著者
古川 智史
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.88-105, 2010-06-30 (Released:2017-05-19)
被引用文献数
2

本研究は,大阪市北区扇町周辺のクリエイター及び関連企業のネットワークを,「バズbuzz」と紐帯の強さの観点から検討することを目的として行った.クリエイターは,案件ごとに制作プロセス内の位置や外注先を柔軟に変えている.彼らの取引ネットワークの多くは,近畿圏という地理的範囲内で形成されている.特に,クリエイター同士の取引ネットワークは,クライアントとのそれに比べて濃密な意思疎通が必要であるため,相対的に狭い地理的範囲で形成されやすい.また,クリエイターは,リスクを回避するために既存の人脈を通じて新たな取引関係を形成することが多い.さらに,ネットワークを形成する契機は,その種類ごとに地理的な差異が存在する.一方,非取引ネットワークは,取引を前提としない対面接触の場を通じて醸成されるが,そうしたコミュニケーションを通じて,異分野のクリエイターとの協業や,暗黙知の共有,クリエイター間での相互触発,クリエイターに関する評価などが行われている.その一方で,非取引ネットワークは,クリエイター自身が評価され選別される場であるともいえる.クリエイターのネットワークは,「バズ」が有効に機能し,強い紐帯のみならず弱い紐帯を通じて取引関係を拡大しているといえる.したがって,クリエイターがネットワークを拡大する利点は大きく,これが扇町周辺にクリエイターを集中させる要因になっていると考えられる.
著者
古川 良明
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.338-341, 2020 (Released:2020-11-28)
参考文献数
20

Mutations in the gene coding Cu/Zn-superoxide dismutase (SOD1) are known to cause amyotrophic lateral sclerosis (ALS), a neurodegenerative disease with no cures. SOD1 is a highly stable enzyme where copper and zinc ions bind and a disulfide bond forms, but is also known to accumulate as misfolded forms in spinal motoneurons of ALS. A key to understand such pathological changes in SOD1 is the contribution of metal binding as well as disulfide formation to the conformational stability of SOD1. In this review, I will summarize mechanisms of SOD1 misfolding in ALS where the metal binding and/or disulfide formation go awry.
著者
高橋 万葉 関根 嘉香 古川 英伸 浅井 さとみ 宮地 勇人
出版者
一般社団法人 室内環境学会
雑誌
室内環境 (ISSN:18820395)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.15-22, 2013 (Released:2013-06-01)
参考文献数
20
被引用文献数
3 2

室内空気中のアセトアルデヒドの発生源および発生機構については不明な点が多い。本研究では,これまで考慮されてこなかったヒト皮膚表面から放散するアセトアルデヒドの室内空気中濃度に及ぼす影響について,パッシブ・フラックス・サンプラー法による健常人ボランティアを対象とした放散フラックスの実測に基づき検討した。その結果,ヒト皮膚由来のアセトアルデヒドの放散速度は,飲酒後の呼気に由来するアセトアルデヒドの放散速度よりも大きく,呼気よりも重要な発生源であることがわかった。居室の在室者1名を想定した場合,皮膚由来のアセトアルデヒドは,室内濃度指針値レベル(48 μg m-3)に対しては0.87~2.3 %の寄与であったが,飲酒を伴う場合は居室の臭気源になる可能性が示唆された。在室者が複数いる場合には,皮膚からの放散速度は無視できないほど大きな寄与を示す可能性があり,皮膚ガスは新たに着目すべき発生源の一つとなる可能性が示唆された。
著者
松井 和輝 古川 正統 安藤 英由樹 前田 太郎
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.243-252, 2015

We manipulate equipment naturally as an extension of physical ability. However, it is unclear whether we can transform supernumerary body parts to our body image to use the equipment as a similar body parts. So, this study suggests that ownership is formed by the simultaneity of visual and tactile stimulation, and that this perception of ownership is important to form the body image. In addition, we propose that if the equipment appears to be extended continuously from our body and ownership of the equipment occurs, then the body image will be transformed to include the equipment. Therefore, in this study, the equipment was arranged to appear as extending from the body, and visual and tactile stimulation were used to elicit ownership of the equipment. The results confirmed that body image was transformed to include the equipment. Furthermore, this suggested that it is possible to incorporate equipment into one's body image, and that we could use the equipment as a supernumerary our own body-part.
著者
美馬 覚 大谷 知行 古賀 健介 高橋 研太 古川 昇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MW, マイクロ波 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.12, pp.15-20, 2013-04-12

我々は、超高感度の宇宙マイクロ波背景放射(CMB)観測を目的として、超伝導マイクロ波力学インダクタンス検出器(MKIDs)の開発を進めている。MKIDsは、ミリ波・THz波などの吸収でマイクロ波共振周波数が変化する検出部と、数GHzのマイクロ波信号を伝送させる信号読み出し伝送線路とで構成され、1系統のリードアウトで100-1000画素の信号を同時読み出しが可能である。このため、大規模アレイ化が容易であり、また、薄膜に特定のパターンを刻むだけで検出器として動作するため、作製が容易であり開発スピードが速いという利点を有する。本講演では、我々が進める検出器の研究開発の進捗について報告する。
著者
中串 孝志 古川 邦之 山本 博基 大西 将徳 飯澤 功 酒井 敏
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 = Journal of aerosol research (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.107-112, 2007-06-20

Planetary aerosol laboratory experiments for science education were carried out in a curriculum of Kyoto University. Our goal is to reproduce "the blue sunset" on Mars which are reported from NASA's Mars Pathfinder. In reproducing the rays scattered by Martian atmosphere (dust storm) in a laboratory, the number density of scattering particles has to be as large as possible. Three experiments were conducted in the air and water. Although we were not able to reproduce Martian blue sunset, we elucidated its spectrum. Converting this spectrum to a color in the RGB system, we obtained R = 114, G = 122, B = 192. Though the experiment, we proved that planetary aerosol laboratory experiments are significantly fruitful for science education as well as for science studies. We propose that researchers and lecturers should make active use of planetary aerosol laboratory experiments for science education.
著者
秋本 哲平 熊谷 隆宏 福田 守芳 古川園 健朗
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_288-I_293, 2017 (Released:2017-08-22)
参考文献数
6

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津波により,福島第一原子力発電所は大きな被害を受け,高濃度の放射性物質を含む汚染水が漏洩した影響等により,港湾内海底土から放射性物質が検出された.放射性物質を含む海底土が巻き上がり,港湾外へ拡散することが懸念されたため,固化処理土による海底土被覆を行った.2012年度に第1期工事として72,600m2を被覆し,2014年度から第2期工事として,180,600m2を被覆した.第2期工事では,波浪条件が厳しい港口部を含んでいたことから,被覆土には早期強度が求められたため,砂質土を主材とする固化処理土を選定した.砂質土を主材とする固化処理土の課題であった水中打設時の材料分離は,特殊添加剤や打設治具を開発することで解決し,港湾内全域を被覆することができた.
著者
古川 顕 Akira Furukawa
出版者
甲南大学経済学会
雑誌
甲南経済学論集 = Konan economic papers (ISSN:04524187)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3・4, pp.21-57, 2019-03-30

貨幣の起源にはさまざまな考え方があるが, 最も重要で意味のある貨幣起源説は「原始貨幣」に由来するものであると考えられる。地域, 時代, 民族などによって異なる多彩な原始貨幣が存在し, それが貨幣生成の起源をなしたのではあるまいか。一方, 貨幣の未来について予想される有力な考え方として, キャッシュレス化の進展およびそれと密接な関係にある仮想通貨の普及がある。ただし, 筆者は仮想通貨の将来については否定的である。貨幣が貨幣たるゆえんは, その価値が安定していることであり, 貨幣価値が不安定化すると中央銀行や政府のコントロールによってそれを安定化させることが不可欠である。そうした観点からすると, 中央銀行や政府のコントロールが働かず, 投機の対象となりがちな仮想通貨は「通貨」とはなりえない。仮想通貨はニューマネーではなく, あくまでも“仮想”の通貨であり, 決して現金や預金などのリアル・マネーとはなりえない。
著者
古川 聡 鈴木 豪 緒方 克彦 大島 博 村井 正 村上 敬司 鈴木 健之 阿部 高志 佐藤 勝
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-06-29

本研究では、同意を得た被験者(一度に8人)に2週間、JAXAの閉鎖環境適応訓練設備内に居住してもらい、閉鎖環境に加え密なスケジュールでの模擬科学実験などの負荷を宇宙飛行想定で加え、それらの前中後における唾液や血液サンプルの変化を調べ、閉鎖ストレスによるダメージを客観的に評価できる新規ストレスマーカーを探索した。閉鎖設備実験モデルに特徴的な血中遺伝子発現パターンの変化を明らかにし、また閉鎖滞在に伴うストレスを身体活動量低下とそれ以外の要因による影響に分けて評価することを可能にするストレスマーカー遺伝子候補を絞り込むことができた。
著者
高畠 由佳 篠原 規恵 古川 陽子 ワード 弥生 甲屋 早苗 蝶名林 直彦 青島 正大
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.133-137, 1998-12-19 (Released:2019-10-15)
参考文献数
6

慢性呼吸器疾患の包括的呼吸リハビリテーションにおいて,その急性増悪期にICUで行われる呼吸理学療法は,人工呼吸管理前後の効果的な気道分泌物の除去や,咳嗽力の回復を目標とし,手技の適応を慎重に判断し,十分な観察のもとに実施されることが必要である.さらに医師や理学療法士と連携し,ケアを継続できる看護チーム力や,チーム内での患者の情報の共有化がポイントになり,今回具体例をあげて解説した.
著者
古川 仭 三輪 高喜
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.571-577, 1994-10-15 (Released:2011-08-10)
参考文献数
9

嗅覚における基礎的観点から述べた先の解説をうけて, 本稿では臨床的観点からみた最近の話題を取り上げる。
著者
馬場 駿吉 高坂 知節 稲村 直樹 佐藤 三吉 鈴木 茂 遠藤 里見 石戸谷 雅子 小野寺 亮 山田 公彦 大久 俊和 荒井 英爾 鈴木 雅明 大山 健二 粟田口 敏一 戸川 清 岡本 美孝 松崎 全成 寺田 修久 喜多村 健 石田 孝 馬場 廣太郎 島田 均 森 朗子 池田 聖 金子 敏郎 今野 昭義 山越 隆行 石井 哲夫 窪田 市世 鍋島 みどり 田口 喜一郎 石山 哲也 中野 雄一 中村 英生 五十嵐 文雄 古川 仭 作本 真 山下 公一 久保田 修 宇佐神 篤 伊藤 博隆 鈴木 元彦 間宮 紳一郎 横田 明 加藤 薫 大屋 靖彦 河合 〓 岩田 重信 横山 尚樹 井畑 克朗 瀧本 勲 稲福 繁 坂倉 康夫 鵜飼 幸太郎 雨皿 亮 山田 弘之 坂倉 健二 平田 圭甫 伊藤 由紀子 村上 泰 竹中 洋 山下 敏夫 久保 伸夫 中井 義明 大橋 淑宏 阪本 浩一 村田 清高 平沢 昌子 原田 康夫 森 直樹 白根 誠 多田 渉 小林 優子 竹林 脩文 河野 嘉彦 夜陣 紘治 平田 思 宮脇 修二 津田 哲也 山下 隆司 二階堂 真史 柿 音高 永澤 容 増田 游 後藤 昭一 西岡 慶子 折田 洋造 東川 康彦 武 浩太郎 進 武幹 前山 忠嗣 百田 統洋 堤 昭一郎 茂木 五郎 川内 秀之 松下 太 吉村 弘之 高田 順子 石川 哮 定永 恭明 大山 勝 松崎 勉 坂本 邦彦 廣田 常治 内薗 明裕 鯵坂 孝二 中島 光好
出版者
The Society of Practical Otolaryngology
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.389-405, 1995-03-01
被引用文献数
13 16

The efficacy and safety of Kampo preparation Sho-seiryu-to were studied in a joint double-blind trial in comparison with a placebo. The study was carried out on 220 patients with perennial nasal allergy at 61 hospitals. Granules in a dose of 3 g were administered 3 times daily for 2 weeks. Moderate to high improvement was recorded in 44.6% of the treated patients and in 18.1% of those receiving placebo. The difference is significant (p <0.001). Side effects were noted in 6.5% of the treated patients and in 6.4% of the controls (not a significant deference). The side effects were mild and had no influence on the daily life of the patients.
著者
神尾 博代 中俣 修 古川 順光 信太 奈美 来間 弘展 金子 誠喜 柳澤 健
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A1243, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】転倒の危険が少なく、より安定した立ち上がり動作を獲得することは重要である。片麻痺患者の場合、麻痺側を前方に位置した立ち上がり動作を日常生活活動として指導することが多い。そこで、足部位置を変化させることによって、その動作を遂行するためにどの程度の下肢関節モーメントが必要とされるのか把握することが必要であると考えられる。本研究では、足部を平行位にした場合と前後に置いた場合の立ち上がり動作を比較し、下肢関節モーメントについて分析することを目的にした。【方法】対象は健常成人11名(男性7名、女性4名)とした。ヘルシンキ宣言に基づいて、被験者に実験の目的・危険性等を説明し書面にて承諾を得た。立ち上がり動作の計測には、三次元動作解析装置VICON370(Oxford Metrics社製)および床反力計(kistler社製)を用いた。背もたれのない座面高を下腿長の高さとする、椅子からの立ち上がり動作を課題とした。このとき、上肢は体側に自然下垂位とし、スピードは被験者の最も楽に立ち上がれる速さとした。また、足部位置は肩幅の広さとし、一側足部を前方に置いた右前型、左前型、平行位に置いた揃え型の3種類とした。各試行とも3回ずつ行った。この時の下肢の股関節・膝関節の伸展モーメントの最大値をもとめ、各試行間での比較検討を行った。統計解析は分散分析および多重比較を行った。有意水準は5%未満とした。【結果および考察】揃え型、右前型、左前型における股関節・膝関節の最大伸展モーメントの平均値(SD)は、左股関節では揃え型が74.5(16.0)Nm、右前型が107.7(22.7)Nm、左前型が79.9(29.5)Nmであった。右股関節では揃え型が69.1(17.7)Nm、右前型が77.3(25.8)Nm、左前型が93.6(20.1)Nmであった。左膝関節では、揃え型が57.1(11.9)Nm、右前型が83.4(15.6)Nm、左前型が7.7(8.0)Nmであった。右膝関節では揃え型が63.1(18.0)Nm、右前型が11.1(10.1)Nm、左前型が91.8(22.6)Nmであった。一側下肢を前方に出すことで前方側の膝関節モ-メントは有意に小さくなった。しかし、前方側の股関節伸展モーメントは揃え型と比べてほとんど変化が見られず、後方側の股関節・膝関節モーメントは揃え型よりも有意に大きなモーメントを必要とすることがわかった。臨床場面で、麻痺側下肢を前方に出した位置での立ち上がり動作を指導する場面があるが、これらの結果から非麻痺側である後方側の股関節・膝関節伸展モーメントが十分に発揮できないと立ち上がることが困難になると考えられる。今後、片麻痺患者について検討することで確認を行いたいと考える。なお、本研究は本学の研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した。
著者
古川淳三 等著
出版者
鉄道時報局
巻号頁・発行日
vol.上編 (貨物停車場), 1929
著者
鈴木 祐輔 太田 伸男 倉上 和也 古川 孝俊 千田 邦明 八鍬 修一 新川 智佳子 高橋 裕一 岡本 美孝 欠畑 誠治
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー (ISSN:09130691)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.193-200, 2015 (Released:2015-09-25)
参考文献数
21

鼻噴霧用ステロイド薬は,鼻アレルギー診療ガイドラインにおいて花粉症治療の中心的な薬剤として推奨されている。しかし初期療法としての鼻噴霧用ステロイド薬と,抗ヒスタミン薬を中心とした併用療法の効果について比較した報告は少ない。今回我々は,スギ花粉症患者20 例を鼻噴霧用ステロイド薬(デキサメタゾンシペシル酸エステル)群(DX-CP 群)6 例と,第二世代抗ヒスタミン薬(オロパタジン塩酸塩)にモンテルカストを追加併用した抗ヒ+抗LT 薬群14 例に分け,治療効果につき検討を行った。検討項目は鼻症状,JRQLQ No.1 によるアンケートおよび鼻腔洗浄液のeosinophil cationic protein (ECP) と血管内皮細胞増殖因子(VEGF) の濃度とした。DX-CP 群では飛散ピーク期と飛散終期の鼻症状スコアの上昇を抑え,鼻閉症状では有意にスコアを減少させた。抗ヒ+抗LT 薬群では飛散ピーク期に症状スコアが上昇したが抗LT 薬を併用した飛散終期にはスコアが低下した。QOL スコアではDX-CP 群の飛散ピーク期において抗ヒ+抗LT 薬群に比べ有意にスコアを抑えた。鼻腔洗浄液中のECP 値, VEGF 値はDX-CP 群ではシーズンを通じて値の上昇を抑えた。よってDX-CP は抗ヒスタミン薬や抗LT 薬と同様に季節性アレルギー性鼻炎に対する初期療法薬として非常に有用であると考えられた。
著者
古川 典代
出版者
神戸松蔭女子学院大学学術研究会
雑誌
Journal of the Faculty of Letters, Kobe Shoin Women's University = 文学部篇 : JOL (ISSN:21863830)
巻号頁・発行日
no.3, pp.1-16, 2014-03

「文化は経済力の強いほうから弱いほうへと流れていく」という。日中間の音楽のカバー情況からしても、過去には日本の流行曲が数年後に中国語(北京語、広東語、台湾語)にカバーされることが多かった。ところが昨今は、カバーソングに時差が無くなった。日本で流行っている曲がネットの活用により同時期に中華圏でも中国語で流れるようになった。さらに近年では、中国語曲の日本語カバーも散見されるようになり、一方通行だった文化の流動が、時差なく双方向となった。これは両国にとってより豊かな音楽シーンを味わえるという意味で福音である。2007 年から始まった「全日本青少年中国語カラオケ大会」および、2010 年から始まった「西日本地区中国語歌唱コンクール」においては、出場者の選曲がこれまでに多かったカバーソングから、現地の若者に人気の楽曲へと変遷し、同時代同時並行で日本人の若者にも歌われるようになった。かくも情報がワールドワイドに流れ、中国語の歌が溢れるようになった現況においては「中国語で一曲!」はもはや日常のワンシーンと言える。本稿では日中カバーソングの歴史と変遷、歌による語学教育の効用および歌をテーマとした語学学習テキストの日中比較を論じる。
著者
福留 広大 藤田 尚文 戸谷 彰宏 小林 渚 古川 善也 森永 康子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.183-196, 2017 (Released:2017-09-29)
参考文献数
34
被引用文献数
3 6

本研究の目的は, 自尊感情尺度(Rosenberg Self-Esteem Scale; RSES)において, 逆転項目に対する否定的反応(Negative Self-Esteem; NSE)と順項目に対する肯定的反応(Positive Self-Esteem; PSE)がそれぞれ異なる心理的側面を持つことを提案することである。研究Iでは, 様々なサンプルの計5つのデータセットを分析した。確認的因子分析の結果, RSESにPSEとNSEの存在が示唆された。研究IIでは, 中学生に調査を行い, 因子構造の検証とそれらの弁別性について検討した。中学生においてもPSEとNSEの構造が支持され, NSEはPSEよりもストレス反応と強い負の相関関係にあった。つまり, RSESの否定的な項目に対して否定的な回答をするほどストレス反応が低い傾向にあった。研究IIIでは, 中学生を対象にして, RSES2因子の弁別性の基準として攻撃性尺度を検討した。その結果, NSEがPSEよりも敵意と強い負の相関関係にあった。これらの結果は, RSESに「肯定的自己像の受容」と「否定的自己像の拒否」の存在を認めるものであり, この解釈と可能性について議論した。