著者
中野 詔彦 長谷川 澄子 中尾 幸道
出版者
社団法人日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.42, no.480, pp.1072-1076, 1993-09-15
被引用文献数
2

The effect of reinforcement of elastic modulus in polymer composite materials filled with ultramicroscopic particles has been investigated by taking an example of polymethyl methacrylate-palladium cluster composites.The singularity that makes the elastic modulus increase twice has been indicated by filling up the microscopic fine particles of 10〜20A in spite of a little volume which is 05%.This singularity is caused by the fact that the microscopic particles and the matrix,are perfectly unificated in the materials.The reinforcement of elastic modulus can be explained by the perfect parallel model in consideration of the interface restriction regions.It is clearly shown that such singularity is brought in only by the relative size effect of microscopic particles in such perfect composite materials.
著者
山口 武視 津野 幸人 中野 淳一 真野 玲子
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.703-708, 1995-12-05
被引用文献数
16

水稲茎基部からの出液は, 根の呼吸に関連する生理活性と関係していると考えられるが, 同一の齢でも出液速度が大きくばらつくことが指摘されている. そこで, 出液の測定条件を検討し, 出液に関与する要因を明らかにして, 出液速度で生理活性を把握できるかどうかを検討した. 同一個体内で出液を採取する茎以外の茎に葉が着生していると, それの蒸散のために出液量が減少した. したがって, 出液を採取する際には, 測定個体のすべての茎を切除する必要を認めた. 切断部の茎断面積と1茎当たり出液速度とは高い正の相関関係があり, 断面積の大きい茎, すなわち太い茎は茎断面積当たりの出液速度も高い値であった. 地温が7℃から29℃までの範囲では, 出液速度は地温に伴って指数関数的に増加し, その温度係数(Q_<10>)は2.2で, 根の呼吸速度の温度係数とほぼ同じ値であった. 上記の測定条件を考慮したうえで, 穂ばらみ期以降の根の呼吸速度と出液速度との関係を検討した結果, 両者の間には高い正の相関関係が認められた. これより, 根の生理活性が重要な問題となる登熟期では, 出液速度から根の生理活性を推定することができ, 出液速度の測定は, 根の診断のうえで有効で簡便な手法のひとつとしてあげることができる.
著者
中野 照男 西川 杏太郎 内田 俊秀 西山 要一 尾立 和則 増田 勝彦 三浦 定俊 川野辺 渉 青木 繁夫 中野 照男
出版者
東京国立文化財研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

この研究は、展示や保管における日常的な地震対策に関する研究、地震発生時における緊急措置に関する研究の2本の柱から成る。両研究とも、阪神淡路大震災の折に被災した博物館等の機関、社寺、所蔵家をはじめ、文化財の救援活動に携わった諸機関、諸団体及び個人の協力を得ながら遂行した。震災直後に諸機関や諸団体が行った被害状況調査の報告、被災博物館等による被害の具体的状況に関する調査報告、震災後に博物館等が文化財や試料の収蔵、保管、公開、展示のために実施した改良や工夫に関する情報を、基礎的情報として、可能な限り収集し、それらを解析することによって、新しい防災対策策定のための指針を導き出そうと努めた。その上で、免震装置や吊金具、固着剤など、震災後に大いに着目されている装置や材料、防災対策にとって重要と思われる事項については、それらの有用性や問題点の所在を、実験や分析を踏まえて検討した。さらに、万一災害が発生した場合の文化財等の保全方法、被害を最小にとどめるための緊急措置、文化財等の救出や救援活動などについては、阪神淡路大震災やその他の災害の折の研究分担者、研究協力者の経験をもとにし、諸外国での研究成果を取入れて研究を進めた。また、災害に対応するための博物館や美術館、地方公共団体等のネットワークの形成に関しては、多くの機関に協力を呼びかけ、意見を交換しながら研究を行った。また、資料や参考文献等を多数収集したが、これらは、神戸市立博物館内の文化財防災資料センターにすべて移管し、今後の新たな研究や防災対策の策定に活用する。
著者
中野 優
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

コルチカム科花き園芸植物を用いて遠縁種間交雑を行ったところ、胚珠培養により、グロリオーサ類、サンダーソニアおよびリットニア間の複数の組み合わせにおいて属間雑種が得られた。これらの雑種は、いずれも新規形質を示したことから、コルチカム科花き園芸植物における新品種育成に属間交雑が有効であると考えられた。また、GISH法により属間の染色体が明確に識別できたことから、属間のゲノムの相同性は低いことが予想された。
著者
松枝 美智子 安酸 史子 中野 榮子 安永 薫梨 梶原 由紀子 坂田 志保路 北川 明 安田 妙子
出版者
福岡県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

独自に作成した精神障害者社会復帰促進研修プログラム(案)を、後述の1)-4))は看護師3-5名、5)は看護師3-4名、臨床心理士0-1名、精神保健福祉士1名(2回目は代理者)、作業療法士1名で、各2回計10回のフォーカスグループインタビューで検討した。研究協力者のグループから出された、(1)言葉の定義を明確に、(2)簡潔明瞭な表現に、(3)研修対象者を明確に、(4)コース間に順序性がある可能性、(5)フォローアップ研修の期間や頻度を明確に、(6)タイトルを短く興味をひく表現に、(7)受講生がエンパワーメントされるようなグループワークに、(8)受講生の募集方法が課題、(9)受講生同士のネットワーク作りも同時にできると良い、などの意見をもとにプログラムを修正した。各コースの名称は、1)看護観と援助への動機づけ育成コース、2)システムを構築し改良する能力の育成コース、3)直接ケア能力育成コース、4)患者イメージ変容コース、5)ケアチームのチームワーク促進コース、である。本プログラムの特徴は、(1)受講希望者のレディネスや興味に従って受講できる5つのモジュールで構成されている、(2)グループワークを重視した参加型の研修である、(3)On-JTとOff-JTを組み合わせて実践に直接役立つ、(4)フォローアップ研修と大学の教員のコンサルテーションや受講生同士のピアコンサルテーションにより受講生やケアチームの継続的な成長を支援する、(5)現在精神保健医療福祉の分野で急務の課題であるケアチームのチームワークを促進する、(6)精神障害をもつ人の社会復帰の経験に学ぶ内容が含まれている、(7)一つの研修を受けることで他の研修で目的としている各種の能力育成に波及効果が期待できる、の7点である。本研修プログラムは、院内研修、職能団体での研修、教育機関によるリカレント教育など、様々な場や状況に応じて修正して活用できる可能性があり、実施により精神科に10年以上入院している人々の社会復帰促進につながることが期待できる。
著者
中野 俊
出版者
首都大学東京
雑誌
小笠原研究 (ISSN:03868176)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.31-48, 2008-03

南硫黄島は第四紀後半に形成された火山島であるが、噴火記録や噴気活動はない。追跡できる火砕物層準を基準とし、成層火山体である南硫黄島火山を下位から古期火山噴出物-1、古期火山噴出物-2、南部中期火山噴出物、北部中期火山噴出物および新期火山噴出物に区分した。いずれも陸上噴出した溶岩および火砕岩からなり、広域的に認められる有意な浸食間隙は存在しない。海食崖を貫く岩脈は254本を数えた。その大部分は放射状岩脈である。岩質は溶岩・岩脈ともにすべて玄武岩である。斑晶として斜長石、単斜輝石、かんらん石を含む。最大径1cmに達する大型の斑晶が多く、特徴的に単斜輝石を40-50%程度含む玄武岩も見つかった。
著者
中野 敦
出版者
筑波大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

ゲームプレイヤーがモーションを自由にクリエイションできるようになるとゲームの話の展開が変化するため,その変化した展開に対してキャラクタが柔軟に対処することが求められています.そのため,基盤システムの重要な機能として,ゲームプレイヤーからの自由なタイミングでのインタラクションに対してキャラクタが人間のように知的に振る舞い,かつそれらのキャラクタの能動的な行動によって長期的な話の展開を生成する行動制御技術が必要となっていました.そこで,話の流れを保ちつつ,状況に合わせて豊富で能動的な反応を生成するために,エピソードツリーと名付けた統一的な制御構造を用いて反応行動を生成するシステムを提案しました.このシステムでは,各キャラクタが状況に合わせて断片的なエピソードを表すエピソードツリーを取捨選択していくことで,全体の話の流れを構成します.また,キャラクタが干渉された場合には,エピソードツリーに付随された中断処理を挿入し,反応行動へ移り,反応行動が終了した際には復帰処理を挟み,元の行動に復帰することでキャラクタの行動の連続性を保ちます.ユーザが自由なタイミングでアニメーションに干渉するためのインタフェースとして,「触る」,「掴む」,「オブジェクトを追加する」の3つの異なる特徴を備えたゲームコンテンツを実際に制作しました.このコンテンツ上で,これらのインタフェースを用いて,自由なタイミングで相互作用できるキャラクタアニメーションを生成できることを,インタラクティブ東京やDiva展といった複数の会場で展示し,示しました.その結果,芸術科学会論文誌で論文賞をいただくといった学術的な成果に加えて,芸術科学会展のデジタルシネマ部門で優秀賞,そして国内の優秀なコンテンツが展示されるインタラクティブ東京に推薦されるなど,展示作品としても大きな成果を得られました.
著者
川村 静児 中村 卓史 安東 正樹 坪野 公夫 沼田 健司 瀕戸 直樹 高橋 龍一 長野 重夫 石川 毅彦 植田 憲一 武者 満 細川 瑞彦 佐藤 孝 佐藤 修一 苔山 圭以子 我妻 一博 青柳 巧介 阿久津 智忠 浅田 秀樹 麻生 洋一 新井 宏二 新谷 昌人 井岡 邦仁 池上 健 石徹白 晃治 市耒 淨興 伊藤 洋介 井上 開輝 戎崎 俊一 江里口 良治 大石 奈緒子 大河 正志 大橋 正健 大原 謙一 奥冨 聡 鎌ヶ迫 将悟 河島 信樹 神田 展行 雁津 克彦 木内 建太 桐原 裕之 工藤 秀明 國森 裕生 黒田 和明 郡和 範 古在 由秀 小嶌 康史 小林 史歩 西條 統之 阪上 雅昭 阪田 紫帆里 佐合 紀親 佐々木 節 柴田 大 真貝 寿明 杉山 直 宗宮 健太郎 祖谷 元 高野 忠 高橋 忠幸 高橋 弘毅 高橋 竜太郎 田越 秀行 田代 寛之 田中 貴浩 谷口 敬介 樽家 篤史 千葉 剛 辻川 信二 常定 芳基 徳成 正雄 内藤 勲夫 中尾 憲一 中川 憲保 中野 寛之 中村 康二 西澤 篤志 丹羽 佳人 野沢 超越 橋本 樹明 端山 和大 原田 知広 疋田 渉 姫本 宣朗 平林 久 平松 尚志 福崎 美津広 藤本 眞克 二間瀬 敏史 前田 恵一 松原 英雄 水澤 広美 蓑 泰志 宮川 治 三代木 伸二 向山 信治 森澤 理之 森脇 成典 柳 哲文 山崎 利孝 山元 一広 横山 順一 吉田 至順 吉野 泰造
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理学会講演概要集 (ISSN:13428349)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, 2006-03-04
著者
藪田 貫 浅倉 有子 菊池 慶子 青柳 周一 桑原 恵 沢山 美果子 曽根 ひろみ 岩田 みゆき 中野 節子
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では通常の分担者による研究会の積み重ねという形を取らず、日本の各地で「江戸の女性史フォーラム」を順次開催し、地域の女性史研究の成果と資料に学ぶというスタイルで3年間、進めた。その結果、大阪(2005.7)徳島(2005.12)、鳥取(2006.5)、東京(2006.7)、福岡(2006.12)、金沢(2007.9)、京都(2007.11)の7ケ所で開催することができた。その成果は、いずれも報告書の形で公表されているが、地域に蓄積された女性史の成果の掘り起こしと交流に貢献できたと確信する。とくに藩制史料の中から奥女中を含め、武家の女性の発掘が進み、菊池(柳谷)・浅倉・桑原らが中心となって「藩社会の中の女性」が一つの新しい潮流となっている。また活発な研究活動は、国内外の学会発表という形でも結実した。国内では立教大学日本学研究所の公開シンポジュウム(2006.5)に沢山と藪田が、ジェンダー史学会・女性史総合研究会共催のシンポジュムには曽根ひろみ(協力者)が、それぞれパネリストして参加した。国際的な学術交流では、鳥取と京都のフォーラムにアメリカとオーストリアから研究者を招き、また藪田が、ケンブリッジ大学での研究会「江戸から明治の女性と読書」(2006.9)、ボストンでのアメリカ・アジア学会分科会「19世紀日本の売買春と政治」に報告者として参加した。研究課題としてあげた研究者の世代交代を進め、若手研究者を養成するという点では、若い大学院生のフォーラムへの参加も少なく、残念ながら十分な成果を挙げていない。また分担者の研究の成果にもムラがあり、地域的にもまたライフコースについても、均等に成果を上げるには至らなかった。反省点であり、今後の課題である。
著者
中野 大三郎 伊澤 邦彦
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.235-241, 1996-09-30
被引用文献数
4

三重県伊賀盆地の上野市大谷と大山田村甲野の2地点で1988年から1991年に, カワニナを採集し, 母貝の殻高と胚数の関係及び殻高25-30 mmの母貝を用い保育嚢にみられる胚の発育段階による胚構成の季節変化から生殖周期, 保育期間, 年産仔数を検討した。年による生殖周期の基本パターンには大きな相違は認められなかった。夏には発生初期の胚が保育嚢に多く認められ, 1腹の平均胚数は大谷では約1000個, 甲野では約700個と最大を示し, 夏以降秋まで産仔による減少を続ける。越冬した胚は春に産出し, この季節の胚数は最小となり, 大谷及び甲野ともに約250個であった。卵は4月下旬から10月中旬までの長期間にわたり保育嚢に継続して供給され, 4月下旬から8月下旬までに供給された卵は6月下旬から10月中旬に稚貝となり産出されると推定された。8月下旬以降の供給された卵は越冬し, 翌春の4月以降6月までに稚貝となり産出されると推定された。温暖期の4月から10月の胚の成長速度に相違がないと仮定した場合, 再生産力として1母貝当り大谷で1550個/年から2100個/年, 甲野で約1200個/年が見積られた。
著者
清家 泰 奥村 稔 三田村 緒佐武 千賀 有希子 矢島 啓 井上 徹教 中村 由行 相崎 守弘 山口 啓子 日向野 純也 山室 真澄 山室 真澄 中野 伸一
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

実験区(高濃度酸素水導入窪地)の他に、対照区(高濃度酸素水導入の影響の及ばない窪地)を設け、比較検討した。湖底直上1m層への高濃度酸素水の導入による改善効果として、明らかになった研究成果の概要を以下に示す。(1)対照区では底層水中に高濃度の硫化水素(H_2S)が観測されたのに対し、実験区ではH_2Sが消失した(H_2S+1/2O_2→H_2O+S^0↓)。(2)対照区では底層水中の溶存酸素(DO)濃度が無酸素に近い状態で推移したのに対し、実験区では窪地全域のDOが増大した。また、対照区では底層水中の酸化還元電位(ORP)が負の領域で推移したのに対し、実験区では正の領域まで上昇した。(3)湖底堆積物中のH_2S濃度を鉛直的にみると、対照区では表層部のみでH_2S濃度の減少が観られたのに対し、実験区では表層から5cm程度の深度まで濃度が激減した。また、メタンCH_4(温暖化ガス)もH_2Sの鉛直分布と同様の傾向を示した。(4)対照区に比べ実験区では、底層水中PO_4^<3->に明瞭な減少傾向が観られた。実験区の湖底泥表面に酸化膜の形成が観られたことから、湖底泥界面における共沈現象及び湖底からのPO_4^<3->の溶出抑制が示唆された。(5)対照区に比べて実験区では、底層水中の無機態窒素(NH_<4+>+NO_<2->+NO_<3->)に減少傾向が観られた。酸素導入により、湖底泥界面における窒素除去機能(硝化・脱窒)が活性化したことを示唆する。湖底堆積物の深度別脱窒活性を観ると、対照区では表層部のみ活性を示したのに対し、実験区では表層から5cm程度の深度まで顕著な活性を示した。この結果は、高濃度酸素水の供給により、脱窒部位が大きく拡大したことを意味する。(6)対照区ではベントス(底生生物)が皆無であったのに対し、実験区では、アサリやサルボウガイのような二枚貝の加入は認められなかったものの、多毛類を中心とするベントスの棲息が確認された。以上のように、松江土建(株)社製の気液溶解装置を用いるWEPシステムは、無酸素水塊への酸素供給を起点に、生物に有毒なH_2Sの消失、温室効果ガスであるCH_4の消失、栄養塩(N,P)の減少及びベントスの復活等に絶大な効果を発揮した。通常、還元的な湖底堆積物に対する自然任せの酸素供給では、その効果は、精々、湖底泥表層部の数mmまでと云われていることを考えると、本システムによる底質改善効果(泥深約0~40mm)は絶大である。このようにWEPシステムは、本研究で対象としたような比較的広範囲の窪地に対して有効であり、特に湖底の底質改善に極めて有効であると云える。今後、ランニングコストの低減が図れれば、有用性はさらに高まるものと考えられる。
著者
家島 彦一 PETROV Petar GUVENC Bozku 鈴木 均 寺島 憲治 佐原 徹哉 飯塚 正人 新免 康 黒木 英充 西尾 哲夫 林 徹 羽田 亨一 永田 雄三 中野 暁雄 上岡 弘二 CUVENC Bozku
出版者
東京外国語大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

本プロジェクトは、広域的観点から、西は東欧・トルコから東は中国沿岸部までを調査対象とし、様々な特徴をもつ諸集団が移動・共存するイスラム圏の多元的社会において、共生システムがどのように機能しているかを、とくに聖者廟に焦点を当てて調査研究した。平成6年度はブルガリア・トルコの東地中海・黒海地域を重点地域とし、共生システムの実態について調査した。平成7年度は、ペルシア湾岸地域(イラン・パキスタン)を重点地域とし、主にヒズル廟に関する現地調査を実施した。平成8年度は、さらに東方に対象地域を広げ、中国沿岸部と中央アジア(新疆・ウズベキスタン)を中心に聖者廟などの調査を実施し、あわせてトルコとイランでヒズル信仰に関する補充調査を行なった。共生システムの様相の解明を目指す本研究で中心的に調査したのは、伝統的共生システムとして位置づけられる聖者廟信仰・巡礼の実態である。とくにヒズル廟に着目し、地域社会の共生システムとしていかに機能しているか、どのように変化しつつあるかについて情報を収集した。その結果、ヒズル信仰がきわめて広域的な現象であり、多様な諸集団の共存に重要な役割を果たしていることが明らかになった。まず、トルコでの調査では、ヒズル信仰が広範に見られること、それが様々な土着的ヴァリエイションをもっていることが判明した。ペルシア湾岸地域では、ヒズル廟の分布と海民たちのヒズル廟をめぐる儀礼の実態調査を行った結果、ペルシア湾岸やインダス河流域の各地にヒズル廟が広範に分布し、信仰対象として重要な役割を担っていることが明らかになった。ヒズル廟の分布および廟の建築上の構造・内部状況を相互比較し、ヒズル廟相互のネットワークについてもデータを収集した。興味深いのは、元来海民の信仰であったヒズル廟が現在ではむしろ安産・子育てなどの信仰となり、広域地域間の人の移動を支える機能を示している点である。さらに中国では、広州・泉州などでの海上信仰の検討を通じて、イスラムのヒズル信仰が南宋時代に中国に伝わり、媽祖信仰に影響を与えたという推論を得た。また、中央アジアの中国・新疆にも広範にイスラム聖者廟が分布しているが、墓守や巡礼者に対する聞き取り調査を行った結果、ヒズル廟などと同様、聖者廟巡礼が多民族居住地域における広域的な社会統合の上で占める重要性が明らかになった。聖者廟の調査と並行して、多角的な視点から共生システムの様相を調査研究した。一つは、定期市の調査である。イラン北部のウルミエ湖周辺における調査では、いくつかの定期市サークルが形作られていることが判明した。また、パキスタンではイスラマバ-ド周辺の定期市、新疆ではカシュガルの都市および農村のバザ-ルで聞き取り調査を実施し、地域的なネットワークの実態を把握した。他方、ブルガリアでは、聞き取り調査により伝統的な共生システムがいかに機能しているかについて情報収集を行い、宗教的ネットワークを中心として伝統的システムとともに、現在の共生システムがどのような状況にあるかについて興味深い知見を得た。キプロス・レバノン・シリアでは現在、宗教・民族対立をヨーロッパによる植民地支配の遺産ととらえ、かっての共生システムの回復を試みている様子を調査した。いま一つは、言語学的観点から共生システムをとらえるための調査で、多様な民族・宗教集団が共存するイスラエル・オマーン・ウズベキスタンで実施した。イスラエルでは、ユダヤ・イスラム・キリスト3教徒の共存に関する言語学的・民俗学的データを収集した。また、ウズベキスタンでは多言語使用状況の調査を行い、共和国独立後、ウズベク語公用語化・ラテン文字表記への転換といった政策にもかかわらず、上からの「脱ロシア化」が定着とはほど遠い実態が明らかになった。以上のように、イスラム圏の異民族多重社会においては、多様な諸集団の共存を存立させる様々なレベルにおける共生システムが広域的な規模で機能している。とくに、代表的なものとして、聖者廟信仰・巡礼の実態が体系的かつ具体的に明らかになった。
著者
木村 俊一 澤木 勝茂 井上 昭彦 鈴木 輝好 辻村 元男 鈴木 淳生 高嶋 隆太 八木 恭子 後藤 允 中野 張
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

「OR指向ファイナンス」とは,数理ファイナンス理論をオペレーションズ・リサーチ(OR)における意思決定支援という観点からそのモデル作りを見直そうという本研究の基本概念である.この基本概念の下に,5つの研究テーマ(1) オプション価格評価;(2) 仕組債の価格評価;(3) 数理ファイナンス理論 (4) 企業ファイナンスにおける価値評価;(5) リアルオプションに対する数理モデルの開発とそれらの応用に関する研究を行い,数多くの国際的な研究成果を得た.
著者
西岡 徹 中野 潔
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.30, pp.1-8, 2007-03-17

N コードは、10進数のみで実空間の中での位置を指定するための仕組みである。ユビキタスネットワーク社会における位置指定手法として、優れたものであると考える。N コードでは、全世界を 30 の大領域に分け、大領域を 100×100 の中領域(約 50km 四方)に分ける。中領域の中では、6桁で 50m、8桁で 5m の分解能で位置が指定できる。筆者らは、06年1月に、堺市南区登美丘地区で、GPS 機能付き携帯電話を用い、N コードに基づく児童の安全確保システムの実証実験を実施した。児童の安全確保のシステムでは、電子タグ活用型と携帯電話活用型とが、2つの典型例となっているが、筆者(西岡)は、携帯電話活用型の方が、コストが安く優れていると判断している。The N code is the method for specifying the position only with decimal integer values in the inside of real space. The authors think that N-code is excellent as the position specification method in ubiquitous network society. The whole world is divided into the large domain of 30 in N-code system. The large domain is diveded into the middle domain of 100 times 100 (approximately 50km square) in the system. If we use 6 digits, the granularity is approximately 50m. If we use 8 digits, one is 5m. The authors performed a proving experiment of safety assurance system of children based on N-code method using a cellular-phone in Tomioka area in Minami-ku, Sakai-shi, Osaka-fu at January, 2007. There are 2 typical examples in the field of secure assurance system of children : IC tag type and cellular-phone type. One of the author (Mr.Nishioka) evaluates that cellular-phone type is better because of costs and other factors.
著者
近藤 哲 蜂須賀 喜多男 山口 晃弘 堀 明洋 広瀬 省吾 深田 伸二 宮地 正彦 碓氷 章彦 渡辺 英世 石橋 宏之 加藤 純爾 神田 裕 松下 昌裕 中野 哲 武田 功 小沢 洋
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.17, no.11, pp.1987-1995, 1984-11-01
被引用文献数
23

原発性十二指腸癌7切除例を対象として臨床的検討を行った. 5例は UGI, 内視鏡, 生検の3者で診断可能であったが, 2例は膵癌の十二指腸浸潤との鑑別が困難であった. しかし US と CT で膵癌を否定しえた. 血管造影では4例中2例が十二指腸原発と確認しえた. さらに切除可能性, 根治性を推定するのに有用であった. リンパ節転移は全例に認められ, 非治癒切除4例中3例の非治癒因子, 治癒切除後再発2例中1例の再発因子となっていたした. したがって, 乳頭上部癌では膵頭部癌第1群リンパ節郭清をともなう膵頭十二指腸切除を原則とし, 乳頭下部癌では腸間膜根部リンパ節をより徹底郭清し状況によっては血管合併切除再建が必要と思われた.
著者
池邨 清美 中野 茂 堀内 ゆかり KAZUKO Behrens
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、ビデオ育児支援法(Video-feedback Intervention to promote Positive Parentingand Sensitive Discipline: VIPP-SD)のわが国での適応可能性を実証することを目的として行われ、親子で遊んだり、日常活動を行っている場面の母親に対するビデオフィードバックが、親子関係改善の介入効果をもつための条件を明らかにした。
著者
田中 法生 中野 紘一
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-2, 2005-12

Najas guadalupensis (Sprengel) Magnus var. floridana Haynes and Wentz (イバラモ科)が日本で初めて確認された。その分布域は,南フロリダ,グアテマラ,イスパニョーラ島である。
著者
寺本 吉輝 中野 英一
出版者
大阪市立大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2003

広い範囲に降ってくる宇宙線を観測するための宇宙線観測ネットワークを構築した,観測装置は4台のシンチレーション検出器がら構成されるものを学校や科学館の屋上に置き,そこで検出された宇宙線空気シャワーをパソコンに取り込み,インターネットで大阪市立大学のサーバーに送って,そこから各サイトに観測データを配送するシステムを作った,これを連続的に稼動させて長期連続観測を始めた,いままで高校のネットワークはファイヤーウォールにさえぎられ,高校からデータを発信することが出来なかったが,大学にハイパーテキストトランスポートプロトコル(HTTP)のサーバーを置いてこれに対して高校側から交信することにより,高校からデータ発信が出来るようになった.宇宙線がこの装置で検出される頻度は各サイトあたり1分間に3現象程度であるので,全部のサイトを合わすと1年間に1000万現象ほどになる.現在までに取ったデータを解析した結果,ネットワークを通してデータ収集してもバイアスなくデータが取れていることが確認された.また2つのサイトで同時にくる現象を調べたところ,現在の統計精度では明確な現象の過剰は見られない.3つのサイトで同時にくる現象については,姫路高校と大手前高校と科学館に来た宇宙線現象のなかに1ミリ秒以内に来たものがあり,これはランダムに宇宙線が来ると仮定した場合よりも統計的に有意に多い,今後観測をつづけて統計的有意性をさらに高めたい.高校生の理科への興味を高めるための活動としては,高校への訪問・講義,高校の文化祭への出展,などを行った,高校での主な活動は科学クラブによるものである,また総合教育のテーマにも取り上げていただく予定をしている.また,高校の科学クラブが活動の一環として,大学と共同で宇宙線観測を行っていること自体が高校生にとって励みになると考えられる.現在の装置は値段が高いので,将来に向けて値段の安い装置を作る開発をはじめた.特にシンチレージョン検出器は高いので,これにかわる高抵抗板検出器を試作して,これが実用的に使えるかテストしている.この開発での最大の問題はガス封入型高抵抗板検出器の寿命である.現在までのところ1年程度は問題なく使えている.