著者
中野 昌弘
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、不動点帰納法による検証能力の向上、適用可能規模の向上のため、テストに基づく発見的手法により帰納法の仮定を求め(補題発見)、従来手法では自動検証できなかった問題に対しても、自動的な検証を行えるようにすることを目的とする。SMTソルバとしてCVC3を利用して最弱事前条件計算を実装し、補題発見機能と不動点帰納法による不変性自動検証器を実装した。SMTを用いたことや補題の発見、各種手続きの効率化を図ることで、証明力の向上と数十倍程度の高速化を実現し、より規模の大きな問題であっても、自動で証明できるようになった。
著者
横山 絵里子 中野 明子
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.634-640, 2010-11-26 (Released:2010-12-03)
参考文献数
24
被引用文献数
6

【目的】脳卒中の栄養状態と認知・運動機能,ADLとの関連を明らかにする.【方法】対象は慢性期脳卒中381例(平均68±11歳)で,下肢運動年齢(MA),Barthel index(BI),改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS),Functional Independence Measure(FIM),長谷川式簡易知的機能評価スケール(HDS),標準失語症検査(SLTA),行動性無視検査(BIT)の評価と同時期にbody mass index(BMI),血清アルブミン(Alb),体重変化率を指標に栄養状態を評価した.【結果】栄養状態は全体の69%が低栄養であった.高度な低栄養ほどMA,BI,FIM,HDS,SLTA,BITは低下していた.順位相関係数の検討ではMA,BI,HDS,SLTAはBMIやAlbと有意な正の相関を認めた.【結論】低栄養が認知・運動機能やADL低下に関与する可能性が示された.
著者
中野 美紀
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2002

現在、有機分子を用いたデバイスの開発が盛んに行われており、分子の電気的特性を調べるために、走査プローブ顕微鏡や微細加工電極が用いられてきた。分子素子の実用化のためには、電流の増幅効果やゲート電圧引加による分子独特の効果が期待できる微細加工電極を用いた三端子素子の作製が望まれる。さらに、電極ギャップ間距離が数nm以下と短い場合には、分子で電極のギャップ間を架橋できるが、大きな電界効果を望めないことが報告されている。この問題を克服するために、絶縁性分子・金属イオンからなる自己組織化多層膜を、数十nmにギャップ間距離を広げたナノギャップ電極に挟み込んだ。本研究では100-400nmのシリコン酸化膜を持つn-Si基板上に斜め蒸着で作製した20-30nmギヤップのナノ電極に多層膜を挟み電気特性を調べた。その結果、ソース・ドレイン間のギャップが狭い場合には、クーロン振動が観察され、単一電子トンネルトランジスター(SET)として働いていることを室温で確認した。しかし、ギャップが広い場合には、クーロン振動は観察されなかった。電極のギャップ距離が均一でないことから、界面の一部、微小ギャップが薄い部分が量子ドットとして働いているために、ギャップ間距離が狭い電極の場合にのみ、SETの現象が観察できたと考えられる。さらに、酸化膜厚を薄くすることで、クーロン振動の周期が短くなり、電界に対する電流の応答性が良くなったものと考えられる。
著者
竹下 恵 笹部 昌弘 中野 博隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CQ, コミュニケーションクオリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.445, pp.1-6, 2008-01-17

近年のモバイル端末の普及に伴い,MANET上での情報発見技術の確立が求められている.これまでに,DHTとネットワーク層のルーチングプロトコルを統合することで,情報発見の効率を高められることがわかっている.さらに,ノードの物理的な位置に基づいてDHT上でクラスタリングを行う手法が検討されているが,ノードの移動速度が速い環境下では効率の低下が指摘されている.そこで本稿では,クラスタ内でオブジェクト情報を共有することで,従来手法に比べて検索成功率を最大で40%近く改善できることを示す.
著者
中野 公彦 大堀 真敬 山口 大助 山邉 茂之
出版者
Institute of Industrial Science The University of Tokyo
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.142-145, 2009

運転者の行動を解析するために, ドライビングシミュレータを運転している被験者の脳波を計測し, PARAFAC法によって分析した.本手法は多チャンネルの時変スペクトラムを空間, 周波数, 時間の因子に分解するもので, 時間, 周波数のトポグラフィーが比較的容易に得られることから, 脳波解析の効率的な手法となることが期待されている.ドライビングシミュレータ内は脳波計測に適した環境ではないが, 運転している人のα, β波の活動を明確に示すことができた.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
村田 和義 中野 有紀子 榎本 美香 有本 泰子 朝 康博 佐川 浩彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.610, pp.25-30, 2007-03-16

マルチモーダルコミュニケーションでは,音声,ジェスチャ,オブジェクト操作など異なるモダリティーの振る舞いが同時にかつ適切なタイミングで生じている.本研究では特にテレビパソコン操作時におけるマルチモーダル対話型ヘルプエージェントに注目する.まずWizard-of-Oz法を用いて利用者-ヘルプエージェント間の対話例を収集し,対話的なヘルプエージェントでは利用者の状態の確認とそれに伴う補助的な説明が行われることを示す.さらに利用者-エージェント間の対話状態を予測するための確率モデルをベイジアンネットワークにより構築し,ヘルプエージェントが補助的な説明を行う最適なタイミングの予測を行う.
著者
河野 俊行 小島 立 早川 吉尚 大杉 謙一 久保田 隆 松下 淳一 早川 眞一郎 佐野 寛 野村 美明 神前 禎 中野 俊一郎 多田 望 西谷 祐子
出版者
九州大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2004

本領域は平成16年度に開始し平成21年度が最終年度であった。しかし全体の取り纏めのために本補助金を申請したところである。その取り纏め事項の主な事柄としては、全体の取り纏め的業績発表と、集積した判例データの今後の活用方策を明らかにすることの二点であった。前者については各班の代表者による分野別レポートを取り纏め、Japanese Yearbook of International Law 53巻に掲載されたところである。後者については、1001件の判例英文データを取りそろえたプロジェクトはこれまでになく、このデータの価値を維持するためには新判例を継続的に翻訳して加えてゆくことが必要となるところ、領域終了後補助金なしでそれを可能にするための方策が必要であった。そこでそのための方策として、民間企業にデータを移管し、営利ベースで継続することが最も持続性が高いと判断された。そこで複数の民間業者と協議を重ね、本報告書執筆時点では一社に絞られた。2008年の経済危機の影響でリーガルビジネスは多大な影響を受けた。この経済危機と日本政府が導入した破たん企業救済策がリーガルビジネスに与えた影響は大きく、それを踏まえた持続可能な営利ベースのモデルの協議に予想以上の時間が必要となった。ほぼ1年かけて試行錯誤してきたが、ようやく形が見えてきたところである。また最近、この企業のアメリカ本社の担当役員とテレカンファレンスを行い、さらに協議を進めえたところである。
著者
柳井 晴夫 亀井 智子 中山 和弘 松谷 美和子 岩本 幹子 佐伯 圭一郎 副島 和彦 中野 正孝 中山 洋子 西田 みゆき 藤本 栄子 安ヶ平 伸枝 井上 智子 麻原 きよみ 井部 俊子 及川 郁子 大久保 暢子 小口 江美子 片岡 弥恵子 萱間 真美 鶴若 麻理 林 直子 廣瀬 清人 森 明子 奥 裕美 外崎 明子 伊藤 圭 荘島 宏二郎 植田 喜久子 太田 喜久子 中村 洋一 菅田 勝也 島津 明人 金城 芳秀 小林 康江 小山 眞理子 鶴田 恵子 佐藤 千史 志自岐 康子 鈴木 美和 高木 廣文 西川 浩昭 西山 悦子 野嶋 佐由美 水野 敏子 山本 武志 大熊 恵子 留目 宏美 石井 秀宗 大久保 智也 加納 尚美 工藤 真由美 佐々木 幾美 本田 彰子 隆 朋也 中村 知靖 吉田 千史 西出 りつ子 宮武 陽子 西崎 祐史 山野 泰彦 牛山 杏子 小泉 麗 大西 淳子 松本 文奈 鶴見 紘子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

近年、看護系大学の急増と医療の高度化に伴い、卒業までに取得すべき看護実践能力の評価の重要性が増加している。その一環として、臨地実習に入る直前の段階までに看護学生が取得すべき知識・能力を正しく評価しておくことは看護実習の適正化のための急務の課題である。このような状況に鑑み、申請者は、2008~2010年に科学研究費補助金を受け、看護系大学の学生が臨地実習以前に必要とされる知識・能力の有無を検証することを目的として、看護学18領域から約1500の多肢選択式形式の設問を作成し、730名の学生に紙筆形式のモニター試験、および、220名の学生に対するコンピュータ試験(CBT:Computer Based Testing)を実施し、その結果を比較し、全国看護系大学共用のコンピュータ試験の有用性を確認した。
著者
福和 伸夫 山岡 耕春 中野 優 飛田 潤 佐藤 俊明 鈴木 康弘 馬場 干児
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

1891年に発生した濃尾地震の時に「震災の帯」として報告された「震裂波動線」の生成原因の解明を目的とした本研究によって、以下が明らかになった。濃尾平野に関する資料収集を行い、愛知県による深部地盤構造調査の結果について資料収集と既存資料との比較検討を行い、総合的な3次元の深部地盤構造モデルを構築した。震裂波動線に関連する岐阜県内の測線に強震計を並べて設置し地震を観測した。側線は養老断層による基盤の段差から堆積平野側に、約10kmの間に配置した。得られた地震動の波形を調べた結果、養老断層の存在によって励起された表面波の存在が確認された。さらにこの表面波と実体波が干渉とすると思われる断層から数kmの地域で地震動の増幅が見られた。この現象はFEMを用いた波動場の計算機シミュレーションにより、このような地震動の増幅が起きることが確認された。地下構造として濃尾平野に類似したいくつかのモデルで計算を行ったが、どれでも基盤の段差があれば地震動の増幅が見られた。濃尾地震の震源モデルについては、特にその存在が示唆されながら、明らかな証拠が得られていない岐阜-一宮線の断層の存在について検討した。濃尾地震のときに観測されたとされる水準変動を説明する断層モデルとしては、従来の垂直の断層よりも、傾斜が75度の逆断層のほうが良いことがわかった。一方、この地域で現在も発生している余震と思われる微小地震のメカニズムから応力場を推定すると、岐阜-一宮線がかって滑ったという証拠は得られなかった。岐阜-一宮線の断層の存在については、さらなる検討が必要である。震裂波動線に関しては、被害に関する資料を再分析すると、被害の多かった地域は線状ではなく、岐阜地域から濃尾平野南東部にかけて面上に分布しているようである。この結果は、被害が大きかったのはむしろ地盤や震源の特性によるものである可能性もある。
著者
直井 信久 中馬 秀樹 中崎 秀二 丸岩 太 新井 三樹 中野 徹
出版者
宮崎医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本年度の研究は人体で計測した臨床電気生理学的実験とネコ、ニワトリ網膜を用いて行った動物網膜の電気生理学的実験を行った。臨床電気生理学的には正常者と網膜内層の異常があると考えられる緑内障眼において、多局所網膜電図(Sutterら)を測定した。緑内障眼では有意に多局所網膜電図各波の振幅の低下、頂点潜時の延長が認められたが、これが網膜内層の変化を反映しているのか、視細胞など外層の変化を反映しているのかは、来年度以降の基礎実験が必要である。基礎実験の内、M波については薬理学的手法を用いて行った。TTXを用いてナトリウム依存性活動電位を抑制するとM波は変化しないがERGのoff反応は減少した。M波のon反応はAPB投与により極性が反転し、この反転した波はaspartateによって消失した。また網膜電図のSustained negativer responseはAPBによって変化しなかった。この様にM波の臨床的ERGへの関与は小さいが、パターン刺激のように小さい刺激野で刺激する場合などでは関与する可能性が考えられた。Scotopic threshold response(STR)に関しては、微少電極でこの波のdepth profileを調べることができたが、STRは内網状層付近で最大となり、網膜中心付近(60%の深さ)で極性が逆転した。このことは、この点より近位側に電流のsinkが存在することが推定され、電流のsourceはさらに遠位側にあると考えられた。またカリウム選択性電極を用いてカリウム変化を測定した結果ではカリウム濃度の変化と網膜電図の変化に密接な関係がみとめられた。
著者
遠藤 泰生 荒木 純子 増井 志津代 中野 勝郎 松原 宏之 平井 康大 山田 史郎 佐々木 弘通 田辺 千景 森 丈夫 矢口 祐人 高橋 均 橋川 健竜 岡山 裕
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

領土の拡大と大量移民の流入を規定条件に建国後の国民構成が多元性を増したアメリカ合衆国においては、社会文化的に様々の背景を持つ新たな国民を公民に束ねる公共規範の必要性が高まり、政治・宗教・経済・ジェンダーなどの植民地時代以来の社会諸規範が、汎用性を高める方向にその内実を変えた。18世紀と19世紀を架橋するそうした新たな視野から、合衆国における市民社会涵養の歴史を研究する必要性が強調されねばならない。
著者
中野 和典 西村 修 野村 宗弘
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

水圏生態系への影響が懸念される道路・市街地・農地等からの表面流出水のパッシブトリートメントに有効なろ材としてハイドロタルサイトを見出した。次いで水環境での残留性が懸念されるペルフルオロオクタンスルホン酸の吸着特性を明らかにした。さら滋賀県草津市のファーストフラッシュ浄化施設の人工湿地ユニットを利用した実証実験により、本研究で提案するパッシブトリートメントの有効性を確認することができた。
著者
石坂 一久 中野 啓史 八木 哲志 小幡 元樹 笠原 博徳
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.958-970, 2002-04-15
被引用文献数
19

主記憶共有型マルチプロセッサシステムは幅広く使われているが,プロセッサ数の増加にともないその最大性能と実効性能の差が拡大してきている.このような問題を解決するためには,従来のループ並列処理に加えて,粗粒度タスク並列性,近細粒度並列性などのマルチグレイン並列性の利用が重要な技術である.また,プロセッサ技術の進歩とともに,プロセッサとメモリの速度差が顕在化し,その速度差を補うためのメモリ階層,特にキャッシュの有効利用は,マルチプロセッサシステムの性能向上に重要な要因となっている.本論文では,ループ並列化に加えプログラムを基本ブロック,ループ,サブルーチンといった粗粒度タスク(マクロタスク)に分割し,それらの間の並列性を効果的に利用するとともに,従来OSCAR型マルチプロセッサアーキテクチャにおけるローカルメモリおよび分散共有メモリ用に提案されていたデータローカライゼーション手法を主記憶共有型マルチプロセッサ上のキャッシュ最適化用に発展させたデータ分散・ダイナミックスケジューリング手法を提案する.本手法はOSCARマルチグレインコンパイラ上で実現され,逐次FORTRANプログラムを入力すると,共有メモリマシンにおける標準APIであるOpenMPを用いて複数マクロタスク間でキャッシュ上の共有データを再利用する並列化コードを自動生成する.本手法の評価を商用SMPマシンであるIBM RS/6000 604e High Node,Sun Ultra80上でspec95fpベンチマークのtomcatv,swim,mgridを用いて行った結果,IBM RS/6000上ではIBM XL FORTRAN version 6.1コンパイラの自動ループ並列化を行った場合の最小実行時間に対して本手法は最大5.8倍の性能向上を示し,Sun Ultra80上ではSun Forte 6 update 1コンパイラの最小時間に対して最大3.6倍の性能向上が得られることが確かめられた.In multiprocessor systems,the gap between peak and effective performance has getting larger.To cope with this performance gap,it is important to use multigrain parallelismin addition to ordinary loop level parallelism.Also, effective use of memory hierarchy is importantfor the performance improvement of multiprocessor systemsbecause the speed gap between processors and memories is gettinglarger.This paper describes coarse grain task parallel processingthat uses parallelism among macro-tasks like loops and subroutinesconsidering cache optimization using data localization scheme.The proposed scheme is implemented on OSCAR automatic multigrainparallelizing compiler. OSCAR compiler generates OpenMP FORTRAN programrealizing the proposed scheme from an ordinary FORTRAN77 program.Its performance is evaluated on IBM RS6000SP 604e High Node 8 processors SMP machine and Sun Ultra80 4 processors SMP machine.In the evaluation,OSCAR compiler gives us up to 5.8 times speedup againstthe minimum execution time of IBM XL FORTRAN compiler on IBM RS/6000 and up to 3.6 times speedup against Sun Forte 6 update 1 compileron Sun Ultra80.
著者
中野 春夫
出版者
学習院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は平成9年度から11年度にかけて、ルネサンス文学における魔術主義的想像力の特筆を分析、考察した。本研究はまず英国ルネサンス文学における魔術の扱われ方を考察した。この考察を通じて、「魔術」に潜む秘めやかな欲望、願望、空想を突きとめることができ、その現象を具体的に指摘した。その成果は『エリザベス朝演劇の誕生』(水声社)における「ルネサンス魔術のメタモルフォシス」(平成9年)に発表された。ルネサンス期において通常魔術と呼ばれたもの(自然魔術、星界魔術、天空魔術)は、霊(スピリトゥス、オカルト、プロパティー)という謎の作用力を対象とする点で錬金術と同じである。ところが、錬金術において霊を物質と単一化(現代の用語なら融合)させることが最終目的である一方、その他の魔術のおいては霊を物質の中に貯えるか、支配することが目標となる。護符(タリスマン)や悪魔召還がその典型的な例である。以上の成果は、『逸脱の系譜』(研究社)における「ルネサンス錬金術の想像力」(平成11年)に発表された。ルネサンス魔術は発想の点で現代の応用科学とそう変わりはない。いずれも(電磁力、原子力など)目に見えない作用力を応用しようと試みる点である。一方、違いも大きい。現代であれば物質的な因果関係から理解することを、ルネサンス期には霊的な存在を原因と考えたことである。必然的にルネサンス期の物理学、化学、天文学は空想的な仮説を生み出したこれが同時代の文学にしばしば応用された魔術主義的想像力である。