著者
石川 勇一
出版者
日本トランスパーソナル心理学/精神医学会
雑誌
トランスパーソナル心理学/精神医学 (ISSN:13454501)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.62-86, 2016 (Released:2019-08-06)

本研究では、第一にアマゾン・ネオ・シャーマニズム の外的概要とこれまでの心理学/精神医学的研究の展 望を行い、第二には、ネオ・シャーマニズムの内的心 理過程について、現象学的な事例検討を行い、初期仏 教の視点からの検証を加えた。その結果、事例からは、 深層心理の強烈な浄化体験、悪業の自覚、懺悔、自我 の死と再生の過程、異界(餓鬼界と兜率天)体験、業 と業果、縁起と無我の法の感得、多次元における法友 (シャーマン、儀式のメンバー、神々、霊的鳥、精霊たち、 ジャングル全体)との出会い、世界との一体感などの 体験が明らかにされた。以上の事例研究と多くの先行 研究とを総合すると、アマゾン・ネオ・シャーマニズム は、心の準備が十分に整った人々にとって、適切な宗 教的環境が整っていれば、きわめて強力で豊かな心理 療法的効果と霊的成長への効果をもつ、貴重な伝統で あると結論できる。
著者
古川 聡子 河口 勝憲 岡崎 希美恵 辻岡 貴之 通山 薫 佐々木 環
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.563-568, 2018-07-25 (Released:2018-07-28)
参考文献数
6

2008年にクレアチニン(Cre)から算出した推算glomerular filtration rate: GFR(eGFRcre)が,2012年にはシスタチンC‍(Cys)から算出した推算GFR(eGFRcys)が公表され,推算GFRは臨床現場で簡便な腎機能の指標として活用されている。しかし,しばしばeGFRcreとeGFRcysが乖離する症例に遭遇する。そこで,今回eGFRcreとeGFRcysはどの程度一致するのか,また乖離症例にはどのような特徴があるのかを検証した。全症例(n = 226)での相関関係は回帰式y = 0.92x + 2.44,相関係数r = 0.868と良好な結果であったが,CKD重症度分類のGFR区分におけるeGFRcreとeGFRcysの一致率は55.8%と約半数であった。不一致例はeGFRcreと比較し,eGFRcysの区分が軽い症例と重い症例が同等に存在し,どちらか一方への偏りは認めなかった。さらにGFR区分が2段階以上異なる症例は8症例で全体の3.5%であった。eGFRcys/eGFRcre比の比較では,その比が最も1.00に近かった60歳代を基準とすると,若年では高く,高齢では低くなる傾向を認めた。また,eGFRcys/eGFRcre比は体表面積が大きいほど,血清アルブミンが高値なほど高くなる傾向を示し,高度蛋白尿では低値となった。腎機能評価においては,各推算式の特徴や乖離要因を把握した上で使用することが重要である。
著者
郷原 正臣 木村 一雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.2, pp.211-217, 2021-02-10 (Released:2022-02-10)
参考文献数
3

急性冠症候群は,冠動脈プラークが破綻(破裂やびらん)することで冠動脈内に血栓が形成され,急速に心筋虚血を生じることが主たる病態である.破綻以外の原因としては,冠攣縮の他,頻度は少ないが,冠動脈内への塞栓,冠動脈解離等がある.症状が心筋虚血に起因する場合は,バイタルサインを確認すると共に12誘導心電図を記録し,ST上昇の有無を判断する.より有効な治療を行ううえで,より迅速且つ確実な初期診断が重要である.
著者
山本 佑実 菅村 玄二
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.457-466, 2017-09-01 (Released:2018-03-01)
参考文献数
35

Focusing on the semantic similarity between physical and psychological pain, we tested whether people who are sensitive to their own bodily pain are also sensitive to the psychological distress of others. Forty-three undergraduates evaluated the subjective physical pain induced by a tactile stimulus. Then, they rated the negative emotions of the characters depicted in the Thematic Apperception Test (TAT) and the pro- and anti-social attitudes toward others. Also, we measured how fast they can detect negative facial expressions and negative emotional words. Result indicated that the high pain-sensitivity group (n = 23) projected more avoidant emotion to the TAT pictures (p = .07, d =0.67), and detected negative faces more fast (D =0.37, p = .07) than the low-sensitivity group (n = 20). The high group also felt more prosocial emotions (p = .02, d =0.76), and showed more critical attitudes toward bullying (p = .07,d =0.56). It seems unlikely that the relationship between the sensitivity of physical pain and the prosocial responses can be mediated by the judgment of psychological distress of others. Rather, it is more likely that physical pain can directly enhance the awareness of psychological distress of others and prosocial reactions to them.
著者
稲垣 兼一
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

松果体より分泌されるメラトニンは網膜から入る光刺激により負に調節され、生体内の概日リズム形成に寄与している。近年副腎ホルモン分泌についてもメラトニンが直接作用、調整する可能性を示唆する研究が報告されている。本研究では副腎皮質及び髄質モデル細胞株を用いて、副腎におけるステロイド及びカテコラミン分泌に対してメラトニンが直接的に及ぼす影響とその細胞内メカニズムについて検討した。その中でメラトニンが細胞局所因子や他のホルモン調整因子と連関し副腎内ホルモン合成を調整している可能性が示唆された。
著者
Hiroaki Isobe Takuya Takahashi Daikichi Seki Yosuke Yamashiki
出版者
Fuji Technology Press Ltd.
雑誌
Journal of Disaster Research (ISSN:18812473)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.230-236, 2022-02-01 (Released:2022-02-01)
参考文献数
55
被引用文献数
1

Space weather, or the disturbances of the plasma environment driven by the magnetic activities in the Sun in geospace, has become a potential source of disaster for modern society, which is increasingly dependent on its space infrastructure and large-scale power grids. Recently, independent pieces of evidence have been found that support the possibility of extremely intense space weather driven by a “superflare,” a solar phenomenon that modern society has never experienced. This paper reviews state-of-art studies of superflares and their potential impacts.
著者
丸島 歩
出版者
日本実験言語学会
雑誌
実験音声学・言語学研究 (ISSN:18836763)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.16-31, 2022-03-24 (Released:2023-06-15)
参考文献数
26

女性と男性の話し方の違いを音声面から観察するために、女性声優が演じた男性役と女性役の演技音声を比較した。ここでは特に、文末のイントネーションに着目することにした。また、イントネーションは性格印象に与える影響も大きいため、聴取実験によって分析した音声の役柄の性格印象に関するデータも得た。その結果、男性役では「平調」、女性役では「疑問型上昇調」を多く用いる傾向が見られたが、男性役では役柄の性格によっては「強調型上昇調」を多く用いていた。 また、役柄の性別を問わず、外向性が高く勤勉性が高くない役柄では、文末以外の切れ目に「上昇下降調」が多く観察された。
著者
中村 俊介 三宅 康史 土肥 謙二 福田 賢一郎 田中 幸太郎 森川 健太郎 有賀 徹
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.7, pp.312-318, 2011-07-15 (Released:2011-09-13)
参考文献数
19
被引用文献数
1

背景:熱中症の後遺症として中枢神経障害を生じた症例の報告は散見されるが,発生に関わる要因について検討されたものは少ない。目的:熱中症の臨床所見から中枢神経系後遺症の発生要因を明らかにする。方法:2006年,2008年に日本救急医学会熱中症検討特別委員会が実施した症例調査であるHeatstroke STUDY 2006およびHeatstroke STUDY 2008から中枢神経系後遺症を生じた症例,および対照として後遺症なく生存したIII度熱中症の症例を抽出し,各々の診療情報について分析を行った。結果:全症例数は1,441例であり,中枢神経系後遺症は22例(1.5%)で認めた。重複したものを含め後遺症の内容は,高次脳機能障害15例,嚥下障害6例,小脳失調2例,失語および植物状態が各1例であった。中枢神経系後遺症を生じた群の男女比は13:9,平均年齢は62.6歳であり,一方,後遺症なく生存したIII度熱中症は計286例で男女比213:72(不明1),平均年齢55.4歳であった。来院時の臨床所見については,中枢神経障害を生じた群で90mmHg以下の血圧低下,120/分以上の頻脈を多く認めたが,後遺症なく生存したIII度熱中症群との間に有意差はなかった。一方,Glasgow coma scale(GCS)の合計点,体温,動脈血ガス分析のbase excess(BE)において有意差を認め(各々p=0.001,p=0.004,p=0.006),また来院後の冷却継続時間についても有意差がみられた(p=0.010)。結語:中枢神経系後遺症の発生例では来院時より重症の意識障害,高体温,BE低値を認め,冷却終了まで長時間を要していた。中枢神経系後遺症を予防するためには,重症熱中症に対して積極的な冷却処置および全身管理,中枢神経保護を目的とした治療を早急に行うことが重要である。
著者
白 成美 山本 將 澤村 英子 齋藤 經生
出版者
学校法人 山野学苑 山野美容芸術短期大学
雑誌
山野研究紀要 (ISSN:09196323)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.33-47, 2008 (Released:2019-06-10)

仏像の中でも、とりわけその彫像表現が顕著に異様な仁王像(執金剛神像)について研究を行った。とくに筋肉美は、西洋の彫像からどのような影響を受け、どのような過程を経て仏像の形態表現に影響してきたかに注目した。インドで成立した仁王像はバジュラパーニとよばれた。その姿はヘレニズムの影響を受けており、西洋のヘラクレス神像に原型が求められるようである。その後中国に移入され、仏法の守護神としての威容を表わすうえに装飾品や天衣などの中国的要素が加わって、中国独自の仁王像として完成された。それは中国に伝来以来、時代と共に次第に変化し、北魏時代からは仏法の守護神としての威容を表わすために髻、憤怒の顔、威嚇するポーズなどの表現がみられるようになる。北魏のスリム形仁王像が六朝時代を経て、徐々に筋肉隆々とした逞しい姿になっていくが、唐時代ではその表現が誇張・装飾化された形となり、より一層の力強い写実的表現となった。唐代の影響を強く受けた韓国や日本でも、中国の仁王像のリアルな人間の美的表現の影響がみられる。韓国では、石窟庵の仁王像にみられるように、筋肉の形や天衣などに韓国独自の表現がされている。日本では、天平時代の仁王像には唐の影響がよく反映されているが、それ以上にはげしいポーズや表情などもみられ、体型やプロポーションにおいて、より充実した表現が認められた。鎌倉時代には、天平への復古を目指しながらも新たな中国(宋)の影響によって、生身に近い、生きているかのような仁王像が造られるようになった。この仁王権には、人体解剖学的に理解しにくい表現も散見されるにも係わらず、仏の守護神としての力強さや美しさが感じられる。それは美術解剖学的には成功した表現によると考えられる。日本でみられる仁王像は、ある日突然成り立ったものではない。長い年月、各国で造られた仁王像の影響を受けながら、信仰心を持って常に自然な姿、写実的な姿を追い求めた結果なのである。
著者
浅枝 隆 藤野 毅
出版者
THE JAPAN SOCIETY OF HYDROLOGY AND WATER RESOURCES
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.3-7, 1992-12-01 (Released:2009-07-23)
参考文献数
3
被引用文献数
14 4

夏期においてアスファルトとコンクリート舗装の熱収支を調べるために野外観測を行った。その結果, アスファルトの表面温度は57℃まで達し, 表面から放出される赤外放射量も670W/m2を記録した。これは, その時の下向き大気放射量450W/m2と比較すると実質上向きに220W/m2も放出されることになる。また, 顕熱量も昼間は300W/m2以上になり, これらは都市域の温暖化を考える際に大きな熱源となるものといえる.一方, コンクリートではアルベドが大きいために表面温度は高くならず, 同じ舗装面でもむしろアスファルトよりも土に近い傾向を示した.それぞれの地表面における熱収支では, 日中アルベドがほぼ等しいアスファルトと土についても, 熱伝導率・熱容量などの物性の違いや水分蒸発の有無による影響を受け, 大きく異なった特性を示した.さらに顕熱量の算定に当たっては, アスファルトのように表面が非常に高温になり, 風速が小さいときにはバルク式だけでは十分に見積もることができず, 対流による熱輸送を考慮して見積もる必要があることがわかった。さらに, それぞれの地表面での正味放射フラックスと地中熱フラックスの時間的な関係をループの形, 大きさで表し, それぞれの蓄熱特性の違いを特徴的に表現することができた。このように表すことより, その土地の熱的特性を知ることができる.
著者
知野 泰明 大熊 孝
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.440, pp.135-144, 1992-01-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
43

新潟平野の本格的な治水の変遷は, 近世中期の松ケ崎放水路の開削に始まり, 治水技術の近代化を待って, 大河津分水の完成をもって一応の完結をみた. その近代的治水技術の中心となったものは土工機械力, 近代的堰・水門及びポンプであった. これら近代技術の登場によって, 洪水時や平水時にかかわらず自由な流水のコントロールが可能となった. この新技術は明治後期の日本人技術者達の試行錯誤の上に成立つものであった.
著者
中田 吉英
出版者
一般社団法人 日本家政学会 食文化研究部会
雑誌
会誌食文化研究 (ISSN:18804403)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-8, 2022-12-25 (Released:2023-07-25)
参考文献数
19

本稿では,近世後期から近代の都市部商家における仏事儀礼で供された食事を,京都の商家に残された仏事記録から分析した。商家の当主の死に際して,喪家,親類,奉公人,使用人,出入商人,近隣住民らの間で十数回におよぶ共同飲食がもたれること,その料理の内容に関して仕立てと食材の固定的な関係があること,現代の京料理のイメージと比較して異同があることを示した。また,供応食の担い手として,近世から近代の京都の料理屋のひとつである仕出し屋について検討し,得意先が変わるサイクルと料理の変容,互いの地理的条件,支払いの記録を検討することで,商家と仕出し屋との関係性や依存の度合いについても考察を加えた。
著者
成田 亜希 安井 稚子
出版者
一般社団法人 日本予防理学療法学会
雑誌
日本予防理学療法学会雑誌 (ISSN:24369950)
巻号頁・発行日
pp.JPTP-D-22-00014, (Released:2023-04-28)
参考文献数
11

【目的】近隣2 市の理学療法士派遣事業の活動内容から,特別支援教育における理学療法士の役割と今後の展望を示す。【方法】A 市とB 市の教育委員会が実施している地域の公立小・中学校の特別支援学級・通常学級への理学療法士巡回訪問の内容を比較する。【結果】2 市ともに,生活指導,介助方法の指導,相談業務等を行うが,2 市が大きく異なる点は,A 市が医師の指示の下,肢体不自由児に医療行為を実施するのに対し,B 市は知的障害,発達障害児も対象であり,医療行為に代わり医療機関等の紹介や補装具業者との連携を図るところである。【考察】 理学療法士は,対象者や家族,教員の思いを直接聞きながら,学校内生活をサポートできる。また,継続した支援により児童生徒の特性を理解した進路のアドバイスも可能となる。特別支援教育における理学療法は,医療の知識や肢体不自由児への理学療法に加え,学校教育の知識,知的障害・発達障害児への学習場面での環境調整・課題難易度の設定等も重要である。
著者
秋田 一雄
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.215-216, 1999-06-15 (Released:2017-04-30)
著者
Seiji Takashio Teiji Kato Hikaru Tashima Hiroki Irie Yoshihiro Komohara Tetsuya Oguni Kei Morikawa Naoto Kuyama Noriaki Tabata Shinsuke Hanatani Eiichiro Yamamoto Kenichi Matsushita Mitsuharu Ueda Kenichi Tsujita
出版者
The Japanese Circulation Society
雑誌
Circulation Journal (ISSN:13469843)
巻号頁・発行日
pp.CJ-23-0223, (Released:2023-06-13)
参考文献数
31
被引用文献数
2

Background: Carpal tunnel syndrome (CTS) is considered an early sign of cardiac amyloidosis (CA) because amyloid deposition is often confirmed in the tenosynovium removed during carpal tunnel release (CTR); however, the prevalence of concomitant CA is unclear.Methods and Results: We prospectively examined 700 patients who underwent CTR and evaluated amyloid deposition after tenosynovium removal. Amyloid deposition was observed in 261 (37%) patients, who were significantly older and predominantly male (P<0.05). Of them, 120 agreed to cardiac screening. We performed 99 mTc-labeled pyrophosphate (99 mTc-PYP) scintigraphy in 12 patients who met either of the following criteria: (1) interventricular septal diameter (IVSd) ≥14 mm or (2) 12 mm ≤ IVSd < 14 mm with above-normal limits in high-sensitivity cardiac troponin T (hs-cTnT). Six patients (50%) had positive findings on 99 mTc-PYP scintigraphy and were diagnosed with wild-type transthyretin CA. Concomitant CA was observed in 6/120 (5%) CTR patients with amyloid deposition and 50% (6/12) in patients with left ventricular hypertrophy (≥12 mm) with increased hs-cTnT levels.Conclusions: Amyloid deposition was frequently observed in the removed tenosynovium of elderly men with CTS. Cardiac screening may be useful for early diagnosis of CA in patients undergoing CTR with amyloid deposition.
著者
嶋村 清
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.11, pp.560-576, 2008-11-15 (Released:2009-06-05)
参考文献数
81
被引用文献数
7 9 5

シービーム海底地形図およびJ-EGG500データをもとに日本列島海底谷系図を改訂した.大陸棚外縁から大洋底・海溝まで連続する谷線を持つ海底谷は天竜海底谷,富山海底谷および最上海底谷のみである.曲流を呈するのは釧路海底谷,広尾海底谷および谷末端水深が2000 m以浅の海底峡谷と深海チャネルに限られ,他の海底峡谷は屈曲を主とする適従谷である.ほとんどの海谷とガリ状海底谷および御蔵海底谷,黒瀬海底谷は必従的である.ガリ状海底谷は太平洋側の水深2000 m以浅に分布する.海底谷の縦断面形状は勾配の違いにより7区分される.縦断面は海域によらず1,2の傾斜変換点で連結した単斜谷の組合せからなる.海底谷地形は流動体による作用を示すが,海底谷の形成機構は堆積物重力流の作用だけでなく,海水準変動や地殻変動も併せて考慮するべきであろう.