著者
石川 遥至 内川 あかね 風間 菜帆 鈴木 美保 宮田 裕光
出版者
日本マインドフルネス学会
雑誌
マインドフルネス研究 (ISSN:24360651)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.15-26, 2020 (Released:2022-02-22)
参考文献数
29

近年,マインドフルネス瞑想のプログラムは,欧州などを中心に小中学校を含む教育現場に応用されており,日本への導入も検討されている。大学の多人数講義における瞑想実践の効果に関して,量的な検討は少ない。本研究では,大学学部生を対象とした1学期間の講義の冒頭で,5分間の集中ないし観察瞑想を実施し,講義終了時における気分および動機づけ状態を含む心理的効果を検討した。その結果,5分間瞑想を実施した講義回では,実施しなかった回よりもリラックスの得点が有意に高かった。また,瞑想の出来に関する自己評定が高い学生は,自己評定が低い学生よりも,リラックス,講義への集中度,理解度,興味の得点がいずれも有意に高かった。これらから,講義冒頭における瞑想の実践は,講義時間中を通して望ましい心理的効果を持つことが示唆される。一方,瞑想の出来に対する自己評価と瞑想の種類も,これらの効果に関連しているかもしれない。
著者
西郡 仁朗
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.172, pp.18-32, 2019 (Released:2021-04-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1

高齢化社会が進む日本において,介護福祉分野の人材が不足していると言われて久しい。このため日本政府は様々な形態で介護福祉の分野への外国人の受け入れを進めている。しかし,これは日本だけの問題ではなく,アジア各国での社会経済・医療福祉の発達,人口動態の変化などにより,国際的な問題となりつつあり,日本が人材の受け入れを進める際にも国際的な施策や配慮が必要である。また,介護福祉の分野は,介護する側と利用者との日本語でのコミュニケーションが非常に重要である。 本稿ではここ十年,著者を含む日本語教育者が学会・研究会活動や公学連携活動などを通じて取り組んできた外国人介護福祉士受け入れの改善に関わる運動や,介護福祉分野で必要な日本語能力の分析,特に「介護のCan-doステートメント」などについて概説する。また,2019年4月から開始される「特定技能」制度での介護の日本語教育の問題についても触れる。
著者
西北 健治 井尻 朋人 鈴木 俊明
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.222-228, 2021-12-31 (Released:2022-05-11)
参考文献数
21

【目的】本研究は,体幹傾斜角度と頸部の角度を変化させたリクライニング車椅子姿勢と嚥下困難感との関係を明らかにすること,また顎舌骨筋と胸骨舌骨筋の座位姿勢の筋活動量と嚥下困難感との関係を明らかにすることを目的とした.【方法】対象は健常成人10名とした.課題は ① 姿勢保持の筋活動の測定,② 9パターンの姿勢での嚥下動作,③ 各姿勢での嚥下困難感の回答とした.座位姿勢は頸部屈曲20°,中間位,伸展20°の3 パターンと体幹傾斜80°,70°,60°の3 パターンを組み合わせた9 パターンを設定した.嚥下困難感は安静座位(頸部中間位,体幹鉛直位,股関節,膝関節共に屈曲90°,足底は床面接地)での嚥下を基準として,10 が最も飲み込みやすいとした0~10 で回答させた.筋活動の測定は顎舌骨筋と胸骨舌骨筋とした.【結果】頸部屈曲20°,中間位,伸展20°いずれにおいても,体幹傾斜60°が80°より有意に嚥下困難感の値が低値であった.そして,体幹傾斜60°かつ頸部伸展20°は他の肢位と比べ嚥下困難感の値が最も低値であった.またリクライニング車椅子座位姿勢時の顎舌骨筋,胸骨舌骨筋の姿勢時筋電図積分値相対値と嚥下困難感に有意な負の相関を認めた.顎舌骨筋はr =-0.50,胸骨舌骨筋はr =-0.54 であった.【結論】体幹傾斜60°かつ頸部伸展20°は,他の肢位と比べ嚥下困難感の値は低値であり,その要因として,姿勢保持時に顎舌骨筋と胸骨舌骨筋の筋活動の大きさが関係すると考えられた.嚥下困難感を生じさせないためには,顎舌骨筋と胸骨舌骨筋の筋活動が少ないポジショニングを検討することも一つの指標になると考えられた.
著者
小川 綾乃 浅井 さとみ 宮澤 美紀 髙梨 昇 下野 浩一 梅澤 和夫 宮地 勇人
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.448-455, 2021-07-25 (Released:2021-07-28)
参考文献数
4

診療のために多用されている超音波検査は,感染対策を怠ればアウトブレイクの原因につながる可能性があり,超音波検査用ゼリー(以下,ゼリー)の衛生管理は院内感染防止のために重要である。本研究は超音波検査実施におけるゼリーとゼリーウォーマ(以下,ウォーマ)の衛生的使用状況を明らかにするため,細菌学的な環境調査を行い,結果に基づく衛生的使用方法について検討した。ゼリーボトル使用開始から終了まで,始業時と終業時にゼリーおよびウォーマから培養検査を行った。その結果,検出された細菌はいずれも環境中またはヒトの常在菌であり,著明な細菌の増殖は確認されず,衛生的な運用がなされていると考えられた。しかし,易感染患者の検査の実施ではより衛生的に使用することが望まれる。リスク低減のため検査開始時には汚染の危険性のあるボトル先端部のゼリーを破棄することや,終業時にはウォーマを清掃・消毒することも有用であると考えられた。
著者
LAI SHANGYU 于 濰赫 池田 真利子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2023年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.233, 2023 (Released:2023-04-06)

日本統治時代を経験した台湾・韓国には,現在でも数多くの有形・無形の関連遺構が存在する。戦後,両地域の政府は戦後体制の確立のなか,日本統治時代の遺構の撤去・破壊を行った。一方で,1990年代にはこの撤去・破壊に対する市民運動が発生し,これを機に日本統治時代の遺構を文化財として認識する機運が高まり,以降,これらの遺構は「遺産化」されるようになった。また,2000年代以降の登録文化財制度の新設により,日本統治時代の遺構の文化財指定・登録は一層進み,工場や旧官僚社宅のような「大型の日本統治時代遺産」を中心に積極的な活用が行われるようになった。台湾ではイギリスの文化創造政策の影響を受けた「文化創意園区」が統治時代遺産で発展し(于・池田,2020),また群山・木浦・大邱等を例とし,韓国の地方都市では観光資源として積極的に活用される場合もある。これらの文化遺産を巡る視点は,双方の国の戦後体制において流動的に変化し,また1990年代の台湾本土化運動では台湾のアイデンティティの一部として受容され,新たに意味付けられる側面も確認される。 さて,日本統治時代遺産に関する文献や先行研究は複数あるが,これらは大型の日本統治時代遺産に注目したものが主体であり,また,地権者が民間・個人に帰属するため,保存・活用の難しい「リトルビルディング遺産」を扱った文化遺産学的研究はない。また,文化遺産を巡る視点が絶えず変化し,せめぎあうなかで,「リトルビルディング遺産」の利用者は,なぜ,どのような視点に基づき,どのようにそれらを利用しているのか等,関係主体へのヒアリング調査が極めて意味を有する一方で,台湾・韓国においてもこれらの研究は不足する。 したがって本稿の研究目的は,台湾・韓国における日本統治時代遺産を対象として,その形成背景と保存の経緯を概観するとともに,なかでも延べ面積が100坪以内であり,住宅用途以外で使用される「リトルビルディング遺産」に焦点を当て,利用の現状を明らかにすることである。 本研究は,文献調査(先行研究や報告書の現地入手),データベース作成(各文化省データベースのほか,書籍,Web情報),現地調査の順に行った。また現地調査では,計14件の半構造化インタビュー調査(所要時間40分~1時間程度)を行った。本研究対象地域は,いずれも旧日本人高級住宅街として形成された台北の旧御成町・旧幸町,およびソウルの厚岩洞(以下,旧三坂通)である。 本研究では,台湾,次に韓国で日本統治時代遺産の保存・活用の体制が整備されたこと,そしてこれらは大型の日本統治時代遺産に顕著であるのに対し,リトルビルディング遺産は民間において都市開発の回避や景観条例の制限等の結果,消極的かつ偶発的に残されていること,またこれらを使用する動機として日本統治時代の遺構であることは弱く,同様に流動的な対日感情がこれらの利用に影響を与えてはいないこと等が明らかとなった。論争的な側面を有する植民地遺産の一例は,保存・活用を自明のものと捉える態度に疑問を投げかける。他方で,これら有形の遺構は,日常的に使用されることで結果的に残され,過去の歴史的記憶の参照を可能とする。
著者
高見 勇一 佐竹 恵理子 伴 紘文
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.427-432, 2015 (Released:2015-11-20)
参考文献数
16

【目的】小児の初回無熱性発作の再発率を検討する. 【方法】2008年11月1日から2012年10月31日までに初回無熱性発作があった生後1カ月以上16歳未満の250例を無治療で前方視的に観察した. 再発率はKaplan-Meier法を用いて計算し, 再発リスク因子の単変量解析はCox proportional hazards modelを用いた. 【結果】135例 (54%) が再発した. 再発例のうち, 37例 (27%) が1カ月以内, 71例 (53%) が3カ月以内, 95例 (70%) が6カ月以内, 118例 (87%) は1年以内に再発していた. 初回発作後の再発率は, 0.5年, 1年, 2年, 5年でそれぞれ38%, 47%, 54%, 58%であった. 再発リスク因子では, 症候性, てんかん性脳波異常, 8歳以上, 部分発作の熱性けいれん既往で再発率が高かった. 【結論】原則的に初回発作で抗てんかん薬治療を開始すべきではないが, 再発率や再発リスクを考慮することは重要である.
著者
岡田 洋右 田中 健一 田中 良哉
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.111, no.4, pp.758-764, 2022-04-10 (Released:2023-04-10)
参考文献数
8

骨粗鬆症の予防と治療の目的は,骨折を予防し骨格の健康を保って,生活機能とQOL(quality of life)を維持することである.そのためには,種々の骨粗鬆症治療薬から個々の症例において,症例背景や作用機序を考慮して薬剤選択をするべきであり,骨密度増加・骨折予防効果のエビデンスのみならず,アドヒアランス,副作用,薬価も念頭においた治療方針を立てる必要があり,長期的な視点に立ち個々の患者に適した薬剤を選択することが重要である.
著者
三浦 麻子 松村 真宏 北山 聡
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.446-452, 2008 (Released:2011-10-15)
参考文献数
18
被引用文献数
7

Weblogs are one of the most popular personal websites in Japan, where entries are made in journal style and displayed in reverse chronological order. This study examined the relationship between weblog authors' target audience (i.e., orientation) and the actual situations depicted in their weblogs by combining a questionnaire survey of the authors with an analysis of their weblog content data. Based on a questionnaire survey of 736 Japanese weblog authors, their target audience was divided into four clusters: (a)general public, (b)self, (c)self and offline friends, and (d)various others. To assess the actual situations depicted in their weblogs, the amount of happy and unhappy emotional expression in their writing and the frequency of interpersonal communication (comments, bookmarks, and trackbacks) were calculated from their log data. The results suggested that weblog authors wrote different types of content and used different types of communication depending on their audience, whereas the weblog content itself still showed the diary-like characteristic of personal daily-life records.
著者
山岡 裕一 岡根 泉
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会会報 (ISSN:00290289)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.15-21, 2019-05-24 (Released:2019-07-11)
参考文献数
20
被引用文献数
1

Melampsora idesiae は,イイギリ(Idesia polycarpa)に寄生し夏胞子・冬胞子世代を経過するが,精子・さび胞子世代は不明であった.本菌の冬胞子堆が多数形成されたイイギリ落葉に隣接するムラサキケマン(Corydalis incisa)上でcaeoma型のさび胞子堆を確認した.ムラサキケマン上のさび胞子とイイギリ上の冬胞子を発芽させて得た担子胞子を用いた接種試験の結果,M. idesiae がムラサキケマンを精子・さび胞子世代宿主として異種寄生していることを明らかにした.
著者
石黒 智恵子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.772-776, 2022 (Released:2022-08-01)
参考文献数
19

COVID-19ワクチンは、これまでのワクチン開発に比べると非常に短期間で開発・承認され、世界中で接種が開始された。その開発スピードに合わせるかのように、承認後ワクチンの安全性・有効性に関する新しい知見について、既存のデータベースを活用した疫学研究が一流雑誌の紙面を賑わしている。本稿は世界各国のCOVID-19ワクチンの有効性や安全性に関する疫学研究を事例に、最近のワクチン疫学の動向を紹介する。
著者
中村 國則 斎藤 元幸
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.391-392, 2023-12-01 (Released:2023-12-15)
参考文献数
2