著者
ディビッド ウルフ 秋田 茂 泉川 泰博 岩下 明裕 遠藤 乾 松本 はる香 横手 慎二 エルドリッジ ロバート ロバート エルドリッジ 金 成浩
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、歴史家と政治学者の連携のもと、冷戦期の北東アジア、特に日本側の役割と視点にたった多くの資料を収集・統合した。この4年の研究期間で研究メンバーは、ワークショップ、カンファレンスや様々な国際イベントにおいて、新たな資料と結論に基づく80回もの発表(半数が英語発表)を行い、約70もの論文・図書を執筆・刊行した。
著者
斯波 久二雄 角田 紀子 金子 秀雄 中塚 巌 吉武 彬 山田 宏彦 宮本 純之
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.557-569, 1988-11-20
被引用文献数
2

新規ピレスロイド系殺虫剤S-4068SF [Etoc^[○!R], (S)-2-methyl-4-oxo-3-(2-propynyl)cyclopent-2-enyl (1R)-trans/cis-chrysanthemate, (trans/cis=8/2)]の代謝運命を明らかとするため, (4S, 1R)-trans-または(4S, 1R)-cis-S-4068のアルコール側^<14>C標識体を2 mg/kgの割合で, 雌雄ラットに1回経口または皮下投与した.放射能は, 投与後7日間で完全に糞尿中に排泄された.血液および組織中^<14>C濃度は, 経口投与後3時間以内に最大値を示したのち, 生物学的半減期は, 投与後3時間から12時間まで3時間ないし5時間, 12時間から48時間まで7時間ないし35時間で減少した.投与7日後の組織残留量は, 全般的に低値を示した.排泄物中, 20種類の代謝物を同定し, 代謝経路を以下のように推定した.1) 酸側イソブテニルのメチル基およびアルコール側プロピニル基の1位および2位の酸化, 2) エステル結合の開裂, 3) 以上の結果生成した化合物のグルクロン酸または硫酸による抱合.両異性体の代謝運命に, 雌雄および投与経路によらず顕著な差異を認めなかった.
著者
長谷川 政美 加藤 真 湯浅 浩史 池谷 和信 安高 雄治 原 慶明 金子 明 宝来 聰 飯田 卓
出版者
統計数理研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

マダガスカル固有のいくつかの生物群について、その起源とこの島における多様化の様相を明らかにする分子系統学的研究を行った。(1)マダガスカル原猿類(レムール類)とアフリカ、アジアの原猿類との進化的な関係を、ミトコンドリアのゲノム解析から明らかにし、レムール類の起源に関して新しい仮説を提唱した。(2)テンレック類についても分子系統解析によって、その起源とマダガスカルでの多様化進化を明らかにする研究を行った。テンレックについては、前肢運動器官の比較解剖学的解析を行い、この島における適応戦略を探った。(3)マダガスカル固有のマダガスカルガエル科から、アデガエル、マントガエル、イロメガエル3属のミトコンドリア・ゲノムを解析し、この科がアオガエル科に近縁であることを示した。(4)マダガスカル固有のバオバブAdansonia属6種とアフリカ、オーストラリアのものとの進化的な関係を、葉緑体ゲノムの解析から明らかにした。マダガスカルの6つの植生において、植物の開花を探索し、それぞれの植物での訪花昆虫を調査した。いずれの場所でも、訪花昆虫としてマダガスカルミツバチが優占していたが、自然林ではPachymelus属などのマダガスカル固有のハナバチが観察された.このほか,鳥媒,蛾媒,甲虫媒なども観察された。マダガスカル特有の現象として、長舌のガガンボ類Elephantomyiaの送粉への関与が、さまざまな植物で観察された。Phyllanthus属4種で、ホソガによる絶対送粉共生が示唆された。マダガスカルの自然と人間の共生に関する基礎的知見の蓄積のため、同国の海藻のフロラとその利用に関する研究、及びマングローブ域に特異的に生育する藻類の生育分布と交雑実験による生殖的隔離に基づく系統地理学的解析を行った。マダガスカル南西部漁村の継続調査から、生態システムと文化システムの相互交渉を浮かび上がらせた。
著者
斎藤 隆文 品野 勇治 金子 敬一 宮村 浩子
出版者
東京農工大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

本研究は,離散構造データの幾何的配置変動が引き起こす複雑かつ大域的な位相構造変化について,理論的ならびに実験的に追究し,諸問題に共通するメカニズムを明らかにすることを目的としている.本年度は,階層的クラスタリングを対象とした安定性評価に関する検討と,CG,可視化,形状処理の各分野における関連課題の検討を行った.階層的クラスタリングの位相構造変化を見る新しい考え方である「仮想要素追加法」を初年度に考案した.当初はクラスタリングを行った結果の階層構造の各ノードに対してだけ,適用していたため,実際には近接した配置であっても,階層構造として離れた位置にあるクラスタ同士の安定性はわからなかった.本年度は,このような場合の安定度の算出方法と,その可視化方法について検討した.その結果,構造全体におけるクラスタ構造の安定性を可視化することに成功した.CG,可視化,形状処理の各分野において,種々の問題に取り組み,関連する課題を検討した.その過程において,人物の顔を撮影した動画像を,実時間でイラスト風に処理する手法や,固定カメラで撮影された長時間にわたる時系列画像をもとに,有効情報を可視化する手法などを提案,発表した.
著者
奥村 裕 金指 美帆 金澤 佑治 藤田 直人 近藤 浩代 藤野 英己
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AbPI2069, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】廃用性筋萎縮が起こると筋線維毎の毛細血管数や毛細血管径が減少する。このような毛細血管の退行には活性酸素種が関与していると考えられている。活性酸素により毛細血管の退行が生じれば、骨格筋細胞の代謝活性に影響を与える。一方、筋萎縮に伴う骨格筋毛細血管の退行に対する酸化ストレスを軽減させる方法や毛細血管退行と骨格筋細胞の代謝活性を考慮した研究はみられない。そこで、本研究では骨格筋線維と毛細血管のクロストークに焦点をあて、抗酸化力の高い抗酸化物質摂取による毛細血管への影響と骨格筋細胞の代謝という観点から、廃用性筋萎縮筋の筋線維タイプ別の毛細血管及び酸化的リン酸化系の代謝変化について検討した。【方法】12週齢のWistar系雄ラットを対照群(Cont群)、栄養サポートのみを行った群(CA群)、一週間の後肢懸垂を行った群(HU群)、及び後肢懸垂期間中に栄養サポートを行った群(HA群)の4群に区分した。栄養サポートにはアスタキサンチン(富士化学工業株式会社より提供)を毎日50mg/kgを1日2回経口摂取させた。実験期間終了後、足底筋を摘出し、急速凍結して保存した。摘出した筋試料は10μm厚に薄切し、ミオシンATPase染色(pH4.3)、アルカリフォスファターゼ(AP)染色、コハク酸脱水素酵素(SDH)染色後に光学顕微鏡で観察を行った。ATPase染色像を用いて足底筋を遅筋線維の多い深層部と速筋線維の多い浅層部に分別し、筋線維毎の毛細血管数の割合、単一筋線維の周囲の毛細血管数、筋線維のSDH活性を計測した。統計処理は一元配置分散分析とTukey-Kramerの多重比較検定を行い、有意水準は5%未満とした。【説明と同意】全ての実験は所属施設における動物実験に関する指針に従い、動物実験委員会の許可を得たうえで実施した。【結果】一週間の後肢懸垂によりラット足底筋の筋湿重量は12%減少した。また、後肢懸垂期間中にアスタキサンチンを摂取したHA群においても同様に減少した。一方、深層部における筋線維毎の毛細血管数は、HU群ではCont群に比べ有意に減少を認めた。しかし、アスタキサンチンを経口摂取したCA群及びHA群は、それぞれCont群、HU群と比較して有意な増加を認めた。また、浅層部では4群間における有意な差は認められず、後肢懸垂の影響、アスタキサンチンの摂取有無に関係はみられなかった。また、単一筋線維周囲の毛細血管数は、遅筋線維ではCont群に比べHU群では有意な減少を認めたが、アスタキサンチンを摂取したCA群及びHA群では、単一筋線維周囲の毛細血管数の有意な増加を認めた。一方、速筋線維は4群間における有意な差は認められなかった。SDH活性をみると深層部の遅筋線維はCont群に比べHU群では有意に減少を認め、アスタキサンチンを摂取したCA群及びHA群では有意に増加を認めた。これらの結果からアスタキサンチンは遅筋線維のSDH活性を増加させ、廃用に伴う遅筋周囲の毛細血管退行を減衰させるものと考えられる。【考察】一週間の後肢懸垂により足底筋の深層部では、筋線維毎の毛細血管数や遅筋線維周囲の毛細血管数の減少、SDH活性の低下を認めた。これらの結果は、後肢懸垂で筋活動が低下し、筋細胞内のミトコンドリアにおけるエネルギー代謝が低下したために生じる現象であると考えられる。廃用性筋萎縮により骨格筋内の活性酸素種産生が増加するが、アスタキサンチン摂取により活性酸素種の産生を抑制し、酸化ストレスを減少できるとの報告がみられる。(Wolf, 2010)。本研究では、足底筋の深層部でアスタキサンチンを摂取したCA群及びHA群では、筋線維毎の毛細血管数や単一筋線維周囲の毛細血管数の有意な増加を認めた。また、遅筋線維でSDH活性の増加を認めた。これはアスタキサンチン摂取により活性酸素種が減少し、骨格筋線維周囲の毛細血管退行を防止できたために骨格筋細胞の代謝が阻害されなかったものと考えられる。また、その裏付けとして毛細血管の退行を抑制できた遅筋線維ではSDH活性が増加した。本研究では、速筋線維周囲の毛細血管には変化がなく、遅筋線維周囲で廃用の影響や毛細血管の変化が観察された。この結果は、遅筋線維の方が酸化的リン酸化による代謝に依存して、毛細血管からの酸素の供給に影響されることに起因するものと考えられる。【理学療法学研究としての意義】骨格筋における毛細血管ネットワークは骨格筋細胞への酸素供給や糖・代謝産物輸送に重要である。骨格筋細胞の環境を最適化するために毛細血管の役割は必要不可欠である。また、本研究から、抗酸化物質を用いた栄養サポートは骨格筋の毛細血管退行に予防的な効果を示した。長期臥床などに伴う筋力増強運動などを実施する際に栄養面でのサポートを組み合わせて行っていく必要性があると考える。
著者
岩本 通弥 川森 博司 高木 博志 淺野 敏久 菊地 暁 青木 隆浩 才津 祐美子 俵木 悟 濱田 琢司 室井 康成 中村 淳 南 根祐 李 相賢 李 承洙 丁 秀珍 エルメル フェルトカンプ 金 賢貞
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、外形的に比較的近似する法律条項を持つとされてきた日韓の「文化財保護法」が、UNESCOの世界遺産条約の新たな対応や「無形文化遺産保護条約」(2003年)の採択によって、どのような戦略的な受容や運用を行っているのか、それに応じて「遺産」を担う地域社会にはどのような影響があり、現実との齟齬はどのように調整されているのかに関し、主として民俗学の観点から、日韓の文化遺産保護システムの包括的な比較研究を試みた。
著者
金井 利之
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本年度は最終年度ということもあり、これまでの文献資料収集及び自治体ヒアリングを続けるとともに、それらを多様な機会を活用して公表していく作業を行った。例えば、上越市や岡山市の事例調査報告がある。また、特に本年度に力を入れたことは、公共政策系大学院における教育と研究と実務の一体的有機的連関である。この成果として、大学院における「事例研究」(演習形式)で法務管理を採りあげるとともに、その成果を、担当教員として監修しつつ、大学院生に執筆させることを行い、併せて、事例報告の学会への蓄積を行った(『自治体法務NAVI』第一法規、において連載)。こうして採りあげることができたのは、京都市、尼崎市、神奈川県、横浜市、川崎市である。本年度には連載は終了しなかったが、今後も、1県3市町程度の原稿を調整しているところである。これらの事例情報の蓄積を踏まえつつ、法務管理に関する理論枠組みを整理するため、給与管理や第三セクター処理などの他の行政管理との比較をおこなった。特に、後者においては、多面的な側面を有する第三セクター管理では、財務・人事・法務・情報などの管理が全体として整合している必要があり、第三セクター処理という限られた側面ではあるが、他の行政管理との対比のなかで、法務管理の占める位置と特徴を分析した。このようにして、事例を蓄積することで、自治体の法務管理の全体像ないしは平均像が、おぼろげながら浮上しつつあると考えられる。また、これらの蓄積を公表することで、学界・実務界の関係者には重要な基盤情報を提供できたものと考えられる。今後は、この蓄積を踏まえて、自治体の法務管理に関する実証的な仮説を提示し、それに沿って文献・ヒアリング調査を行い、検証していく作業が必要と考えられる。
著者
足利 健亮 金田 章裕 応地 利明 成田 孝三 山田 誠 青木 伸好
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

都市の立地決定は、計画都市の場合、大別して二つのタイプに分かれる。一つは近代以前に多いタイプで、立地決定が1人の権力者によって為されるものである。もう一つは近現代に多いタイプで、権力者というよりは為政者の合議によって決定が下される。後者のタイプは、特に時代が新しいものは、立地決定に至る経過が記録に残されていると考えてよいから、それを把握することは容易である。しかし、北海道の諸都市や新大陸の諸都市でも、19世紀以前の計画都市では、立地決定に至る経過の完全な復原は、史料の散逸ではやくも困難になっていることが多い。一方、近代以前の計画都市の選地にあたっては、多くの場合選地主体者たる権力者の意図が記録されることはない(戦略機密なので)から、文献史料による方法で「意図」と「経過」を解くことは不可能と言ってよい。ところが、都市が作られたという事実は地表に、従って地図上に記録されて残り続けてきているから、これを資料として上記設問の解答を引き出すことが可能となる。徳川家康や織田信長の城と城下町の経営の意図、つまり安土や江戸をどうして選んだかという問題は、上記の歴史地理学的手法による研究で解答を得ることができた。例えば、江戸を徳川家康が選んで自らの権力の基盤都市として作ったのは、不確かな通説とは異なり、富士が見えるという意外な側面の事実を「不死身」と読みかえて、自身の納得できる理由[選地理由]としたと説明する方が明快であることを、研究代表者は明らかにした。その他、各研究分担者によって日本古代地方官衙、同近代の計画都市、前近代アジア都市、アメリカ・ワシントン、カナダ諸都市など具体的に取り上げて選地理由と経過を明快に説明する結果を得た。詳細は、報告書(冊子)に論述された通りである。
著者
金保 安則 長谷川 潤 船越 祐司
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

脂質性シグナル分子産生酵素のPIP5KとPLDの各アイソザイムの生理機能解析を行った。PIP5Kγ661は、海馬神経細胞において、クラスリンアダプター複合体AP-2と相互作用してAMPA受容体のエンドサイトーシスを促進し、長期抑制を誘起すことを明らかにした。さらに、PIP5KαとPIP5Kβは、精子形成に重要であることを明らかにした。また、PLDは、好中球機能に重要であることが報告されているが、それらの研究結果はアーチファクトである可能性を示唆した。
著者
野田 尚史 小林 隆 尾崎 喜光 日高 水穂 岸江 信介 西尾 純二 高山 善行 森山 由紀子 金澤 裕之 藤原 浩史 高山 善行 森野 崇 森山 由紀子 前田 広幸 三宅 和子 小柳 智一 福田 嘉一郎 青木 博史 米田 達郎 半沢 康 木村 義之
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

現代日本語文法, 音韻論, 古典語, 方言, 社会言語学などの各分野から, 述べ19名の研究者の参加し, 古典語など, ほぼ未開拓であった領域を含む対人配慮表現の研究の方法論を次々と開拓することができた。とりわけプロジェクトの集大成である, 社会言語科学会における10周年記念シンポジウムの研究発表では高い評価を得た。その内容が書籍として出版されることが決定している。
著者
金子 成彦 斎藤 登 渡邉 辰郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏洩事故で発生した、温度計ウェルの流れ方向振動に起因する温度計さや管の自励振動に関係するものである。動燃事業団(現:核燃料サイクル事業団)から提出された報告書によると、特定の一本の温度計ウェルが損傷した理由は、損傷した温度計ウェル内の熱電対が曲がって挿入されたため熱電対鞘管の内壁に接触し、温度計ウェルは1自由度系として振る舞い、大きな振動が発生し疲労破壊に至ったとのことである。この事実は、損傷を受けなかった他の温度計ウェルでは、熱電対が熱電対鞘管の内壁に常時接触してはいないので、振動することが可能で、熱電対は副振動系の役目を果たし、ダイナミックダンパを構成し、熱電対鞘管の振動を抑制したため破損しなかったことを示唆している。このように対称渦によって発生する流体振動現象は、複雑で、完全には解明できていない現象である。そこで本研究では、電力中央研究所我孫子研究所にある重力落下式水槽を用いて、加振円柱に作用する対象渦の放出による変動流体力の詳細な測定を行い、その結果を、定常流体力、加振変位に比例する変動流体力、加振変位と90度位相のずれた変動流体力に分けて、換算流速(無次元流速)と加振振幅の非線形関数で表現したデータベースを構築した。その結果を元に、振幅がある一定の大きさになった時に始めて発振が起こる硬発振の振動系であることを明らかにした。これまでにデータの蓄積ない、微小振幅の条件下での流体力の測定に初めて成功し、流れ方向の抗力は、対称渦が発生しているときには、その大きさが約二分の一に減少するという事実が判明した。
著者
山崎 俊嗣 金松 敏也 小田 啓邦 横山 由紀子
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

1.海底堆積物中の磁性鉱物問の磁気相互作用を見積もった。ARM(非履歴性残留磁化)の獲得効率は、磁気相互作用に強く支配されている。そのため、堆積物から相対古地磁気強度を求める際の、堆積物の磁化獲得能の違いを補正(規格化)のためのパラメータとしては、ARMよりもIRM(等温残留磁化)の方が適している。2.北西太平洋における過去25万年間の高分解能の古地磁気強度スタックを構築した。堆積物から信頼できる相対古地磁気強度を求めるには、初期続成作用による磁性鉱物の溶解を受けたものを除く必要がある。低保磁力の磁性鉱物の割合を示す指標であるS比は磁鉄鉱の溶解に敏感であり、これを指標に溶解を受けた層準を除去できる。3.北太平洋の堆積物コアから、過去160万年間の相対古地磁気強度を求めた。このコアの相対古地磁気強度と岩石磁気特性を、堆積環境の異なる西部赤道太平洋のコアと比較すると、相対古地磁気強度は極めて良い一致を示すが、岩石磁気特性の変化は大きく異なる。ウェーブレット変換を用いた時系列解析により、古地磁気強度には10万年スケールの変動が見られること、岩石磁気パラメータは10万年スケールの変動が含まれる場合でも古地磁気強度とは同期しておらず両者に有意な相関はないことを明らかにした。従って、堆積物の性質の変化は相対古地磁気強度に影響しておらず、古地磁気強度記録に見られる10万年スケールの変動は地磁気変動を反映している。4.東部赤道インド洋の堆積物コアから、過去80万年間の相対古地磁気強度及び伏角の変動記録を得た。西部赤道太平洋に見られる伏角異常域は、東部赤道インド洋には延びていない。両海域について、古地磁気強度と伏角の関係を比較することにより、長周期の伏角の変動は、双極子磁場が弱いときに相対的に停滞性非双極子磁場の影響が大きくなることにより生じるというモデルが支持されることを示した。
著者
富山 秀男 金子 賢治 石村 速雄 長谷部 満彦 市川 政憲 岩崎 吉一 岡島 尚志 大場 正敏 藤井 久栄 品田 雄吉 草壁 久四郎 登川 直樹
出版者
東京国立近代美術館
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1990

アメリカやカナダを中心とする北米地域に限定しての本研究では、映画,写真,デザインの3分野でそれぞれ下記の諸施設を実地調査し、大きな成果を挙げることができた。それらはいずれヨ-ロッパと合体した形式により、海外における本課題全般を扱う詳しい調査報告書としてまとめる予定である。(1)映画 カナダではモントリオ-ル国立フィルム局、オタワの国立フィルム・ア-カイヴ、トロントのオンタリオ・シネマテ-ク、ヴァンク-ヴァ-の太平洋シネマテ-ク。アメリカではスタンフォ-ド大学フィルム・ヴィデオ図書館など。カナダの国立フィルム・ア-カイヴの活動は国費によってフィルムの収集、保存、修複、上映などの諸事業を積極的に行っており、それに対応する施設面でも同じ建物内に広い保存庫を持っていて参考になった。またその他の機関も州や民間組織と連携して活発な保存、上映活動が行われているのには感心させられた。(2)写真 カナダ国立美術館、カナダ現代写真美術館(オタワ)、アメリカではシカゴ美術館、ジョ-ジ・イ-ストマン・ハウス国際写真美術館、ニュ-ヨ-ク近代美装館、ニュ-ヨ-ク国際写真センタ-、ニュ-ヨ-ク歴史協会、ニュ-オ-リンズ美術館、サン・アントニオ美術館、サンタフェ美術館、アモン・カ-タ-美術館(フォ-トワ-ス)、ポ-ル・ゲッティ美術館(マリブ)、サンフランシスコ市立美術館の各写真部。このうち写真を展示する場合の照明について、イ-ストマン・ハウスやニュ-ヨ-ク近代美術館を代表とする多くの施設で、歴史的なものと現代作家のものでは大幅に照度を変えていること、及びその科学的根拠などについて大いに学ぶところがあった。収蔵庫については、白黒写真とカラ-写真とで保存に適する温湿度条件が異なるための措置として、どの施設でも別々の保存庫を備えていること、及びそのデ-タを得てきた。またそうした低温保存のカラ-写真を展示場に出す場合の取扱い方法として、守らなければならない配慮とそのための設備も各所で実見し、シカゴ美術館が最もコンパクトで合理的であるとの感想を得た。なお、展示品以外の研究者用閲覧にどう応じるかの制度や方法についても、各館多少の差違を持ちながら一様に門戸を開いており、それを可能ならしめるためのスタディ・ル-ムのあり方を数えられた。収集作品については各館まちまちだが、いずれも性格をもつことが意図されており、国際的な集め方から地域や時代を限定したものまでさまざまであった。最後に収蔵作品の分類や整理に関しては、どの施設もコンピュ-タ-を導入して鋭意その作業を進めている最中であり、時代、テ-マその他いろいろな検索が瞬時にして可能なのには目を見張った。これは写真部だけには限らないが、最も基本的な体制のあり方として、当方の遅れが痛感された事柄である。(3)デザイン オタワに新設されたカナダ文明史博物館、カナダ漫画美術館 ミネアポリスのウォ-カ-・ア-ト・センタ-、シカゴの現代美術館、ニュ-ヨ-クのク-パ-・ヒュイット美術館、アメリカン・クラフト美術館など。新設の文明史博物館は考古から現代美術までを幅広く手がけるなかで、工芸やデザインについての関心が強く、「日本の包装」などの企画展を開催した施設、外国の民族的文化もさかんに紹介している。ウォ-カ-・ア-ト・センタ-は美術のみならず前衛舞踊、音楽、演劇をも重視する新しい芸術活動の推進の場として機能しており、デザインや写真についても市民(成人や子供)向けの教育プログラムに組み入れて実演、制作を行っているのが印象的だった。またク-パ-・ヒュイット美術館はデザイン部門の作品収集で最大施設の一つ。スミソニアン・インスティテュ-ションの運営だが、研究者向けの特別観覧の制度に学ぶベきものが多かった。アメリカン・クラフト美術館の取り上げる各種デザインの幅広さ、それらを包括する視点の独自さが注目された。なお、最後にこれら北米諸機関を実地調査するに当り、映画、写真、デザインのそれぞれに関して我が国では入手困難な多くの資料、カタログ類及び多数の図書を購入することができ、今後の研究に道すじがついたことを感謝の念をもって報告したい。
著者
奥村 幸彦 金内 健 岡崎 健
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.71, no.702, pp.702-710, 2005-02-25
被引用文献数
1

The coal-pyrolysis experiment under elevated pressure conditions using a pressurized ther-mobalance has been carried out to clarify the mechanisms and the processes at conditions changing from normal pressure to higher pressure (10.6 ata) and from slow (0.1 K/s) to rapid heating rate (20 K/s). Simultaneously, a new pyrolysis model which can describe a pressure effect on the evolution behavior has been developed based on the FLASHCHAIN^[○!R] model including a quantitative estimation of the volatilized gases and released tar vapor. From the experiment, the tar vapor formation is suppressed and the yields of CH_4 gas shows increasing behavior at higher pressure conditions. Because the mole fraction of tar vapor decreased with the increase of the pressure by Raoult's law, and the recombination reactions of remaining metaplast (precursor of tar) within the coal are activated, resulting in more chars and more gas yields (CH_4, CO_2). At rapid heating rate conditions, the conversion from the metaplast to the volatile matter would be more active, because the reaction temperature range for thermal pyrolysis shifts to higher range with increase of heating rate. It was found that the rapid heating rate affects the molecular structure of the coal substantially.
著者
中台 佐喜子 金山 元春 前田 健一
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.2, pp.151-157, 2003-03-28
被引用文献数
1

本研究では,76名の年長幼児を対象に,仲間集団における同性仲間および異性仲間からの人気度と社会的スキルとの関係について男女別に検討した.相関分析の結果,社会的スキルの高さは男児では同性仲間からの人気度と,女児では異性仲間からの人気度と関係していることがわかった.この結果を指名する方の立場から整理してみると,男児は相手の性にかかわらず社会的スキルに優れているかどうかが遊び仲間の選択に影響するのに対して,女児は相手が同性仲間であっても異性仲間であっても男児ほど社会的スキルを選択の基準としていないことが示唆された.本研究の結果は,幼児の仲間集団における人気度と社会的スキルとの関係を検討する際に性別の要因を考慮することの重要性を示している.
著者
松田 直 山西 哲郎 岩崎 清隆 金澤 貴之
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,県内の企業と学校関係者,障害者本人,保護者間の連携により,社会調査,実際の就労場面を用いた評価,改善案の提示,再評価を行い,その結果を養護学校での就労支援を中心とした個別移行支援計画の構築に反映させることで,知的障害者の就労が定着しにくいという問題の具体的な改善を図るために,以下のような形で研究を進めた。初年度は,1)就労支援に専門的に関わる関係者へのインタビュー,2)県内の養護学校教員,保護者,福祉行政担当者,作業所職員などによる検討会の実施(3年間継続して月1回程度実施),3)就労場面のビデオ分析を行い,県内の障害者就労の状況の把握やコミュニケーションが障害者の職場定着を促す可能性を示唆することができた。二年目は,1)養護学校卒業後,中度知的障害をもちながら一般就労しているモデルケース1名への長期的な参与観察,2)知的障害者と共に働く職場職員に対するアンケート調査,3)知的障害者雇用企業へのインタビュー調査を行った。わかりやすい指示の仕方や知的障害者の行動特性を職員に伝えることの必要性や,知的障害をもつ職員と他の職員とをつなぐ支援の必要性などが示唆された。また,心地よい職場環境や社長との信頼関係が職場定着の要因の一つとなることや,作業台の配置によって近くで仕事をする職員がすぐに手助けできる体制が作業効率を上げていることが示唆された。三年目は,養護学校高等部での現場実習において,モデルケース1名について参与観察を行い,支援方法の検討を行った。その際に,二年目に行ったモデルケースと,上記ケースとの比較をすることによって,一般就労と現場実習においての同僚職員との関係構築過程の違いを探った。これらの結果をふまえ,三年間の成果をまとめた報告書を作成した。