著者
浅井 和行 久保田 賢一 黒上 晴夫
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.35-49, 2009-03-31

メディア・リテラシー教育の重要性は,近年幅広く認識されつつあるが,実践の広がりや定着の度合いは,十分であるとはいえない。メディア・リテラシー教育を公教育の中にカリキュラムとして正式に位置づけ,実践を行っているイギリスとカナダ,そしてオーストラリアのメディア・リテラシー教育カリキュラムを比較し,日本のメディア・リテラシー教育を改善するための留意点を検討した。その結果,日本におけるメディア・リテラシー教育のカリキュラムは,(1)長期的なもの(2)批判的思考について系統的に教えるもの,(3)教科横断的なもの,という3つの留意点をもとに考案すべきものであることが分かった。また,実際の教育を実践していくにあたっては,教員養成や教員研修においてメディア・リテラシー教育をとりあげていくことも大切であることが確認できた。
著者
海部 陽介 篠田 謙一 河野 礼子 米田 穣 後藤 明 小野 林太郎 野林 厚志 菅 浩伸 久保田 好美 國府方 吾郎 井原 泰雄
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、旧石器時代の琉球列島に現れた人々がどのように海を渡ってきたかについて、その理論的枠組みを定めるため、文理問わず多彩な分野の研究者が情報を共有して、総合的モデルをつくることを目指した。彼らは草・竹・木のいずれかを素材とした漕ぎ舟に乗り、男女を含む少なくとも10人程度の集団で、黒潮の流れる海を、漂流ではなく意図的に航海してきたと考えられる。このモデルを、現在進行中で連動して行なっている実験航海に反映して、当時の航海を再現してみれば、そのチャレンジがどれだけ困難なものであったのかが見えてくるであろう。
著者
川上 宏之 天倉 吉章 堤 智昭 佐々木 久美子 池津 鮎美 稲崎 端恵 久保田 恵美 豊田 正武
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.258-263, 2010-10-25 (Released:2010-11-06)
参考文献数
18
被引用文献数
2

天然/畜養クロマグロおよび畜養ミナミマグロの赤身,中トロおよび大トロのダイオキシン類および総水銀を分析し,部位,畜養/天然および種差について検討した.検討の結果,ダイオキシン類濃度は,脂質含有量との間に正の相関が見られ,部位別濃度は赤身<中トロ<大トロであった.クロマグロは,畜養と天然産で差がなく,畜養ミナミマグロに対して約2~10倍ほど高い値を示した.総水銀濃度は,脂質含有量との間に負の相関を示し,部位別濃度は赤身>中トロ>大トロであった.畜養クロマグロの総水銀濃度は,天然産と同レベルの蓄積であったが,畜養ミナミマグロの約2~3倍高い値を示した.
著者
久保 司郎
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.41, no.470, pp.1595-1604, 1992-11-15 (Released:2009-06-03)
参考文献数
72
被引用文献数
4
著者
久保田 真功
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.74, pp.249-268, 2004-05-20 (Released:2011-03-18)
参考文献数
40
被引用文献数
1 3

This paper examines whether the coping behaviors of bullied children canprovide effective alternatives to bullying. In addition, the coping behaviors ofbullied children are considered to be attempts to modify the stigmatic labelsgiven by gangs of bullies.The subjects are 625 pupils in 4th, 5th, and 6th grade. The findings are asfollows:(1) The majority of bullied children take actions to cope with bullyingin some way, such as consulting with others or trying to solve things themselves.This result suggests that bullied children are not simply nonresistant and passiveexistence to bullying.(2) There is a close relationship between the copingbehaviors of bullied children and the reasons why the bullying ends. This resultsuggests that the coping behaviors of bullied children can become an opportunityfor putting an end to bullying.(3) The number of supporters of bullying and thekinds of bullying affect the duration of bullying, but the coping behaviors ofbullied children do not affect the period of bullying.The coping behaviors of bullied children can become an opportunity to endbullying, but do not contribute to an early solution to bullying. These resultsshow that even if bullied children attempt to modify the stigmatic labels givenby gangs of bullies, the success or failure is not decided by their coping behaviorsbut rather by the reaction to these coping behaviors of the children in the areasurrounding the bullying.This paper reconfirmed the importance of providing instruction to childrenin the area surrounding the bullying.
著者
久保 武
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.180-185, 2015-08-31 (Released:2015-10-06)

胸部X線写真は肺病変の評価に必須の検査である.評価のポイントは多いが,病態の把握に特に重要な項目として肺容積,肺野透過性,肺血管影がある.肺容積は肺の病態を評価するのに基本的な情報で,通常は横隔膜の位置を指標として判断する.正常の横隔膜の位置には幅があるが,立位で背側第10肋間に重なることが標準的である.肺透過性の異常はほとんどの肺病変で認められる所見だが,境界不明瞭な場合は意外に指摘することが難しい.左右肺の対応する部位を比較しながら読影する習慣をつけると良い.肺血管については,明瞭さ,太さ,数に注意する.立位では正常の肺血管は上肺よりも下肺で太い.肺血管は肺野病変の評価にも利用できる.血管影が局所的に不明瞭化している場合,その部位の肺野に病変があることを疑う.上記のポイントを意識して胸部X線写真を見ることにより,肺の病態についてより的確な情報を得ることができる.
著者
久保田 純
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.86-98, 2017

<p>本研究では,支援を必要とする地域で暮らす母子家庭へのソーシャルワークにおける有用な実践モデルの生成を目的として,グレーザー派グラウンデッド・セオリー(Glaser 1978, 1998)の手法を用いて,実際に行われているソーシャルワーク実践の概念化を行った.この結果,【支援リゾームの形成】を母子家庭への支援においてソーシャルワーカーが行っており,背景として〔孤立する母子家庭〕,その要因として〔母親と支援システムの不調和〕,条件として〔同調と差異を軸とした母親との流動的な関係性の構築〕〔母親と子どもの対等な関係の構築〕〔差異を取り込んだ支援システムの構築〕,結果として〔母子家庭と関係機関による支援システムの自己組織化〕といった概念が抽出され,【支援リゾームの形成】を核としたこれらの概念が支援を必要とする地域で暮らす母子家庭へのソーシャルワークにおける有用な実践モデルとして生成された.</p>
著者
大久保 耕嗣 阿部 政典 小林 謙一 長井 一彦 長井 知子 樋口 多恵子 継田 雅美
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.290-294, 2008 (Released:2009-02-16)
参考文献数
19
被引用文献数
1

著者等は,新潟県内の医療施設に1988年,1994年および2007年にアンケートを取り,手指衛生の変遷について調査した.1988年に主流であったベイスン法は,現在では行われていない.1994年は,速乾性擦式アルコール製剤のラビング法と消毒薬を用いたスクラブ法が多く,2007年は,流水と石鹸,抗菌性石鹸および消毒薬を用いたスクラブ法が多かった.一方,日本環境感染学会において1992年から2007年までの手指衛生に関する全ての発表と論文を分析した.手指衛生についての発表および論文タイトルが,全体に占める割合は10%であった.学会発表は,2002年にCenters for Disease Control and Prevention (CDC)手指衛生のためのガイドラインが発表された翌年に,8.7%から15.3%と高くなった.このガイドラインは,水場のない場所での手指衛生を踏まえてアルコール含有のラビング法を推奨しているが,日常手洗いでは石鹸と抗菌性石鹸を用いたスクラブ法を推奨している.2007年の調査では,アルコール含有ラビング法が減少していた.各病院において基本である流水下で行う手洗いが実施されていることが示唆された.日常手洗いと衛生的手洗いが区別されて行われているのではないかと考えられた.
著者
大久保 紀一朗 和田 裕一 窪 俊一 堀田 龍也
出版者
日本読書学会
雑誌
読書科学 (ISSN:0387284X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3-4, pp.128-142, 2020-02-20 (Released:2020-03-26)
参考文献数
39

Japanese comics (manga) are now one of the most popular reading media among young generations. However, the cognitive mechanisms that might underlie reading comprehension of manga remain unknown. This study aimed to clarify the characteristics of reading comprehension of manga with respect to the functions of working memory. In this study, 61 sixth grade readers were asked to read a manga story and then complete a comprehension test based on van Dijk & Kintsch’s (1983) model of three distinct levels of text representation: the surface form, the propositional textbase, and the situation model. The participants then completed several types of working memory tests measuring verbal short-term memory, verbal working memory, visuo-spatial short-term memory, and visuo-spatial working memory. Correlational analysis and multiple regression analysis were used to assess the associations between each level of reading comprehension and each of the working memory capacities. The results showed that high-capacity readers for both verbal and visuo-spatial working memories showed a higher performance compared to other readers in the process of textbase comprehension, implying the involvement of integrated propositional representation of verbal and visuo-spatial information for understanding manga stories. On the other hand, verbal and visuo-spatial components of working memory were found to be separately involved in situation model processing. Based on these findings, media characteristics of manga and its potential usefulness as a learning material in language class are discussed.
著者
髙間 晴之 太田 明雄 布施 純郎 久保田 章 小花 光夫 関口 信哉 田中 逸
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.753-758, 2013-10-30 (Released:2013-11-07)
参考文献数
19

HMG-Co A還元酵素阻害薬が糖代謝に及ぼす影響を検討する目的で,非肥満の高LDLコレステロール血症を合併する2型糖尿病患者を対象に,ロスバスタチン2.5 mgとアトルバスタチン10 mgのクロスオーバー試験を行った.薬剤開始前および両剤開始3カ月後に,75 g-OGTTを施行して糖代謝の指標を比較した.その結果,FPGとHbA1cは開始前と各薬剤投与後の変化はなかったが,グリコアルブミンはアトルバスタチン服用後で有意に上昇した.75 g-OGTTから得られる血糖とインスリンの変動曲線下面積,HOMA-Rとwhole body insulin sensitivity index,およびinsulinogenic indexは各薬剤投与前後や両剤間での有意差はなかった.さらに膵β細胞機能を示すdisposition indexも投与前後や両剤間での有意差を認めなかった.以上から少なくとも低用量ロスバスタチン(2.5 mg)は非肥満2型糖尿病の短期間の血糖コントロールに影響しない可能性が示唆された.
著者
梶 光一 吉田 剛司 久保 麦野 伊吾田 宏正 永田 純子 上野 真由美 山村 光司 竹下 和貴
出版者
東京農工大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

ニホンジカの島嶼化プロセスとメカニズムを解明するために、島に導入されたニホンジカの生態・形態・遺伝の年代的変化を調べた。餌資源化で体の小型化が生じ初産齢が上昇したが、間引きによって体重の増加と初産年齢の低下が生じた。餌の変化に対応して第一大臼歯の摩耗速度は初回の崩壊後に早まった。一方、臼歯列サイズは、減少から増加に転じた。有効個体群サイズおよび遺伝的多様性も一度減少したが、その後それぞれ安定および増加に転じた。以上は、餌資源制限下で形態・遺伝に対して正の自然選択が働いた可能性を示唆している。
著者
久保 明教
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.19-33, 2015-03-30 (Released:2016-06-03)
参考文献数
4

本稿は、将棋電王戦における棋士とソフトの対局をめぐる事例分析に基づいて、現代スポーツに広く見られる、人間と非人間的なテクノロジーが結びついた主体の有様を探究するものである。 モバイル端末で体調管理を行うスポーツ愛好家から科学的トレーニングによって心身を鍛え上げるトップアスリートにいたるまで、現代のスポーツには人間的存在と非人間的存在が結びついたハイブリッドな行為体が遍在している。だが、こうした人間と非人間のハイブリッドはしばしば一方が他方に従属する形で理解され、「スポーツは人間がするものだ」という命題が維持されてきた。 本稿では、まず、ブルーノ・ラトゥールが提唱した「対称性人類学」のアプローチを参照しながら、スポーツに対するテクノロジーのあからさまな浸透が一般化した現代において、なぜ人間中心主義的なスポーツ観が維持されているのかを検討する。そこで見いだされるのは、科学技術によって客体化される自己とこうした科学的な客体としての自己を観察し制御する主体としての自己の明確な区別に基づいて前者を後者に従属させる再帰的な主体のあり方である。こうした「モニタリングする主体」の形象によって、ハイブリッドは覆い隠され、人間中心主義的なスポーツ観が維持・再生されてきたと考えられる。 これに対して、将棋電王戦をめぐる事例分析においては、棋士も将棋ソフトも共に人間的な要素と非人間的な要素が混ざり合ったハイブリッドな存在であること、電王戦の対局において、両者の「モニタリングする主体」としての有様がしばしば機能不全に陥っていったことに注目する。棋士とソフトのふるまいが観測可能な範囲の限界を超えて様々な人間的/非人間的要素と流動的な関係をとり結んでいく過程を検討した上で、最終的に、異種混交的なネットワークへと自らを託していく主体の有様において現代スポーツに遍在するハイブリッドな行為体を捉えうることを示す。
著者
久保薗 愛
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.14-28, 2012-01-01

18世紀鹿児島方言を反映するロシア資料には,「テアル」「テオル」という「テ+存在動詞」形式が見られる。鹿児島方言とロシア語の対訳資料であるという資料の性質を踏まえた上で,「テアル」「テオル」の表す意味を,ゴンザが関わった日本語訳とロシア語文の両面から検討した。その結果,「テアル」は「主語が動作を受けて存在する」ことを表す形式であり,一方の「テオル」は既然態に類する「状態」を表す形式であることを述べた。また,「テオル」は,主語の有生/無生を問わず使用されていることを指摘し,この振る舞いは現代の西部日本方言の存在動詞の体系に通じるものであることについて言及した。
著者
大久保 順子
出版者
福岡女子大学
雑誌
文芸と思想 (ISSN:05217873)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.19-33, 2006-03-01
著者
緒方 広明 殷 成久 毛利 考佑 大井 京 島田 敬士 大久保 文哉 山田 政寛 小島 健太郎
出版者
教育システム情報学会
雑誌
教育システム情報学会誌 (ISSN:13414135)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.58-66, 2016-04-01 (Released:2016-05-07)
参考文献数
18
被引用文献数
1

Educational Big Data (EBD) and Learning Analytics (LA) have being attracted enormous attention in recent years. Data collection process is the first step of EBD and LA. Based on the data source, data collection can be classified into two categories: manual data collection, and automatic data collection. This paper describes two educational systems: SCROLL (System for Capturing, Reusing, Reminding Of Learning Logs) as manual data collection and, M2B (Moodle, Mahara, Booklooper) as automatic data collection.
著者
久保 尋之 土橋 宜典 津田 順平 森島 繁生
雑誌
研究報告 グラフィクスとCAD(CG)
巻号頁・発行日
vol.2011-CG-143, no.2, pp.1-6, 2011-06-20

人間の肌のような半透明物体のリアルな質感を再現するためには、表面下散乱を考慮して描画することが必要不可欠である。そこで本研究では半透明物体の高速描画を目的とし、曲率に依存する反射関数 (CDRF) を提案する。実際の映像作品ではキャラクタの肌はそれぞれに特徴的で誇張した表現手法がとられるため、本研究では材質の散乱特性の調整だけでなく、曲率自体を強調する手法を導入することで、表面下散乱の影響が誇張された印象的な肌を表現可能なスキンシェーダを実現する。
著者
田井 明 久保 奈央 橋本 彰博 小松 利光
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.I_1057-I_1062, 2012 (Released:2013-03-26)
参考文献数
13
被引用文献数
3

In order to analyze regional changes frequency of torrential rain that defined hourly precipitation of 50 mm, 75 mm and 100 mm, we represented the spatial distributions of frequency of torrential rain. Secondly, we analyzed relationship of human damage and precipitation pattern in past flood and sediment-related disasters. Number of candidate disaster which more than five persons are killed or went missing in is 49 since 1976. We used total precipitation, total precipitation and maximum hourly precipitation during a disaster period as indicators of precipitation pattern.The results of the present research are summarized as follows:(1)From the 1980-1989 decade to the 2000-2009 decade, frequency of torrential rain had increased in Shikoku area, Kyushu area, Tohoku area and Hokuriku area. In particular, in Tohoku and Hokuriku area, torrential rain did not occur about 30 years ago, but in resent years, torrential rain occurs (2)Relationship of human damage and precipitation are studied by means of the statistical hypothesis test. The results show that Kyushu area has a higher resistibility for disasters than Setouchi area.