著者
今中 國泰 西平 賀昭
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、顕在的・潜在的知覚と運動反応に関して、逆向マスキング下の反応時間と事象関連電位、偏側性運動準備電位から検討した。逆向マスキング下の反応時間課題では、感覚閾値付近の弱い刺激(prime)とその数十ミリ秒後に提示される強い刺激(mask)の2つの連続刺激を用い、それらに対してできるだけ早く反応するという単純反応時間課題を用いた。またprime刺激の検出率及び脳波事象関連電位を測定し、単純反応時間と脳内情報処理の時間関係を検討した。その結果、単純反応時間は逆向マスキング下ではprime刺激が顕在的には知覚されないにもかかわらず、prime刺激があるときの方がないとき(つまりmask刺激のみ)よりも反応が早く起こることが示された。またその短縮した単純反応時間は、刺激呈示から偏側性運動準備電位(S-LRP)立ち上がりまでの時間(対側性運動準備過程が始まるまでの時間)と相関性が高く、LRP立ち上がりから反応動作までの時間(運動準備過程に要する時間)とは関連性がなかった。この結果から、逆向マスキング下の反応時間短縮効果は、顕在化されないprime刺激によって知覚過程の活性化が生じ知覚情報処理時間が短縮したか、あるいはprime刺激の感覚入力が直接運動準備過程の情報処理を賦活させたか、これらのいずれかによって運動準備過程の早期化が起こったものと考えられた。事象関連電位からは、逆向マスキング下のprime刺激によりP100(1次視覚野付近の活動)は明確に生じたがP300(刺激の認知)にはprime刺激の影響は生じなかった。したがって、prime刺激は初期視覚過程の処理はなされているが認知処理は行われていないことが示された。本研究ではprimeの潜在知覚による反応時間短縮効果について、行動的指標に加え脳波事象関連電位からそれらの背景にある脳内情報処理過程を明らかにした。
著者
渡邉 富夫 神代 充 山本 倫也
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

音声対話におけるうなずきや身振りなどの身体的リズムの引き込みをCGキャラクタやロボットなどのメディアに導入することで、身体的インタラクションを促進させ、一体感が実感できる身体的コミュニケーションシステムを研究開発した。本システム・技術は、メディアロボット・コンテンツ制作や携帯電話・インターネット等の音声対話インタフェース、音声認識ソフトへの導入など、広範囲な応用が容易に可能で、うなずく植物「ペコッぱ」など商品化した。
著者
大塚 譲 上田 悦子
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ヒト肝癌細胞Hep-G2あるいはヒト正常細胞HUCF2などを用いて、食品抽出物が遺伝子発現にどのような影響をもたらすのかを検討するため、DNAマイクロアレイにて網羅的な遺伝子発現を解析し、食品の機能性を明らかにすることにした。さらに、パスウェイ解析やリアルタイム-PCRにより詳細な遺伝子発現への影響を検討した。
著者
岡田 まり 栄 セツコ 前田 信彦 三品 桂子 岡田 進一 大山 博史
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

平成18年度には、精神障害者のQOL等を大学生との比較を通して把握し、それに影響を及ぼす要因を明らかにするために平成17年度に実施した量的調査のデータを再分析した。これは、調査票の回収が遅れた27名分(精神障害者20名、大学生7名)のデータが平成17年度の分析に含まれていなかったため、これらのデータを追加して改めて分析を行ったものである。結果は、17年度の結果と同じで、精神障害者のQOLや生活満足度等は、不安や怖れなど一部の質問をのぞき、ほとんど大学生よりも低く、生活満足度、自己決定、希望がQOLに有意に関連していることが明らかになった。また、平成17年度に、QOL向上のきっかけやプロセス等を明らかにするために精神障害者、家族、専門職を対象に行った面接調査の結果についても、平成16年度より行ってきた国内外の専門職へのヒアリングや視察、ワークショップで得られた情報を加えて、再度、整理しなおした。これら当事者、家族、専門職ら計50名以上の経験や研究によると、重度の精神障害者であっても、適切な支援があれば地域での生活が可能であり、回復の可能性があること、必要な支援の内容としては、住居の確保、経済援助、就労支援、日常生活支援、家族支援、近隣の人々の理解と良好な関係維持のための支援、ピアサポート、新たな体験や活動のための支援と意欲・希望・自信を支えることなどである。これらの結果から、精神障害者のQOL向上のための取り組みがもっと必要であり、そのためには、個別支援および環境への働きかけなど、さまざまな支援を重層的におこなう必要があるとの結論に達し、サービス提供のあり方についての提言を行った。
著者
片岡 幹雄 郷 信広 上久保 裕生 徳永 史生 SMITH Jeremy ZACCAI Josep
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

黄色ブドウ球菌核酸分解酵素(SNase)を用いて、室温及び25Kでの中性子非弾性散乱スペクトルを広いエネルギー範囲で観測した。蛋白質の非弾性散乱スペクトルとしては、世界最高精度のデータを得ることができた。25Kスペクトルは、定性的に基準振動解析により説明することができ、ピークの帰属が行われた。理論的に予想される振動モードの実在が証明された。しかし、定量的な一致度はよくなく、理論計算に用いられているポテンシャル関数に改善の余地があることを示した。また、室温のスペクトルは分子動力学シミュレーションにより説明されることが示された。SNase野生型とフラグメント(折畳まれていない)についての中性子非弾性・準弾性散乱測定から、折畳まれることによって獲得される特異的な運動は、ガラス転移以上の温度で出現する水によって活性化される非調和的な運動であることが示唆された。蛋白質におけるボソンピークは分子量依存性を示唆し、ボソンピークの起源となる低エネルギー励起は二次構造などに局在したものではなく、分子全体に広がっているモードによることが推測された。また、この性質は、蛋白質を含めソフトマターに共通の性質であると考えられる。蛋白質動力学の不均一性を評価する方法が考察され、バクテリオロドプシンについては、機能との関係が議論された。膜蛋白質と水溶性蛋白質とで不均一性には差があることも示された。ガラス転移は、蛋白質の部位により起きる温度が変わることが、重水素ラベルを用いて示された。これも動力学の不均一性の現れであることが示唆された。
著者
西谷 隆夫 岩田 誠 酒居 敬一
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

携帯端末で映像から情報入力を行う際の前処理演算の効率化として多重解像度処理とそれを実現するTOPS(テラ・オペレーションズ・パー・セコンド)までスケーラブルに拡張できるマルチプロセッサのアーキテクチャについて検討した。映像からのデータを活用する前処理は従来の空間的な相関に加え、画素単位の時間的な処理に重点が移りつつある。空間的な処理としてカラー画像強調アルゴリズムの演算量削減を、また、時間的な処理に空間的な要素を加え、安定性と低演算処理を狙った混合ガウス背景モデルによる前景分離を対象に検討を行った結果、双方とも従来例に比べ大幅な演算量削減を実現できた。カラー画像強調と前景モデルを組み合わせることで逆光などの劣悪状況でも追跡が可能なことも示せた。どちらの応用もローカル処理や画素ごとの判定が多く、超並列プロセッサ向きである。また、判定処理が多く、プロセッサ自体をパイプライン化すると条件判定で無駄命令が多発することも明確になった。このため、昨年度提案した超並列DSPを発展させ、その利点を明らかにした。その結果、アルゴリズムは超並列で論じ、ハードウェアはパイプライン化しない範囲の高い周波数で動作させ、超並列アルゴリズムの一部を多重化させる方式が良いとの結論になった。また、昨年度導入したセグメントバスを有効に使うと動き補償などの空間処理で最も効率が良いとされていたシストリックアレーを凌駕するアルゴリズムを導出でることも明らかになった。このアーキテクチャを1985年ごろのパイプライン処理を行わないDSPをベースにFPGAで作ると1チップに約300個実装できることを実験的に確かめた。
著者
上島 享 阿部 泰郎 伊藤 聡 石塚 晴通 大槻 信 武内 孝善 阿部 泰郎 伊藤 聡 石塚 晴通 大槻 信 末柄 豊 武内 孝善 近本 謙介 苫米地 誠一 藤原 重雄
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、諸分野の研究者が共同で勧修寺に現存する聖教・文書の調査を進めるとともに、勧修寺を中心に諸寺院間交流という共通テーマを掲げて、研究を行うことが目的である。勧修寺現蔵の聖教と中世文書の目録を完成させ、諸寺院間交流をめぐる諸論考をまとめることができ、本研究の目的は十分に達成されたと考える。
著者
船木 實 東野 伸一郎 坂中 伸也 岩田 尚能 中村 教博
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

小型無人飛行機により、南極・ブランスフィールド海盆にある Deception 島で空中磁気観測等を行い、同島の北半分と周辺海域の磁気異常を明らかにした。 本研究により、南極でも無人飛行機による科学観測が可能で、安全で大きな費用対効果を持つ ことが示された。King George 島では岩石磁気、年代、それに磁気異常の研究が行われ、ブラ ンスフィールド海盆が典型的な背弧海盆の特徴を持つことを明らかにされた。
著者
清水 宏祐 堀 直 小松 久男 林 佳世子
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

過去の海外調査で収録した100本以上のビデオ映像をデジタル化し、HDDに収納して、プログラム名を付け、見たい箇所をすぐに検索して提示できるシステムを構築した。プログラムは200以上に及び、バザールでの商取引の比較映像(新彊、トルコ、エジプト)では、手を握って交渉し、合意に達すると離すという、イスラーム世界特有のバイアという手続きを即座に、、見比べることができるようになった。また、バザールの商店構成が年とともに変化する情況を比較したり、市壁が新たに改修される様子を、新旧の比較対象が行えるようにプログラムした。12月9日の九州史学会は、各研究者から趣旨説明、個別報告が行われた。各種の映像資料の提示は、大きな反響を呼び、「今日、ここから新しい映像歴史学が誕生した」との印象を与えるものであった。この成果を生かし、さらに映像の集積と分析を行い、映像資料を歴史史料として定着させる努力を続ける所存である。成果の全容は、報告書『現地調査で収録したビデオ映像のデジタル化と情報共有ネットワークの構築』として刊行した。
著者
春木 敏 川畑 徹朗 西岡 伸紀 境田 靖子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

ライフスキル形成を強化する第二次の食生活教育プログラム改訂,指導者マニュアル作成,授業担当者研修,意志決定スキル,目標設定スキル尺度開発,家族への働きかけを試み,以下の成果を得た.I.2005年6月〜2006年7月,大阪府下の6小学校と山口県2小学校を研究対象校とする準実験デザインのもと,健康的な間食行動と朝食行動を主題とするスキル形成に焦点をあてた食生活教育プログラム(18時間)を実施し,計810名が参加した.(i)プロセス評価より,意志決定の下位尺度「選択肢の列挙」「結果の予測」を踏まえたおやつ選択法を,「意志決定をすべき問題の明確化」を踏まえ,朝食で野菜を食べるために具体的な,実行可能な目標設定ができた.(ii)影響評価より,女子は,健康的な間食行動の態度,自己効力感が高まり,低油脂おやつの選択が増加した.野菜摂取に焦点をあてた朝食学習により,朝食の野菜摂取率はおよそ倍増し,栄養バランスを改善した.(iii)意志決定スキル形成群において介入校の児童は,広告分析に関する自己効力感や食品選択スキルに有意な成果が認められたが,対照校児童には規則性はみられなかった.II.大阪府下の3小学校と山口県3小学校を研究対象校とし,2007年5月〜7月に,保護者通信,朝食モニタリングシートの家族点検,家庭での朝食野菜料理など保護者への働きかけを強化した朝食プログラム(6時間)を実施した.計417名が参加した.(i)全児童は,目標達成率,朝食の栄養バランスともに有意に高くなった.(ii)授業実施6カ月後には,児童の学習成果は有意に低下したものの家族強化群は,対照群に比べ,朝食得点,野菜摂取率ともにやや高い維持率を示した.さらにプログラム効果を高め,持続するために,教材や指導者研修,家族強化の改善を図り,学校健康教育に普及していく.
著者
深谷 克巳 島 善高 紙屋 敦之 安在 邦夫 堀 新 村田 安穂
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

2001-03年度の研究期間に、伊予宇和島藩・土佐高知藩・阿波徳島藩・讃岐高松藩・讃岐多度津藩・讃岐丸亀藩・備前岡山藩・因幡鳥取藩・長門萩藩の史料調査を行った。調査地は、宇和島市の伊達文化保存会(宇和島藩伊達家文書)、高知の山内家宝物資料館(山内家文書)・安芸市立歴史民俗資料館(高知藩家老五藤家文書)、国立国文学研究資料館史料館所(蜂須賀家文書)・徳島城博物館・徳島県立文書館・徳島県立博物館、香川県歴史博物館(高松藩松平家文書、多度津藩の藩庁文書・大名家文書)、丸亀市立資料館(丸亀藩京極家関係文書)、岡山大学附属図書館・岡山県総務部総務学事課文書館整備推進班・岡山市立中央図書館・岡山県総合文化センター郷土資料室、鳥取県立博物館(鳥取藩政資料)、山口県文書館(毛利家文庫)などである。これらの調査と併行して、各藩に関する活字史料の収集を進めた。いずれも、朝鮮や琉球からの使節来訪や中国船などの漂着の取り扱いなど幕府の外交儀礼や外交問題、日光社参・参勤交代・勅使下向などの通行をめぐる作法、官位をめぐる藩と幕府との関係、幕府法と藩法の関係と裁許の実際、東照宮の祭礼、大名の本・分家関係や相続、藩世界における寺院の役割や宗教権威、在地秩序の内容とその形成、地域における政治思想・政治意識の形成などに関する史料を収集した。以上の収集史料を順次講読し、大名の類型や各藩領域の地理的・風土的差異に留意しつつ、幕府、朝廷、藩、寺社、民衆の相互の関係に重点を置き、その関係にどのような「権威」が存在し、あるいは創られるのかを検討した。その成果の一部を、近世誓詞の機能と意義(深谷克己)、元和二年幕府の対外政策に関する一考察(紙屋敦之)、史料翻刻・佐賀藩「律例」(島善高)、官位昇進運動の基礎的研究(堀新)、翻刻・香川県歴史博物館蔵『南木惣要』(若尾政希・小川和也)、寛永11年日光社参の一考察(泉正人)、大名家における「仮養子」史料(大森映子)、大名の「京都御使」について(久保貴子)、住持退院一件にみる村(斎藤悦正)、近世「大名預」考(佐藤宏之)として研究成果報告書(冊子)にまとめた。
著者
古川 謙介 後藤 正利
出版者
別府大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は環境汚染物質である揮発性高塩素化合物を高度に脱塩素化する偏性嫌気性細菌についてその脱ハロゲン呼吸のメカニズムを解明するため、基礎・基盤研究を行った。我々が先に分離したDesulfitobacterium hafniense Y51株はテトラクロロエテン(PCE)を最終電子受容体としてcis-1,2-ジクロロエテン(cis-DCE)へと脱塩素化して生育する。本研究ではまず、Y51株から脱塩素化に関与するpceABCT遺伝子をクローン化した。このpce遺伝子群は二つの相同な挿入配列で挟まれ複合トランスポゾンとして機能することを明らかにした。PceAは脱塩素化酵素、PceBは膜結合タンパク質であること、また、機能不明であったpceTの産物(PceT)はPceAに特異的に働く分子シャペロンであることが判明した。すなわちPceTはTat輸送を受ける前のPceA前駆体と特異的に結合することが免疫沈降実験により明らかとなった。次にY51株を最小液体培地に接種し、1μMのクロロフォルム(CF)を添加して培養すると生育阻害が起こりlag期が長くなる、また、pce遺伝子クラスターを欠失したLD株が高頻度に出現することを明らかにした。これらの結果とさらなる生化学的・分子生物学的解析からCFは還元的脱ハロゲン酵素であるPceAの補欠分子族であるコリノイドと結合してフマル酸呼吸の電子伝達系を阻害することが明らかとなり、そのモデルを提唱した。偏性嫌気性細菌による脱ハロゲン呼吸の分子機構はまだ、未知なところが多い。今後はこの重要な脱ハロゲン呼吸細菌類における宿主ベクター系の開発、及び脱ハロゲン呼吸に関与する遺伝子の異種発現系の開発が重要である。
著者
田村 照子 小柴 朋子
出版者
文化女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

湿潤感は着衣の快適性研究において極めて重要である。本研究の目的は着衣による湿潤感の感知構造を探り、湿潤感の中枢・自律神経系への影響を探ることにある。主たる結果は以下のようである。1)全身の湿潤感を左右する重要な要因としては、湿度そのものよりも湿度によって影響を受ける皮膚蒸散量並びに人体-環境間の体熱平衡から求められる蒸発放熱量であることが明らかになった。2)カプセル又はポリエチレンフィルムを用いた閉塞性の局所湿潤負荷装置による実験の結果、人体の局所湿潤感を左右する要因は、皮膚からの水分蒸発に伴う皮膚温変化と皮膚水分に対する触感量の複合であることが示された。3)衣服内湿度の生理影響を調査するために、異なるサイズの孔を穿ったポリエチレンフィルムを用いて実験衣服を製作、その物性値及び熱・蒸発熱抵抗をKES法並びに発汗サーマルマネキンを用いて評価した。穿孔の有無、穿孔サイズにより衣服内湿度および皮膚濡れ状態に差を生じたので、これを以下の実験に供した。4)心電図R-R間隔のパワースペクトル分析により自律神経の活動レベルを測定した結果、衣服内の湿度が高いほど副交感神経活動の指標HF/(HF+LF)が低下し、交感神経活動の指標LF/HFは上昇した。5)国際10-20法による13部位の脳電図並びに脳波CNVを測定した結果、衣服内湿度が上昇するにつれて脳波のα波含有率、β波含有率ともに少なく、CNVでは振幅の抑制が認められた。6)衣服内湿度の内分泌反応への影響を調べた結果、衣服内湿度が高いほど唾液中のストレスホルモンといわれるコルチゾール、分泌型IgAともに増加し、尿中アドレナリン分泌量が低下する結果となった。以上の結果は、すべて衣服内の湿度上昇が心理的不快感のみならず、自律神経活動、内分泌反応、中枢神経活動のいずれにも負の負荷を与えることが生理学的に示唆された。本研究成果の一部は平成12年9th国際環境工学会(ドイツ)において発表した。
著者
長尾 彰夫 木下 繁彌 村川 雅弘 浅沼 茂 安彦 忠彦 山口 満 西川 信広 田中 統治 的場 正美 今野 善清 柴田 義松 長尾 彰夫
出版者
大阪教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究の最終年度は、これまでインタビューや授業観察および研究資料の内容分析などによって明らかになった各学校での新教育課程の開発状況について、インターネットのWEBページとして発信するための研究に重点をおいた。本研究で開発したインターネットサイト(http://jcultra.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/〜sougo/)に掲載した学校は、大阪教育大学附属池田中学校、高槻市立上牧小学校、緒川町立緒川小学校などである。それぞれの学校の研究状況を、「地域の特色」、「学校の沿革」、「カリキュラムの概要」、「総合的な学習の位置づけ」、「授業実践事例の紹介」を基本とする項目で整理した。また、授業分析によって得られた研究知見を、文章表記によってのみ記述するのではなく、子どもの個人情報の保護に十分留意しつつ、写真等を用いて、より具体的な研究情報として閲覧することができるようにした。このインターネットサイトの活用目的は、上記の情報を公開することによって、全国の小・中学校の教師がそこから新教育課程に対応した新しいカリキュラムの開発を行うための実践的な知見を得られるようにすることである。この目的を達成するために、たんに学校の実践事例を並列的に掲載するだけでなく、すでに作成されている教師のための教育用インターネットサイトにリンクを貼ったり、本研究の分担者として各学校で訪問調査を行った研究者に直接掲示板を通して質問を寄せたり、あるいは閲覧者同士が意見交換できる掲示板システムを付随させたりしたいる。以上のように、本研究は、当初の計画通りに、新教育課程を先端的に実施している学校を訪問調査することによって、カリキュラム開発の手続きやデザインに関する経験知を集約するとともに、それをインターネットサイトを通して発信することによって、オンラインでの新しい教師教育、ないし教師の自己研修に貢献するという所期の目的を達成することができた。
著者
礒田 正美 小川 義和 小原 豊 田中 二郎 佐々木 建昭 長崎 栄三 清水 静海 宮川 健
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の高次目標は、世界で有効に活用しえる算数・数学教材・教具を開発することである。具的には、数学を学ぶ意欲を喚起し、さらに深く知る契機を提供する機関として科学系博物館の展示・教育システムを活用し、科学系博物館向け数学展示、実験教材を開発し、数学における具体的で体験的な教育プログラムを提供することを目的とする。国立科学博物館、牛久市教育委員会、つくば市教育委員会、埼玉県立春日部高等学校、埼玉県立大宮高等学校の協力を得て、3年間を通して、科学博物館等で活用しえる数学展示、実験教材の事例開発を行った。蓄積した事例を領域でまとめれば、次の6領域になる:(1)透視の数理、(2)変換の数理、(3)機構の数理、(4)音階の数理、(5)測量の数理、(6)それ以外。開発教材の特徴は、学年、学校段階によらず、様々な学習が可能である点である。報告書は事例を示した。開発教材は、内外で注目を浴びた。国内では、小中接続・連携、中高接続・連携、高大接続・連携の立場から注目され、飛び込み授業のための事例集の出版を依頼された。変換の数理ではソフトウエア開発も行い、WEB上で閲覧可能である。国外では、国際会議で招待講演を2回(韓国、香港)、全体講演を1回(台湾)、研究発表を1回(ローマ)、海外での講習を2回(フィリピン、ホンジュラス)行った。特に数学教育国際委員会100周年記念国際会議では、ヨーロッパにおける教具の歴史的発展からの系譜をたどった。また、効果的な発表の方法についての調査もあわせて行った。既にフィリピン、ホンジュラスで開発したソフトウエアが利用される見込みとなった。成果をWEB公開することで、当初の予定通り様々な場で役立つ数学展示教材の開発が実現した。SHH, SPPなどでも成果を利用したい旨、依頼を得ている。博物館に展示することは将来的な課題であるが、成果は教育の場で活用しえる状況にある。
著者
田畑 哲之 磯部 祥子 青木 考
出版者
(財)かずさDNA研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

高オレイン酸含有量の落花生育種を促進するため、オレイン酸含有量を制御する候補遺伝子情報を用いて選抜マーカーを開発し、マーカー選抜育種を開始した。同時に落花生のゲノムワイドな多型DNAマーカー(マイクロサテライトおよびトランスポゾン挿入マーカー)を開発し、連鎖地図の作成を行った。ゲノムワイドなDNAマーカーも選抜マーカーとして利用したところ、5年の選抜工程を3年に短縮することができた。
著者
大見 美智人 林 泰弘 北園 芳人 小池 克明
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究では電気探査とMT法とを併用して地下浅部・深部の比抵抗分布を明らかにし,それから3次元的な温度分布構造を推定するための手法について検討した。この目的のために九州中部の阿蘇山を研究対象に選んだ。本研究の成果は以下のようにまとめられる。1.ラドンの移動の数値シミュレーションとラドン原子数算定理論により,ラドン濃度の空間的分布から,幅・傾斜方位・傾斜角度に関する断層の形状を推定することが可能になった。また,熱水の通路となる断層上のラドン濃度は,火山性地震などに起因して大きな時間的変動を示すことが明らかとなった。2.衛星画像と数値地形モデルとの組み合わせにより,熱水流動に影響を及ぼす断裂系の分布形態(走向・傾斜,分布密度)が推定できるようになった。3.一般に坑井データは分布密度が低く,深度も限られており,直接データを補間しても温度分布の特徴が得られない。これを改善するためにニューラルネットワークと地球統計学とを組み合わせたところ,地表面から標高2kmの深度までの温度分布が3次元的に推定できるようになった。この分布モデルから断層の存在が温度分布に及ぼす影響や熱水の流動形態が把握できる。4.活断層のように最近動いた履歴のある断層であれば地表面近くで比抵抗が低下する。断層の深部での比抵抗は一様でなく,特に破砕度が大きいと推察される部分の比抵抗は低い。阿蘇山火口西側の断層の推定分布域では比抵抗の異方性が顕著で,TEモードとTMモードとでは分布傾向が大きく異なる。5.阿蘇山火口西側においてMT法によって推定された比抵抗と数値シミュレーションに基づく推定温度との関係を検討し,概ね温度が高いほど比抵抗が高くなるという傾向を明らかにした。また,同じ温度でも熱水の上昇域で比抵抗が低下する現象も見出された。
著者
浦野 慎一 高橋 英紀 町村 尚 平野 高司 山梨 光訓 上田 宏 堀口 郁夫
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

陸地水体と生物生産の相互関係を明らかにするため、北海道の洞爺湖とその周辺を対象に水温、気温、風向風速等を観測し、貯熱量と湖効果を検討した。またアフリカのザンベジ河氾濫原で水文気象観測を実施し、氾濫原の特性と水田開発の関係を検討した。さらに基礎的研究として、様々な植生における蒸発散量を観測し、比較した。以上のことを13編の論文にまとめ、報告書(158ページ)にまとめた。得られた結果の概要は以下のとおりである。洞爺湖では、水体の貯熱量が大きいため、陸地と湖水面における有効エネルギーの季節変化に約半年の位相のズレが確認され、この位相のズレが湖効果の原因になっていることがわかった。また洞爺湖の湖効果は相対的に冬期より夏期に強く出現すること、地域的には夏期の一般風の主風向が南よりであるため北側の湖岸で強く出現することがわかった。以上のことから、夏期の生物生産最盛期に湖効果が出現する地域では、気温を考慮してその地域に適切な作目を選ぶ必要があると考えられた。ザンベジ河氾濫原では、蒸発散量は雨季終了後および冷涼乾期に大きな減少が見られなかった。これは周辺台地から供給される地下水の流れによるものと推察され、水田開発を行うにはこのような地下水流を考慮に入れる必要があると考えられた。また、基礎的研究として森林、トーモロコシ畑、牧草地の蒸発散量を比較した結果、牧草地ではデカップリングファクターが最も大きく、相対的に空気力学的作用よりも熱収支的作用の方が蒸発散量に大きく影響していることがわかった。
著者
吉田 勝
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

平成8年から10年の3年間にわたって、東ガート帯及び周辺の関連地域の全体像をつかみ、その造構史を明らかにする目的で、文献の組織的収集と整理、地質試料の分析、解析的研究を実施した。新規購入備品である流体包有物解析システム(YAGAIFLUID)は、これらの研究に利用された。主な研究成果の概要を下に記す。1)東ガート帯中部から北部にかけて詳しい岩石学的研究を実施し、この地域が高温高圧のグラニュライト相変成作用や中程度の角閃岩相変成作用を重複して受けていることを確認した。2)EPMAモナザイト年代やSm-Nd年代からは、20億年前から5億年前の間の数回の変動が推定された。主変成作用は約12〜14億年前のアルカリ深成岩類の貫入事件の前と認められ、約20億年前と約15億年前で関連火成岩の性質から、それぞれ圧縮場及び伸張場における変動であったと考えられる。その後、約10億年前にも圧縮場におけるグラニュライト変成作用があり、さらに約8億年前と約5億年前には、花崗岩の貫入を伴う再変動があった。東ガート帯西縁部分では約28〜26億年前の変成年代が得られており、この部分は基盤の再変動地帯と考えられる。3)東ガート帯のこのような多時階の変動は、そのすべてを周辺のゴンドワナ陸片に追跡することは出来ない。同帯の北東延長にあたる南西オーストラリアのアルバニー・フレイサー帯では、約10億年前変動とそれより古い事件が、南東延長である南極のピア・レイナー帯では、10億年変動とそれにより新しい事件が、よく追跡される。このことは、約10億年前頃に、東ガート帯周辺のゴンドワナ陸片地域に大きなテクトニクスの変換が生じたことを示していると考えられる。4)以上の研究成果は、国外誌や英文紀要等の学術論文59編、英文の学会メモア・学位論文などの書籍15冊、国際学会などにおける学術講演56題として発表された。
著者
島 伸和 伊勢崎 修弘 兵頭 政幸 山崎 俊嗣
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、海底電位差磁力計を新たに開発し、背弧海盆であり海底拡大がはっきりしているマリアナトラフをターゲットにして、マリアナトラフの詳細なテクトニクスの解明と、マリアナトラフ付近での電気伝導度構造の推定を行なった.開発した海底電位差磁力計は、すでに実用段階に入っており、その大きさとしては世界最小レベルであり、機動力という点でも優れている.また、この電極には、FILLOUXタイプの電極を採用して、このタイプの電極を国内で安定した性能で作る体制を整えた.海上での観測で得られた海底地形、重力、地磁気データを解析することにより、次のように詳細なテクトニクスをあきらかにした.(1)北緯16〜18度付近は、約6Maに海底拡大を開始した.拡大速度(片側、以下同じ)は20mm/年程度と遅い.(2)北緯16度以北では、拡大開始時の拡大軸の走向は北北西-南南東であった.つまり、トラフ北部では西マリアナ海嶺の走向にほぼ平行であるのに対し、南へ行くに従い西マリアナ海嶺とは斜行するようになる.トラフ中部及び北部では、現在の拡大軸の走向は南北に近い.(3)北緯14度以南のトラフ南部では、海底拡大は3Ma頃開始し、拡大速度は35mm/年程度と中部・北部よりやや速い.中軸谷が存在せず、地形的には東太平洋海膨型の速い拡大の特徴を持つ.(4)北部マリアナトラフにおいては、リフフティング/海底拡大の境界は北緯22度付近にある.北緯20〜22度では約4Maに拡大を開始した.1年間設置して観測した海底電位差磁力計によるデータの初期的な解析結果より、マリアナ島弧火山下には、70kmの深さに部分溶融と見られる電気伝導度の高い領域があることがわかった.また、マリアナトラフ下には、数10kmのリソスフェアに対応すると考えられる低電気伝導度層が存在することを明らかにした.