協セクターの役割、福祉経営、ケアワークとジェンダー等について、経験データにもとづく分析をおこなった。ジェンダーと階層をめぐって、少子高齢社会と格差問題について、高齢者の格差、若年世代の格差、少子化対策とジェンダー公正の関係等についても、経験データにもとづいて、比較と検証をおこなった。福祉社会については、「自立」と「支援」のその理念をめぐって、その原理的な検討と歴史的な起源についても検討を加えた。文化と多元性の主題では、多文化主義と英語使用の問題、文化資源学における公共性、公共的な文化政策の実態と問題点について、研究を行ったほか、近代における宗教と政治の位置についてもアプローチした。また営利企業における公共性とは何かというテーマにも切り込んだ。環境については地球環境問題における「環境にやさしい」技術の関連を社会学的に分析し、新しい知見をもたらした。詳細は、科研費報告書『ジェンダー・福祉、環境、および多元主義に関する公共性の社会学的総合研究』を参照されたい。チームでとりくんだ4年間の成果にもとづき、現在東京大学出版会から『公共社会学の視座(仮題)』 (全3巻)をシリーズで年内に刊行するよう準備中である。
著者
仲井 雪絵
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

ハイリスクの妊婦にキシリトールを用いて介入し、う蝕原性菌の母子伝播予防効果について検討した。得られた結果は以下のとおりである。1.介入前の妊婦の実態調査について(1)唾液中のMS数がハイリスクであった者は半数以上であった。(2)「現在、歯科医院を受診中である」と答えた者は1割未満だった。(3)喫煙習慣がMS菌数を増加させる可能性が示唆された。(4)ハイリスクの妊婦は、特定の食品の摂取頻度が高かった。(5)半数以上の妊婦が初産であった。第2子目以降の妊婦の方が初産の妊婦より有意にハイリスクであった。2.キシリトールによる介入研究について(1)介入3か月後の対照群では7人に1人、Xyl群では2人に1人がローリスクであった。キシリトールを摂取すると、母親はローリスクに転じやすい。(2)キシリトール摂取による副作用(下痢等)は、ほとんど生じなかった。(3)母親が妊娠期からキシリトールガムを摂取すると、子が9か月時以降にMS菌を保有する割合は、対照群よりも有意に低かった。以上の結果から、う蝕原性菌の母子伝播を予防するために、妊娠中から母親がキシリトールを摂取することは、primary-primary preventionの一方法として有効であることが示唆された。
著者
吉田 光男 風間 一洋 佐藤 翔 桂井 麻里衣 大向 一輝
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

現在の学術情報システムは,研究者の高度な専門性を前提とした画一的なシステムであり,それ以外の利用者の要求に応えられず,自ら利用範囲を狭めている。本研究の目的は,利用者の状況に応じ,多様な観点で学術情報を提示できる学術情報システムを実現することである。この実現のために,利用者の様々な探索要求に対応する新しい学術情報評価指標を複数開発した上で,利用者の行動履歴をもとに研究練度を推定し,利用者の研究練度に応じて複数の指標を自動的に統合する学術情報システムを構築する。