著者
古賀 明俊 城戸 英希 藤堂 省 川上 克彦 中山 文夫
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.285-294, 1980

15例の膵のインスリン産生腫瘍を報告した.12例はインスリノーマでこのうち1例は異所性で, すべて単発性で, 良性であった.2例は過形成, 1例は組織学的に異常所見はなかった.全例にWhippleの三主徴があり, 血中高インスリン値, 種々の誘発試験を組合わせることにより診断が確実になる.選択的血管造影は72.7%に陽性であった.逆行性膵管造影も間接的診断法になる.手術は膵尾部切除2例, 膵体尾部切除2例, 膵頭十二指腸切除1例, 異所性腫瘍摘出1例, 腫瘍核出術9例である.術中血糖値の測定は腫瘍摘出成功の判定に有効で, 30分以上の持続的上昇を確認する必要がある.手術成績は14例が治癒し, 1例は術後肝不全で死亡した.
著者
川上 恵治
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第29回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.3, 2010 (Released:2010-10-12)

【はじめに】認知症で前頭葉症状があり、介助が困難で褥創が多発している症例を担当した。寝返りは退院時まで出来なかったが、歩行が獲得でき介助量が軽減するようになった症例を前頭葉障害、感覚統合の障害の視点から治療したことにより効果が見られたので報告する。 【症例】71歳男性。既往歴:多発性脳梗塞、認知症。2009年8月発熱が続き寝たきり状態となり、重症肺炎で他院入院。8月25日病状軽快し当院転院。褥創が殿部、背部、後頭部,左肘、左踵部にある。8月27日理学療法開始。経鼻経管チューフ゛であったが9月14日全粥、キサ゛ミあんかけを全量摂取となる。妻と二人暮らし、妻は高齢のため自宅復帰困難。 【画像所見】CT(入院時)広範囲に脳萎縮。 【初期評価】(9月8日) 全体像:臥床し四肢でヘ゛ット゛を押し付けヘ゛ット゛柵を把持し離さない。指示が入らず協力動作は得られない。DIV,ハ゛ルーンカテーテル留置。意識状態:JCS 20-IA。発語は少ない。精神面:怒りや拒否はない。運動麻痺:著明でない。深部腱反射:左半身やや亢進。病的反射:陰性。前頭葉症状:覚醒障害、自発性の低下、運動開始の困難。把握反射:陽性。ADL:姿勢はベッド上で仰臥位でいる。寝返り・起座は全介助。座位は手で柵を把持し両下肢で突っ張り重心移動に抵抗。車椅子座位はハ゛ックレストに寄りかからないで座ると、そのまま寄りかからないで座り続ける。足部はフットレストに載せてもすぐ床に降ろす。 問題点:1寝返り・起座全介助。2食事摂取全介助。3把握反射と、押し付け。4多発褥創(殿部、背部)。 【経過】意識状態はJCS 3-_I_移乗・起立は安定した支持物に手を伸ばし動作を開始するようになった。起立は介助すると突っ張って抵抗し困難であったが、本人の動作の開始に合わせて誘導すれば可能となり、歩行もワイドベースで可能となった。11月15日褥創は仙骨部を残し治癒。退院日(2010年1月21日)まで寝返り・起座の協力動作は緊張し柵を把持し、突っ張るので得られなかった。 【考察】 寝返り・起座と、移乗・歩行の違いは、前者は後者に比べ重心移動が大きいことであり、支持面が広い面から狭い面へ変化が大きいことである。症例は認知症、前頭葉症状、固有感覚の障害のため、重心移動と支持面の変化に対応できず姿勢変換が困難である。また、視覚で代償できれば良いが、前者は頭部をベッドに押し付けているため、眼球の動きが制限され困難であり、後者は頭部の押し付けが無いので頭部・眼球の動きは制限されず、視覚からの代償が得られるので動作がし易いと考えた。
著者
川上 哲 馮 少孔 鍜治 義和
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学研究発表会 発表講演集
巻号頁・発行日
vol.38, pp.35-36, 2003

地表から数mの深度に防空壕が存在する可能性がある場合、その調査手法としては、地中レーダ探査が、コスト・作業能率から考えて、最も一般的である。しかし、地中レーダの反射記録からは、その空洞の上面からの反射が得られるだけで、その反射がどのような物性に対応しているかを特定することは難しい。そこで、多チャンネルによる表面波の測定を行い、地中レーダにより発見された異常反射体前後の表面波(レイリー波)の記録を取得し、調査結果との比較を行ってみた。その結果、多チャンネルによる表面波探査が空洞調査に対して有効な手法であることを確認した。
著者
川上 隆 中井 満 下平 博 嵯峨山 茂樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.627, pp.25-32, 2000-02-18
参考文献数
14
被引用文献数
2

本稿では、隠れマルコフモデル(HMM)を用いて与えられた旋律に自動で和声付けを行なう手法を提案し、実験的検討結果を報告する。旋律は背後に隠れた和声進行から生成される、とする旋律生成の隠れマルコフモデルを提唱し、その逆問題として、与えられた旋律から背後の和声進行を最尤推定する。2種類の和声進行のモデル、いくつかの旋律生成のモデル、さらにN-bestアルゴリズムによる和声付け複数候補抽出や、与えられた旋律の調性推定及び転調検出についても論じる。童謡や歌曲及びバッハのコラールから学習した和声進行確率モデルを用いた、実際に和声付け実験を行なった結果についても述べる。
著者
川上 量生 川岸 徹
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネスassocie (ISSN:13472844)
巻号頁・発行日
vol.10, no.20, pp.74-78, 2011-12-06

ネット業界で注目を浴びている川上量生さんが起業したドワンゴは、東京証券取引所の1部に上場し、グループの売り上げは年間300億円超。急成長中の動画共有サービス「ニコニコ動画」など、独自のサービスを立ち上げてきた。「僕は嫌々仕事をしている」と言う川上さんが、「競争せずに成長し続ける方法」を語った。
著者
川上 量生
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1745, pp.56-59, 2014-06-16

[ドワンゴ会長]川上 量生 氏統合の先、僕も読めない動画サイト「ニコニコ動画」が好調の中、KADOKAWAとの経営統合を決めた。日本のコンテンツ業界、ネット業界が抱える閉塞感への危機感が突き動かした。角川歴彦会長が「天才」と愛でる起業家は、どんな未来…
著者
川上 量生 今井 拓司 進藤 智則
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.1152, pp.93-97, 2015-02

「ニコニコ動画」など独自性の強いサービスで気を吐くドワンゴが、人工知能の研究や独自ハードウエアの開発に乗り出した。背景にあるのは、遠からず人は機械に負けてしまうという諦観や、他社に真似できないサービスの実現には独自のハードウエアが不可欠とい…
著者
樋口 理 向野 晃弘 中根 俊成 前田 泰宏 小森 敦正 右田 清志 八橋 弘 中村 英樹 川上 純 松尾 秀徳
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.334a-334a, 2014 (Released:2014-10-07)

【背景と目的】全身性および臓器特異的自己免疫疾患では,古くから自律神経障害を伴う症例が知られるが,その分子病態は未解明である.近年,急性あるいは慢性経過を示し,広汎な自律神経障害を呈す自己免疫性自律神経節障害(AAG)の主因が,自律神経節後シナプス領域に局在するganglionicアセチルコリン受容体(gAChR)に対する自己抗体であることが多角的実験手法により証明され,自律神経障害における自己抗体介在性の分子病態の存在が注目されている.本研究では,膠原病や自己免疫性慢性肝疾患における抗gAChR抗体の陽性率を解明する.【方法と結果】長崎大学病院と長崎医療センターにて集積された自己免疫疾患217症例(関節リウマチ,シェーグレン症候群,全身性エリテマトーデス,自己免疫性肝炎,原発性胆汁性肝硬変,その他関連症例を含む)を対象とした抗gAChR抗体探索を実施し,平均22.6%の抗体陽性率を確認した.一方,抗gAChR抗体検査目的で当院に送付された著明な自律神経障害を呈する自己免疫疾患合併12症例の血清検体では,50%(6/12)の抗体陽性率を確認した.【結論】膠原病や自己免疫性慢性肝疾患に抗gAChR抗体が潜在することが明らかとなった.特に,広汎かつ著明な自律神経障害を呈す症例はAAGに匹敵する抗体陽性率を示し,当該抗体と各種自律神経症状の因果関係が疑われた.
著者
高木 昭佳 吉田 直子 渡部 有貴 中川 洋子 北澤 英徳 三村 泰彦 足立 伊佐雄 川上 純一
出版者
日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.15-22, 2007-01-10
参考文献数
23
被引用文献数
1 3

To improve the drug information service and standardize pharmaceutical care for inpatients of the Department of Japanese Oriental Medicine, Toyama University Hospital, we created a Kampo (Oriental) medicine database and used it in the preparation of medication instruction sheets. The database was configured on a Power Mac G4 (Apple Computer, Inc.; Cupertino, CA, USA) personal computer operating on Mac OS 10.4 using FileMaker Pro 6 database software. The database comprised 5 interlinked files-patient registration file, constituent crude drug registration file, Kampo formula registration file, and a file for the making and storing of instruction sheets. Information on 239 crude drugs and 560 Kampo formulae obtained from our "Hospital Manual for Japanese Oriental Medicine" was recorded in the database. Further, color photographs of the plants from which the herbal medicines were derived and other natural medicines were included in the instruction sheets to give patients a better understanding of Kampo pharmacotherapy. The database has made it easy to prepare personalized instruction sheets, which can be done by only entering the patient's ID and the Kampo formulae prescribed or crude drug name. In addition, the medication instructions for each inpatient and the indication(s) of prescribed Kampo formulae have been recorded in the database for later use in the management of inpatient histories and to provide utilization statistics for Kampo medicines. When a questionnaire survey of inpatients of the Department of Japanese Oriental Medicine was carried out to evaluate the usefulness of the medication instruction sheets prepared using the database, it was found that they gave patients a better understanding of Kampo pharmacotherapy and made them more interested in it. In conclusion, our database system will help improve the drug information service and quality of pharmaceutical care for inpatients treated with Kampo formulae prepared from crude drugs.
著者
松本 哲 義久 智樹 川上 朋也 石 芳正 寺西 裕一
雑誌
第24回マルチメディア通信と分散処理ワークショップ論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, pp.199-201, 2016-10-12

近年,USTREAM やツイキャスといった,個人がインターネットを介してリアルタイムな映像配信を行えるインター ネットライブ放送サービスが普及している.我々の研究グループでは,異世界放送システムと呼ぶ,分散型映像処理を用いたインターネットライブ放送システムを研究開発している.異世界放送システムでは,計算能力の高い映像処理サーバを用いることで,映像処理にかかる時間を短縮しつつ,映像データを配信できる.インターネットライブ放送では,放送禁止区域に入ると画面を黒くする,放送者以外が写っていればモザイクをかける,といった放送者の意図に応じた映像処理を行うことがある.これらの映像処理を自動的に行うことで放送者の操作回数を削減できるが,これまでの異世界放送システムでは,放送開始前に設定された映像処理を放送者や視聴者の指示に従って付加することしかできなかった.そこで本研究では,放送者の意図に応じて柔軟に自動的に映像処理を行える異世界放送システムのための映像処理ルール記述方式を提案する.提案方式では,映像処理を行うタイミングと条件をルール形式で記述することで,柔軟かつ自動的な映像処理の実現を目指す.
著者
五味 二郎 光井 庄太郎 工藤 康之 赤坂 喜三郎 小野 康夫 木村 武 川上 保雄 野口 英世 宮本 昭正 牧野 荘平 可部 順三郎 石崎 達 中島 重徳 熊谷 朗 野崎 忠信 富岡 玖夫 伊藤 和彦 斧田 太公望
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.22, no.9, pp.599-612,614-61, 1973

気管支拡張剤ST1512(S群)の成人気管支喘息に対する薬効につき, metaproterenol(A群)およびinactive placebo(P群)を対照として, 頓用, 連用効果につき, 9施設による2重盲検試験を行った.open trialの結果から, Fisherの直接確率計算法により, 1群につき36例となり, 並列3群にあてはめれば3倍の108例前後の症例数でよいと考えられたため, 105例に達した時点で中間点検を行った.全例104例であり, S群34例, A群36例, P群34例で, 3群間にはback groundにおいて有意差はなかった.試験方法は, S群1錠(1mg), A群1錠(10mg), placebo1錠を投与し, 前および1時間後の自他覚症状, 肺機能を検した.医師の総合判定につき, H-test, U-testを行い, S群とP群間に危険率0.5%以下の高度の薬物差を認めたが, 危険率5%でS群とA群とP群間には有意差は検出されなかった.ついで薬効差につき, 詳細な3群判別分析を行い検討も行った.
著者
山下 透 檀原 徹 岩野 英樹 星 博幸 川上 裕 角井 朝昭 新正 裕尚 和田 穣隆
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.7, pp.340-352, 2007 (Released:2008-03-29)
参考文献数
50
被引用文献数
1 8

紀伊半島北部に分布する室生火砕流堆積物とその周辺の凝灰岩(石仏凝灰岩,古寺凝灰岩,玉手山凝灰岩)および外帯中新世珪長質岩類について,屈折率を用いた軽鉱物組合せモード分析を行った.その結果,紀伊半島北部の中期中新世珪長質火砕流堆積物の斜長石系列は,すべてオリゴクレース~ラブラドライトで特徴付けられることから,これら4者は対比された.加えて室生火砕流堆積物は外帯に分布する熊野酸性岩類の流紋岩質凝灰岩の一部と対比できた.これらのことから,室生火砕流堆積物と石仏凝灰岩,古寺凝灰岩,玉手山凝灰岩は15 Maの熊野地域のカルデラを給源とする同一の大規模火砕流堆積物であると推定される.また熊野酸性岩類の中のアルバイトで特徴付けられる流紋岩質凝灰岩は,同じ軽鉱物組合せをもつ中奥弧状岩脈を給源とする可能性がある.
著者
川上 貴弘 村山 尊司 佐藤 仁俊 石原 未来 大塚 栄子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.B4P3090-B4P3090, 2010

【目的】外傷性脳損傷(以下TBI)は急性期に意識障害をはじめとした多様な障害像を呈する。そのため受傷後の短期的な医学的リハビリテーションでは治療効果や長期的な予後予測が困難な事例が多い。今回、発症後25ヶ月経過した慢性期TBI例を経験した。本例は当センター医療施設及び障害者支援施設にて19.5ヶ月の加療の結果、入院時ADL全介助から屋外歩行にてADL自立レベルまで改善を認めた。本例の臨床経過の特徴と慢性期における包括的リハビリテーション支援の必要性について述べる。<BR><BR>【方法】<症例>33歳 男性 右利き。診断名:TBI。現病歴:2006年1月飲酒後階段より転落。頭部CTにて急性硬膜下血腫を認め、減圧開頭血腫除去術施行。同年3月にV-Pシャント術施行。意識障害・四肢麻痺・嚥下障害が遷延し、同年5月某リハビリテーション病院転院。その後、12月に療養病院にて加療するも改善認めず、2008年2月更なるリハビリ目的にて当センター転院。同年9月障害者支援施設へ転所。2009年10月現在、同施設入所中。<BR>既往歴:特になし<BR><BR>【説明と同意】今回の発表にあたり患者の同意を書面にて得た。<BR><BR>【結果】<入院時所見(発症後25ヶ月)>神経学的所見:意識清明。コミュニケーションは言語にて可能。著明な自発性低下あり。運動麻痺はBr-stage両側上下肢6にて分離運動良好、感覚障害は認めず。両側上下肢に固縮様の筋緊張亢進を呈した。両下肢に著しい関節可動域制限及び筋力低下を認めた。神経心理学的所見:全般知能はMMSE;19/30点。FAB;13/18点。TMT:Set1;1597秒誤り10,Set2;実施不可。Kohs立方体:実施不可。WCST:実施不可。動作所見:起居動作・坐位保持は介助にて可能であったが、立位を伴う動作は両下肢の拘縮とクローヌスが著しく困難であった。歩行は平行棒内全介助レベル。ADL:FIM;48/126点(運動項目28点、認知項目20点)。<医学的リハビリテーション経過>発症後25ヶ月~31.5ヶ月の期間当センター医療施設にて医学的リハビリテーションを実施。退院後は関連施設である障害者支援施設更生園への入所を目的としていた。入院時より頭部CTにて脳室拡大を認めた為、入院後1ヶ月に水頭症改善を目的としたV-Pシャント術を施行。並行してPT,OT,STによる運動療法及び認知訓練を実施した。V-Pシャント後自発性改善を認め、それに伴い身体・認知機能も向上した。発症後28ヶ月の時点でMMSE30/30点、歩行器歩行軽介助レベルに至った。退院時(発症後31.5ヶ月)の状況は、基本動作は自立、歩行は歩行器歩行監視レベル、階段昇降も監視にて可能となった。高次脳機能障害に関しては、対人関係トラブルを頻発するなど社会的行動障害がみられるようになった。ADLはFIMにて101/126点(運動項目74点、認知項目27点)。<社会的リハビリテーション経過>発症後31.5ヶ月~44.5ヶ月の期間当センター障害者支援施設にて社会的リハビリテーションを実施(現在も継続)。本例は両親との同居を目標に社会生活プログラムに沿った機能訓練及び生活訓練を実施した。発症後38.5ヶ月で実用的な移動手段は車いすから歩行へ移行し、屋内T杖歩行自立となる。発症後42.5ヶ月でADL自立、屋外(施設敷地内)独歩自立に至った。発症後44.5ヶ月でのADLはFIMにて114/126点(運動項目85点、認知項目29点)。身体機能については著明な改善を認めたが、脱抑制・易怒性のような社会的行動障害が強くなり、間食や対人関係トラブルといった施設生活上の問題が顕著となった。退所後は地域の就労支援センターへ移行する予定。<BR><BR>【考察】TBIの長期経過として運動機能の改善は良好とされる一方、社会的行動障害のような高次脳機能障害は遷延することは橋本らが報告しており長期的なリハビリテーションフォローの必要性を指摘している。本例においても、発症後25ヶ月から19.5ヶ月のリハビリテーション介入により身体機能は著しく向上し歩行及びADL自立に至ったが、高次脳機能障害は残存した。これは一般的なTBI患者の長期経過の特徴を示すものであった。しかし、本例は発症後25ヶ月が経過していたのにも関わらずADL全介助から自立に至るという良好な経過を示した点が特異的であった。この背景には、V-Pシャント術による自発性の向上に加え、医学的リハビリテーション及び継続した社会的リハビリテーション支援の効果を示すものであった。TBI例では、慢性期においても積極的な医学的治療と長期リハビリテーション支援の必要性が示唆された。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】慢性期TBIにおいて積極的な支援により良好な結果が得られた。本報告は、TBI例に対するリハビリテーションの可能性を示唆した。