著者
杉本 諭 古山 つや子 関根 直哉
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.237-243, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
19

〔目的〕Short Physical Performance Battery(SPPB)が要介護高齢者に対するパフォーマンステストとして利用 できるかを検討すること.〔対象と方法〕要介護高齢者90名の身体能力をSPPBとBerg Balance Scale(BBS)で評価し, BBS得点により対象を高身体能力群と低身体能力群に分け,両項目間の相関分析を行った.〔結果〕高身体能力群では, SPPBとBBSの間に相関係数ρ=0.793の強い相関を認めたが,低身体能力群では,相関係数ρ=0.625と中等度の 相関にとどまった.〔結語〕身体能力が比較的良好な場合には,要介護高齢者のパフォーマンステストとしてSPPB が利用できることが推察された.
著者
関村 正悟
出版者
日本財務管理学会
雑誌
年報財務管理研究 (ISSN:09171738)
巻号頁・発行日
no.20, pp.38-45, 2009

リーマン破綻後の短期金融市場の混乱を概括し,混乱の程度を増幅した要因を説明した。リーマンの行っていた各種取引それ自体とそれを支える資金調達手段としてのレポ取引に含まれる問題点を指摘した。レポ取引にふくまれる脆弱な市場間-金融機関間の構造を生み出すシステムとしてrehypothecationをとりあげた。さらに担保管理のルールが英国と米国との違いが混乱を深あたことを指摘した。レポ取引が,有担保融資と同様の経済的効果をもつため,無担保市場であるインターバンク市場の金利に比べクレジットリスクプレミアムの減少分だけ,低金利で調達できる市場であった。担保付であるため資金が取り入れやすいこともあり発達したが,短期金利が低下し,しかも長期に持続されたグリーンスパンの金融緩和政策によって,拡大に弾みがついた。rehypothecationのメカニズムもあり,投資銀行は,低コストでレバレッジをあげることが可能であり,近年,一層この市場での資金調達依存度を高めていた。リバースレポで得た現金を再びレポに回すという重層的な資金取引構造自体が個別取引主体のレバレッジを超え,市場全体としての,つまり金融システム自体を高いレバレッジに導いていたといえよう。個々の取引は担保付であり,リスク軽減されており,レバレッジは小さいとしても,その取引の先にある取引,その又先にある取引と連鎖の束としてバランスシートが形成されたとき既に企業レベルではレバレッジが上昇している。企業間の取引の束としてシステムをみれば,個々の取引の集計された社会全体としてのレバレッジはいつの間にかおおきくなっている。これが銀行による信用創造とはことなるcapital market baseのfinance,すなわちtransaction baseの信用創造のメカニズムである。金融の市場化,証券化であり,その基本は,市場での一回限りの取引という,いわゆるarms lengthな関係を基礎にするものである。また,この金融の市場化のプロセスの流れの中で,証券の貸し手が受け取る現金担保の再投資の受け皿としてMMFは重要な資金フローの循環を担う構造ができていた。資金循環構造が,第一段階として,2007年8月にABCP市場の激減として崩れ始めると,ハイスピードで資金は逆流し,大きな流動性ショックを生み出す。短期資金で調達し長期や流動性の低い資産を保有していると,この逆流した資金フローで目詰まりが発生する。つづいて流動性枯渇する中でのfire saleに巻き込まれた資産は思いもかけない値段(3シグマをこえるレベルの頻度でしか発生しないはずの,つまり100年に一遍の出来事)で取り引きされるので,直ちに担保価値評価は更新されことになり負の連鎖の悪循環は,加速化する。リーマン破綻後においては,レポ市場でのカウンターパーティリスクが問われることになり,短期金融市場は壊滅的打撃をうけ,MMFやCPに対しても政府の保証,買取制度の投入が行われた。この資金調達市場の構造を支えて発展してきたのが証券貸借市場の発達である。この市場の発展はヘッジファンド投資,デリバティブ裁定取引,インデクスファンドの低コスト化等に大きな寄与を行って,資本市場の進化と深化に貢献していたと思われていた。しかしサブプライム金融危機発生後,クレジットリスクの再評価,クレジットリスクの移転,担保管理といった,信用リスクと流動性リスクに対する金融機関のリスク管理の欠陥が露呈した。全体としての金融市場のレバレッジが高度化し,システミックリスクが高まっていた状況では致命的なミスとなり,多くの破綻がおきた。本稿はその一断面をレポ取引の特殊な構造に焦点を合わせ,証券貸借業の発展の意味づけと解明を試みたものである。政策当局が誤った事実認識を持ち,一層不適切な対処や規制を厳しくすることにより,惨劇をさらに一層の悪循環に陥らせないための試論にほかならない。政策当局の善意により敷き詰められた,しかし,地獄への道を,人々は,再び歩き始めているのかもしれない。
著者
吉村 貴子 前島 伸一郎 大沢 愛子 関口 恵利
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.361-372, 2008-12-31 (Released:2010-01-05)
参考文献数
34
被引用文献数
2 1

時計の絵および指定された時刻を描く Clock Drawing Test (CDT) について,さまざまな実施および評価方法が提唱されている。それぞれの信頼性や妥当性などについての研究は多いが,多数の CDT 実施および評価方法を同一症例群に施行し比較した報告はない。今回われわれは,“もの忘れ”外来を受診した患者41 名 (男性11 名,女性30 名) に対して,さまざまな CDT 実施および評価方法を多く比較することにより,それらの信頼性と妥当性,そして認知症診断への役割について検討した。CDT の施行中の症例の様子と症例のプロフィールなどを知らない評価者2 名がそれぞれの CDT を採点した。  その結果,その他の神経心理学的検査と相関が高く,年齢や教育歴の影響を受けにくく,罹患期間をより評価し,また認知症の重症度や類型診断への一指標として有用な方法は,外円をあらかじめ示した CDT である可能性が示された。
著者
関 喜史
雑誌
人工知能
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, 2021-03-01
著者
森田 二郎 大浦 良三 関根 純二郎 ハッサム エルディン モハメド カメル
出版者
Japanese Society of Sheep Science
雑誌
日本緬羊研究会誌 (ISSN:03891305)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.30, pp.22-24, 1993

めん羊および山羊の飲水量の違い, ならびに年間を通じての飲水の供給日量を推定する目的であん羊3頭および山羊3頭の年間を通じての飲水量の調査を行った。給与飼料の種類は異なるが, 乾物摂取量は, めん羊でほぼ700g/日程度, 山羊で, 900g/日程度であった。飲水量の平均日量はめん羊が山羊よりやや少ないが, 両種とも冬季に少なく, 夏季に多くなる変化を示し, 気温の変化のパターンと同じであった。乾物摂取量あたりの飲水量は, 両種ともほぼ同じであった。乾物摂取量あたりの飲水量の5日間の移動平均値による解析から, 日平均気温が15℃以下の時期では2.5~3.0g/乾物g, 15℃以上25℃以下の時期では4.0~6.0g/乾物g, 25℃以上の時期では7.0~8.0g/乾物g程度の飲水量が必要となると推察した。
著者
関 俊一 Shunichi SEKI
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要, 自然科学・人文科学・社会科学・教育科学 (ISSN:18802419)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.169-175, 2013-03-31

魚を描くうえでの魚に対する科学的な見方と表現を考察する。実際に筆者が担当した東京都葛西臨海水族園での種ラベルイラストの魚の絵を基に、その制作プロセスと数種の作例から具体的な表現ポイントについて記した。
著者
髙島 愛理 尾関 基行 村山 加奈子 岡 夏樹
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第28回全国大会(2014)
巻号頁・発行日
pp.2L4OS27a4, 2014 (Released:2018-07-30)

本研究では,ユーザが自分で予約設定した家電の自動処理を(実際には存在しない)エージェントがやったことにして,「やっておいたよ」という書き置きを部屋に残しておくことにより,一人暮らしの寂しさを軽減するというアイデアを提案する.これはスマホアプリやメールによる完了通知を“書き置き”に替えただけであるが,それだけの演出で,自分がいない間に「誰かが存在したこと」をユーザに感じてもらう効果を狙っている.
著者
関口 順
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要 (ISSN:05813654)
巻号頁・発行日
no.29, pp.p187-169, 1993
著者
前田 香 関口 真有 堀内 聡 Justin W. Weeks 坂野 雄二
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.113-120, 2015-03-31 (Released:2015-05-29)
参考文献数
17
被引用文献数
5 6

他者からの肯定的評価への恐れは,社交不安症の認知的特徴である。本研究の目的はFear of Positive Evaluation Scale(FPES)日本語版の信頼性と妥当性を検討することであった。対象者は324名の大学生であった。確認的因子分析の結果,原版と同様に8項目1因子構造が確認された。また,内的整合性と5週間の再検査信頼性は原版と同様に高いことが示された。妥当性を確認するために,他者からの否定的評価への恐れ,および対人交流への不安との関連性を検討した。その結果,予測された関連性が確認された。第一に,対人交流への不安,他者からの否定的評価への恐れとの間に正の相関が認められた。第二に,他者からの否定的評価への恐れを統制した場合に対人交流への不安を予測した。したがって,FPES日本語版の信頼性と妥当性が確認され,その有用性が議論された。
著者
高田 英一 大石 哲也 森 雅生 関 隆宏 小柏 香穂理 劉 沙紀
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.87-93, 2020 (Released:2021-01-31)
参考文献数
7

大学が近年の厳しい経営環境に対応するためには,ステークホルダーの支持を得る必要があり,そのためには,ステークホルダーによる認知の集積である「レピュテーション」を高め管理する取組である「レピュテーション・マネジメント」(reputation management)の取組を進める必要がある.また,その際には,大学のデータマネジメントを担当するIRの活用の取組が有効と考えられるが,いずれの取組の状況も明らかでない.このため,国立大学に対してこれらの取組の現状に関するアンケート調査を実施した.調査の結果から,レピュテーション・マネジメントの重要性が多くの大学で認識されるとともに,レピュテーション・マネジメントに関する取組が実施されていること,また,レピュテーション・マネジメントへのIRの活用の必要性が認識されている状況が明らかとなった.
著者
笠井 美希 瀬尾 幹子 関 圭吾
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.56, 2017 (Released:2017-08-31)

【目 的】家庭における食用油を使用した加熱調理において、酸化しにくく、油臭さが少ないことが望まれている。ごま油は熱に強く、安定性に優れた油といわれており、本研究では、焙煎せずに搾油した精製ごま油(かどや製油㈱)の加熱調理における安定性の評価として、フライ調理に用いた際の安定性、おいしさ等について調べた。【方 法】試料は精製ごま油と家庭で一般的によく使われている食用油3種類(キャノーラ油、サラダ油、大豆油)とした。一定条件下でフライ試験を実施し、フライ油の色、酸価、過酸化物価、カルボニル価、アニシジン価を測定して安定性を比較した。また、フライ調理中の油臭及び揚げ直後と冷めた時のフライの官能評価を実施した。官能評価は7段階尺度の採点法で行った。なお、各試料のCDM試験、アクロレイン濃度の測定も行った。【結 果】精製ごま油は他の食用油3種類と比較して、フライ油の色の着色が若干濃くなる傾向がみられた。揚げ回数による酸価、過酸化物価の値には大差がなかった。油脂の加熱による劣化の指標であるカルボニル価、アニシジン価の値は精製ごま油が最も低値であり、加熱劣化の進行がゆるやかであった。フライ調理中の油臭は精製ごま油が最も弱く、不快感が少なかった。官能評価では、精製ごま油を使用したフライはべたつきが少なく、冷めてもおいしいという評価であった。CDM試験の結果より、精製ごま油は自動酸化に対する安定性も良く、アクロレイン濃度の測定結果からアクロレインの発生量も少ないことがわかった。
著者
芦沢 真五 森 利枝 花田 真吾 関山 健 野田 文香
出版者
東洋大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2019-10-07

先進的な外国学歴・資格認証制度を持つ3か国(オーストラリア、 カナダ、オランダ)の比較調査により、電子化や東京規約といったグローバルな資格相互認証制度と人材活用の潮流を踏まえて、日本に相応しい制度の提言を目指す。この目的のため、海外共同研究者とともに、各国で政府機関、認証機関、高等教育機関、認証サービス利用者に対する量的および質的調査を行い、その実態を明らかにする。調査結果を比較分析し、実用可能な日本型認証制度のあり方を提言にまとめ、国際会議や国際共著論文で発信する。
著者
古関 喜之
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.449-469, 2008-07-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

2002年にWTOに加盟した台湾は, 国際競争力を持っ輸出型産業としての農業の体質強化を図っている. 本稿では, 日本への輸出拡大を図っているマンゴーの重要な生産地域である台南県玉井郷を対象として, 経済のグローバル化に伴って, 台湾のマンゴー栽培がどのような条件のもとで行われているのかを明らかにし, マンゴー輸出の発展の可能性とその課題にっいて検討した. 生産面では, 生産者の高齢化, 後継者不足, 臨時雇用への依存, 市場価格の低迷などの問題を抱えている. また, 流通面では, 価格や労働の面で生産者の利益を守ることができる農会による共同販売が十分な役割を果たしていないことが明らかになった. 農家がマンゴー栽培を継続するためには, 安定した収入が確保できる販路を確立することが必要である. しかし, 現在台湾が最も重視する日本市場との関係をみると, 生産と輸送のコストが高いため, 市場での厳しい価格競争にさらされている. 台湾が日本市場ヘマンゴーの輸出を続け, 発展させていくためには, 日本の輸入業者から求められているトレーサビリティーへの対応と, 安定供給のための保証価格や栽培契約を導入するなどの取組みが必要である. 他国との厳しい競合の中で, 安全性や品質による差別化が不可欠である.
著者
島谷 康司 田中 美吏 金井 秀作 大塚 彰 沖 貞明 関矢 寛史
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.721-725, 2008 (Released:2009-01-28)
参考文献数
13
被引用文献数
3 1

[目的]本研究の目的は,くぐり動作を用いて,発達障害児と健常児の障害物への身体接触を比較検証することであった。[対象]5~6歳の健常児と発達障害児,各9名を対象とした。[方法]課題は7種類の遊具と高さの異なる6つのバーを交互に設置したコースを通り抜けることであった。障害物との接触回避に関する注意喚起を与えない条件,接触回避を与える条件,そして接触回避および早く移動することを促す条件の3条件を設け,それぞれ1試行ずつ行わせた。[結果]発達障害児は健常児に比べて,条件に関わらず接触頻度が高かった。また,発達障害児は腰部の接触頻度が高かった。[結語]発達障害児の接触の多さは,注意の欠陥が原因ではないと考えられる。また,視覚フィードバックを随時利用して,接触しないようにくぐり動作を行うことが困難な状況において身体接触が多いことから,身体特性情報に基づく行為の見積もりの不正確さが,発達障害児の身体接触の多さの原因であることを示唆した。
著者
川村 卓 島田 一志 高橋 佳三 森本 吉謙 小池 関也 阿江 通良
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
pp.0812080087, (Released:2008-12-10)
参考文献数
20
被引用文献数
25 4

The purpose of this study was to analyze three-dimensionally two groups of baseball strikers, i.e. high and low swing speed groups, and to compare the kinematics of their upper limb motion. Sixteen skilled male strikers were videotaped with two synchronized high-speed video cameras operating at 200 Hz. One trial in which the maximum bat head speed was achieved was selected for each subject and digitized to obtain three-dimensional coordinates of the segment end-points and the bat using a DLT technique. Subjects were divided into High (n=8) and Low (n=8) groups according to the bat head speed. The angles compared between the two groups were abduction-adduction, horizontal abduction-adduction, flexion-extension and internal-external rotation for both shoulders, flexion-extension for both elbows, supination-pronation for both forearms, radius-ulnar flexion, and dorsi-palmar flexion for both hands. The sequential data were normalized with the time from the point when the speed of the grip was over 3 m/s to the ball impact, and then averaged.