著者
矢野 裕介
出版者
神戸医療福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、大日本帝国剣道形増補加註(1933年)の制定に向けた討議の様相が克明に記された近藤知善筆の討議記録の解読を通して、その内容を把握するとともに、討議の対象となった大日本帝国剣道形加註(1917年)の構成項目ごとに分析を加え、関係各氏21名のうちの誰が、どの箇所に、どのような意見を述べているのかを明らかにするものであった。分析対象とした範囲では合計131の意見が出されていた。加えて、解読した131の意見の内容と1933年の大日本帝国剣道形増補加註を比較した結果、合計40の意見がそれに反映、継承されていることが解明された。
著者
日野林 俊彦 南 徹弘
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

思春期から青年期にかけての発達においては、性に関わる発達が重要な役割を果たすと考えられる。日本における女子の性的発達は、発達加速現象の進行により平均初潮年齢が世界的に見ても著しい低年齢の12歳3.7ヶ月まで低下したように、時代的に大きく変化してきている。本研究においては、この初潮に代表される性成熟が、思春期における性的同一性の発達に影響を及ぼしていることが確認された。なお、この初潮や性的同一性の発達には、47都道府県別の資料で著しい国内地域差が確認された。特に沖縄県においては、平均初潮年齢12歳0.1ヶ月と最も低い一方、性的同一性の発達においても否定的傾向の発達が最も早く顕著な傾向が確認された。他にも、誕生の月と初潮の月の相関や、早生まれのものの相対的な早熟傾向等、女子思春期発達における顕著な心身相関を示唆する傾向が確認されている。一方、大学生・短期大学生等の調査結果から、青年期中期以降の発達には、思春期変化の直接的な影響は見られなくなる傾向が示唆された。しかし、性的同一性の発達が、大学入学時の満足度や自己評価に影響することに見られるように、各個人の同一性の発達が、女性性の発達や進学決定過程に影響を及ぼすことが分析された。女子の発達において、思春期変化の時期にあっては性成熟における早遅が性意識の発達に影響を及ぼす形で心身相関が顕著に見られる。しかし、青年期中期以降には、思春期変化の直接的な影響は減少し、性役割への心理的適応が青年期発達全般と関連することが示唆された。今後は各ライフ・サイクルにおける女性の性的発達と性差の問題の解明が必要である。
著者
立花 幸司 村瀬 智之 三澤 紘一郎 山田 圭一 土屋 陽介 佐藤 邦政
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

哲学と教育哲学のあいだには研究交流の不在が国内外でたびたび指摘されてきた。このプロジェクトでは、お互いの活動に理解のある哲学者(立花・山田)、教育哲学者(三澤・佐藤)、教育実践者(土屋・村瀬)が一つのグループとなって緊密な共同研究を行うことで、日本という教育文化的風土をフィールドとして、よき認識主体としてもつべき徳と避けるべき悪徳を明らかにする。そして、この解明を通じて、理論的に妥当で教育実践上も有効な徳認識論の一つの理論を構築する。
著者
江島 晶子 戸波 江二 建石 真公子 北村 泰三 小畑 郁 本 秀紀 薬師寺 公夫 阿部 浩己 村上 正直 齊藤 正彰 鈴木 秀美 大藤 紀子 戸田 五郎 門田 孝 申 惠ボン 山元 一 中井 伊都子 馬場 里美 西方 聡哉 須網 隆夫 愛敬 浩二 徳川 信治 前田 直子 河合 正雄 菅原 真 辻村 みよ子 根岸 陽太 村上 玲
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は、グローバル化する世界における法のありようとして、「憲法の国際化」と「国際法の憲法化」という現象における両者の接合面に注目し、人権実施における問題点を明らかにしながら、より実効的な人権保障システムに関する理論構築を目指した。その結果、「憲法の国際化」と「国際法の憲法化」の接合面において比較憲法と国際人権法の積極的接合関係を観察することができ、人権保障の実効性を高める新たな人権保障システムを構築することは可能であり、そこでのキー概念は多元性、循環性、非階層性であることが析出できた。
著者
北島 満里子
出版者
千葉大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

正倉院薬物「冶葛」の基原植物マチン科アジア大陸系Gelsemium elegansと同属北米産系G.sempervirensについて生理活性物質の大量供給と新規薬理活性物質・生合成中間体等の取得を目指し細胞・組織培養体の取得と二次代謝成分の探索を行った。また、これら植物についてDNA系統解析を試みた。1.植物本体と細胞培養体の含有成分の比較のためG.sempervirens植物本体について含有成分の精査を行った。その結果、茎部メタノール抽出物より既知アルカロイドGelsevirine,(Z)-Akuammidine,11-Methoxyhumantenineとともに新規オキシインドールアルカロイド4種、新規イリドイド1種を含む7種の化合物を単離することができた。また、HPLCによる部位別含有アルカロイドパターンの分析を行っている。2.タイ産G.elegans、北米産G.sempervirens葉・茎部より誘導したカルスの培養を行った。大量増殖したG.sempervirensカルスでは、β-Sitosterolなどテルペン4種が単離されたがアルカロイドは認められず、アルカロイド生産酵素系が発現していないことがわかった。また、G.sempervirensの液体培養においてジャスモン酸、イーストなどの添加による含有成分の変化について検討中である。3.G.sempervirens葉・茎部を用いてアグロバクテリウム感染による毛状根の誘導を試みている。4.タイ産G.elegansと北米産G.sempervirensについて遺伝子レベルでの差異を調査するため、DNA抽出を試みた。同じくマチン科のマチン、ホウライカズラとともにシュ糖含有抽出バッファーの使用により葉部からのDNA抽出に成功した。現在種々のプライマーによるPCRを行い、検出バンドの比較を行っている。
著者
小池 英勝
出版者
札幌学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

コンテナ流通混雑問題は,世界経済に影響を与えるできるだけ早く解決するべき重要な問題である。この混雑問題を解消するための一つの手段として,船積が始まる前に船積時間が最短になるようにコンテナの再配置が行われる。しかし,この再配置の最適な手順を求めるのは難しい。再配置の手順が最適でなかったり,手順の発見に時間がかかれば,混雑解消はできなくなる。本研究の目的は,コンテナの最適な再配置の手順を計算機で高速に発見することで,混雑を解消することである。最適性や完全性(解を全て列挙できること)を両立する独自のアプローチでこの問題の計算方法を開発し,その有効性を実験システムを開発して実証する。
著者
國廣 悌二 吉田 賢市 菊池 勇太
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

汎関数くりこみ群に基づく密度汎関数理論(FRG-DFT)を発展させ「ハミルトニアンから出発した実践的な密度汎関数理論の確立」を目指す。具体的な課題は以下の通り:(1) 空間2,3 次元への適用、(2) スピンやアイソスピンなどの内部自由度の取り入れ、(3) 有限温度系への適用、(4) 非一様系への適用、(5) 上記のそれぞれについて励起モード/スペクトル関数の計算。(6) 第一原理計算に基づき流体方程式などの非平衡非線型ダイナミクスの導出を目指す。そこではその発展に申請者が寄与した力学系の縮約法である「くりこみ群法」とFRG-DFTを結び付けた理論を展開する。
著者
小笠原 信夫
出版者
東京国立博物館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

大和鍛冶は奈良時代の中央集権の頃より存続していたはずであるが、この期の直刀から湾刀へ移り、荘園・武士の起りなと時代の推移に鍛冶がどのような状況にあったかという事は皆目判っていない。文献及び現存作品から大和鍛冶の存在が明らかとなるのは鎌倉時代後期である。これは大和五派と称される千手院、当麻、保昌、手掻、尻懸の各派であるのだが、その中で手掻派が美濃へ、別に千手院派が美濃赤坂へ移ったことは古くから伝えられているところであり、他に越中国宇多派が大和国宇陀郡から、薩摩国波平派、備後国国分寺助国など大和鍛冶の影響をうけたという旧説は肯定すべきところである。今回の研究で明らかとなったところは、大和にはこの五派以外にもいくつかの流派が存在したことであり、奥州鍛冶宝寿も大和鍛冶と直結するものであり、吉光と称する鍛冶で有名なものは京粟田口派の藤四郎吉光であり、これと銘振りの異なるものを土佐吉光、藤四郎吉光の偽物とみなされていたが、大和吉光を名乗る鍛冶が数代にわたって存在したことが確認され、文献から土佐吉光との関連が窺われるところである。また室町中期でほぼ手掻派が断え、代って金房派が出現するのであるが、金房派がとのようにして出現したか全く明らかにされていなかったものが、作品資料からある程度手掻派との関連が明らかとなった。また金房正真、勢州正真、三河文殊正真など正真を名乗る鍛冶が無縁でないことも今回の調査の成果であきらかとなったことである。結論として、旧説を覆すような大きな成果はなかったものの、こまかい空白を埋めるいくつかの成果を得たところである。
著者
風間 孝 菅沼 勝彦 河口 和也 堀江 有里 清水 晶子 谷口 洋幸 釜野 さおり 石田 仁
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、セクシュアリティおよびジェンダーの軸と、階層・階級、人種・民族、地域、国籍といった軸とを交差させるなかで、日本においてクィア・スタディーズを展開していくことを目的とした。その結果、法制度や社会調査、社会制度設計において、理論研究と実証研究の問題意識とが交流のないままに研究が進められている現状が明らかとなり、研究成果を他の学問分野および(市民)社会領域と交流させていくことの意義と緊要性が確認された。
著者
長澤 市郎 佐藤 道信 小野寺 久幸 三浦 定俊 真貝 哲夫 稲葉 政満 信太 司
出版者
東京芸術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

明治期彩色彫刻の制作技法、彩色技法を解明することを目的とし、作品の保存方法、修復技法の開発などを研究目的とした。作業は構造調査と制作技法の解明から始めた。目視及び現状記録のため、数種のカメラによる撮影を行った。彩色層の浮き上がりを記録する側光撮影も行った。内部構造解明のため、技芸天像、神武天皇像のX線透視撮影を行った。撮影にはイメージングプレートを用い撮影の迅速化、画像処理の便を図った、X線フィルム撮影も行った。結果を16bit出力とし画像ソフトを用いて処理し、構造を解明しディジタル出力で画像にした。その結果、技芸天像は江戸の制作技術を用いず、室町時代以前の木寄せ法を用い、釘、鎹も同時代の形のものを大量に使用している事、これはシカゴ万国博覧会出品を意識して強固に制作したものであろう。像の内部構造には傷みも無く、金具類に錆も見られず健全である。問題は表面彩色層の傷みの原因である。傷みの原因調査と強化処置のテストを行った。クリーニング作業に水が使えないので、数種類の混合液でテストを行った。剥落止め作業でもアクリルエマルジョンに代えて、アクリル樹脂を用い、時間差を利用して洗浄と固定を行う方法を見つけた。彩色顔料の調査に携帯形蛍光X線器機を用い、非接触で短時間に結果を知る事が出来た。顔料に含まれる微量タンパク質(膠)の含有量を算出する研究を行った。彩色下地技法の調査を行い今回の傷みとの関連を調べた。高村光雲が使った木寄せ図面から模型を造り江戸期造仏技法を検討した。日本の仏像修理の歴史を検証し、美術院修理方法を近世文化財修理へ応用が可能かを調べた。修理の資料として立体を計測する実験を3Dレーザースキャニングを用いて行い好成績を収めた。
著者
坂本 優子 本田 由佳 時田 章史 鈴木 光幸 荻島 大貴 松岡 正造
出版者
順天堂大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

300人の対象者のリクルートを終え、ほぼ全員の血液検査・栄養アンケート・紫外線暴露量アンケート・ビタミンD関連遺伝子多型の結果が出そろった。現在、データ解析中であるが、いくつか興味深い結果が出ている。対象妊婦のエネルギー充足率の平均は71.2%であり、足りていなかった。25(OH)Dの中央値は10.3 ug/m Lであり、90%が<20 ng/mLだった。25(OH)Dの中央値で2群に分けると,紫外線からのVitD生成量は中央値未満群で、中央値以上群より有意に少なかった(p<0.05)。食事からのビタミンD摂取量は25(OH)Dと相関しなかったが、紫外線からの生成量はよく相関した。ビタミンD結合タンパクの遺伝子多形が血中25(OH)Dと関連していた。これらの結果から、妊婦のほとんどがビタミンD不足であること、エネルギー必要量が足りていないことが発覚し、妊婦の健康を守上でも食事を見直す必要があった。ビタミンD不足の原因を考える上で、紫外線からの生成量の少なさには注目すべきであり、紫外線を避ける傾向にある妊婦に正しい指導が必要であると考える。対象妊婦とメールで連絡を取り合い、生まれた子どもたちのあしの写真と栄養アンケート・紫外線暴露量アンケートを収集している。回答率は概ね80%を超えており、良好である。生後3ヶ月のTibio femoral angle(TFA)は6.5度95%CI 5.3度で内反の狭い範囲の中に収まっていた。TFAと母体の血液検査値との間に相関は認めなかった。写真による計測ではあるが、今後、生後6ヶ月、1年、1年半と縦断的に下肢アライメントを測定する今回の研究は、下肢アライメントの変化を表す貴重なデータとなる。
著者
山内 直人 赤井 伸郎 石田 祐 稲葉 陽二 大野 ゆう子 金谷 信子 田中 敬文 樽見 弘紀 辻 正次 西出 優子 松永 佳甫
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)」の定量的把握および統計的分析からその経済社会的効果を分析し、政策的意義について検討・評価することを目的としたものである。 研究の成果を通じて、抽象的概念であるソーシャル・キャピタルの定量的把握に関する手法を開発、新しいソーシャル・キャピタル指標を提示し、それを用いた実証分析を行うことが可能となった。また、これまで十分に解明されてこなかったソーシャル・キャピタルの日本的特徴を把握し、多様な政策対象とソーシャル・キャピタルとの関係性に関する理論的、実証的示唆を得るとともに、ソーシャル・キャピタルの社会的意義や政策的インプリケーションに関する検討課題や論点を整理した。
著者
岡田 二郎 本木 和幸 中川 哲 杉村 東陽 藤崎 顕彰 内田 誠一
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、動物集団がしばしば示す同期的行動として、干潟で高密度に群生する短尾甲殻類チゴガニのウェービング(オスがハサミを繰り返し振上げる求愛行動)に注目した。近隣個体間におけるウェービング同期のメカニズムを明らかにするために、任意のタイミングで動作可能なウェービング模倣ロボットを開発し、実験室内でカニの行動とロボットの動作との時間的関係を調べた。個々のカニは対面するロボットに対して先行するようにウェービングを行うこと、カニ集団中におけるロボットの稼働はウェービングの同期の程度を変容させることを明らかにした。さらにウェービング遂行中のカニのハサミ運動筋から電気活動を記録することに成功した。
著者
宇野 雄一
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

チップバーンは、カルシウム欠乏時に発生する野菜の生理障害であり、収穫物の商品価値と収量を低下させる.本研究では,レタスのチップバーン抵抗性の簡易評価法を確立し、同方法により選抜した感受性品種が栽培時の指標品種として利用できることを確認した.また,チップバーンの原因遺伝子として、カチオン/H^+アンチポーターをコードするCAX遺伝子を一候補とみなし、レタスから4種類の遺伝子(LsCAX2, 3a, 3b,および5)を単離し解析を行った。そのうち、2種類の遺伝子がコードするタンパク質にはCaの輸送特異性に関与する2つの領域が高度に保存されていた.さらに、CaCl_2によるLsCAX遺伝子の発現誘導において、抵抗性品種と感受性品種との間に差異があり、同遺伝子がチップバーンと関係している可能性が推察された。AtDREB1Aを別の原因遺伝子候補と考え、同遺伝子を過剰発現させたレタスのチップバーン抵抗性をコントロールと比較した結果、チップバーン発生葉率が有意に高いことが明らかとなり、ストレスとチップバーンとの関連性が示唆された。
著者
Kim MinKyung
出版者
名古屋商科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

The purpose of this study is to develop machine scoring algorithms that can predict human scores of Japanese English as a foreign language (EFL) student writing samples across three writing genres (i.e., emails, descriptions, and persuasive essays). Japanese EFL undergraduate students will be recruited. Findings will provide a comprehensive understanding of writing features that distinguish higher- and lower-quality writing across multiple genres. The developed scoring algorithms will be freely available online to help EFL teachers and students better understand higher-rated writing features.
著者
原田 尚美 西野 茂人 広瀬 侑 木元 克典
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2015-05-29

本研究の目的は、極域に生息する海洋生物特に、食物網の底辺を支える植物・動物プランクトンに着目し、昇温や海洋酸性化に代表される環境の激変に対してこれら低次生物がどのように応答するのかを明らかにすることを目的としている。具体的には、西部北極海を研究対象海域とし、1)酸性化の脅威にさらされている炭酸塩プランクトンの応答の定量的評価、2)亜寒帯域に生息する植物プランクトン種の温暖化による極域進出の可能性の把握、3)他の海域に生息する種には見られない極域プランクトン種の特異的な機能を明らかにすることを目的としている。平成30年度は以下の研究を実施した。1海洋観測:西部北極海に2点設置したセジメントトラップ係留系の回収ならびに再設置とともにCTD/採水観測、各種センサーによる観測も行う。また、回収された係留系に蓄積された1年分の各層の流向・流速データについて衛星観測による海氷広域分布データとともに時系列の解析を行う。以上の計画どおり実施した。2海洋観測試料分析/データ解析ならびに遺伝子分析手法開発:回収された時系列セジメントトラップの生物起源粒子について検鏡による群集組成と18SrRNA配列を用いた定量的群集解析を実施する計画であった。検鏡観察による群集組成解析はほぼ計画通り実施したが、遺伝子解析については、再度、ホルマリン試料からの遺伝子レスキューの過程の見直しを実施しているところである。3プランクトンの培養・飼育実験ならびにMXCT法開発:北極海由来のプランクトンの炭化水素合成系酵素遺伝子について、現在も引き続き探索を行なうとともに、炭化水素合成量がこれまでより単位細胞あたり1桁多くなるような生育培養条件を見出す事ができた。MXCT法については、新たにオートサンプラー開発を行い、プランクトンの骨格密度測定の効率を上げ、高精度な解析が短時間で可能になるようシステムの高度化を行った。
著者
木庭 顕
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

11-12世紀にローマから占有慨念が受け継がれた後も、西ヨーロッパではこの概念は十分には定着せず、そもそもその正確な概念内容が理解されるためには15-6世紀の人文主義を要した。しかるにこの概念こそ、およそ法学的概念体系、特に民事法、民事訴訟、の発展のために鍵を握るものであった。この研究の基本的なねらいは、人文主義における概念の正確な把握の過程と、実務における概念の定着を、必ずしも矛盾無しではない画像としてギャップを描くことに存した。つまり単なる乖離ではなく、相互作用や相互克服の試行錯誤として把握するということである。人文主義つまり学識法の側においては、従来の学説史ではあきたらず、概念の掘り起こしのための思考や装備の問題に焦点をあてて再考することを目指し、一定の成果を得た。つまり人文主義ローマ法学のみならず、人文主義一般のテクスト解釈メカニズムに立ち入り、占有概念の古典的形姿を再発掘する様を分析しようと試みた。特に、16世紀フランスの人文主義法学にも固有の限界が認められ、これが社会の真の問題に鋭いイムパクトを与え得ない結果を将来するのではないかとの見通しを得た。しかしながら、このことを実務法学の側の悪戦苦闘、ディレンマ、の描き出しによって裏付ける作業は、緒に就いたばかりであり、かつ後続の研究計画が認められなかったため、一旦ここで終結せざるをえない。とはいえ、若干の文献に触れた限りにおいて言うならば、確かに一旦正確な占有訴訟の原則は理解されたとはいえ、従来考えられていたように、直ちに占有概念は十全な形で定着したのではなく、特におそらく17世紀に入って行くに従って、よく機能し始めた占有訴訟自体が、一方では単純な物の取り戻しのために、他方では凡そ平和秩序維持のために、使われ、再度混乱に向かっていくのではないかと考えられる。確かにそうでなければ、19世紀になってのサヴィニーによる大整理は必要なかったであろう。
著者
土屋 礼子
出版者
大阪市立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

エフェメラ・メディアのデータベースを構築するために、2009年度に引き続き、これまで収集してきた第二次世界大戦時の対日宣伝ビラの画像を同定しながら、全部で約8600点の資料画像を入力し、これを同一のビラごとに整理して番号を振り、各ビラの複数のイメージと英文説明資料をまとめて一つの項目として引き出せるようにした。その結果、約1700種類の対日宣伝ビラの資料が存在することが確認された。このうち、約350種類が英国制作、約350種類がオーストラリア制作、約800種類が米国制作であり、残り約200種類は中国制作また制作国不明のものである。さらに各ビラの日本語の文章をテキストデータとして入力した結果、キイワードによる検索が可能になった。これによる得られる幅広い知見の一部を示せば、日本人では「陛下」(67)という語による天皇への言及が多く、「天皇」(54)には明治天皇(9)が含まれ、「東條(首相)」(56)が次いで多いこと、国では「米国」(254)が最も多く登場するが、次いで「ドイツ(獨逸など)」(233)も多いこと、地名では「東京」(246)が最も多い以外は、「ビルマ」(199)「比島(フィリピンなど)」(187)など戦闘に関係した場所が頻出すること、敵国の軍隊では、「連合軍」(404)「米軍」(398)の言及が多く、他は「英軍」(81)「濠軍」(7)と極端に少ないこと、「爆撃」(308)は頻出するが、「原子爆弾」は1件しかないこと、「戦友」(176)よりも「指揮官」(143)「司令官」(119)への言及が多く、また戦争の責任の所在は、「軍閥」(112)に求められていること、戦争に否定的な「敗戦」(78)「戦死」(76)などの語が多く登場する一方で、「平和」(197)「自由」(125)「戦後」(121)といった肯定的で希望のある語も多いことなどが明らかになった。研究計画では、制作に関する情報や資料、流通散布や受け手に関わる情報などを付加する予定であったが、今年度ではビラの画像とテキストのデータベースを完成するだけで精一杯であり、その公開と拡充は今後の課題である。