著者
初宿 成彦
出版者
大阪市立自然史博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

マツ科トウヒ属は化石でしばしば見つかるが、球果や葉は種間で類似しているため、種の同定が困難なことが多い。そこでカサアブラムシ科昆虫が形成する虫こぶに注目してみたところ、別の昆虫種が作った虫こぶが異なった形状の虫こぶを作るのみにならず、同じ昆虫種が作った虫こぶでも植物側の種が異なれば、形状が異なることがわかった。形態の記載により、今後、植生史の研究への利用が期待される。
著者
村上 壽枝
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究は、リサーチ・アドミニストレーター(以下、URAとする)の役割が大学等の理系研究組織を基に考えられており、大学人文社会系組織におけるURA固有の役割については例が少ない事を問題意識と捉え、事例研究を通じてURAの活動促進に繋げることを目的としている。本研究の開始後に役割分類で参考となるURAスキル標準が、2013年度末の公開という情報を得たため、先ず人文社会系の研究支援事例のシンポジウム参加者ヘアンケートを行い、研究支援業務を行っていないとされる8名を含む45名の回答(回収率60%)を得てスキル標準の公開後に分析した。アンケートでは、支援業務を行っている者に限定した質問の結果、文系組織支援者はスキル標準の③「ポストアワード」支援が多く、理系組織の支援者はスキル標準の一部を除く、①「研究戦略推進支援」、②「プレアワード」、③「ポストアワード」、④「関連専門業務」の支援全般に携わっている傾向があることが分かった。また、バックグラウンドと支援の関連の詳細を調べるため、バックグラウンドがa)文理両方で1名と文系10名(内、理系支援と文系支援各1名以外は全学支援者)と、b)理系3名(理系支援者)のURAにインタビューした。その結果、a)では、スキル標準の①から④のそれぞれに支援該当者がおり、特に④の産学連携とアウトリーチに関する支援が多い傾向が見られた。また、一部のa)のURAからは、支援上、文理関係無いとした見解を得たが、b)のURAからは同様に文理関係無いとした見解を得た一方、実験や医療等専門分野の知識がなければ進められない業務情報も得た。このことから、URAのバックグラウンドと支援組織は文理関係なく支援は行えるとしても、レイヤーによって支援組織や分野の専門知識が必要な場合もあるとした示唆を導くことができた。日本のURAは、今はまだ黎明期であり、今後より多くの事例が見出されることが予想される。
著者
高田 純 田中 憲一
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

前歯からのベータ線計数による骨格のストロンチウムを中心とした、内部被曝線量のその場評価の研究を行った。本研究は、代表者のこれまでの海外核ハザード地域での調査から開発した方法にもとづいている。3年間の実施期間では、核爆発災害のあった楼蘭遺跡周辺のウイグル地域からの在日外国人、韓国人留学生による、日本人の前歯ベータ線計測を行い、結果を、その場で、被験者に説明した。今回の結果は、全員が、検出限界以下のレベルであった。放射線被曝の線量と健康影響を、一般人に理解されやすいように、説明資料を3種作成した。さらに、「ソ連の核兵器開発に学ぶ射線防護」の図書を作成し、刊行した。これらの資料を活用し、国内外でセミナーを行った。2011年3月に福島で発生した核放射線災害に対して、内部被曝その場調査が、実施された。この調査は、福島県民の低線量を効率よく明らかにし、直ぐに、図書「福島嘘と真実」を出版することができた。
著者
原田 敬一 大谷 正
出版者
佛教大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本年度は、防衛庁戦史部図書館・岡山県立図書館・福島県歴史資料館・富山県立図書館・富山公文書館所蔵の、公文書・編纂物・記録・新聞を調査・検索・複写・収集に努めた。その結果、第一に日清戦争での軍夫の動員数などが『明治廿七八年戦役統計』(防衛庁戦史図書館所蔵)で判明した。この史料によると、軍夫は兵站部だけでなく、師団に直接参加している。ただこれでも軍夫の被害数は不明で、収集した史料のうち兵庫県の『戦役記念金蘭簿・飾磨群』などは軍夫記述自体がない。ただ『福島県従軍者名誉簿』(福島県歴史資料館所蔵)は、軍夫の性行・送金などのほか氏名・略歴なども記録しており、他の地域にも同様の記録が存在する可能性を発見した。第二に、軍夫の募集・集合に県庁・群役所など地方庁の役人が積極的に関わったことが明らかになった。師団司令部の軍夫必要数の提起に従って、地方庁の役人が直ちに町村へ派遣され、雇用条件等について説明し、予定数の募集に従事した。応募した軍夫候補者は、軍医によって診断され、採否が決定される。みごと軍夫となったものは、大倉組などの民間雇用組織に所属して、戦地へ向かった。賃金は、師団司令部から民間雇用組織に支払われるという間接的雇用形態に終始した。そのため、戦後になって賃金・負傷などの手当をめぐり、いわゆる軍夫問題と言われるものが起きることになった。福島県では、全体の引率者として県の役人が休職して参加しており、戦後直ちに復職しているから、行政の一機能として参加したと思われる。軍夫は、民間人と行政官庁、軍隊が錯綜した複雑な問題であることが、今回の幾つかの地方に限定した調査でも明らかになった。これが普遍的な問題であることを証明するには、いっそう広い地域での調査が必要である。第三に、軍夫の戦場での実施がやや明らかになった。戦地派遣前には非武装が軍から指示されていたにも関わらず、多くの軍夫は武装しており、兵站を狙った攻撃によって戦闘にも加わり死傷者も出た。それだけでなく、第一線にいた軍夫は、軍夫の身分のまま、軍隊から砲兵隊や衛生隊などに再組織され、戦闘に加わった。これは、国際法を無視した重要な問題であった。これが戦史に記録されていないから、なぜ不問に付されたのかも今後の追求課題である。
著者
増田 知子 角田 篤泰 中村 誠 佐野 智也 小川 泰弘
出版者
名古屋大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究は「昭和天皇実録」を用い、情報の抽出・加工を行うことで、天皇を頂点とする権威的秩序と明治期から戦後まで続いた寡頭政の変遷を分析することを目的とする。(a)宮内庁から入手したデータからテキストデータを作成し、拝謁者等の氏名・肩書の抽出を行った。結果、44322種類の肩書と人名のセットを抽出できた。出現回数の多い肩書を見ると、親王、内大臣、宮内大臣が上位に来ることがわかった。また、1941-44年について、人物ごとに月ごとの拝謁回数をグラフ化したところ、歴史的事件との相関関係が見いだせる可能性が高いとわかった。(b)(a)に関連し、『法律新聞』のデータ整備を行い検索データベースを完成させた。
著者
綾屋 紗月
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

目的1.テキスト・マイニング・自然言語処理分析と質問紙票調査テーマ分析の方法によって、ASD者におけるリカバリーの要素について分析を行った。分析結果はホームページを通じて公開するとともに、自然言語処理技術を用いたエピソード検索システム「エピソードバンク」(http://sociocom.jp/episode-bank/)に登録し、当事者研究のアーカイブ化やクラウドソーシングによる仮説生成への活用を目指している。また、そこから抽出された固体要(impairment)についての仮説のうち、触覚過敏に関して、刺激発生装置を用いて検証実験を行い、論文として発表した(Fukuyama et al., 2017)。目的2.ソーシャル・マジョリティ研究会の実施とテキスト作成ソーシャルストーリーにかわる多数派の社会デザインを明示的に説明する日本語でのテキストを、「ソーシャルマジョリティ研究」として、近日中に金子書房から出版する。また次年度4月に、アウトリーチ活動としてテレビ番組で研究内容を広く発信する予定。目的3.他障害との比較によるASD者に合ったコミュニケーション様式の検討2015年‐2016年に行った当事者研究のやり方研究会の結果は、書籍や学会発表の形で公表した。2016年に行った臨床研究の実践場面ををエスノメソドロジー・会話分析の手法を用いて分析し、ASD者にあったコミュニケーション様式に基づく当事者研究のファシリテーション用ビデオと教材を開発した。
著者
後藤 浩之
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

地震断層を伴うような地表断層地震と,地表断層を伴わない潜在断層地震では,同じ規模の地震の場合に潜在断層地震の方が強い地震動を生成する.本研究では,震源深さと地殻の地震発生層の下部深さの関係に着目し,潜在断層地震で強い地震動が生成される力学的な背景を明らかにした.潜在断層地震の場合にはパルス状の破壊,すなわち同じ地震規模でも短時間にエネルギーの集中した地震動を発生させる傾向にあることを,数値実験により示した.地震断層を伴うような地表断層地震と,地表断層を伴わない潜在断層地震では,同じ規模の地震の場合に潜在断層地震の方が強い地震動を生成する.本研究では,震源深さと地殻の地震発生層の下部深さの関係に着目し,潜在断層地震で強い地震動が生成される力学的な背景を明らかにした.潜在断層地震の場合にはパルス状の破壊,すなわち同じ地震規模でも短時間にエネルギーの集中した地震動を発生させる傾向にあることを,数値実験により示した.
著者
志賀 英明 三輪 高喜 中西 清香 瀧 淳一 絹谷 清剛
出版者
金沢医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

タリウム-201の経鼻投与とSPECT及びMRIにより末梢嗅神経輸送機能を評価し、健常者と嗅覚障害者を比較した。外傷性嗅覚障害に加え感冒罹患後や慢性副鼻腔炎による嗅覚障害においても、タリウム-201の経鼻的嗅神経輸送機能が低下していることを明らかとした。さらにタリウム-201の経鼻的嗅神経輸送機能と基準嗅力検査域値(認知、検知)とで有意な相関を認めた。また臨床試験被験者において憂慮すべき合併症は認めなかった。
著者
嶌田 敏行 小湊 卓夫 浅野 茂 大野 賢一 佐藤 仁 関 隆宏 土橋 慶章 淺野 昭人 小林 裕美 末次 剛健志 難波 輝吉 藤井 都百 藤原 宏司 藤原 将人 本田 寛輔
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

大学の諸課題の数量的・客観的把握を促すIRマインドの形成を目指した評価・IR人材の能力定義、教材の開発、教育プログラムの開発および体系化を行った。そのために単に研究・開発を行うだけでなく、様々な研修会や勉強会を開催し、全国の評価・IR担当者の知見を採り入れた。そのような成果を活かして、評価・IR業務のデータの収集、分析、活用に関するガイドラインも作成し、評価現場やIR現場で活用いただいている。加えて、合計14冊(合計940ページ)の報告書を作成した。この報告書は自習用教材としての活用も意識した構成とし、すべてwebページを作成し公表している。
著者
岩城 卓二
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、戦争と災害という視点から幕末期の畿内・近国社会の特質について明らかにした。具体的には、幕末期の畿内社会では、人々の間に戦争を忌避する意識が高まっていたこと、それは民間の情報網によって西国の広い地域の人々にも共有されていたこと、戦争による長州藩の打倒を叫ぶ畿内大名もいたが、社会を覆う戦争忌避の力と、たくさんの領主が小さな所領を領有するという所領形態によって軍事行動を起こすことはできなかったこと、幕末期の京都・大阪は武士人口が急増するが必要な労働力・消費物資は町・村が提供する「請ける」体制が機能していたこと、1865年以降天候不順が続き、災害復興に大勢の労働者が動員されたため、農村地主・幕藩領主の間で労働力の奪い合いが起こったこと、その矛盾が爆発したのが1866年の打ちこわしであったことを明らかにし、領主制の矛盾がいち早く吹き出し、その解体の必要性を提起したのが畿内の幕末社会であったことを指摘した。
著者
川野 健治
出版者
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

この研究の目的は、若年層の自殺への態度を明らかにし、効果的な啓発と自殺予防教育の方法を開発することである。まず、ある調査会社の1000人に自殺への態度の関するアンケートを実施した。因子分析により二因子構造が明らかになり、テキストマイニングによって死と自殺に関するイメージスキーマが見出された。次に、86名の中学教師を対象としたアンケート調査からは、学校での自殺予防の課題が明確になった。最終的に、学校で実施する自殺予防プログラム「GRIP」を開発した。
著者
下河辺 美知子 巽 孝之 舌津 智之 日比野 啓
出版者
成蹊大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究はモンロー・ドクトリンの文化的・政治的意味を検証してきた。モンロー大統領の言葉は歴史を通して行為遂行的効果を発揮し、西半球・東半球という概念を喚起した。この洞察は19世紀アメリカの政治的無意識への理解を深め、20世紀ポストコロニアル研究へ有効な視座を与え、球体として地球を見直す新たな視点につながり21世紀の世界情勢分析のための有効な概念であることが証明された。研究成果は、国内海外の学会発表(61件)、論文(41件)著書(31件)として発表されており、2014年3月にはシンポジウムを行った。テロと核を抱える21世紀世界における惑星的共存への提言として成果物出版計画が現在進行中である。
著者
土屋 貴志 中川 恵子 常石 敬一 西山 勝夫 村岡 潔 岡田 麗江
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.十五年戦争期の医学研究事例に関する歴史的研究石井機関における医学研究の解明に関しては、常石が3回の訪米調査(ワシントンDC周辺)、土屋・中川[末永]・西山・岡田・刈田らが3回の訪中調査(ハルビン、藩陽、北京、長春、大連、太原)を実施し、それぞれ研究成果を著書、雑誌論文、および学会発表として公表した。また、石井機関の紀要『陸軍軍医学校防疫研究報告』第2部(復刻版、不二出版刊)のすべての掲載論文について抄録を作成するプロジェクトを、刈田が幹事長、西山が事務局長、土屋・中川[末永]が幹事、岡田・村岡が会員である「15年戦争と日本の医学医療研究会」のプロジェクトとして、研究協力者と共に実施し、全論文810本の抄録を完成させた。満州医科大学に関する研究に関しては、中川[末永]を中心に資料を分析し、その成果を学会発表および講演、雑誌論文、著書として公表した。以上の研究により、石井機関および大学における当時の医学研究の詳細な実態および広がりを確認できた。2.医学研究倫理学の原理の探究土屋と村岡を中心に、土屋が主宰する「医療倫理学研究会」において毎週輪読会を行い、倫理学的原理の本質と事例に対する役割に関する邦文図書7冊、英文図書4冊、英文論文8本を精読した。土屋と村岡はその成果を学会発表および雑誌論文として公表した。以上により、事例および語りを中心とする倫理学研究法の意義、医学研究論理全体の見取り図、および医学研究に関する主要な倫理学的原理の1つであるベルモント原理の歴史的意義、を確認し、今日の日本における医学研究の倫理学的原理を確定するための展望を得ることができた。
著者
宮崎 かすみ
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

近年大幅な見直しが進行している十九世紀後半のイギリス同性愛史の最新研究成果の全体を渉猟した上で、研究者を招へいし、日本に広く紹介した。この知見に基づき、オスカー・ワイルドの文学について、同性愛をめぐる思想史の文脈から分析して明らかにした。これに並行して、この時代の英文学に特有な、同性愛タブーを背景としながらもそのなかでも根強く存在した同性愛文化に、同時代の英文学者、夏目漱石が大きく影響を受けたことを明らかにし、この成果を書籍にして刊行した。また英語圏で発表を行ったり、論文集に寄稿するなどして、漱石の代表作『心』とワイルド、聖書の関係性を英語圏に広く紹介した。
著者
名取 琢自 今井 完弌 秋田 巌 禹 鍾泰 平尾 和之 佐々木 玲仁 平田 俊明
出版者
京都文教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

申請時の研究計画に基づき、海外の心理臨床家への半構造面接による調査を企画し、平成20年度はアメリカと韓国、平成21年度はスイスとフィンランド、平成22年度はオーストリアを調査対象地として面接調査を行い、調査票と録音データを収集した。面接調査は研究計画で設定した規模で実施でき、資格や就業形態、勤務内容、想定される賃金、他職種との連携のイメージについて、心理臨床家の生の声を得ることができた。音声データは逐語記録化され質的分析が行われた。
著者
田島 公 尾上 陽介 遠藤 基郎 末柄 豊 吉川 真司 金田 章裕 馬場 基 本郷 真紹 山本 聡美 伴瀬 明美 藤原 重雄 稲田 奈津子 黒須 友里江 林 晃弘 月本 雅幸 三角 洋一 川尻 秋生 小倉 慈司 渡辺 晃宏 桃崎 有一郎 北 啓太 吉岡 眞之 山口 英男 金子 拓 遠藤 珠紀 原 秀三郎 神尾 愛子 名和 修 名和 知彦 内海 春代 飯田 武彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2012-05-31

東京大学史料編纂所閲覧室で東山御文庫本、陽明文庫本、書陵部蔵九条家本・伏見宮家本など禁裏・公家文庫収蔵史料のデジタル画像約100万件を公開した。高松宮家伝来禁裏本・書陵部所蔵御所本の伝来過程を解明し、分蔵された柳原家本の復原研究を行い、禁裏・公家文庫収蔵未紹介史料や善本を『禁裏・公家文庫研究』や科学研究費報告書等に約30点翻刻・紹介した。更に、日本目録学の総体を展望する「文庫論」を『岩波講座日本歴史』22に発表し、『近衞家名宝からたどる宮廷文化』を刊行した。
著者
関根 勇一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

これまでに、アダプター分子Signal-transducing adaptor protein-2(STAP-2)がさまざまな細胞内シグナル伝達経路において機能的に働き、サイトカイン刺激による免疫細胞応答を調節する重要な分子であることを申請者は多数報告している。特にT細胞においてSTAP-2が重要な働きをしていることを数多く示してきた。本申請研究において、STAP-2によるT細胞の活性制御機構の更なる解明と、アポトーシスシグナル経路におけるSTAP-2の機能解析を行った。1.STAP-2によるアポトーシス促進メカニズムの解明これまでの研究では、Fas刺激時のCaspase活性がSTAP-2により亢進することを明らかにしており、本年度の研究によりアポトーシス促進メカニズムの解明を行った。STAP-2自身は酵素活性を持たないことから、Caspaseを活性化する分子とSTAP-2との複合体形成が一つのメカニズムとして考えられた。アポトーシスのイニシエーターであるCaspase-8は、刺激によるFasの活性化によりFADDというアダプター分子を介してレセプターへリクルートされ、DISCと呼ばれる複合体の中で活性化する。そこでSTAP-2がCaspaseの活性化を促進するメカニズムを解明するため、ヒト白血病T細胞株Jurkat細胞、STAP-2 KO T細胞、ヒト胎生腎癌細胞株293T細胞を用いて、免疫沈降実験などによりDISC形成分子とSTAP-2の相互作用解析等を行った。その結果、STAP-2はFasやCaspase-8と会合し、DISC形成を促進することを明らかにした。これよりSTAP-2によるアポトーシス促進は、DISC形成亢進によることが明らかになった。2.STAP-2限定分解酵素の同定これまでに申請者は、Jurkat細胞においてFas誘導性アポトーシス時に切断されたSTAP-2産物の分子量から、切断部位を推測しアミノ酸に変異を導入することで限定分解されないSTAP-2点変異体の作製に成功していた。この切断配列は、アポトーシス時に活性化するシステインプロテアーゼ、Caspaseファミリーによって認識される配列と相同性が高く、また、広範なCaspaseインヒビターとして知られるzVAD処理により、STAP-2の限定分解が抑制されることも予備実験により明らかにしていた。これら知見からCaspaseファミリー分子がSTAP-2の限定分解酵素であると考えられた。本年度の研究ではCaspaseファミリー特異的インヒビターを用いた解析、siRNAによるノックダウン実験によって、Caspase-8がSTAP-2切断酵素であることを同定した。今後は、STAP-2が切断されることとアポトーシス促進の関連性、及びSTAP-2切断阻害剤の作製によりアポトーシスへの影響を解析していく予定である。アポトーシス時におけるSTAP-2限定分解の詳細な解析が、STAP-2限定分解の調節による自己免疫疾患の治療薬開発の手がかりになることを期待する。
著者
眞溪 歩
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は,注意・不注意,意識・無意識に関する事象関連電位/磁界(ERP/ERF)計測を行うことを目的としていた.そこで,本研究を,目的を直接的に追求するための認知行動実験と,認知行動実験時のERP/ERFを計測・解析する手法の両面から構成した.計測解析手法では,脳領野間の方向付き位相共振を定量化する解析法を確立し, IEEE Tr BME誌に論文発表した.これらを用いた注意・不注意,意識・無意識が介在するERP/ERF解析では,無意識下での認知行動モデルの生成とそれが律動成分の位相共振によって実現視されていることを示唆する結果を得た.
著者
福田 一彦
出版者
江戸川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

約2500名の幼児を対象とした調査で、3歳児で70%、4歳児で80%、5歳児で90%、6歳児で95%の子どもが自宅では昼寝をとらない事が明らかとなった。アメリカのデータでは3歳児の40%が昼寝をとらないとされてきた。今回の結果は、この数字をはるかに上回る割合の3歳児が昼寝をとっていないという事が明らかとなり、昼寝の消長についてより詳しい調査を行う必要があると考えられた。昼寝の中止後には、就床時刻の前進、寝つきや、朝の気分の改善が認められた。夕食の時刻、入浴の時刻は幼児の就床時刻と高い相関を示したが、母親自身の就床時刻には非常に低い相関しか認められず、重回帰分析の結果、最初に除外対象となった。
著者
宮本 俊和 河内 清彦 柿澤 敏文 和田 恒彦 徳竹 忠司 濱田 淳
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-10-31

本研究は特別支援学校(盲学校)理療科で鍼灸マッサージの教科を教える理療科教員の臨床能力と資質向上を意図するとともに、筑波大学理療科教員養成施設のITを用いた授業の充実を図ることを意図した。研究成果は、研究成果報告書として全国の盲学校、鍼灸関連学校、視覚障害関連の教育機関や研究機関に配布した。報告書には、1)明治以降の理療科教員養成の歴史的変遷、2)鍼灸受療者の実態、3)日本におけるIT活用と盲学校理療科におけるIT活用、4)理療科教育における講義形式の授業(電子黒板やタブレット端末を利用した授業など)、5)実習形式の授業(解剖実習や鍼実技でのiPad、iPodの活用)などについて記載した。