著者
松田 岳士 近藤 伸彦 重田 勝介 渡辺 雄貴 加藤 浩
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は,教学IR情報を用いた学生支援を目的として,大学生活を通じて学生が直面する具体的かつ真正性のある意志決定場面(初年次の科目選択・リメディアル科目の受講・所属研究室決定・留学)に注目し,判断に必要な情報を直接学生に提供するシステム,Decision Support with IR(以下DSIR)を開発・評価するものである.平成29年度は,四場面のうち,初年次の科目選択(およびリメディアル科目の受講)を支援するシステムを,履修授業推薦システムとして開発し,実際に研究代表者本務校のシラバスデータを用いて動作を確認した.平成29年度は,システム内のデータ処理アルゴリズム,特に学生のSDLRSと科目自体のデータのマッチング方法,表示されるデータが増えることによるインターフェースの工夫,システム管理者が修得できるユーザの操作データなど,設計にあたって考慮すべき案件が多数あり,代表者・分担者の間で担当研究分野を細かく割り振って,前年度を上回るペースで打ち合わせを重ねながら研究プロジェクトを進めた.設計協議の中で,パイロット版の形成的評価において学生から指摘された,表示される用語の意味が理解しにくい点や,単位の取りやすい科目推薦システムになってしまうのではないかという懸念を払しょくするため,用語の説明文を表示できる仕組みや,学生が獲得したい能力に基づいた推薦機能などを新たに追加した.また,研究成果としてまとまった知見は,システム完成を待たず,随時発表した.
著者
安井 行雄
出版者
香川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

水田に生息する甲殻類ホウネンエビBranchinella kugenumaensis(Ishikawa)の生活史形質において,前年度までの研究で明らかにされた表現型多型(長期繁殖型と短期繁殖型)が生じる原因が,遺伝によるのか環境によるのかを実験的に明らかにするためには,大前提として供試個体を容易に入手する必要がある。そこで本研究ではまず、香川県木田郡三木町を流れる河川(吉田川、新川、鴨部川)の流域においてホウネンエビ長期繁殖型の発生が見られるかどうかを探索した。また表現型多型の生じる原因を明らかにするためには、これまで困難とされてきたコントロールされた環境条件下で個体を飼育することが必要である。そのため本研究では半野外条件および恒温室内での飼育技術の確立を試みた。野外の調査地においてホウネンエビの発生が確認できたのはM3地点(吉田川上流足田打)のみであった。M3での個体の成長は短期繁殖型のものと類似しており、河川上流部で長期繁殖型個体の発生を確認することはできなかった。しかし半野外環境下での飼育において、M1地点(吉田川上流朝倉)の土壌から長期繁殖型と思われる個体の発生が確認出来た。恒温室内での実験ではN20地点(琴電農学部前駅南西)の土壌を用いた。これは野外網室での半野外飼育の結果としてN20個体はM1やM3など山間部の個体と比べて環境順応能力が高いと考えられたからである。大型のプラスティックトレイ(924×610×200mm、容量79リットル)に水田土壌を入れ、水道水を加えて攪拌し、網室内に放置して自然の日射と温度変化に曝すだけで土壌中のホウネンエビ卵を孵化・成長・繁殖させることができた。またトレイの底に土壌を入れた状態であれば恒温室(27℃、16L8D)内で人工照明を当てた状態でもホウネンエビを飼育することができた。光条件(ライト1灯と2灯)と水質条件(ハイポネクス添加、乾燥酵母添加および無添加対照区)をコントロールした飼育実験で発生消長を調べたところ、ライトの照度と水質の違い、および雌雄の性差についていずれも体サイズにおける有意差を生じさせることができた。ライトは2灯が1灯よりも成体の体長を大幅に促し、また酵母添加区、ハイポネックス添加区、対照区の順でわずかずつ体長が大きかった。また雌は雄よりもわずかに大型であった。本実験を通して、水中に土壌を残すという半人工条件とはいえ、これまでは困難とされてきたホウネンエビを飼育することに成功した。この結果、今後季節的要因にとらわれることなくホウネンエビを周年累代飼育することが可能となった。またその際、ライトの照射および酵母・ハイポネックスの添加を行うことは成長を促進する上で有効である。
著者
横山 啓太
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

数学の諸命題の強さを論理学の視点から分析する逆数学研究の基盤を広げ、より多様な視点から数学の諸命題の評価を行うことを目指して研究を行った。特に、これまで計算可能性理論の視点からの命題の強さの評価に偏りがちだった組み合わせ命題の強さについて、帰納法の強さ等の証明論的強さの視点からの評価を行うための諸種の手法の導入を行った。さらに、これらの成果を構成的数学の視点を踏まえて計算機科学、特にプログラム検証の分野と結びつけるための道筋を得た。
著者
東 哲司 森田 学 友藤 孝明 遠藤 康正
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

酸化ストレスは老化に関与する。抗酸化物質である水素水は、老化による酸化ストレスの増加を抑制するかもしれない。我々は、老化ラットの歯周組織に対する水素水の効果を調べた。4ヵ月齢雄性ラットを水素水を与える実験群と蒸留水を与える対照群の2群に分けた。12ヵ月の実験期間終了後、実験群は対照群より歯周組織の酸化ストレスが低かった。IL-1β蛋白の発現に違いはみられなかったが、インフラソーム関連遺伝子は、対照群よりも実験群の方が、むしろ発現した。水素水の摂取は、健康なラットにおいては炎症性反応はなく、老化による歯周組織の酸化ストレスの抑制に影響があるのかもしれない。
著者
吉川 聡 渡辺 晃宏 綾村 宏 永村 眞 遠藤 基郎 山本 崇 馬場 基 光谷 拓実 島田 敏男 坂東 俊彦 浅野 啓介 石田 俊 宇佐美 倫太郎 海原 靖子 大田 壮一郎 葛本 隆将 黒岩 康博 桑田 訓也 古藤 真平 小原 嘉記 坂本 亮太 島津 良子 高田 祐一 高橋 大樹 竹貫 友佳子 谷本 啓 徳永 誓子 富田 正弘 中町 美香子 長村 祥知 根ヶ 山 泰史 林 晃弘 藤本 仁文 水谷 友紀 山田 淳平 山田 徹 山本 倫弘 横内 裕人 栗山 雅夫 佃 幹雄
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

東大寺図書館が所蔵する未整理文書のうち、中村純一寄贈文書と、新修東大寺文書聖教第46函~第77函を調査検討し、それぞれについて報告書を公刊した。中村文書は内容的には興福寺の承仕のもとに集積された資料群であり、その中には明治維新期の詳細な日記があったので、その一部を翻刻・公表した。また中村文書以外の新修東大寺文書からは、年預所など複数の寺内組織の近世資料群が、元来の整理形態を保って保存されている様相がうかがえた。また、新出の中世東大寺文書を把握することができた。
著者
藤澤 秀幸 佐伯 孝弘 姫野 敦子 藤井 由紀子
出版者
清泉女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

研究会を開催して、研究メンバーの専門分野における「怪異」研究を報告した。「怪異データベース」と「怪異研究文献目録」の作成を行った。平成29年5月に笠間書院から『日韓怪異論 死と救済の物語を読み解く』を出版した。研究メンバーの藤澤秀幸・佐伯孝弘・姫野敦子・藤井由紀子の論文4篇、研究メンバーでない日本の研究者の論文1篇、韓国の研究者の論文(日本語訳)5篇、計10篇の論文を収録している。執筆者と論文題目は以下の通りである。藤井由紀子「「火車」を見る者たち─平安・鎌倉期往生説話の〈死と救済〉─」、藤本勝義「『源氏物語』における死と救済」、姫野敦子「中世文学における死と救済─能「鵺」をめぐって─」、佐伯孝弘「死なせぬ復讐譚─『万の文反古』巻三の三「代筆は浮世の闇」を巡って─」、藤澤秀幸「幸田露伴・泉鏡花における「死」と「救済」」、沈致烈「朝鮮王朝小説における死と救済の相関性─「淑英娘子伝」を中心に─」、金基珩「「水陸齋」における死の様相と儀礼の構造的な特徴」、姜祥淳「朝鮮王朝社会における儒教的転換と死生観の変化」、金貞淑「朝鮮王朝時代のあの世体験談の死と還生の理念性」、高永爛「朝鮮王朝後期の韓国古小説に見える女性の死と救済」
著者
辻 寛之 田岡 健一郎
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、フロリゲン活性化複合体の機能を明らかにするためにイメージングと生化学的手法の両面から研究を進めている。まずフロリゲン活性化複合体の極めて高精細な分布を明らかにするために超解像度イメージングを試みた。しかしHd3aプロモーターでHd3a-GFPを発現するイネでは発現量が弱いため高感度な観察が困難である場合が多かった。そこで、維管束特異的で強力なプロモーターでHd3a-GFPを発現するイネを作成し、その茎頂メリステムを観察する実験系を作出した。また、一分子イメージングに適したmNeonGreenとフロリゲンHd3aの融合タンパク質を発現するイネを作成している。並行して、フロリゲンによる核内の状態変化を観察するために、H2B-GFP発現系統の茎頂メリステムの核内の超解像度観察を行った。その結果、H2B-GFPは核内でも核膜周辺に集まる蛍光があり、細胞層依存的に特徴的な核内微小構造を形成することが明らかとなった。フロリゲン相互作用因子の同定のために、イネ培養細胞へのFAC発現ベクター導入と共免疫沈降実験のための条件設定を行った。また、転写メディエーターがフロリゲン直接相互作用因子である可能性を酵母2ハイブリッド法で検証した。シロイヌナズナの28種の構成因子のうち、クローニングできた13種(うち3つは遺伝学的に花成に関与することが知られている)について、Hd3aとの相互作用を調べた。しかし、有意な結合は観察されなかった。また、フロリゲン活性化複合体の重要な構成因子であるフロリゲン受容体14-3-3タンパク質についても解析を行った。茎頂メリステムのプロテオーム解析から14-3-3タンパク質が茎頂メリステムに高蓄積していることが明らかになり、またその機能欠損が花成遅延を引き起こすことが明らかとなった。
著者
小野 永貴
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

新学習指導要領では学校図書館を利用した学習内容の記述が増加したが、学校図書館単独では高度な教育内容へ全て対応することは困難な場合も多い。そのため、図書館連携による資料やサービスの補完が注目されるが、学校図書館と公共図書館の連携に関する事例調査は多数あるものの、学校図書館と大学図書館の連携に関する研究は少ない。そこで本研究は、図書館における高大連携の実態を明らかにすることを目的とし、調査を通して連携形態の類型化を行った。本研究期間では、対象を国立大学附属学校の一部に絞り、公開されている学校要覧やオンライン資料の調査、実地訪問および聞き取りを実施した。その結果、主に以下のような連携形態が確認された。(1)附属高校生に対する大学図書館利用権の発行による、附属高校生の自主的な大学図書館活用(2)附属高校教員が教材資料を大学図書館で収集したり、授業のための団体貸出・学内配送等の授業支援(3)附属高等学校を有しない大学等における、近隣の高校生への学習環境の開放や、修学旅行等の見学としての高校生の受け入れ(4)附属学校の学校図書館担当職員が、大学図書館職員の人事異動の一環で配置される人的体制(5)大学図書館職員・教員や学生スタッフによる、高校生への図書館活用指導や学校図書館運営支援の直接的な実施一方で、大学図書館の物理的受け入れ能力の限界や、利用指導の不十分、図書館システムの非連携等の制約により、連携体制が有効活用されていない場合も多いことが明らかとなった。また、多くの連携は学校図書館が大学図書館から支援を受ける形態であり、大学図書館が学校図書館からメリットを得られる事例は少なく、連携の非対称性も明らかとなった。将来的な持続的連携のために、相互に利点のある連携形態を構築することが、今後の課題となる。
著者
中山 貴弘
出版者
神戸大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

ラーニング・コモンズ(LC)は、もともと北米の大学図書館において、情報機器の普及と、インターネット化時代に対応した情報リテラシー能力の養成に重点を置く、学習支援の場としてのインフォメーション・コモンズ(IC)から発展してきたものである。しかし、日本においてLCは、それとはやや異なる文脈で捉えられ、設置されてきたと言える。本研究では、その相違が何に起因するかを調べるため、次の調査およびワークショップを行った上で、日本の現状との対照を行った。①米国大学への訪問調査2015年初秋、カリフォルニア大学ロサンゼルス校およびサンディエゴ校、そして南カリフォルニア大学の図書館を訪問し、LCの運営担当者に聞き取り調査を行った。②北米におけるIC/LCに関連する学説の概観IC/LCに関連する国内外の文献を調査し、北米においてICの基本要件とされているものは何か、またICからLCへの移行がどのような場合に起こるかを概観した。③研究者招聘によるワークショップ開催北米におけるIC/LC研究の第一人者であるBarbara Tierney氏(中央フロリダ大学)を神戸大学へ招聘し、「日米LCの比較」をテーマとして、教職員を対象としたワークショップを開催した。その結果、米国においてICの基本要件とされている「テクノロジーとコンテンツとサービス」について、日本での捉え方に相違があること、またグループ学習の捉え方について日米の相違があることを明らかにした。本研究は、日本において北米とは違った発展経路をたどってきたLCの、日本の大学教育における存在理由を明確にするための基礎的な研究としての意義を持つ。
著者
小林 啓治
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、京都府竹野郡木津村(現京丹後市)の役場文書の整理と翻刻を行いながら、行政の最小単位としての地域社会の中で、1930年代以降の戦争がいかなる歴史的意味をもっていたのかを、社会史的かつ総合的に考察することを課題とした。その結果、明らかになったのは、明治以降、地域社会に埋め込まれた徴兵制とそれによって形成された戦争文化が総力戦体制の基軸となったこと、経済更生運動にともなって形成された行政村の組織化を利用して総力戦体制が構築され、やがて戦時体制が地域社会に覆いかぶさり、はぐくまれつつあった自治の契機を破壊していく、ということである。
著者
藤原 勝紀 田畑 治 岡田 康伸 皆藤 章 一丸 藤太郎 下山 晴彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

こころの問題が複雑化・深刻化している現代において、臨床心理士をはじめとする専門家、心理臨床家には、高度な専門性が求められている。心理臨床家の養成の難しさは、内面的な心と心の使い方、あるいは全人格に関わる生き方について、いわゆる教育指導が可能かという本質的な課題を提起する点にある。直接の人間関係による臨床実践をつうじて生成する学問、学問を基盤に臨床実践を行う心理臨床家、という学問と臨床実践の相互不可分な専門性の中で、従来の知識伝授型の教育過程とは異なる「臨床実践指導」の在り方に焦点を当てることになった。そこで、臨床心理士の養成と資格取得後の教育研修、ならびに臨床実践指導者の養成に関する教育訓練、教育研修の仕組みや在り方と、その指導内容や方法について検討がなされ、大学院附属心理教育相談室など臨床実践指導機関の役割や位置づけ、大学院教育カリキュラムにおける臨床実践指導の位置と在り方を討議する中、新しい臨床実践指導のパラダイム(従来の「講義-演習-実習」から「実習-演習-講義」への変換)が示された。これは、高度専門職業人として不可欠な倫理教育も含んでおり、臨床実践に根ざしたボトムアップ型の重要性が認識されることになった。このような技術だけではない臨床実践技能の質をどう担保し高めるかという点が、心理臨床家の養成において焦点であり、かつ臨床心理士有資格者にとっては生涯学習的なテーマである。本研究を通して、臨床実践指導の本質が問い直され、その特徴として、指導を受ける側と指導者側との双方向的な視点の重要性も明らかにされた。なお、京都大学大学院教育学研究科では、平成16年度から「臨床実践指導者養成コース」という独立した博士課程が設置され、「臨床実践指導学講座」が新設される運びとなっている。
著者
加藤 健治
出版者
総合研究大学院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

脳梗塞・脊髄損傷後による運動機能障害は、大脳皮質と脊髄間を結ぶ下行路が切断されているために起こるが、損傷領域の上位に位置する大脳皮質や、下位に位置する脊髄・末梢神経・筋はその機能を失っているわけではない。従って、機能の残存している大脳皮質より神経活動を記録し、損傷領域を超えて下位の神経構造へ、神経活動依存的な電気刺激を送る「人工神経接続」によって、失った随意運動機能を再建できる可能性がある。本研究では、脳梗塞モデルサルにおける大脳皮質-筋間の人工神経接続に対する運動適応過程とその神経メカニズムについて検討した。3頭のサルを用いレンズ核線条体動脈或いは前脈絡叢動脈を結紮することにより脳梗塞モデルサルを作成した。大脳皮質-筋間の人工神経接続は、大脳皮質前頭葉へ慢性留置したシート状電極のうち1極を任意に選択し、記録された脳活動よりhigh-γ帯域(80-120Hz)の特徴的な波形を検出し、その検出頻度に依存して電気刺激の強度と周波数を変調させることにより達成した。人工神経接続切断時では麻痺手の随意制御ができなかったが、人工神経接続中には、随意的に麻痺手の運動を制御することに成功した。さらに、一次運動野、運動前野、一次体性感覚野におけるいずれの脳活動を使っても、麻痺筋の随意制御は可能であり、手関節力制御タスクの成績は時間に伴って有意に向上した。その学習に関わる神経メカニズムを調べたところ、人工神経接続への入力信号を効果的に増加させることによって、自己学習できることがわかった。これらの結果は、脳梗塞サルであっても、自ら脳活動を大規模に再編成させて新規な大脳皮質-筋間の人工神経接続に対して自己適応し、失った手の随意制御を再建できることを示唆している。将来、このような神経代替方法によって、脊髄損傷・脳梗塞等で失った四肢の随意運動機能を補綴する基礎的なメカニズムの理解に、重要な貢献をなすものである。
著者
後藤 淳
出版者
新潟大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

福島原発事故被災地における効率的な除染に資する事を目的に、指向性があるガンマ線自動車走行サーベイシステムを開発した。開発したシステムは、異なる6方向(自動車の進行方向の前後左右及び上下)に向けて設置した6台の鉛遮蔽体付検出器で構成され、それぞれの方向から入射するγ線の計数率を個別に測定できる。被災地での実測結果より、開発したシステムが、指向性があるガンマ線自動車走行サーベイシステムとして機能する事を示した。
著者
松原 洋子 石川 准 菊池 尚人 立岩 真也 常世田 良 松原 聡 山口 翔 湯浅 俊彦 青木 千帆子 池下 花恵 植村 要
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

視覚障害等により印刷物の読書が困難なプリント・ディスアビリティのある学生の修学支援では、資料のデジタル化とICTインフラの活用が有効である。しかし日本の高等教育機関の図書館では対応が進まず、大学図書館の情報アクセシビリティに関する研究の蓄積も乏しかった。本研究では、大学等の高等教育機関における読書環境のアクセシビリティについて、公共図書館や海外事例を参照しながら制度・技術の両面から総合的に検討した。その結果、印刷物のデジタル化では未校正データの提供も一定有効であること、電子図書館サービスにおいてはコンテンツの形式以上にウェブアクセシビリティが重要であること等が明らかになった。
著者
佐々木 重信
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,超広帯域(UWB)無線伝送を用いた短距離高速微弱無線ネットワーク実現のための信号設計法,受信技術、誤り制御技術、多元接続時の性能評価法などの検討を行い、主に次の成果を得た。[1]UWB微弱無線伝送におけるピーク放射電力制限を考慮した占有帯域と伝送速度の関係を通信路容量の点から明らかにした。[2]直接拡散(DS)変調を用いたUWB方式を拡張したDS-時間ホッピング(DS/TH)UWB変調,複数の周波数帯を用いるDS-マルチバンドUWB変調,およびこれらを組合せたDS/TH-マルチバンドUWB変調を提唱した。DS-マルチバンドUWBを利用した既存無線業務への干渉低減法を考案し、効果を確認した。[3]DS-UWB多元接続伝送の性能評価法として、簡易版改良型ガウス近似および特性関数による、任意のパルス伝送間隔における多元接続干渉のモデリング法を検討し,その適用範囲を明らかにした。特性関数を用いた方法では任煮のパルス波形やフェージング通信路への対応が可能で、かつ少ない計算量でシミュレーション結果と一致する理論誤り率特性が得られた。[4]DS-UWBにおけるマルチパス環壌を考慮したRake(レイク)受信技術の開発を行った。強度の高いパスを合成する選択Rake受信,最初に到来するパスを基準にパスを合成する部分Rake受信を検討し,パス合成法の違い、ジッタ,パルス間干渉,パス振幅の量子化などが受信性能に与える影響を明らかにした。また,UWBがパルスを間欠的に伝送することに着目し,パス到来時間の推定に基づく最適Rake受信の概念を提唱し,その実装面の問題を解決した方法として、分数間隔選択Rake受信を提案し,従来のRake受信よりも性能を改善できることを示した。またUWB信号のパルス幅とパルス間隔の関係(デューティ比)が受信性能に与える影響を明らかにした。
著者
池上 孝則
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

本研究は、研究者が開発した測定値を規格化する方法(以下「ブラックボックス法」)を基礎として、条件の異なる複数の選考レースの中から真に強い選手を公平に選考する方法を確立し、当該方法論を活用して北京五輪の代表選考を円滑に行おうとするものである。当該目的を推進するため、以下の研究及び活動を行った。(1)ブラックボックス法の妥当性の検証実験結果を基礎として帰納的に確立される運動生理学等の方法論と異なり、ブラックボックス法は数理的整合性を根拠として演繹的に導出された理論であり、その妥当性は運動生理学的裏づけにより検証されるべきものである。当該方法論が学術的に名誉ある地位を占める為、レース条件の異なる複数の大会への適用と解析及び多くの関係者との議論に基づき、問題点の洗い出しとその解決を図った。(2)Webシステムの開設による補正タイム提供サービスの開始国内の主要なマラソン大会における実際の結果(以下「完走タイム」)とそれを規格化した記録(以下「補正タイム」)を併記して提供するWebシステムを開設し、当該情報を公に提供するサービスを開始した。この結果、エリートランナーのみならず多くの市民ランナーが現状の把握、練習内容の検証、目的の設定等の局面において有益な情報を入手することができることとなった。(3)アジア大会、世界選手権等の補正タイムの関係者への提供酷暑の条件下で開催されるアジア大会及び世界選手権の補正タイムを陸上競技関係者に提供した。補正タイムという客観的な情報により、従来は経験や勘に頼っていた酷暑の条件下におけるマラソンの記録を恣意的要素を介入させることなく定量的に評価することが可能となった。(4)北京五輪代表選考レースの補正タイムの提供北京五輪代表選考レースとして指定された大会及び選考に影響を及ぼすと思われる国際大会の補正タイムを算出し、代表選考委員及び陸上競技関係者に提供すると共に、速やかにWebサイトで公開した。北京五輪の代表選考においては、日本陸連が行った選考結果と補正タイムが示唆した選考結果とが見事に一致しており、五輪や世界選手権等の代表選考においても、補正タイムは真に強い選手を公平に選ぶという目的において有益な情報であることが裏付けられた。補正タイムの普及により、多くのランナーのランニングに対する理解が深まると共に、世界中のランナーの連帯が進むことを願っている。
著者
田中 悟志
出版者
生理学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

頭蓋の外に置いた電極から電気刺激を行う経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は、安全にヒトの脳活動を制御する方法として、神経障害に伴う脳機能低下の回復への応用に期待が高まりつつある。本研究では、下肢運動機能に障害を持つ皮質下梗塞患者に対して、下肢筋力トレーニング中における損傷半球側の運動野へtDCSを実施し、下肢運動機能への促進効果を検討した。その結果、8名中7名の下肢筋力を促進することができた(Tanaka et al., 2011a)。また機能的磁気共鳴画像実験により、大脳皮質運動野へ直流刺激を与えると、刺激された大脳皮質に加えて皮質下の脳活動も上昇するという予備的な知見を得た。
著者
作野 広和
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は集落が極端に小規模・高齢化し,コミュニティの維持・存続が不可能となる限界化過程の実態を明らかにした。また,最終的に集落の居住者が不在となる無住化のメカニズムも解明した。しかし,集落の居住者が皆無であっても,土地の所有権は残るため,農地を活用し,家屋等も継続して使用される例が多く見られた。以上のことから,集落機能が消滅する前後において,集落の終末を見据え,土地所有や土地利用のあり方等を検討する「むらおさめ」の必要性があるとの結論に至った。
著者
山辺 昌彦 大岡 聡 植野 真澄 井上 祐子 小山 亮 石橋 星志
出版者
公益財団法人政治経済研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

「東方社コレクション」と「日本写真公社撮影空襲関係写真」について、リストと解題を作成してその全貌を紹介するとともに、展示や写真集により主な写真を広く公開した。これにより、東方社撮影写真が、空襲などの戦争被害をはじめとして、戦時下や戦後直後の市民の暮らしなどを伝える貴重な記録写真であるという、東方社写真の歴史的意義が明確になり、東方社写真の再評価を確立した。また、防衛総司令官・東久邇宮稔彦の東京空襲体験、別所弥八郎撮影写真の特徴なども明らかにすることができた。
著者
直江 学美
出版者
金沢星稜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

アドルフォ・サルコリの演奏活動の調査を2014年にフィリピン、2015年にルーマニアで行った。サルコリはフィリピンで1910年12月11日から1911年1月25日の間に6演目のオペラに出演し主役級の役を演じたこと、ルーマニアでの共演者はイタリアやアメリカで活躍した人物であることをみつけた。本研究では、サルコリは多くのオペラレパートリー、そして世界につながるネットワークを持って来日した事を明らかにした。