- 著者
-
村上 怜子
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬学会
- 雑誌
- ファルマシア (ISSN:00148601)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.11, pp.1041, 2023 (Released:2023-11-01)
- 参考文献数
- 4
現代社会において,砂糖の摂りすぎによる肥満および,それに伴う様々な疾患は大きな問題となっている.そのため,ゼロもしくは低カロリーの人工甘味料は,砂糖の摂取量を減らし,減量や血糖値をコントロールするために,広く使われている.様々な人工甘味料の短期の安全性は評価されているが,長期的に大量に摂取した場合の影響の評価は不十分であり,近年,長期の大量摂取が循環器系の病態に影響する可能性が指摘されている.人工甘味料の1つであるエリスリトール(C4H10O4)は,果物など自然界にも含まれる物質で,砂糖の60~70%の甘みを持ち,生体内でほとんど代謝されない「ゼロカロリー」の糖アルコールである.エリスリトールは,食べ物や飲み物において広く使用されてきた.本論文4)では,食生活の聞き取り調査等ではなく,血液中に含まれるエリスリトールの濃度を質量分析計(mass spectrometry: MS)によって実際に測定し,心疾患リスクとの相関関係を検証している.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Janzi S. et al., Front. Nutr., 7, 603653(2020).2) Debras C. et al., BMI, 378, e071204(2022).3) Vyas A. et al., J. Gen. Intern. Med., 30, 462–468(2015).4) Witkowski M. et al., Nat. Med., 29, 710–718(2023).