著者
野田 昌吾 畑山 敏夫 神谷 章生 小沢 弘明 堀江 孝司 安野 正明 野田 葉 木下 ちがや
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、1960年代の異議申し立ての噴出=「1968年」について日欧米比較を行ったものである。近年「文化革命」としての性格が過度に強調される「1968年」であるが、本研究は、「1968年」は各国における政治的社会的近代化のあり方と冷戦的秩序のあり方の問題性を告発することにより、各国の戦後秩序の再編の大きな契機となったばかりでなく、冷戦的な国際秩序の再編を促す一つの要因ともなったことを確認し、その「文化革命」性の一面的強調の問題性を明らかにした。
著者
竹内 亮
出版者
奈良大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、長門国に置かれた古代日本の官営銭貨鋳造組織である鋳銭司を主たる研究対象とし、その実態や他の生産組織との比較を文献史学と考古学の双方の視点から研究することにより、古代日本における官営工房の運営システムの解明を目指した。その結果、長門鋳銭司では他の古代官営工房(飛鳥池工房、長登銅山)と同様の工人管理システムが採用されており、このシステムが古代日本の官営工房で一般的であったことが明らかになった。
著者
谷口 奈央 廣藤 卓雄 中野 善夫
出版者
福岡歯科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

喫煙は、タバコのタールの臭いの他に、喫煙によって引き起こされる唾液分泌減少、舌苔付着促進、歯周疾患などにより、口臭に関係すると考えられる。口臭は主に舌苔に棲息する細菌によるアミノ酸代謝過程で発生し、舌苔はタバコの煙に直接曝露されるため、喫煙により舌苔細菌叢が受ける影響も口臭に関係すると推測される。本研究では、喫煙が唾液と舌苔の細菌叢に与える影響を、臨床的に健康な口腔環境を持つ若者を対象として調べた。福岡歯科大学口腔歯学部6年生50名(喫煙18名、非喫煙32名)を対象に唾液と舌苔を採取し、サンプルより抽出した細菌DNAから16S rRNA遺伝子をPCRによって増幅し、高速シーケンス解析法を用いて細菌叢解析をおこなった。その結果、菌叢の多様性解析では喫煙群と非喫煙群との間に有意な違いはみられなかった。一方、属レベルで比較解析をおこなったところ、喫煙群ではDialister属、Atopobium属など、口腔内の病的状態と関係する細菌が高い割合でみられた。ブリンクマン指数(1日喫煙本数×喫煙年数)との相関分析では、Selenomonas属、Bifidobacterium属が正の相関を示した。Selenomoas属は歯周炎など病的状態で多く分離される運動性桿菌である。Bifidobacterium属はタバコの主流煙が酸性であることから酸性環境下に強い菌の割合が多くなった可能性が示唆される。本研究で得た成果を国内の複数の学会で発表した。また、論文執筆ために過去の喫煙と口腔細菌叢に関する研究報告を収集したものを総説にまとめ投稿した。
著者
土屋 葉 時岡 新 渡辺 克典
出版者
愛知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、「障害」と「女性」という異なるポジショナリティの上に置かれている、障害女性を取り囲む差別構造を明らかにすることである。平成29年度は、前年度にひきつづき、生活史法を用いて障害のある女性への聴きとり調査を行った。身体障害のある女性については、中部地区のみならず関西地区においてもネットワークを通じてアプローチした。また、発達障害および知的障害のある女性の支援者に対してパイロット調査を行うと同時に、調査方法について示唆を得た。平成29年度中期には研究会を開催した。まず「交差性(intersectionality)」概念について検討した。調査研究の課題についての認識を共有し、前年度および今年度前期に行った調査から得られた「生きづらさ」に関する具体的な事例から、知見の共有化を図った。とりわけ医療・介助場面、恋愛・結婚・生殖をめぐる問題、精神障害のある女性の経験について、これまで得られたインタビューデータから検討を加えた。具体的には、医療および介助場面において性別と障害、その他の要素がどのように「複合」しているのかを考察し、情報の不足、アクセシブルではない施設や機器、医師の偏見などがあることを明らかにした。また、恋愛・結婚・生殖の領域は必ずしも障害者差別解消法における合理的配慮の範疇にはおさまるものではないが、障害女性の生きづらさを解明する上では重要であることを指摘した。精神障害のある女性の経験については、身体症状からくる困難、女性役割に関する規範意識、雇用に結びつきづらい現状について述べた。これらに加え、障害をもった/発症した年齢や地域性、居住形態等の要素が、女性たちの生きづらさに影響を与えることを示唆した。以上について、2つの学会において報告を行った。
著者
杉浦 真由美
出版者
奈良女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

iPS細胞の臨床応用のために必須である「iPS細胞の質の評価」を分子レベルで可能にするため、細胞株間の質、特に分化多能性と関連する分子的特徴を解析した。ヒストン修飾に注目して分化能の程度が異なる細胞株間の比較や薬剤処理による多能性回復過程における解析を行い、活性型ヒストン修飾がiPS細胞の多能性の程度と関連し得ることを示した。さらにヒストン修飾関連因子のうちc-Mycと特定のHDACが標的ヒストン修飾や細胞の分化状態に影響を与える可能性を示した。これらの相関はES細胞ではみられなかった。また、複数のiPS細胞のゲノムを詳細に解析し分化能の違いはゲノム安定性の差によるものではないことを確認した。
著者
加藤 聖文 黒沢 文貴 松田 利彦 麻田 雅文 カタソノワ エリーナ バルターノフ ワシリー キム セルゲイ ムミノフ シェルゾッド フセヴォロドフ ウラジーミル
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

研究実施前から把握されていたロシア国防省中央公文書館(CAMO)が所蔵する関東軍文書のすべての画像データを入手し、目録を作成した。また、研究成果の一部として、ロシア側研究者らを招いて2017年2月24日に法政大学において国際会議「第二次世界大戦史研究(ソ連における外国人捕虜問題)」を開催し、60名以上の参加を得た。しかし、今回収集した関東軍文書は1990年代のロシア混乱期に明らかになった文書と異同があることが明らかになった。今回収集した文書の公開に加え、これらの未確認文書の調査に関しては、ロシア側と交渉を行ったが、研究期間内に解決することができず、現在も協議が継続中である。
著者
石川 日出志 七海 雅人 中野 泰 佐藤 信 平川 新 平川 南 千田 嘉博 川島 秀一 浅野 久枝 竹井 英文 八木 光則 安達 訓仁 宇部 則保 菅野 智則 斉藤 慶吏 佐藤 剛 菅原 弘樹 高橋 憲太郎 千葉 剛史 福井 淳一 室野 秀文 小谷 竜介 辻本 侑生 藤野 哲寛
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

気仙地域は、海・陸域の複合生態系が豊富な資源を生み出し、縄文時代から現代までそれらを活用した人類営為が展開した。本研究は、当地域の歴史文化を歴史・考古・民俗学の手法で研究し、地域の方々と行政に提供する。これは甚大な東日本大震災被害から復興する当地域の方々を支援する取組でもある。調査は多岐に亙る。考古学では、古代・中世の漁撈関係遺物・集落遺跡データの集成、被災地域石碑の所在調査、中世塚・板碑群調査、中世城館群の縄張図作成等。歴史学では、中世遺跡群と文献史料との比較、熊谷家近世文書群の調査、大島正隆論文の公開等。民俗学では横田・小友地区で民俗慣行の調査と実施。3か年市民向け報告会を開催した。
著者
磯谷 順一 谷井 孝至 小野田 忍 寺地 徳之 川原田 洋 角谷 均 Fedor Jelezko
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2014-04-01

室温量子スピンとして優れたNVセンダ同士の相互作用に着目した。量子レジスタの多量子ビット化をめざして、短い距離(~13 nm)のNVセンダ配列を規則的なナノホール配列をもつマスク注入により作製する技術を開発した。平均距離~5nmの高濃度NVセンタを作製し、離散的時間結晶の生成を室温で実証した。単一NVセンタにもナノホール注入を応用し、量子センサー・アレイを作製した。量子アルゴリズムを高磁場測定と組み合わせたナノNMRにおいて超微量の試料のケミカルシフトを観測する高分解能を達成した。高品質結晶合成により、結晶中の離れた位置のSiV-センタから識別できない単一光子を発生することに成功した。
著者
若山 照彦
出版者
山梨大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤を用いてクローン技術の成功率を改善することに成功し、この技術を用いることで16年間凍結保存されていた死体からのクローンマウスの作出に成功した。一方、従来再クローニングには限界があると言われていたが、この技術により再クローンを25回以上繰り返すことに成功し、1匹のドナーマウスから600匹ものクローンマウスを作ることに成功した。初期化異常は蓄積されないことが初めて示された。
著者
眞鍋 昇 宮野 隆 酒巻 和弘 若山 照彦 杉本 実紀 中山 瑞穂
出版者
東京大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2001

脊椎動物は多様な生殖戦略をもつ。魚類の多くは数万〜数億のなかで幸運で優れた仔だけが生き残る。逆に、哺乳類は性周期毎に1〜10個の卵母細胞を排卵し、極わずかの仔を産み、それを大切に育てる。成熟した哺乳類卵巣には、胎児期に減数分裂の途中・ディプロテン期で休止した5〜100万個の卵母細胞が含まれ、これが性周期毎に発育・成熟して排卵に至る。この過程で、最終的に排卵にいたるものの100倍以上の卵胞が発達を開始し、99%以上が選択的に死滅する。この卵胞の選択的死滅は優秀で強靭な子孫を残す戦略として重要であるが、これを調節している分子制御機構は未解明である。本研究は、哺乳類卵巣において繰返される卵胞の選択的死滅を支配している分子機構を解明し、これをもとに細胞死を制御している遺伝子の発現をin vivo制御することで卵胞発育を人為的に支配しようとするものである。この新技術で、食肉処理場で捨てられる卵巣内の卵母細胞の有効利用を実現しようとしている。今年度は実証的研究に注力した。卵胞顆粒層細胞に特異的に発現している新規細胞死受容体を認識するユニークなモノクロナル抗体を用いてデコイ受容体を同定し、その発現動態を明らかとした。さらに細胞死受容体を介する細胞内アポトーシスシグナル伝達系を担うカスパーゼ系を阻害するcFLIPを見いだして遺伝子とアミノ酸配列を決定した。これの発現を腫瘍壊死因子α調節し、その制御に多面的機能をもつinterleukin-6が重要に関わっていることを示唆した。併行して、大型家畜の未成熟な卵胞を含む卵巣片を免疫不全マウス腎漿膜嚢に異種移植し、in vivo遺伝子導入とRNA発現阻止(iRNA)にて人為的に制御できるシステムを開発した。
著者
若山 照彦
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2003

卵子及び精子の凍結保存には定期的な液体窒素の補充が不可欠であり、長期間安全に維持するためには膨大な経費が必要である。そこで我々は精子および卵子の簡便な室温(非凍結)保存法の開発を試みた。従来の凍結保存に使われている試薬(グリセロールなど)は非凍結保存では毒性を示し、保存後の精子から産子を作ることはできなかった。しかし我々は高濃度のNaClを保存液に加えると精子の保存性が促進されることを発見した。この「塩漬け」方法では、保存中の精子の先体部が破けるなどのダメージが生じ、すべての精子が保存直後に死滅してしまうが、顕微受精技術によってそれらの精子を卵子内へ注入することで室温では10日間、4℃では2ヶ月間保存しても高率に産子へ発育させることが可能になった(Thaun et al., 2005)。これは従来の記録(室温で3日、4℃で1週間)を大幅に塗り替えている。以前我々は精子の凍結乾燥法を開発したが、今回の方法は高価な凍結乾燥機を必要とせず、より簡便な方法である。一方我々はこの方法が卵子にも効果があるかどうか検討してみた。その結果室温で24時間保存した卵子から顕微受精によって産子を作出することに世界で始めて成功した(Wakayama et al., 2004)。これまで卵子の室温保存は数時間が限度とされていたことから、本方法は精子だけでなく卵子においても有効であることが示されている。これらの研究から生殖細胞の保存にはDNAにダメージがなければ、細胞の生き死には重要ではないことが明らかとなった。また我々は生殖細胞を持たない不妊マウスからでも、体細胞核移植技術などを利用して子孫を作出する方法も開発中である(Wakayama et al., 2005)。
著者
太田 正穂 浅村 英樹 高柳 カヨ子 福島 弘文 猪子 英俊
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

昨年度、HLA遺伝子多型について日本人と他の集団における遺伝子頻度、ハプロタイプ頻度の分布の比較を行い、そのデータベースを作成した。東北アジアに位置する日本民族は、韓国、東南アジアを経た幾通りの民族移動により形成されていることが、HLAの遺伝子頻度やハプロタイプ頻度、さらには対応分析から明らかであった。このような経緯から日本人には、近隣の民族と共通するHLA遺伝子やハプロタイプも存在するが、近隣の民族とは異なった日本人に特徴的なHLA遺伝子やハプロタイプも確認できた。実際の検査で、他民族と共通性の示すHLA遺伝子やハプロタイプが得られたときの解決策として、HLA領域内にあるマイクロサテライトの有用性を検討した。はじめに日本人、イラン人、ギリシャ人、ヨルダン人、イタリア人、カナダ人のDNAを用いてHLA-B座近傍のマイクロサテライトタイピングを行い、各ローカスの遺伝子頻度分布を作成した。つぎにHLA型がホモ接合体である64種類のセルラインを用いて、同型ハプロタイプ間でのマイクロサテライトのアリルの比較を行った。さらに、日本人で最も多く見られるハプロタイプをもつ人のDNAを用いて角解析を行った。これらの結果、HLAが一致したハプロタイプを保有していても、HLA遺伝子間に存在するマイクロサテライトを調べることにより、より詳細な識別が可能であった。以上から微量、陳旧性資料を日常扱う法医鑑定実務では、高感度で精度が良いHLA-SPP法によるHLAタイピングとHLA領域内にあるマイクロサテライト解析は人種判定に有効な方法であることが示唆された。しかし、HLA遺伝子多型では、十分条件ではないので、今後ミトコンドリDNA多型、Y染色体上のマイクロサテライト、常染色体上のマイクロサテライトに関して日本人を含めた世界的な規模でのデータベース作成が必要であると考える。
著者
山口 拓洋 岩瀬 哲 後藤 悌 山本 大悟 小田桐 弘毅 坪井 正博 川口 崇
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

PRO-CTCAE 日本語訳 東北大学/東京大学/JCOG版について、平成23年度から実施したがん患者へのインタビュー調査の結果をまとめ、言語的妥当性、原版との文化的・意味論的同等性、言語的流暢性を評価した。JCOG1018試験で使用する9項目(下痢、活力低下、手足症候群、吐き気、手足の痺れ等)のfeasibility studyの結果から本尺度は臨床試験において測定可能と確認した。計量心理学特性は米国で既に検討がなされている為、欧米の先行研究結果と大きな差異がない事の確認を目的とするバリデーション研究を計画し、タブレット入力が可能となるようなプラットフォームの開発も同時に進め、登録中である。
著者
田中 久雄 落合 清茂
出版者
山形大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

平成元年度〜3年度の3ケ年において、主に福島県鮫川村から塙町東部にわたる地域と、郡山市東部の宇津峰周辺の地域に分布する深成岩類と変成岩類の地質調査を行い、地質図を作成すると共に岩石の記載を行った。鮫川村から塙町東部にわたる地域には片状黒雲母角閃石ト-ナル岩、黒雲母花崗閃緑岩類、竹貫変成岩類が錯綜して分布する。それらの岩石は棚倉構造線に近づく従い、石英の細粒化・波動消光・伸長、斜長石の変形双晶・波動消光、黒雲母のキンクバンド・波動消光などの変形組織を呈する。この変形組織は棚倉構造線東縁部に近接した岩石で最も著しく、構造線から離れるに従い無変形組織の岩石に漸移しており、後者の岩石が生成した約1億年前には棚倉構造線がすでに活動したことを示している。塙町湯船の、石川深成岩体の閃緑岩と竹貫変成岩類の角閃岩が接する露頭において、角閃岩の部分融解により多数の細脈が生成した現象を見いだし、この露頭の岩石の詳細な記載を行った。角閃岩中の細脈は組織・鉱物組合せ・化学組成において、はんれい岩質から閃緑岩質・ト-ナル岩質・トロニエム岩質へと連続して変化しており、角閃岩の部分融解により生成した溶液が種々の程度に分泌・分化したと推定される。郡山市東部の宇津峰付近にはユ-クセン石、モナズ石、ゼノタイム等の希元素鉱物を含むペグマタイト脈が分布する。このペグマタイト脈をもたらした深成岩類について調査・研究を行い、深成岩類のモ-ド組成、主要・微量化学組成、造岩鉱物の化学組成を明らかにした。含希元素鉱物ペグマタイトをもたらしたと推定されている新期斑状両雲母花崗岩類は、阿武隈山地の深成岩類の中では最もSiO_2に富み、Sタイプに類似した岩石学的性質を示す。
著者
藤枝 繁 小島 あずさ 大倉 よし子
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

太平洋を漂流する海洋ごみの流出地を明らかにするため,2010 年 4月から黒潮流域の伊豆諸島,小笠原諸島,北太平洋海流流域のミッドウェー環礁,ハワイ諸島,米国西海岸,黒潮上流域の台湾ののべ 307 海岸等において,14,647 本のディスポーザブルライターを採取した。ライターに記載された店舗名等から流出地を判別した結果,伊豆・小笠原諸島,ミッドウェー環礁,ハワイ諸島では,日本の太平洋沿岸を含む東アジアを流出地したものがほとんどを占めたが,台湾では日本からの漂着は見られなかった。
著者
池上 高志 高橋 宏和
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

ロボットと神経回路の間のフィードバックループ系を設計する。培養された神経回路、あるいは、人工神経回路を使ってロボットの運動行為を制御し、ロボットがセンサーを通じて得た環境からの情報を神経回路にフィードバックする。この刺激と行動のくりかえしの閉回路の動作を調べて、1)神経回路の成長を情報のネットワークの変遷で特徴つけ、2)閉鎖回路をつくることで、ネットワークはある構造をつくることと、3)そのパターンの成長は「神経回路は外から刺激されるのを避ける原理」が働いていること、を発見した。
著者
古崎 新太郎 茅原 一之 伊藤 義郎 信川 寿 小夫家 芳明 江川 博明
出版者
東京大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1989

総量約42億トンと計算される海水中の溶存ウランを工業的に採取する技術の確立は、エネルギー政策上極めて重要である。採取法として、ウランを選択的に吸着する固体吸着剤を用いる吸着法が実用性が高い。本研究では、経済的な海水ウラン採取プロセスの確立をめざして、1.吸着速度が大きく、また繰り返し使用に対して耐久性のある吸着剤の製造方法の確立、2.大量の海水との接触に適した中空繊維および粒状繊維吸着剤を用いる接触装置の評価、および3.海流、波などの自然力を利用した吸着剤と海水との接触装置の開発を行った。本研究によって得られた新しい知見、成果は次の点である。1.合成条件を工夫して比表面積の大きいアミドキシム樹脂を合成した。この樹脂はアルカリ処理後、1日当たり100ー200mg/kgーRという高いウラン吸着量を示した。2.イミドジオキシム基の大きな平衡定数、アルカリ処理に伴うアミドキシム基の消失という事実から、優れたウラニル吸着剤として、イミドジオキシム構造を主として与える条件で調製した繊維状吸着剤を用い、一日の吸着で650mg/kgーRのきわめて優れた吸着速度を達成した。3.キャピラリー繊維状アミドキシム樹脂を充填した海流利用吸着装置周辺の流れを数値解析して、実験結果と比較した結果、吸着装置を流れ込みのない構造体として扱ってよいことを示した。さらに、びょう風型吸着装置のサイズとウラン採取量との関係を求めた。4.海流と波力を利用する浮体式ウラン採取システムのコストは、現在開発されている吸着剤の性能(20日間で6g/kg)の10%の回収率において、174千円/kg/yearとなった。5.圧力損失の結果に基づいて循環流動層式吸着装置のスケールアップを検討したところ、黒潮海流を直接利用して運転するとき、接触部槽高は約1ー3mになるという結果を得た。6.海流を直接利用して、吸着剤流動層を流動化し、ウランを吸着する四角錐型吸着装置は三角柱型吸着装置に比べ、どのノズル径でも良好な流動状態が得られ、最大充填率も上回った。
著者
竹本 幹夫
出版者
早稲田大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

1、江戸時代の能は、幕府で行われた四座の能、地方諸藩の大名の下で行われた四座の弟子筋に指導された能、地方在住の町衆や農民による神事能、諸国を巡業する群小猿楽役者の辻能の四種に大別される。2、その担い手は、幕府直属の役者である四座の役者及びその弟子筋と、四座以外の系統の役者とに分かれる。四座の系統の役者がいわゆる玄人猿楽であり、それ以外の役者は手猿楽と呼ばれていた。3、四座の役者がそれ以外の系統の役者を圧倒し、能に志す者が四座の家元の印可を得るようになり、幕府直属の能役者、その弟子筋のお抱え役者や雇い役者、さらにその弟子の町役者という一枚岩の構造へと、江戸時代を通じて徐々に整えられていくのであるが、その過程がすなわち家元制度の完成過程でもあった。4、将軍の四座の能愛好に迎合して多くの大名がその弟子の能役者を育成・雇用したため、武士本来の職務から能方に転じる者もあり、また浪人していた武士階級の多くが役者に転身して仕官の道を求めるようになった。5、このようにして誕生した武家役者は武士とも役者ともつかぬ中途半端な身分であったが、多くは次第に役者として専門化した。養子を迎えて役者の家業を継がせ、自分の嫡子には武士の道を歩ませる者もあった。6、藩の方でも、神事能大夫に扶持や名字帯刀の格式を与えて藩の制度に取り込んだり(熊本藩の場合など)、辻能の興行を藩当局の権威を背景として藩の役者が妨害・弾圧したり(加賀藩の場合など複数の例がある)、ということが行われた。そうした動きが全国的な傾向かどうか、またいつごろから具体化しはじめるかを解明するのが今後の課題であろう。
著者
清水 政明 柿木 重宜 冨田 健次 川口 健一 岩井 美佐紀 春日 淳 田原 洋樹
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、現在日本における学習者人口が日々増加の一途をたどるベトナム語の学習成果を客観的に測定する基準を策定するべく、その検定試験の内容・形態・評価方法を確定するための基礎的研究を遂行した。ベトナム本国において教育・訓練省が策定する海外在住ベトナム人のベトナム語能力測定基準案等を参照し、ベトナム本国との連携関係を保持しながら徐々に改良・発展させることが可能な形態を有する検定試験の制定を目標とした。
著者
馬場 真理子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-04-22

2017年度の研究計画では第一に、2016年度の研究に引き続いて陰陽道及びその関連分野(天文道・暦道)における術数の展開を追うことを予定していた。この点について、2016年度は古代から中世にかけての変遷を追ったが、2017年度は近世にまで視野を広げて研究を行った。その結果、古代以来密接に結びついていた天文占や暦注などのいわゆる「迷信」的な部分と数理に関わる部分が、近世における西洋天文学の導入を受けて峻別されるようになったこと、しかしその過程で中国・日本における「伝統的」な思想と西洋天文学を擦り合わせるための多様な努力がなされたことなどを明らかにした。この成果は2018年3月にシカゴ大学との合同ワークショップにて発表し、学際的な視点からの指摘・助言を受けることができた。また、大阪市において資料調査を行い、古代から近世にかけての天文道に関する資料を収集した。2016年度の反省として中国における術数との比較ができなかったことを挙げていた。これについては、古代中国の堪輿との比較検討を進めるため、前段階として同テーマに関わる英語論文の翻訳を行った。当該翻訳は『中國出土資料研究』に掲載される予定である。加えて、宗教学的な視点での研究が進められなかったことも2016年度の反省点であった。2017年度は「聖なる時間と俗なる時間」という宗教学における重要なテーマに本研究を接続させたいと考えていた。したがって古代から近代にいたる「聖」概念の展開を追った。その成果をまとめた論文は2018年度中に思想誌『nyx』に掲載される予定である。