著者
吉田 聡 立花 義裕 小松 幸生 山本 雄平 藤田 実季子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

日本に豪雨をもたらす水蒸気は熱帯・亜熱帯の暖かい海から蒸発し、陸上へ流入する。しかし、極軌道衛星搭載マイクロ波放射計による鉛直積算水蒸気量(可降水量)の1日2回の観測では数時間で数kmの範囲に局所的な豪雨をもたらす降雨帯への水蒸気流入を把握することはできない。本研究では、船舶に搭載したGNSS受信機及び雲カメラ付きマイクロ波放射計と、新世代静止気象衛星ひまわり8号の多チャンネル熱赤外センサとの高頻度同時観測を元にした、海上可降水量の微細構造を水平解像度2kmかつ10分毎にリアルタイム推定する高解像度海上可降水量マップ作製手法を開発し、豪雨災害予測の定量化と早期警戒情報の高精度化に貢献する。
著者
戸次 加奈江
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では、室内外の環境中で有害性が指摘されるイソシアネートについて、フィルターと個体捕集の組み合わせにより粒子及びガス状成分を対象とした新たな測定方法(GFF_SCX-DBAカートリッジ)を確立した。本手法について、イソシアネートの発生源を有する作業環境中での妥当性評価と,一般住宅での汚染実態調査を行ったところ、測定手法の精度及び安定性が確認され、一般住宅からは、イソシアン酸(ICA)、メチルイソシアネート(MIC)、プロピルイソシアネート(PIC)など揮発性の高い数種類のイソシアネートが検出された。
著者
渡辺 千香子 本郷 一美
出版者
大阪学院大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2021-07-09

従来、古代西アジアのライオンは「インドライオン」と考えられてきた。しかし新アッシリア時代のライオン狩り浮彫には、異なる2種類のライオンが描き分けられ、ライオンの身体的特徴と連動して身体のサイズが異なることから、両者の違いは個体差ではなく、異なる亜種か品種であった可能性が浮上する。古代の文献には「平原生まれ」と「山生まれ」のライオンが登場し、ライオンを意味するシュメール語とアッカド語には2種類ずつの語彙がある。ここからこの地域のライオンが必ずしも単一種ではなく、未知のライオンが生息していた可能性が浮上する。本研究は古代西アジアのライオンの実態を、図像・文献・動物考古学の学際的視角から探究する。
著者
馬場 悠男 松井 章 篠田 謙一 坂上 和弘 米田 穣 金原 正明 茂原 信生 中山 光子
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

上野寛永寺御裏方墓所から発掘された徳川将軍親族遺体のうち保存の良い15体の人骨について、修復・保存処理を施し、形態観察・写真撮影・CT撮影・計測を行って、デジタルデータとして記録保存した(馬場・坂上・河野)。さらに、遺骨の形態比較分析(馬場・坂上・茂原・中山)、ミトコンドリアDNAハプロタイプ分析(篠田)、安定同位体による食性分析および重金属分析(米田他)、寄生虫卵および花粉分析(松井・金原他)を行い、親族遺体の身体的特徴と特殊な生活形態を明らかにした。
著者
篠田 知和基 吉田 敦彦 丸山 顕徳 松村 一男 中根 千絵 鈴木 正崇 不破 有理 服部 等作 山田 仁史 立川 武蔵 後藤 敏文 荻原 真子 木村 武史 後藤 明 廣田 律子 近藤 久美子 竹原 新 坂井 弘紀 諏訪 春雄 小松 和彦 鷹巣 純 栗原 成郎 依田 千百子
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009-04-01

世界神話の基本的な二元構造を日本神話、ギリシャ神話、エジプト神話、インド・イラン神話、オセアニア神話、シベリア神話、アメリカ神話などにさぐった。明暗、水中の火、愛の二元性、罪と罰、異界と常世などのテーマでシンポジウムをおこない、それぞれの論文集を刊行した。生死、善悪の問題はそのつど検討された。最後は聖と穢れについて総括討論会をおこなった。その結果、世界神話は聖なるものを水中の火のような矛盾した概念のなかに追及するものであることがあきらかになった。
著者
澤田 秀夫 宮嵜 武
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

JAXA60cm磁力支持天秤装置を用いた風洞実験と高速度カメラを用いた野外実験の二つの手法で和弓矢の空力特性を測定することに成功した。風洞試験結果を用いて矢が軸周りに回転する効果をモデル化し、クロスボウの矢についても風洞試験と野外実験により空力特性を得ることができ、抵抗係数では両者に合理的な一致を見た。風洞試験では、矢が軸周りに回転している状態や、矢の軸が水平面内で1次モード弾性振動をしている状態で空気力を測定する磁力支持天秤技術を獲得した。
著者
山田 昌樹
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2017-08-25

本研究では,大規模カルデラ形成時の津波リスク評価に向けたモデルケースを確立することを目的として,7300年前の鬼界カルデラ噴火によって発生した津波規模の解明を試みる.本年度は,既に所持していたアカホヤ津波堆積物コアの分析を進めた.具体的には,イベント砂層が津波によって運搬されたものであることを識別するために,堆積プロセスを推定するための粒度分析,砂層の内部構造を観察するためのCT画像撮影,そして供給源を推定するための地球化学分析を行った.また,アカホヤ津波堆積物の空白域である九州地方西岸のデータを得るため,長崎県五島列島においてハンドオーガーを用いた掘削調査を行なった.しかしながら,五島列島の沿岸域は沈降量が大きく,アカホヤ火山灰層の層準まで掘削することができなかった.津波シミュレーションについては,東京大学地震研究所の計算機で「JAGURS」というプログラムを使用した.まずは,カルデラの大きさと崩壊時間を仮定して数値計算を行い,アカホヤ津波堆積物が見つかった地点に到達するのにかかる時間と津波の高さを推定した.その結果,60分かけて崩壊した場合には,カルデラ崩壊の約150~180分後に和歌山県や徳島県,別府湾沿岸地域に3 m以下の津波が到達し得ることが明らかになった.現在は,カルデラ崩壊のパラメーターを変えながら繰り返し数値計算を実施している.加えて,火砕流の流入による津波シミュレーションにも取り掛かり始めている.
著者
卞 哲浩 三澤 毅 宇根崎 博信 代谷 誠治
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)において実施された加速器駆動未臨界炉(ADSR)の基礎実験から以下のような結論を得ることができた。1.ポリエチレン反射体領域に中性子ガイド(中性子遮蔽体およびビームダクトから成る)を導入し炉心内に設置した放射化箔の照射実験を行うことで、中性子ガイドの効果と妥当性を実験的に確認することができた。2.炉心中心およびターゲット領域において放射化箔法による中性子スペクトル測定を行った結果、放射化反応率およびアンフォールディング法によって中性子スペクトル情報を取得し、14MeV程度の中性子のスペクトルを把握するために最適な放射化箔を実験から選定することができた。また、放射化反応率をモンテカルロ計算コードMCNPによって求めることによって計算精度の確認を行うことができた。3.FFAG加速器から発生する100MeV程度のプロトンビームに照射したタングステンターゲットの放射化反応率測定から、100MeV付近の高エネルギー中性子のスペクトル情報に関する実験手法を確立することができた。同時に、FFAG加速器を角いたMCNPXによる解析では、アンフォールディング法によってスペクトル情報に関する解析が可能であることがわかった。今後の課題として、1.FFAG加速器の導入に伴い、プロトンのエネルギーが20〜150MeVでの反応度および反応率分布の静特性解析に加えて動特性解析をMCNPXを用いて行い、ADSR炉心の最適化設計を行う予定である。2.FFAG加速器の導入において、ターゲット付近での中性子の発生を従来よりも精度良く正確に把握するための測定手法の確立とモンテカルロ計算による計算精度の向上を検討する必要があると考えられる。
著者
伊東 乾 添田 喜治
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

ルクセンブルク大司教座大聖堂、バイロイト祝祭劇場を始めとする西欧教会・オペラ劇場を、従来の建築音響学に存在しなかった儀礼や演出の空間性、僧侶や歌手の発声の特質を踏まえた非線形音響の枠組みで詳細測定・解析し、教会・劇場内音響の動的異方性を始めて明らかにした。海外での測定評価の準備として国内でも同様の実証を東大寺二月堂、新国立劇場などにおいて行い、宗教建築内での伝統儀礼が言語の明瞭性や没入感など、音声言語の脳認知と密接に連関している可能性を、物理測定によって始めて示した。旧来顧慮されてこなかった垂直方向の音源移動評価のため6軸相関計等を開発し、高所からの歌声や話声が抱擁感を持つ機構を解明した。
著者
福士 雅也 川上 秀史 外丸 祐介 坂口 剛正
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ALSは、運動ニューロン(運動の指令を大脳から筋肉まで伝える神経)が選択的に変性・脱落し、その結果、筋肉が動かなくなり、2~5年で呼吸筋麻痺により死亡する。現在、日本では約1万人の患者がいるものの、有効な治療法は確立されていない。我々は、これまでにオプチニューリンがALSの原因遺伝子であることを突き止めた(Nature, 2010)。家族性ALS患者ではオプチニューリンが機能欠失していることから、本研究では、オプチニューリン・ノックアウトマウスや、そのマウス細胞にウイルス感染を行った。その結果、オプチニューリン欠損では、野生型コントロールよりもIFNb産生量が増加することが判った。
著者
安井 裕之
出版者
京都薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本仮説のProof of conceptが達成、実現されれば、得られうる成果の中で最大のアウトプットは「細胞外ATP代謝の破綻が引き起こす様々な炎症性疾患の根本原因が、亜鉛欠乏症に依る亜鉛要求性酵素の活性低下に基づくものである」と言う炎症性疾患の新しい治療概念や治療分子標的を生み出すものである。3年間で申請した本研究の最終目標は、研究代表者がこれまで探索してきた高活性の亜鉛錯体を用いることで、上記のターゲットバリデーションが正しいかどうかを研究協力者(同研究室の准教授、助教、博士研究員、学生)の協力を得て多方面から詳細に検討し、亜鉛錯体によるIBDの治療戦略が可能かどうかを提案することにある。
著者
相馬 充 谷川 清隆 山本 一登
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本書紀と続日本紀にある日食・月食・星食・流星等の天文記録を詳細に調べ,地球自転変動等を考慮する現代の天文学の手法により,それらの天文記録の真偽を明らかにした.その結果,7世紀に日本で観測天文学が始まったこと,7世紀の観測天文学は進歩と衰退が繰り返されたこと,さらに7世紀の終わりから8世紀全体にかけて観測が記録されなくなり,7世紀の終わりに観測天文学が衰退し,天文学に対する態度が変化したことが明らかになった.
著者
御前 明洋
出版者
北九州市立自然史・歴史博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

白亜紀の軟体動物殻表面には付着生物化石が普通に見られることがわかった.ノストセラス科アンモノイドPravitocerasやDidymocerasの殻表面に高い頻度でナミマガシワ科二枚貝が付着していたことを明らかにし,その産状の解析から,これらのノストセラス科異常巻アンモノイドの古生態の推定を行った.大型アンモノイドに付着するベッコウガキ科二枚貝の産状より詳細な埋没過程を復元した.
著者
高田 礼人
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

ウイルス感染症の対策として、ワクチン接種による予防が最も一般的であり効果が期待される。ワクチンは生ワクチンと不活化ワクチンに分類されるが、生ワクチンは安全性の問題、不活化ワクチンは免疫原性の弱さの問題が、それぞれ短所として挙げられ、双方の短所を克服した安全で効果的なワクチンの開発は困難である。特に、生ワクチンは短期間で作出することが不可能であるため、発生頻度が増している新興感染症に対して迅速に対応するためには、不活化ワクチンの効率的な開発および接種法の改良が求められる。本研究では、ウイルス感染に広く認められる抗体依存性感染増強現象(ADE)に着目した。この現象は、ウイルスが抗体を利用してマクロファージや樹状細胞等の抗原提示細胞に効率よく感染するためのメカニズムであると考えられている。本研究では、この抗体の特性を利用して抗原提示細胞に目的の不活化ワクチン抗原を効率よく取り込ませるための手法を開発し、液性免疫および細胞性免疫の両方を誘導する安全なアジュバントとしての抗体の可能性を探る。不活化ウイルス抗原として、ショ糖密度勾配遠心によって精製したエボラウイルスのウイルス様粒子をウイルス表面糖蛋白質に特異的なADE抗体、中和抗体およびどちらの活性も示さないモノクローナル抗体とそれぞれ混合し、マウスの皮下または腹腔内接種して、経時的に血清中の抗体応答を解析し、異なる性質を持つこれらの抗体の間に差が認められるか否かを解析したが、明らかな差は認められなかった。
著者
井上 厚史 権 純哲 中 純夫 邊 英浩 邢 東風 李 暁東 木村 純二 吉田 真樹
出版者
島根県立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

東アジアにおける朝鮮儒教の位相を解明すべく、従来の性理学から実学へという通説を再検討する一方で、朝鮮王朝建国時にまで遡り、儒教的建国理念、鄭道伝と『朝鮮経国典』、『朱子家礼』の導入、徐敬徳の理気論、16世紀朝鮮儒学者の人心道心説、李退溪と朝鮮心学、李栗谷と儒教の土着化、李匡臣の理気論、韓元震の王陽明批判、李星湖の『孟子』解釈、丁若鏞の政治論、沈大允の歴史館、李炳憲と高橋亨、朴殷植の開化思想など、朝鮮儒教を特徴づける重要なテーマの抽出に尽力し、その結果として、新たな朝鮮儒学史を記述する研究成果を積み重ねることができたと考えている。
著者
上野 淳也
出版者
別府大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本へ大砲(後装砲)が伝来した過程とその展開を明らかとする為、欧州・東南アジア及び国内で実測と金属サンプルの採取調査をおこなった。ロシア砲兵博物館では、大友宗麟のものとされる大砲の分析結果を発表し、フランス軍事博物館及び王立ベルギー軍事博物館では戦国武将藤堂高虎と佐竹義宣のものと考えられる和製大砲を発見した。国立マレーシア博物館ではイスラム砲の調査を、ポルトガル・スペインでは伝来大砲のルーツに関する調査を実施した。戦国時代の和製大砲は、西欧砲にルーツを持ち、伝播過程において東南アジアのイスラム系技術がこれに大きな影響を与えて成立したものである事を、理科学的な裏付けをもって説明できた。
著者
内田 智士 弓場 英司
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

メッセンジャーRNA (mRNA)を用いたがんワクチンは、患者毎に異なるネオ抗原を標的とした設計が容易であり、かつ抗がん免疫を得る上で重要な細胞性免疫を得られるといった特長を持つ。一方で、ワクチンには、抗原とともに、免疫賦活化のためのアジュバントの投与が必要となるが、mRNAワクチンに適したアジュバントの開発は行われてこなかった。まず、本研究では、mRNAに2本鎖RNA構造を組み込むことで、アジュバント機能を組み込んだmRNAを開発するが、この設計は安全性が高く、さらに抗原提示細胞に抗原とアジュバント共送達できるといった利点を持つ。従来我々が開発したシステムでは、mRNAに2本鎖構造を付与した結果、その翻訳活性が若干低下した。本年度の研究で、2本鎖構造を再設計した結果、翻訳活性を損なわず、高い免疫賦活化作用を示すmRNA構造見いだすことに成功した。さらに、mRNA導入により惹起される炎症反応の強度を制御することにも新たに成功したが、この点は、ワクチン効果を得るのに必要十分な強度の免疫賦活化作用を得ることで、安全かつ効果的にmRNAワクチンを投与する上で極めて重要である。また、mRNAワクチンでは、脾臓やリンパ節といった免疫組織にmRNAを効率的に送達することが必要となるが、そのためには輸送担体に免疫組織指向性のリガンドを組み込むとともに、標的組織への送達前のmRNA酵素分解を防ぐことが必要である。本年度の研究で、2本鎖RNA構造を組み込む際に用いた方法論を、mRNA輸送担体の安定化に展開することで、生体内でのmRNA酵素分解耐性の飛躍的向上に成功した。以上のように、mRNAワクチンに必要な、mRNA設計、及び輸送担体設計において、優れた成果を得ることができた。
著者
大場 裕一
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

不明であった発光キノコの発光メカニズムの解明を目的に、発光反応産物(ルシフェリン酸化物)の化学構造の解明と、ルシフェラーゼ(発光酵素)の特定を試みた結果、そのどちらも明らかにすることができた。また、ルシフェリン酸化物がカフェ酸を介して再びルシフェリンへとリサイクルされることを発見し、発光キノコが持続的に発光する仕組みを解明することができた。
著者
大沼 克彦 久米 正吾 濱田 英作 岡田 保良 宮田 佳樹 川又 正智 佐藤 宏之 早川 裕弌
出版者
国士舘大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

4年にわたるキルギス現地調査と国内関連研究は、キルギスにおける紀元前12000年から1500年(中石器時代から後期青銅器時代)にかけた遊牧社会形成の実体の解明に向けて大きく前進した。発掘をおこなったすべての遺跡において、中石器層から青銅器時代層のあいだには1万年ほどの空白があり、連続性がないことは、中央アジアの遊牧社会の形成に関する、西方からの遊牧民移住、在地農牧民の専従遊牧民化という2つのシナリオのうちの前者がより妥当であることを提起する重要な成果である。今後は調査・研究をキルギス周辺地域に拡大し、中央アジア全体という巨視的観点で遊牧社会形成の経緯と地理的多様性を探求していく。