著者
久和 茂 谷口 怜 水谷 哲也 吉川 泰弘 明石 博臣 宇根 有美 前田 健
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

翼手目(コウモリ類)は生物学的多様性とその分布・移動域の広さ、巨大なコロニー形成などの特徴をもつ特異な生物である。また、エボラウイルスなどの高病原性病原体の自然宿主と疑われており、病原体レゼルボアとして高いリスクをもつ。本研究はフィリピンにおいて翼手目の保有病原体の疫学調査を実施し、翼手目の人獣共通感染症のレゼルボアとしての評価を行うことを目的とした。ミンダナオ島、ルソン島中央部、ルソン島北西部においてそれぞれ捕獲調査を行い、合計266匹の翼手目を採取した。これらのサンプルより新規のレオウイルス、ハンタウイルスを見出し、さらに病原性細菌や原虫を保有していることも明らかにした。
著者
舩山 日斗志
出版者
神戸大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究では、散開星団に属する恒星の高分散分光観測を行って、恒星が持つ鉄の存在度(金属量)を測定して、散開星団の金属量の一様性について調べた。その結果から、太陽系外惑星をもつような金属量の高い恒星の形成過程を探ることを目的としている。以下に本年度の成果を挙げる。1.2007年度までに行った高分散分光観測で取得した、プレアデス星団に属する恒星とプレセペ星団の恒星のスペクトルから、天体の金属量を測定した。特に、プレアデスについては、単一研究としては過去最大数の22天体の金属量を測定した。結果、プレアデスで属する恒星のもつ金属量は一様であることがわかった。この結果は、金属量の測定精度が高い先行研究で得られた値と一致しており、このごとからプレアデスに属する恒星は一様な金属量をもつことが示唆された。また、プレアデスには系外惑星をもつような高い金属量を示す恒星は存在しないととが示唆された。プレセペについては11天体の金属量の測定を行い、この11天体が一様な金属量をもつことがわかった。2.各星団の金属量の一様性について、より定量的な議論を行うため、観測天体数を増やすことを目的として、2009年1月・2月に岡山天体物理観測所と県立ぐんま天文台で高分散分光観測を行った。そして、プレアデスに属する恒星をあらたに6天体、プレセペの13天体のスペクトルを取得した。また、対象とする星団の数を増やすことも重要であり、あらたにコマ星団に属ずる恒星10天体の観測もあわせて行った。3.鉄以外の元素についても測定可能であるか、模索した。結果、これまで取得したスペクトルがらα元素や鉄族元素の測定を行うととが可能であるととがわかり、特にSiやNiのような可視波長域に吸収線が多い元素については、十分な精度で存在度の測定できることがわかった。これまで、プレアデスの11天体について13元素の存在度の測定を行った。
著者
香取 郁夫 土原 和子
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

仮説A「柔らかい突起は食草探索に役立つ」の検証実験をホソオチョウ幼虫を用いて行う。以下の2実験に細分される。実験A1:突起有り・無しの幼虫による食草探索実験。実験A2:突起表面の微細構造の観察と感覚子の種類の見極め仮説B「硬い突起は捕食者からの防衛に役立つ」の検証実験をゴマダラチョウ幼虫とフタオチョウ幼虫を用いて行う。以下の2実験に細分される。実験B1:天敵による突起有り・無しの幼虫の捕食実験。実験B2:突起表面の微細構造の観察と感覚子の種類の見極め
著者
西川 義文 室井 喜景 鈴木 穣 マフムド モタメド 猪原 史成 西村 麻紀 古岡 秀文 フェレイグ ラガブ 梅田 剛佑
出版者
帯広畜産大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

トキソプラズマは世界人口の3分の1のヒトに感染しており、様々な精神疾患や神経疾患の発症リスクになることが推測されている。しかし、本原虫感染が精神疾患の発症や行動異常に至るメカニズムは解明されていない。そこで本研究では、宿主中枢神経系を支配するトキソプラズマ由来ブレインマニピュレーターの解明を目的とした。脳機能に関与する宿主シグナルに影響を与える原虫分子として、TgGRAIを見出した。TgGRAIはNFkBのシグナルの活性化に関与し、TgGRAI欠損原虫株を用いたマウス行動測定の実験によりTgGRAIの恐怖記憶の固定への関与が示唆された。本研究により、脳機能を改変する原虫因子の存在が示唆された。
著者
渡辺 志朗
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究計画の最終年度においては、防己黄耆湯がマウスの肝臓内と腸管内の胆汁酸構成ならびに肝臓と糞便中の脂質濃度に及ぼす影響を評価した。基礎飼料ならびにそれに防己黄耆湯の乾燥エキス粉末を2.0%(重量)となるように添加した飼料を、雄性C57BL/6マウスに5週間に渡って自由摂取させた。防己黄耆湯を与えたマウスの飼育の最終日に排泄された糞便中のαムリコール酸の濃度が高くなり、またデオキシコール酸の濃度は低かった。ただし肝臓中の胆汁酸濃度に対しては、防己黄耆湯の影響はみられなかった。糞便中の胆汁酸構成に及ぼす防己黄耆湯の影響から、腸管内の胆汁酸の疎水性の低下が生じていると判断できた。またムリコール酸はFXRのアンタゴニストであり、デオキシコール酸がFXRのアゴニストであることから、防己黄耆湯の投与は腸管のFXR活性の低下を来しているとも推測できた。一方、防己黄耆湯を与えることで、マウスの糞便中のコレステロール濃度が高くなることもわかった。さらに防己黄耆湯は、肝臓中のコレステロールエステルとトリグリセリドの濃度を低下させることも判明した。肝臓中のコレステロール濃度は、防己黄耆湯を与えることで、低下する傾向を示した。上述のような防己黄耆湯による腸管内の胆汁酸の物理化学的ならびに生物学的な活性変動が、糞便へのコレステロール排泄の増加や、肝臓の脂質濃度低下の要因であると推測できた。以上のことから、本研究において防己黄耆湯が腸管内胆汁酸の代謝変動を介した新規の脂質代謝制御効果の機構の存在を示唆した。
著者
小野 芳彦 山田 尚男 池田 研二 斎藤 正男 山田 尚勇 大岩 元 小野 芳彦
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

前年度までの研究で、日本文の入力作業を大脳半球の言語作業優位性と操作空間作業優位性の問題としてとらえることの妥当性を実験的に検証した。本年度は最終年度であるため、研究のとりまとめを中心とした。1.操作空間作業であるタイピング作業を操作空間的に学習させるTコード練習システムの有効性を、獲得したコードの打鍵誤りの分析から示した。これは、コードの記憶誤りが記憶の空間的な構造を反映して特異な偏りを示すことを説明できるものである。2.Tコードの練習過程におけるコードの獲得を含めた習得経過のモデル化と、モデルの適用による練習文の評価をおこなった。文字をみてコードを打鍵することの繰り返しがコードの獲得につながる。一般的に、肉体的あるいは認知的作業速度の上達は繰り返しの回数の定数乗に比例するという法則を満たすが、打鍵速度の上達も、個々の文字の打鍵について同じ法則を適用して説明できることを示した。ただし、短期記憶に保持されたコードが再利用されない場合に限られる。初期の練習ではその保持できる文字数が2であることが観測された。ここで、練習文に同じ文字や文字列パターンの繰り返しがあると、それらは短期記憶に貯められ、コード獲得には役立たないことが示唆される。3.上記のモデルから、濃密ではあるが短期記憶に保持できないパターンの練習文を設計した。この新しい練習文による打鍵実験を新たな被験者に対して行ない、モデルの検証を合せて行った。実験データーから、短期記憶の保持文字数が2ないし3であることの確認ができた。さらに、句読点の直後には、短期記憶の消去が伴いがちであること、すなわち、練習文の読み取りのために短期記憶が占有されてしまうことが確認できた。
著者
小山 充道
出版者
藤女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

筆者は自分描画法(Self-Portrait Method;以下SPMと略す)研究において、子どもから大人へと成長するに従って落書きに変化が生じる点に着目した。本研究において落書きは人の思いを映し出していると仮定し、SPMを落書き行為とみなした。また筆者は思いの深まりの経過を説明する方法として、「思いの理論("OMOI"approach to psychotherapy);小山(2002)」を用いた。本研究結果、落書きには「今の自分のありよう」「今、自分が気になっていること」「心理的背景」「心の中に隠れているもの」の4つの要素が含まれ、これらが関わり合って人の思いが構成されることがわかった。2007年度は大学生40名に対してSPMを実施した。その結果、SPMは性差の影響をほとんど受けないこと、そしてSPMを用いると個人の思いを浮かび上がらせることが可能であることを確認した。2008年度は北海道立高校2校の協力を得て、総計219名にSPMを実施した。その結果、SPMを実施することで緊張緩和の効果が認められた。また「思い」という言葉から想起する色彩は男女とも「透明」と答える人が最も多く、そのあと赤、白、橙と続き、最後に紫と黒をあげる人が多かった。2009年度は中学生183名を対象にSPMを実施した。その結果、SPMを実施することで緊張が緩和されることがわかった。思春期にある人にはSPMは有効に働くことがわかった。「思い」という言葉に最も近い色を尋ねたところ、透明(22%)→白(18%)→赤(17%)→燈(14%)で71%を占めた。いずれも思春期の人が好む色だった。2010年度には、B高校からの依頼で、高校1年生と2年生合わせて総計320名に対してSPMを実施した。本研究目的は、SPMがスクリーニングテストとして活用できるかどうかを見定めることにあった。その結果、SPMはいくつかの留意点を踏まえた上で実施すると、スクリーニングテストとしての効果が見込まれることがわかった。以上、4年間にわたるSPM研究の結果、SPMは心理療法として活用できる可能性が充分にあることがわかった。
著者
松本 邦夫
出版者
大阪大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

がん細胞の増殖能や侵潤・転移能はがん細胞をとりまく宿主細胞との相互作用を介して大きく影響されることががん細胞-宿主相互作用として知られてきた。本年度は宿主間質に由来するHGFならびにがん細胞に由来するHGF誘導因子ががん細胞-宿主相互作用のメデイエーターとして、がん細胞の悪性化に関与することを明らかにした。胆のうがんは一般に高転移性で致死率の高い悪性のがんである。ヒト胆のうがん細胞は宿主組織内では高い侵潤能を有するものの、コラーゲンゲル上に培養しても自らゲル内に侵潤することはない。ところが、正常線維芽細胞とコラーゲンゲルをはさんでco-cultureすると胆のうがん細胞はゲル内に侵潤し、液性因子を介した間質細胞との相互作用が胆のうがん細胞の侵潤能を誘導している。しかも、このco-culture系でのがん細胞の侵潤はHGFに対する抗体により完全にブロックされ、間質由来の侵潤因子の実態はHGFであることを明らかにした。さらに胆のうがん細胞のゲル内侵潤はHGF以外での代表的な増殖因子では誘導されず、HGFは強力な侵潤誘導因子であるといえる。一方、興味深いことにがん細胞は間質線維芽細胞に対しHGFの産生を高める因子を産生、このHGF誘導因子(インジュリン)の実体はIL-1βであることを明らかにした。また同様に線維芽細胞が産生する口腔粘膜上皮がん細胞に対する侵潤誘導因子の実体もHGFであることを明らかにした。その他、ヒト肺小細胞がんやオリゴデンドログリオーマの中にはvariant HGFを産生し、しかもこれらの細胞においては、HGFがオートクリン的にがん細胞の運動性や侵潤能を高めていることを明らかにした。一方、HGFによるmotilityの亢進にはp125^<FAK>(focal adhesion kinase)を一過的なリン酸化が関与することを明らかにした。p125^<FAK>はβ1インテグリン結合することが知られており、HGF刺激後、初期のfocal adhesionの形成、細胞骨格の再構成にはp125^<FAK>のリン酸化が関与しており、HGFによる細胞のmotility亢進において細胞-マトリックスとの相互作用はp125^<FAK>を介して調節されていると思われる。これらの観点から、HGFによる侵潤をブロックするアンタゴニストの開発は今後がん治療という点で極めて重要になることが予測される。
著者
馬場 幸栄
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

緯度観測所(岩手県奥州市水沢)の歴史を再構築するため、国立天文台や個人が所蔵する資料群を調査し、関係者への聴取調査を行った。ガラス乾板から復元した写真、簿冊『国有財産関係書類』から発見した図面、所員の証言から、眼視天頂儀室や歴代本館等の外観・構造および所員らの姿・担当業務を明らかにした。また、紙焼き写真、地域資料、所員の証言から、初代所長・木村栄が水沢宝生会を通して交流していた地域の名士を特定したほか、同観測所が大正時代から女性を積極的に雇用していたことも発見した。さらに、葉書、絵画、ビデオテープなど新たに発見した資料から、第2代・第3代所長や工作係長の人物像・業績も詳らかにした。
著者
村松 圭司
出版者
産業医科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

NDBは世界にも例のない悉皆性の高い医療保険のデータベースであるが、そのデータ構造が複雑であり利活用が進んでいない。申請者は先行研究として、データ構造の理解促進を目的に、実際のNDBに格納されているデータの個票と同じ形式で作成したダミーデータで構成される練習用データセットを開発する研究を実施している。本研究では、①練習用データセットを活用した教材及び②ミニテストによる自己チェックシステムを含む教育プログラムを開発する。そして、研究期間中に実際に受講してもらい、ミニテストやアンケートを行う。その後、これらの結果を用いて開発したプログラムの学習効果を測定する。
著者
矢島 正浩 揚妻 祐樹
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

近世期以降現代に至る上方・大阪語と江戸・東京語の条件表現の推移を明らかにし、変遷の原理について考察した。前件をどう提示するかを重要視する流れのなかで、上方・大阪語はさらに「整理化」の傾向が、江戸・東京語には「分析化」の傾向がそれぞれ見える。両地域言語の変化を理解するためには、「中央語であること/地域語であること」の意味を押さえた上で両地域言語の相互の影響関係を視野に入れることが重要であることが明らかとなってきた。
著者
川嶋 ひろ子
出版者
尚美学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

世界的ピアニストであり、作曲家としても数多くの作品を残しているクララ・シューマンのピアノ作品について、彼女の音楽的環境や性格、音楽的傾向に基づいて分析することにより演奏表現方法を見出し、楽譜上に校訂として表した。また日本語による演奏法の解説を付すことにより、日本でも彼女の作品を理解し、音楽的に演奏出来る人達が増えることを目指し、世界初となる「クララ・シューマンピアノ作品全集」を出版する。
著者
小島 康夫 工藤 弘
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

北海道に生育する植物一特に樹木を中心として、そのアレロパシー作用の有無を検討した。この研究では主にアレロパシー効果を種子発芽と幼杯軸の伸長に対する阻害作用に基づいて評価を行った。北海道における樹木では、グイマツ、シンジュ、ヒバ、サトウカエデ、ナナカマド、ホオノキ、ハリエンジュに強いアレロパシー活性が認められ、次いでクルミ科4種(オニグルミ、ヒメグルミ、サワグルミ、クログルミ)、カツラ、トドマツ、ミズナラにある程度の活性が認められた。草本では、クマイザサ、ラワンブキ、ミジバショウに強いアレロパシー活性が認められたこれらのうち、ナナカマド、クルミ、シンジュ、ササ、フキについて、アレロパシー活性の季節的変動、組織部位(例えば葉と茎と根など)による変動、活性成分と思われる物質の検索について、さらに詳しく検討を行った。ササについては、多年生のために季節的な変動は少なく、通年にわたりアレロパシー活性が認められた。ササの新芽には活性が認められない。部位の比較では、葉、茎に関して極性の高いフラクション(酢酸エチル可溶部やエタノール可溶部)に強い活性が認められ、根ではエタノール可溶フラクションとともに、極性の低いヘキサン可溶部でも強い活性を示した。フキでは秋に採取した根に活性が示され、ヘキサン可溶部からアレロパシー物質含むフラクションを特定することができた。ナナマカドでは、果実とともに葉にも強い活性が認められた。特に秋に強い活性が示されている。同様に、ミズナラでも秋に強い活性が示され、根、樹皮、根ともに活性があることを示した。一方、シンジュでは、秋よりも春から夏にかけて強い活性が示され、特に根に活性成分が多く含まれることが示唆された。
著者
三浦 郁夫
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

遺伝的にオスとメスを決める性決定の仕組みには、大きく2つが存在する。哺乳類に代表されるXX/XY型と鳥類に代表されるZZ/ZW型である。近年、2つのタイプは相互変換が可能であることがわかってきた。我が国に生息するツチガエルは2つのタイプが地域集団に別々に存在しており、性決定機構変換の仕組みを解明する上で、最適な研究材料と言える。本研究では、2つのタイプが接触した近畿地方において、性決定の仕組みがZW型に収束した集団を発見し、その変換の遺伝学的、進化学的仕組みを明らかにした。その際、既に遺伝子退化が始まっていたW染色体がX染色体と入れ替わり、新しいW染色体として若返る現象も明らかにした。
著者
志水 宏吉 棚田 洋平 知念 渉 西田 芳正 林嵜 和彦 二羽 泰子 山本 晃輔 榎井 縁 内田 龍史 石川 朝子 高田 一宏 園山 大祐 堀家 由妃代
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究の目的は、「マイノリティ集団に対する排除と包摂」という視点から、現代日本の学校教育システムが有する制度的・組織的特性とそこから生じる諸課題を把握し、その改革・改善の方途を探ることにある。そのために、「被差別部落の人々」「外国人」「障害者」「貧困層」という4つのマイノリティ集団を設定し、彼らに対する教育の場における排除を、1)彼らの教育機会の現状、2)それに対する当事者の経験や評価の2側面から把握する。
著者
鳴岩 伸生 桑原 知子 川部 哲也 佐々木 玲仁 加藤 奈奈子 佐々木 麻子 渡邉 研太郎 大野 義一朗 重田 智
出版者
京都光華女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

長期閉鎖環境におけるストレスの実際と有効な対処を明らかにするために,南極地域観測隊の越冬隊員に対し,出発前の日本および現地での質問紙調査と帰国後の面接調査を実施した。その結果,越冬後半の白夜の時期に,怒り・敵意の感情が高まる者が現れる一方で,高まらない者も多くおり,隊内に感情の溝が存在することが明らかになった。また,越冬中の肯定的感情が積極的なストレス対処に影響を与え,否定的感情が非建設的なストレス対処に影響することが明らかになった。
著者
仁木 國雄 冨澤 一郎 金子 克己 石井 明
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

雪の融点近くで、短いモデル・スキー(長さ20cm)を用い、遅い滑走速度(0.001~1m/s)における摩擦係数を斜面滑走法およびトライボメータ法を用いておこなった。その結果、摩擦係数(μ)が、滑走速度と雪の温度に依存することが解った。そして、-10℃程度の低温で、速度が極めて遅い場合に最も小さなμ値を示す事を見出した。今回の実験結果で最も注目すべき点は、モデル・スキーの低速度における摩擦係数の温度依存性が、高速度で滑る実際のスキーの温度依存性と反対になった点である。また、モデル・スキーの摩擦係数に荷重依存性が測定されなかったことから、低温、低速度における小さな摩擦係数は摩擦融解による解け水の潤滑摩擦では無いと考えられる。すなわち、低温では凝着力が小さくなるために良く滑ると考えられる。
著者
丹羽 伸介
出版者
東北大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

キリンのように長い軸索を持つ生物の分子モーターはそれにあわせて高速化しているかどうかを解析するために、全ゲノムシークエンスが完了しているキリンの全ゲノム情報を解析し、シナプス小胞の軸索輸送キネシンKIF1Aを探索した。RNAseqのデータがないために解析は難航したが、幸いKIF1A遺伝子は非常によく保存されていたため、KIF1Aの全長配列を得ることに成功した。キネシン型モータータンパク質はモータードメインと呼ばれる部位によって微小管上を歩行する。モータードメインの配列を解析したところ、ネックリンカーのような速度に重要な働きを持っている部位にアミノ酸置換が起こっていることがわかった。キリンKIF1Aの速度を計測するために、そのDNA配列を合成した。私が得意とする線虫を用いた解析を行うためにコドンはあらかじめ線虫に調節した。この配列を線虫で発現してシナプス小胞の軸索輸送の速度変化を計測するためのプラスミドベクターを作製した。また、in vitroの解析を行うために大腸菌でキリンKIF1Aのモータードメインを発現するためのベクターも作製した。KIF1Aに加え、KIF5Aキネシンについても岡田康志東京大学理学部教授との共同研究によって解析を行った。KIF5Aの線虫ホモログであるUNC-116はミトコンドリアの軸索輸送に関与していることがわかっている。キリン型KIF5Aが軸索輸送s九度を変化させるかどうか解析するため、UNC-116のモータードメインをKIF5Aに置き換えたキメラ遺伝子を作製した。
著者
森 英雄 藤間 一美 清弘 智昭 桜井 彪 小谷 信司 猪井 善生 今 義博
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

研究の目的は盲導犬ロボットを試作し、視覚障害者に本当に役に立つ歩行補助装置は何かを明らかにすることである。ロボットは電動車椅子に環境を理解するためのセンサーと電子地図を載せ、障害物を回避しつつ視覚障害者を道案内するロボットである。本研究による成果は次の通りである。1)画像処理とDGPSをベースとする盲導犬ロボット「晴信7号機」を開発し、大学構内の走行実験や知能ロボットシンポジウム(1997年1月、川崎産業振興会館)、8th Int'l Symp.of Robotics Research(葉山,1997年10月3-7日)の公開デモで自律走行に成功した。2)ソナーをベースとする盲導犬ロボットを開発し、視覚障害者の歩行を研究している心理学者が被験者になって評価し、盲導犬ロボットの有効性を実証した。3)足のリズムを歩行者のサインパターンとして画像処理で検出するシステムを開発した。4)自動車の真下の陰を自動車のサインパターンとして画像処理で検出するシステムを開発した。このシステムで交差点を通過する自動車の位置と速度を検出し、交通規制に基づいて進路を予測し、危険度を判定するシステムを開発した。T字路で実験した結果90%の確率で危険度を予測できた。5)パルスコードで変調した超音波を送信し、物体からの反射波と送信波の相関をとって距離を計測するソナーシステムを開発した。トラックや建築機械等が出す騒音に強いことを実証した。また複数のソナーシステムのパルスコードを変えることによって同時計測が可能なことを実証した。