著者
熊坂 隆行 升 秀夫 片岡 三佳 棟久 恭子 森田 優子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.20-28, 2010-05-30 (Released:2010-06-24)
参考文献数
9

精神科病院の入院患者を対象として,看護支援における動物を用いたアプローチの有用性を検討した。動物とのふれあいの効果を検討したところ,このアプローチを必要としている患者の傾向と,アプローチによる患者の気分の変化が明らかとなった。患者の入院生活支援を24時間している看護師において,環境整備は重要な看護援助のひとつであり,動物が好きな患者において「動物がいる入院環境を整えること」は,情緒の安定,意欲の向上,環境の適応などに繋がる可能性が考えられた。
著者
宇野 敦彦 森脇 計博 加藤 崇 長井 美樹 坂田 義治
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.9-16, 2001-01-20
被引用文献数
9 20

良性発作性頭位めまい症 (BPPV) の病態についての考え方は最近, 急速に整理されてきた. 従来からの回旋の強い眼振の誘発されるタイプは後半規管が主たる病巣と考えられ (P-BPPV), 側臥位で水平成分の強い眼振の誘発されるタイプは水平半規管が主たる病巣と考えられている (H-BPPV). このような考えに従って, 1999年度の1年間に当科で経験したBPPV症例についての現状を報告した.<BR>めまいを主訴とした新患患者619例のうち, 誘発される眼振所見からBPPVと診断されたものが23%, 眼振所見はなかったが問診から疑い診断したものを含めると43%を占めた. 疾患別に最も頻度が高く, めまい患者にしめるBPPVの割合はこれまでの報告と比べても非常に高い. 診断の問題と当院の特性が考えられる. H-BPPVもまれでなく, 眼振所見からBPPVと診断された143例の内, P-BPPVが65%, H-BPPVが31%であった. 検討期間中にP-BPPVとH-BPPVの両方を見た例も4%あった. H-BPPVの中では方向交代性向地性眼振の見られた例が73%, 方向交代性背地性眼振が27%であった. P-BPPVとH-BPPVの差を見ると, H-BPPVの方が早く寛解する率が高く, 頭部外傷後に起きる例ではP-BPPVの方が多い. 性差や年齢分布には大差なく, それぞれが移行する例や, 同じ患者に日をおいて異なったタイプが再発する例があり, 病因の本質的な差はないように思われる. 本検討では誘発される眼振を重視して, 診断と経過について検討した. 回転性めまいの後に続く動揺感については今後の課題である.
著者
坂口 竜己 森島 繁生 大谷 淳 岸野 文郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HC, ヒューマンコミュニケーション
巻号頁・発行日
vol.93, no.439, pp.61-68, 1994-01-26
被引用文献数
17

よりユーザフレンドリーなコンピュータとのコミュニケーション環境実現のため、顔表情動画像を用いたインタフェース構築の研究を進めている。筆者らはすでにモデルベース手法を応用した表情動画像の作成について提案しているが、この表情変形規則は2次元的な計測を基に作られたものであったため、満足な性能は得られていなかった。本稿では、顔表面の3次元計測により、各表情表出時の顔面皮膚の移動量を求め、新たな移度制御点(特徴点)の設定と移動規則の決定を行なっている。3次元計測では正面・側面画像を利用する手法を採用し、誤差±1.2%程度の精度を得ている。更に得られた特徴点位置についての測定結果よりFACSのAUの定量化を見直し、特徴点以外の点の補間法を検討してより自然な画像合成を行なっている。
著者
小畑 秀文 増谷 佳孝 佐藤 嘉伸 藤田 廣志 仁木 登 森 健策 清水 昭伸 木戸 尚治 橋爪 誠 目加田 慶人 井宮 淳 鈴木 直樹 縄野 繁 上野 淳二
出版者
東京農工大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

本申請課題においては、5年間にわたる研究成果のとりまとめと、研究成果を社会・国民に発信することの2つが目的であった。第一の目的である研究成果のとりまとめにおいては、計算解剖学の目的、研究組織、計画班および公募班それぞれの研究成果(著書・論文のリスト、特許を含む)と共に、計算解剖学という新たな領域としての状況、計算解剖学主催による学術研究集会およびアウトリーチ活動、諮問委員による研究評価、などを含め、研究成果報告書として取りまとめて印刷・製本した。また、同報告書の内容に研究成果をより理解しやすいように一部の動画をも含めてCDも作成した。これらは関係研究機関に配布した。第二の目的である研究成果の社会・国民への発信に関しては、2つの取り組みを行った。一つは、「3Dプリンタで臓器モデルを作ろう!」と題した中学・高校生向け講座である。これは日本学術振興会主催の「ひらめき☆ときめきサイエンスプログラム」の一つとして2014年8月21、22日の2日間にわたって名古屋大学にて開催したもので、CT画像から臓器を抽出し、それを3Dプリンタで打ち出すまでを体験させた。次代を担う世代に計算解剖学の成果の一端を分かりやすく紹介したものである。二つ目は東京農工大学にて開催した「計算解剖学」最終成果報告シンポジウムである。計算解剖学プロジェクトで新たに開発された基礎から応用(診断・手術支援)までの研究成果を関連分野で活躍する研究者・技術者に対して広く紹介した。また、専門的・学術的な立場から計算解剖学の現状評価と今後の方向性や課題を議論し、次のステップへの礎とした。
著者
神田 学 森脇 亮 鈴木 譲 ロート マティアス オーク ティム
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.453-462, 2000-06-30
被引用文献数
7

密集低層住宅街(世田谷)の接地境界層において, 渦相関法とシンチロメーター法を併用した乱流フラックス観測を行い, 以下の結論を得た.(1)世田谷住宅街における放射収支・熱収支解析データを提示し, その特徴を示した.(2)2高度におけるシンチロメーター計測により, 顕熱と同時にゼロ面変位を推定する手法を提案した.推定されたゼロ面変位は, 平均的にはMacDonald et al.(1998)の形態学的手法から算定された値とほぼ一致した.また, ゼロ面変位が大気安定度に依存することを指摘した.(3)渦相関法とシンチロメーター法の比較により乱流フラックスの空間代表性が検討された.シンチロメーター法のソースエリアは渦相関法のそれに対して, 不安定時で2〜3倍の広さを持つ.30分平均値での顕熱は両手法で有意な差がない.顕熱の標準偏差は大気安定度に関わらずシンチロメーター法の値が小さい.これは計測スパンの長いシンチロメーター法における渦の空間積分効果であると考えられる.
著者
蓮井 亮二 毛利 公美 森井 昌克
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OIS, オフィスインフォメーションシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.529, pp.17-22, 2006-01-13
被引用文献数
1

ソフトウェアの脆弱性を利用した不正アクセスやDoS攻撃が社会問題化し, 脆弱性検査とソフトウェアのアップデートは重要になっている.これまでにも脆弱性監査ツールとしてNessusやNSAT等が開発・公開されている.しかし, これらのツールでは検査時に検査項目を設定する必要があることや検査結果を有効活用して対策を行うには専門的な知識が必要となることから簡単に利用できるとは言い難い.本稿では専門知識の乏しい管理者でも利用できる管理・運用を容易にするネットワーク資源脆弱性自動検査システムを提案する.提案システムでは既存の脆弱性検査ツールと比較して「脆弱性検査時の検査項目を自動的に設定する」「Web上から最新の脆弱性情報を自動的に取得する」といった特徴を有する.また, 既存の脆弱性ツールにはなかった「ネットワーク内部のパケット情報を記録し, 脆弱性が検出されたPortのパケット受信状況をグラフ化して表示する」という機能を持たせることによって, 脆弱性のあるPortに対するアクセス状況を把握することができる.
著者
大森 一伸
出版者
Waseda University
巻号頁・発行日
2003-07

制度:新 ; 文部省報告番号:乙1808号 ; 学位の種類:博士(人間科学) ; 授与年月日:2003/7/16 ; 早大学位記番号:新3620
著者
森江 隆 石川 聖二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.94, no.6, pp.459-463, 2011-06-01
被引用文献数
2

車載用及びロボット視覚用の知的画像認識で必要となるHOG,SIFTなどの基本アルゴリズムを紹介するとともに,筆者らが開発した画像認識手法を紹介する.現在の画像処理はより並列的・階層的になり,脳での視覚処理モデルに近づいているともいえるが,人の高い知覚機能に近づくには更なるブレークスルーが必要である.そのために,脳型画像処理技術とそれを実現する集積回路及びナノ構造の利用を含めた脳型デバイス開発の必要性を述べる.
著者
森 哲 COOK S. P. COOK Simon Phillip
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2004

本年度は、研究開始時期が冬季であったため、調査地と対象種の選定を主とした予備的調査を行った。亜熱帯域におけるトカゲ類の温度生理を温度環境の異なる地域間で比較し、また、温度選好性が異なると推測される複数種が存在する場所と、単一種のみが存在する場所を選び、それらの間でそれぞれの種の温度特性を比較することを目的として、適切な種と調査地の確定を行った。また、選定に際しては、京都大学理学研究科の戸田守助手と琉球大学熱帯生物圏研究センターの太田英利教授のアドバイスをあおいだ。まず、既存の文献データから琉球列島に生息するトカゲ類の分布域と選好環境の情報を調べ、対象種として、オキナワトカゲ、バーバートカゲ、および、ヘリグロヒメトカゲを選抜した。これをもとに、調査候補地として、沖縄北部の山原、伊江島、久米島、伊平屋島、伊是名島、および、奄美大島を選んた。本年度は、このうち沖縄島北部の山原と伊江島へ1月に赴いて実際の環境を巡察し、山原は上記3種が生息する環境として、伊江島はオキナワトカゲとヘリグロヒメトカゲが生息する環境として、調査対象にふさわしい場所であると判断した。他の地域へは、平成17年度の4月に赴く予定である。また、2月には、体温と逃走速度との関係を実験下で調べるための実験装置であるレーストラックの作成準備にとりかかった。この実験では、野外で捕獲してきたトカゲを様々な体温条件下で逃走させる必要があるが、既存のインキュベーターを用いてトカゲの体温を変化させることが可能であることを確認した。
著者
森田 義之
出版者
愛知県立芸術大学
雑誌
愛知県立芸術大学紀要 (ISSN:03898369)
巻号頁・発行日
no.35, pp.1-14, 2005

In questo volume presento le illustrazioni e le fotografie relative al mio saggio pubblicato nel volume 34: ≪Lo sviluppo urbanistico a Firenze nel Medioevo (I)≫. Elenco delle illustrazioni: (1) Firenze nell'eta romana (2) Battistero di S. Giovanni (pianta) (3) Battistero di S. Giovanni (sezione; prospetto) (4) Battistero di S. Giovanni (veduta attuale) (5) Le mura di Firenze (6) Ricostruzione di un gruppo di torri anteriori al 1250 (7) Torre degli Alberti (Via dei Benci/Borgo S. Croce) (8) Torre degli Amidei e dei Baldovinetti (Borgo SS. Apostoli) (9) Torre del Visdomini (Via delle Oche) (10) Torre degli Ubaldini (Piazza S. Andrea) (11) Torre del Corbizzi (Piazza S. Pier Maggiore) (12) Ricostruzione dell'area di Mercato Vecchio (da Florentine Magnates, 1991) (13) Torri medioevali a Firenze (XII-XIV secolo) (14) Palazzo del Capitano del Popolo (prospetto su Via del Proconsolo) (15) Palazzo del Bargello (veduta attuale) (16) Interventi urbanistici dei secoli XIII e XIV (17) S. Maria del Fiore (Duomo) (18) S. Maria del Fiore (veduta attuale) (19) Campanile del Duomo (prospetto; piante; sezione) (20) Campanile del Duomo (veduta attuale) (21) Palazzo Vecchio (Palazzo dei Priori/Palazzo della Signoria) (sezione del torre; prospetto) (22) Palazzo Vecchio (veduta attuale) (23) Ricostruzione dell'area di Piazza della Signoria prima delle demolizioni trecentesche (da Alle Origini di Firenze, 1997) (24) Piazza Vecchia e Piazza Nuova di S. Maria Novella (25) Loggia di Orsanmichele (sezione) (26) Orsanmichele (veduta attuale) (27) Palazzo Davanzati (Tavola A) Principali costruzioni e interventi urbanistici dei secoli XIII e XIV. [Illustruzioni (1) (2) (3) (5) (6) (13) (14) (16) (17) (19) (20) (24) (25) sono presi da Firenze: architettura e citta di G. Fanelli, vol.II, 1973]
著者
森田 宏樹
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

本年度においても引き続き、発信者情報の開示請求制度に関するアメリカ法およびフランス法における判例法の展開および立法対応の現状と問題点の分析を行った。アメリカ法においては、(1)個人の名誉毀損や企業の信用毀損のケースにおいて、違法情報の発信者を特定しないで匿名者"John Doe"を被告として不法行為訴訟を提起し、その訴訟手続内で被告を特定するためにプロバイダー等に対して発令される連邦民事訴訟規則に基づくsubpoena(罰則付召喚令状)による発信者情報の開示請求と、(2)著作権侵害のケースにおいて、不法行為訴訟とは独立に認められる・デジタル世紀著作権法(DMCA)に基づくsubpoenaによる発信者情報の開示請求という2つの法制度が併存しているが、(1)の系列の判例の検討からは、わが国のプロバイダー責任制限法の立案過程において発信者情報開示請求の要件設定に関して参考としたアメリカ法上の先例が、その後の判例の展開の中でどのように位置づけることができるのかを明らかにするとともに、他方で、(2)の系列については、昨年から今年にかけてP2Pによる音楽著作権侵害のケースに関して下された一連の判決の理由において、(2)の手続が(1)の手続と対比して、発信者の匿名性の保護と不法行為による被害者の救済とのバランスのとり方においてどのような意義を有するものと理解されているのかを明らかにすることによって、(1)と(2)のいわば中間に位置するともいえる・わが国の発信者情報開示請求権の意義を評価ないし再確認する視座を得ることができた。また、フランス法においては、違法行為者の発信者情報の開示をプロバイダー等に命ずる最近の急速審理手続(レフェレ)の決定例を検討するとともに、2003年1月に国会に提出された「デジタル経済の信頼」に関する法案(LEN)の審議過程(現在、審議継続中)をフォローした。以上の検討を踏まえて、わが国の近時の下級審裁判例における解釈論上の論点についても検討を進めた。
著者
森島 繁生 八木 康史 中村 哲 伊勢 史郎 向川 康博 槇原 靖 間下 以大 近藤 一晃 榎本 成悟 川本 真一 四倉 達夫 池田 雄介 前島 謙宣 久保 尋之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.94, no.3, pp.250-268, 2011-03-01

映像コンテンツの全く新しい実現形態として,観客自身が映画等の登場人物となり,時には友人や家族と一緒にこの作品を鑑賞することによって,自身がストーリーへ深く没入し,かつてない感動を覚えたり,時にはヒロイズムに浸ることを実現可能とする技術「ダイブイントゥザムービー」について本稿で解説する.この実現には,観客に全く負担をかけることなく本人そっくりの個性を有する登場人物を自動生成する技術と,自ら映像中のストーリーに参加しているという感覚を満足するためのキャラクタ合成のクオリティ,映像シーンの環境に没入していると錯覚させる高品質な映像・音響再現技術及びその収録技術が,観客の感動の強さを決定する重要な要素となる.2005年の愛・地球博にて実証実験を行った「フユーチャーキャスト」に端を発するこの技術は,ハードウェアの進歩と2007年にスタートした文部科学省の支援による科学技術振興調整費プロジェクトの実施によって,格段の進歩を遂げた.その結果,様々なバリエーションの観客の個性を全自動・短時間でストレスなくモデル化することが可能となり,また作品の中でリアルタイム合成されるキャラクタの顔と全身,声に各入の個性を忠実に反映することが可能となった.また,同時に役者が感じた音場・視点で1人称的にコンテンツへの没入感を体感することを可能にするシステムを同時に実現した.
著者
司 化 川西 直 森川 博之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処学会研究報告, ユビキタスコンピューティングシステム研究会 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
pp.159-166, 2007
被引用文献数
1

認知症患者は,「髭を剃る」,「お茶を入れる」などの日常生活動作を遂行する際に,次の手順でどの行動をするべきか忘れやすいため,専門介護者による介護を必要とする.だが,高齢化の進展に伴う認知症患者の急増に対し,専門介護者や介護施設のような介護資源の比較的な不足のため,認知症介護の介護負担が社会的な問題になりつうある.このような状況を背景とし,認知症介護を支援するコンテキストアウェアコンピューティング技術の応用が注目されている.我々は,認知症患者の日常生活動作を支援するシステムCoReDA(Context-aware Reminding System for Daily Activities)を提案する.被介護者の日常生活動作を支援するため,CoReDAはまず,無線センサノードを用いて被介護者の日常生活動作における道具使用情報を取得する.取得した情報に基づき,CoReDAはTD(λ)Q-Learningを用いて,被介護者の習慣や嗜好を考慮した,必要最小限の指示を計画・提供する.
著者
関岡 哲也 横川 勇仁 舩曳 信生 東野 輝夫 山田 朋弘 森 悦秀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.459-470, 2001-03-01
被引用文献数
24

唇の輪郭線は, 口腔外科における口唇裂症などの術式検討や術後トレースに重要であり, シンプルかつ高精度のモデルでの自動抽出が望まれている.そこで本論文では, 顔画像を入力とし, 前処理, 1次検出, 2次検出の3段階の処理を経て, 唇の輪郭線を関数で合成する手法を提案する.まず前処理では, 顔画像から唇の位置を検出し, おおよその大きさを決定する.次に1次検出ではDeformable templateマッチング法により唇のおおよその輪郭線を探索する.そして2次検出では, 遺伝的プログラミングを用いて置換と分割によって詳細な唇の輪郭線を探索する.本提案手法が従来の動的輪郭モデル(SNAKES)よりも精度, パラメータ数, 探索時間の点で優れていることを一般人の唇, 口唇裂症患者の唇のサンプルに対するシミュレーションにより示す.
著者
井廻 道夫 金子 隆志 森山 貴志 安藤 量基
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

HLA B44を有する慢性C型肝炎患者の検討で,HCVコア抗原アミノ酸残基88-96を抗原エピトープとするHLA B44拘束性CTL応答が認められる症例では末梢血HCV RNA量が低値であり,CTLがHCVの増殖に対して抑制的に作用していることを示唆する結果が得られた.また,同一患者において異なった抗原エピトープを認識する2種類以上のCTLが存在することも明らかになった.CTL応答が認められるにも関わらずHCVが存在することは,HCV感染においてはCTL応答が不十分であることが考えられる.抗原エピトープの変異が認められたのは27例中3例と多くはなかったが,その3例のHCVコア抗原アミノ酸残基88-96のアミノ酸配列のペプチドを作製し,HCV特異的CTLに認識されるか,あるいはCTLを効率良く誘導できるかを検討したところ2例では変異エピトープは野生型エピトープと同様に認識されるものの,CTL誘導能は低いことが判明した.他の1例ではむしろ変異エピトープの方が抗原性が強いという結果が得られた.このなかのエピトープの一つを用いて,変異ウイルスが野生型ウイルスと混在した場合にどのような影響がCTL応答に生じるかを検討したところ変異ウイルスは野生型ウイルスと混在した場合には,CTLのウイルス感染細胞障害が抑制されるとともに,変異ウイルスを認識するCTLの増殖も抑制されることが明らかになった.HCVコア抗原アミノ酸残基88-96をHLAB44拘束性に認識するCTLクローンを用いた検討より,C型肝炎においてはCTLはHCV感染細胞を認識しパーフォリン,Fasリガンド,TNFにより認識した細胞を障害すると共に,抗原を認識し活性化したCTLは炎症などにより感受性を獲得した肝細胞をFasリガンド,TNFにより障害し,肝炎の拡大に関与していることが明らかになった.
著者
吉岡 豊 森 壽子 藤野 博 瀬尾 邦子 濱田 豊彦 寺尾 章
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.169-176, 1992

本研究では42例の失語症患者と3歳から8歳の正常児94例を対象に, 文理解力と物語理解力を調査し, 失語症患者と正常児の相違点を考察した.課題として文理解力の評価には2種類の3文節能動文を用い, 物語理解力の評価には失語症鑑別検査(老研版)を用いた.主な知見は以下の如くであった.1.失語症患者では物語理解力が文理解力よりも良好であった.両課題の成績には乖離が見られ, 特に重度・中度群で著しく, 軽度群では差がやや縮まった.2.正常児ではどの年齢でも物語理解力と文理解力はほぼ並行して発達した.また, 理解良好な者の比率は4〜5歳代で有意に上昇した.以上の結果から, 文理解力と物語理解力の乖離は失語症患者に特有な現象であることが確認された.その原因としては, 文理解力には主に左脳の能力が, 物語理解力には右脳の能力も関与しているためと考えられた.