著者
佐藤 努 巻田 由美子 熊澤 茂則 岡田 裕史 五十嵐 保正
出版者
千里金蘭大学
雑誌
千里金蘭大学紀要 (ISSN:13496859)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.111-117, 2012-12-25

ニジマスはデリケートであり取扱いや環境によるストレスを受けやすい。ニジマスに水産業界で一般的に行われている水氷締めを施し氷蔵したところ、魚体の硬直の度合は死後30分後に最大に達し、その後、軟化を含めた品質の劣化が速やかに進んだ。この劣化の速さは苦悶死魚にも匹敵するものであり、手法の変更が望まれた。そこで、広く海水魚に適用されている延髄切断、それに引き続いての脱血と針金による脊髄破壊を施し、その効果を先の水氷締めの場合と、魚体の死後硬直と魚肉中ATP関連物質量の経時変化から比較した。その結果、脊髄破壊の手法によりニジマスの死後変化が10時間以上遅延することが判明した。これは死後すぐに脊髄の自律神経を破壊することで死後硬直を早める要因となる筋肉中のATP消費を抑えることができたためと考えられるが、脊髄破壊魚は、単に延髄切断を施した魚よりも解硬が緩やかであることも認められた。また氷蔵ニジマスにおいては、硬直指数とうまみ物質IMP含量の増減パターンが非常に類似しており、延髄破壊魚、水氷締め魚ともに魚体の最大硬直時にはIMP含量が最大値に達した。 延髄切断、脱血、そして脊髄破壊という一連のプロセスによりニジマスの鮮度は保持されることが判ったが、ストレスを与えない安定的な処置が難しいこともATP残存量における個体差の大きさから推察された。実用にあたっては、さらにストレスを除く方向性とともに、延髄切断と脱血にとどめ,不用なストレスをかけない方向性も提案される。
著者
山崎 敬一 山崎 晶子 久野 義徳 池田 佳子 今井 倫太 小野 哲雄 五十嵐 素子 樫村 志郎 小林 亜子 関 由起子 森本 郁代 バーデルスキー マシュー 川島 理恵 中西 英之 小林 貴訓
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、人間の言語的・身体的相互行為とそれを支援する身体化されたテクノロジーのデザインに関心を持つ社会学者とロボット工学者の共同研究である。本研究では多文化に対応する身体化されたテクノロジーを開発するために、海外のミュージアム等で研究を行い、そこでの人間同士の言語的・身体的行為をヴィデオエスノグラフィーの手法で分析した。また、日本語話者と英語話者に対する比較ロボット実験と、日本とハワイを結ぶ遠隔ロボット実験を行った。
著者
広瀬 弥奈 村田 幸枝 福田 敦史 村井 雄司 大岡 令 八幡 祥子 水谷 博幸 五十嵐 清治
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.301-309, 2011-07-30

本学近隣の小児や保護者にフッ化物によるう蝕予防法をこれまで以上に普及させるためには今後どのような対策を講じていけば良いかを明らかにする目的で,北海道石狩郡新篠津村立小・中学校の保護者を対象にう蝕予防に関する意識調査を行った.その結果,う蝕予防で最も重要(問4)なのは「歯磨き」と回答した保護者が94.6%と最も多く,「フッ素」と回答した保護者は皆無であった.フッ化物によるう蝕予防は効果が高い(問13)と答えた保護者は62.8%で最も多かった.フッ化物配合歯磨剤の認知度(問15)は91.6%とかなり多かったが,フッ化物洗口法を知っていると答えた保護者は36.6%と少なく(問14),水道水フッ化物添加法においては18.5%とかなり少なかった(問20).一方,フッ化物配合歯磨剤の使用率は高かったものの,フッ化物配合歯磨剤を使用しないブラッシングにも予防効果があると答えた保護者が半数以上認められた.また,フッ化物に不安を抱いている保護者はフッ化物の応用に消極的であった.以上のことから,保護者のフッ化物によるう蝕予防に関する正確な知識が乏しいことが明らかとなった.今後,フッ化物の効果と安全性,応用法などに関する正しい知識を普及させるための啓発活動の必要性が認められた.
著者
高須 俊明 WAGUR M.A. YASMEEN Akba SHAHANA U.Ka AKRAM D.S. AHKTAR Ahmed 五十嵐 章 上村 清 土井 陸雄 石井 慶蔵 磯村 思无 吉川 泰弘 山内 一也 近藤 喜代太郎 SHAHANA Kazmi U. AKHANI Yasmeen AHMED Akhtar M.A.WAQUR SHAHANA U Ka D.S.AKRAM 橋本 信夫 高島 郁夫 WAQUR Anwar AKBANI Yasme AHMED Akhtar
出版者
日本大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1991

1 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)多発の動向と原因(1)多発の動向:(i)パキスタンのカラチではなお(1991〜93年)SSPEの多発が続いており、カラチ市民病院では3年間に総計36例(毎年9〜16例)が登録された(人口100万対年間1.3)。そのうち36%は2歳未満罹患麻疹(early measles)から、64%は2歳以上罹患麻疹(late measles)からの発生であった(高須)。麻疹罹患者のSSPEの罹患率は10万対22、early measles 罹患者からは10万対22、late measles罹患者からは10万対21となり、late measles罹患者からの発生が多い傾向が続いている(高須)。(ii)麻疹の発生は減少傾向にあり、1978年には15歳未満人口10万対2888であったのが、1987年には15歳未満人口10対380であった。カラチにおける地域調査では麻疹流行期には麻疹罹患年齢が高年齢側に広がり、非流行期の麻疹では比較的低年齢層に罹患年齢が集中する傾向がみられた(磯村)。麻疹ワクチンの普及は進みつつありカラチの調査地域では15歳未満児で66%、5歳未満児では82%に達しているが、臨床的有効率は比較的低く(76%)、ワクチン接種者で麻疹未罹患である児の中和抗体保有率は75%に留まっていた(磯村)。以上のように多発はなお続いているが、麻疹ワクチンの普及、麻疹発生の減少に伴なってSSPEが果して、いつごろから減少し始めるかに強い関心が持たれる。(2)多発の原因:(i)ケースコントロールスタディでは妊娠母体の異常および分娩時の合併症、新生児期の異常、early measlesおよびSSPE発病前の疾患罹患がリスクファクターと考えられた(近藤)。(ii)カラチの小児の免疫能の検査によって、麻疹ウイルスと他の病原微生物の混合感染の頻度が高く、免疫系の初期発達に対する過度の負担のため麻疹合併症や麻疹ウイルスの持続感染が成立する可能性の高い低生活環境レベルの小児が多く存在すること、および種々の病原微生物との接触機会が少なく、免疫系の発達が不十分なままlate measlesに罹患した場合ある種の接続感染が成立する可能性が考えられる高生活環境レベルの小児が存在することの両方がカラチにおけるSSPE多発の要因である可能性が示唆された(吉川、寺尾)。(iii)麻疹ウイルスの遺伝子変異が持続感染の可能性を高めたり持続感染後のSSPE発病を促進したりする可能性が考えられるが、これらは今後実証されるべき課題として残っている。このように多発の原因には生活環境のレベルが関与している可能性が強くなってきたと考えられるが、なお今後SSPE多発とのつながりを解明して行く必要があり、麻疹ウイルスの遺伝子変異と共に大いに興味が持たれる。(3)その他:(i)インド亜大陸のいくつかの地域(ボンベイ、バンガロール、ベロール、マドラス)では一つの病院で毎年5〜36名のSSPE患者の新患があり、多発を推測させる(高須)。(ii)タイの疾患サーベイランス制度はそれなりに機能しており、特に下のレベルほど統計が生きており、事務的な保健統計よりもはるかによく活用されていることがわかった。パキスタンのシンド州の調査により、疾患サ-ベラインス制度を樹立する可能性について肯定的な結果が得られた(近藤)。2 日本脳炎(JE)様脳炎の病原(i)1992年に採取した急性脳炎髄液からPCR法により24検体中それぞれ8検体、1検体に西ナイルウイルス、JEウイルスの核酸塩基配列を検出した。IgM-ELISAでも1989〜92年に集めた39髄液検体のうち7検体で両ウイルスに対する抗体が陽性であり、9検体は西ナイルウイルスにのみ陽性であった。これらの結果から、カラチでは1989年以後の急性脳炎の病原として西ナイルウイルスが重要な役割を果しているが、JEウイルスも急性脳炎の病原の小部分となっていることが示唆された(五十嵐)。(ii)1990〜92年にカラチとカラチから87kmの所にあるハレジ湖岸の野外で採集したコダタイエカ118、756匹(779プール)からの西ナイルウイルス、JEウイルス分離は陰性であった。このことは急性脳炎の病原となるウイルスがカラチおよび周辺地域に常在はしないことを意味するものと考えられた(上村)。以上のようにカラチのJE様脳炎の病原の本態がようやく明らかになってきたが、今後ウイルス分離によって知見をより確実なものにする必要がある。
著者
佐藤 雄隆 金子 俊一 五十嵐 悟
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.2585-2594, 2001-12-01
被引用文献数
28

近傍明度の符合変化を評価するための周辺増分符合相関画像を新たに提案し, これに基づいて, (1)出現物体の明度分布によらず, (2)背景の明度変化の影響を受けない, 画像時系列からの出現物体のロバストな検出・分離抽出手法を提案する.周辺増分符合相関画像は, 着目画像の近傍明度の増減傾向のみに基づくために, 系列にわたる明度変動に対して強いロバスト性をもち, 明度変化を伴っても本来のテクスチャパターンのみの類似を検出するという特性を実現している.また, 複雑な前処理やパラメータ設定などを必要とせず, 直接的に高密度の差分画像を得ることができる.いくつかの条件を想定した実画像を用いた実験により, 実際に明度変化に対してロバストな差分抽出が行えることを確認し, 有効性を示した.また, 情景中の出現物体領域を抽出する処理への応用実験を行い, 比較的単純なフィルタ系列を後処理として加えることにより, 良好な輪郭及び連続性を保った領域分割が可能であること確認した.
著者
名郷 直樹 浅井 泰博 三瀬 順一 高木 史江 佐々木 將人 奥野 正孝 五十嵐 正紘
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.215-220, 1998-08-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
14

目的: evidence-based medicineによるレジデント教育の効果を知識, 行動面の変化から評価する.研究デザイン: 自己および外部コントロールによる対照試験セッティング: 大学附属病院対象: 平成6年度自治医大地域医療学で研修中のレジデント15名介入法: 4回の講義と週1回の輪番制のevidence-based medicineに基づく抄録会結果の測定: 1.記述試験による試験点数の変化.2: MEDLINEによる文献検索回数の前年度までの地域医療学レジデント, 内科レジデントとの比較.結果: 4か月後の筆記試験の結果, 平均42点 (100点満点) の点数の上昇が認められ, 全レジデントにおいて点数が上昇した.内科レジデント, 前年度地域医療学レジデントに比し有意な文献検索回数の増加が認められた.結論: evidence-based medicineによる短期間のレジデント教育において, 知識, 行動の両面で好ましい教育効果が認められた.
著者
梶 幹男 澤田 晴雄 五十嵐 勇治 仁多見 俊夫
出版者
東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林
雑誌
東京大学農学部演習林報告 (ISSN:03716007)
巻号頁・発行日
no.106, pp.1-16, 2001-12
被引用文献数
4

秩父山地のイヌブナ-ブナ林における17年間の堅果落下状況の推移から,イヌブナ,ブナともに2年に1回程度結実(総堅果落下量≧20個/m2)することが明らかになった。最大総堅果落下量はブナで992.4個/m2(1993年),イヌブナで943.9個/m2(1988年)であった。ブナおよびイヌブナの豊作年(総堅果落下量≧100個/m2)には明瞭な周期性は認められなかった。両種の豊作年が重なるのは2.3~3回に1回程度であると推定された。ブナとイヌブナの豊作年における平均健全堅果率(健全堅果量/総堅果落下量)は,イヌブナの方がブナよりも有意に高かった。同じく豊作年における両種の平均虫害堅果率(虫害堅果量/堅果落下量)はイヌブナよりもブナが有意に高かった。豊作年における総堅果落下量に占める潜在健全堅果量(健全堅果量+虫害堅果量+鳥獣害堅果量)の割合は7割程度で,平均値は両種間で有意な差がなかった。また,潜在健全堅果量に占める虫害堅果量の割合,すなわち虫害堅果率の平均値はブナがイヌブナよりも有意に高かった。これらのことから,ブナの健全堅果率が低い原因は同種の虫害堅果率が高いことによるものといえる。両種の豊作が同調した1993年と2000年の虫害堅果の落下時期はブナの方が早い傾向にあった。その原因として,ブナ堅果がイヌブナ堅果に比べて,早く成熟時の堅果サイズに達することによるものと推察された。ブナの虫害堅果落下時期は6月初旬~8月初旬および10月中旬~10月下旬に二つのピークが認められた。ブナの虫害堅果落下時期が二山型を示す現象は,東北地方と栃木県高原山においても観察されており,少なくとも東北地方から関東地方に広くみられる現象である可能性が示唆された。ブナ,イヌブナ堅果に共通する主要食害者としてブナヒメシンクイが重要であることが示唆された。日本海側に比べて太平洋側のブナの虫害堅果率が高い原因として,後者は冬期寡雪であることおよびイヌブナとブナが混生しており,両種の豊作年が必ずしも重ならないことが重要であると推論された。In order to investigate the long-term fluctuation of the seed production of beech species, the amounts of fallen nuts of Japanese beech (Fagus japonica Maxim.) and Siebold's beech (F. crenata Blume) were surveyed in sample plots of a natural beech forest in the Chichibu Mountains, Central Japan, for 17 years (1984-2000). Both of the beech species bore fruit (nuts≧20/m2) about half of the years. The maximum total fallen nuts were 992.4 nuts/m2 in Siebold'beech (1993) and 943.9 nuts/m2 in Japanese beech (1988), respectively. The mast year (nuts≧100/m2) interval was irregular. The probability when mast year of both beech species synchronize was estimated about once in 2.3-3 times of the mast year. The average ratio of sound nuts (SN) to total fallen nuts (TFN) of Japanese beech in the mast year was significantly higher than that of Siebold's beech. The average ratio of insect-damaged nuts (IDN) to TFN of Japanese beech in the mast year was significantly smaller than that of Siebold's beech. There was no significant difference between the species in the average ratio of potential sound nuts (PSN=SN+IDN+Animal-damaged nuts) to TFN. The average ratio of IDN to PSN of Siebold's beech was significantly higher than that of Japanese beech. The low average ratio of SN in Siebold's beech was mainly caused by high average ratio of IDN. The falling time of IDN of Siebold's beech nuts tended to be earlier than that of Japanese beech, as the growth of the Siebold's beech nuts is about two month faster than that of Japanese beech. As to the falling time of IDN in the synchronized mast year of both species in 1993 and 2000, Siebold's beech showed two modes at early June-early Aug. and mid Oct.-late Oct. The bimodal pattern for the falling time of IDN in Siebold's beech was also observed at Kunimi, Obonai (northern Honshu) and Mt. Takahara (central Honshu). This fact suggests that the phenomenon of bimodal insect damage on Siebold's beech nuts might be common in Tohoku and Kanto district. Pseudopammene fagivora Komai is one of the most important nut predators, for both Siebold's and Japanese beech. Larger insect damage in Siebold's beech nuts in the Pacific Ocean side in comparison to the Sea of Japan side, might be caused by the two factors that there are much smaller snow in winter and that mast year of two beech species is not always synchronize each other.
著者
五十嵐 沙千子
出版者
東海大学
雑誌
東海大学紀要. 文学部 (ISSN:05636760)
巻号頁・発行日
vol.83, pp.108-91, 2005-09-30

In den heutigen Gesellschaftstheorien (wie Liberalism oder Communitarianism) ist die Problematik der Offentlichkeit schon als Selbstverstandliches impliziert. Es bleibt aber m. E. heute noch erforderlich zu uberlegen, mit welchen Kriterien die Gultigkeit des offentlichen Raums beurteilt werden soll. Die Frage von Jurgen Habermas, wie die reale Gesellschaft fur alle Mitglieder gerechtfertigt werden kann, ist immer noch wichtig. Im folgenden wird eine Untersuchung zur Thematik der Offentlichkeit in der heutigen Informationsgesellschaft mit Hilfe der grundlegenden Arbeit von Jurgen Habermas erarbeitet.
著者
早瀬 伸子 横山 桂子 五十嵐 慈保子〔他〕
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.57-64, 1997-02-07

1996年度,親の希望も参考にして個別指導目標を作成し,その具体的な指導の手だてを考え,学習時間,休み時間,給食時間,清掃時間などに継続して個別に指導した。二学期末に,児童はチャイムがなると学習の用意をし,静かに課題に取り組むようになった。3年のD君は,一学期一時間に何度も教室から飛び出し,自分の好きな所に行こうとし,それが阻止されると叩いたり噛じった。二学期末には,絵カードでトイレやパソコンなど自分のしたいことを伝え,指示や課題に素直に取り組むようになり,教室から飛び出さなくなった。2年のAちゃんは,一学期は突然泣き出したり,人を叩いた。二学期末には,泣き出すことが少なくなり,級友と追いかけっこをし,課題に取り組むなど予想以上の成果を得た。
著者
小林 直樹 五十嵐 淳 田浦 健次朗 渡部 卓雄
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は,本研究代表者が提唱した疑似線形型システムに基づく新しいメモリ管理方式の実現により,プログラミング言語処理系のメモリ管理の信頼性および効率を改善することであった.主要な成果は以下のとおり.・擬似線形型システムに基づく型推論によるメモリの獲得・解放命令の挿入…擬似線形型システムに基づき,プログラム中で用いられる各データが最後に使用される箇所を特定し,その部分にメモリの解放命令を挿入するための方法を確立し,関数型言語MLを対象としてプロトタイプシステムを構築した.・擬似線形型システムに基づくメモリ管理のためのバイトコード言語の設計と実装…上で述べたメモリの獲得・解放命令を挿入したプログラムを実際に実行するためのバイトコード言語を設計し,実装を行った.・通常のメモリ管理の改良と本メモリ管理方式との融合…擬似線形型システムのみでは自動的に管理できないメモリが存在するため,既存のメモリ管理方式であるGCを改良して融合する方法について研究した.主な課題はGC自体の性能,特に並列計算機上のGCの性能をあげること,および疑似線形型に基づくメモリ管理によるダングリングポインタの問題の解決であった.後者については型情報を実行時まで保存し,GC時にこれを用いることによってこの問題を解決した.・線形型解析の資源使用解析への一般化…疑似線形型を拡張し,ファイルやネットワークなど一般の計算資源の使用方法の解析を行うための型システムを構築した.これにより(i)割り当てられたメモリはいずれ解放され,解放後はアクセスされない,(ii)オープンされたファイルはいずれクローズされ,クローズ後は読み書きされない,といった性質が満たされているかを統一的に検証することができる.
著者
五十嵐 沙千子
巻号頁・発行日
2013

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書:基盤研究(C)2011-2012
著者
菅山 謙正 渡辺 勉 高木 宏幸 五十嵐 海理 住吉 誠 前川 貴史
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は、英国を代表する言語学者Richard A.Hudsonが新たに開発し、改良を重ねているWG理論(New Word Grammar,NWG)の枠組みを把握し、その認知文法的、あるいは構文文法的影響を探ることであった。3年間に亘って予定していた研究計画に従い、これをほぼ遂行し、NWGの修正点、改良点を明らかにし、言語理論として有望であると結論付けた。研究成果は、論文としても公刊したが、2011年中にはKyoto Working Papers in English and General Linguistics Vol.1、『ハドスンの英文法』として開拓社よりそれぞれ、論文集、書籍として刊行する。
著者
五十嵐 太郎
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.251-254, 2013-06-01

この論考では,情報化の時代において建築家がどのように図書館のデザインを提案しているかをとりあげた。とくに1995年以降,伊東豊雄や古谷誠章を含む,建築家たちは,新しい図書館の可能性を開拓している。彼らは,デザインを通じて,透明性,情報の可視化,変化し続ける空間,そしてビルディングタイプの融解といったテーマを表現した。
著者
五十嵐 伸吾
出版者
法政大学地域研究センター
雑誌
地域イノベーション (ISSN:18833934)
巻号頁・発行日
no.5, pp.89-104, 2012

我が国、特に地方における産業活性化あるいは雇用創出の担い手として、新規開業企業群(スタートアップ企業)への期待は大きい。しかし、これまで地域において起業促進政策が顕著な成功を見た例は少ない。岩手県は県内総生産、失業率などの指標で他県と比較すると決して恵まれているとは言えない。岩手県下のある企業しかも一つの工場から40余りのスタートアップ企業が誕生 し、しかもほぼすべてが生存している。このような事例は他に類を見ない。本稿では、このアルプス電気盛岡工場の事例を分析することによって、どのような経緯によって起業を促進する組織文化が形成されたのかを明らかとする。それが地域における起業促進政策に対する一助と なることを期待する。The Japan government and especially local government have expected to emerging start- ups as the role of industrial activator and job creator. However, such policies for promoting entrepreneurship have not been a significant successful. The indicates of Iwate Prefecture, for example, Gross Prefecture Product (GPP) and Unemployment rate show that Iwate Prefecture is not better than the others. More than forty start-up companies were founded from only the Morioka Factory of Alps Electric Co., Ltd. Almost all of them are alive so far. Similar cases aren't seen. This paper analyzed the case of the Morioka Factory of Alps Electric Co., Ltd, and revealed how the organizational culture that promotes entrepreneurship was generated there. I hope that it will give some suggestions which contribute to the economic policy for promoting entrepreneurship in the region.
著者
熊澤 一正 大杉 奉功 西田 守一 浅見 和弘 鎌田 健太郎 沖津 二朗 中井 克樹 五十嵐 崇博 船橋 昇治 岩見 洋一 中沢 重一
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.171-185, 2012 (Released:2013-04-24)
参考文献数
30
被引用文献数
3

福島県阿武隈川水系三春ダムの蛇沢川前貯水池において,岸に平行して定置網を設置し,人為的に水位低下させることで魚類を網内に集結させて魚類を捕獲した.フィールドとした三春ダムは制限水位方式のダムであり,非洪水期 (10 月 11 日 ~ 6 月 10 日) から洪水期 (6 月 11 日 ~ 10 月 10 日) にかけて,貯水位を 8 m 低下させる運用をしている.捕獲試験は,2007 年 ~ 2011 年に実施した.捕獲した魚類のうち,外来魚のオオクチバスとブルーギルは回収し,それ以外の在来魚等は再放流した.オオクチバスの大型個体は,前貯水池と本貯水池の連結部 (幅 5 m) で多く捕獲でき,これは繁殖のために遊泳している個体と考えられた.一方,ブルーギルはこの時期は遊泳せず,浅い場所に集まっていた.水位低下を利用した定置網での捕獲の結果,オオクチバスと 2 歳魚以上のブルーギルは年々減少し,ギンブナをはじめとする在来魚等は増加傾向であった.在来魚等の若い個体が継続的に生産・維持されることが水域の魚類群集のバランスを保つ上で重要である.蛇沢川前貯水池では,2010 年以降,貯水池内で繁殖したギンブナ,コイの若い個体が顕著に増加しており,捕獲による駆除の効果と考えられる.
著者
五十嵐 哲也 萩原 久子
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.264-276, 2004-09-30

本研究では, 中学生の不登校傾向と幼少期の父母への愛着表象との関連を検討した。480名の中学生を対象とし, 以下の結果が得られた。1)「別室登校を希望する不登校傾向」は主に母親の「安心・依存」と「不信・拒否」, 「遊び・非行に関連する不登校傾向」は両親への「安心・依存」と「不信・拒否」が関連していた。また, 「在宅を希望する不登校傾向」では異性親への「安心・依存」と「不信・拒否」が関連していた。一方, 「精神・身体症状を伴う不登校傾向」は, 「分離不安」との関連が強かった。2)女子では, 幼少期の母親への愛着がアンビバレントな型である場合や, 父母間の愛着にズレが生じている場合に不登校傾向が高まる傾向が示された。女子はこうした家族内における情緒的不安定性への感受性が強く, 不登校傾向を示しやすいと言える。3)男子では, 「在宅を希望する不登校傾向」得点が高く, 幼少期の父母両者に対する愛着の「不信・拒否」と関連があることが特徴的であった。これは青年期以降の社会的ひきこもりに見られる状況と一致しており, 登校しながらも在宅を希望している男子の中に, 思春期時点ですでに同様の傾向が示されていると言える。
著者
トム アルトマン 五十嵐 善英 小保方 幸次
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. COMP, コンピュテーション
巻号頁・発行日
vol.93, no.123, pp.9-18, 1993-06-25

グラフG=(V,E)が,V={0,…,N-1},E={{u,v}|v-u modulo Nが2の冪乗}であるときこのグラフを頂点数Nのハイパーリング(N-HR)という。本稿では,HRの構成法,特性,埋め込み,スパナについて論じる。頂点数Nのハイパーキューブや,a×b格子,頂点数Nの完全二分木を,N-HRに部分グラフとして埋め込む.また,HRのスパナの構成方法を3タイプ紹介する.これらのタイプのスパナの伸び率は,HRの頂点数をNとすると高々[log_2N],任意の1【less than or equal】k【less than or equal】[log_2N]に対し2k-1,任意の2【less than or equal】k【less than or equal】[log_2N]-1に対し2k-1である.また,これらのタイプのスパナを構成する辺の数は,N-1,高々N[log_2N), k],高々N(log_2N-k)/2k+Nkである.最後に,HRのγシンクロナイザに関する伸び率と辺の数の表を示す.