著者
Mei Yamagata Asako Miura
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.234-239, 2023 (Released:2023-04-27)
参考文献数
10
被引用文献数
2

Humans tend to distort past events, leading to a gap between experience and retrospective experience—the retrospective bias. This study clarified the characteristics of retrospective bias in the ongoing COVID-19 pandemic. Longitudinal data from 597 Japanese individuals were gathered during the COVID-19 pandemic from January 2020 to January 2021. Analysis revealed that cognition regarding COVID-19 one year ago was retrospectively underestimated. In addition, within-person variation among the responses of the 11 waves consistently showed a negative association with bias. These findings suggest that retrospective methods of describing long-lasting and fluctuating events will lead to inaccurate conclusions.
著者
礒田 正美
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 45 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.37-40, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
6

乗数・被乗数の順序問題は,各国教育課程設計上の問題である.本稿の目的は,今日の学校数学が基盤とする西洋数学において,かけ算の式の見方,乗数・被乗数の順序にかかる変更,逆転が,歴史上,いかなる形で現れたのか,そのルーツを特定し,その設計に際しての論拠を示すことにある.そのために本稿では,筆算と文字式導入の歴史に注目し,その導入にかかる主要原典であるFibonacci (1202), Reisch (1504), Descartes (1637), Oughtred(1656, 1694)を参照し,そのルーツを特定した.原因は,筆算に対する文字式表現の導入後に筆算に式の演算記号が導入されたことであり,その際,九九の倍数詞読みを止め,式にあわせて筆算を書くように規約を変えたこと,算術としての筆算が,式を演算とみなし式の値を得る算法として筆算を用いる算術に変わったことに起因する.
著者
薗田 啓之
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1051-1053, 2016 (Released:2016-11-01)
参考文献数
8

脳は生物にとって最も重要な臓器の一つである.その機能を健全に保つため,脳血管には血液脳関門(blood-brain barrier: BBB)が存在し,脳内への物質輸送を制限している.この機構のおかげで脳はその機能を維持できているわけだが,ひとたび脳疾患を患い薬物治療が必要になると,このBBBの存在が大きな障壁となる.つまり,脳の恒常性を維持するBBBによって必要な薬物までもが脳内への輸送をブロックされるのである.脂溶性低分子化合物の中には高い脳移行性を示すものもあるが,ペプチド・タンパク質等の親水性高分子はほとんど移行性を示さない.しかしながら,ペプチドやタンパク質であっても脳に必要な物質についてはBBBに存在する特別な輸送システムを介して能動的に輸送されることが分かっている.例えばインスリンやトランスフェリン等はBBBの実体である脳血管内皮細胞上の受容体を介して血液中から脳内へと輸送される.このような生体が元来持っている輸送システムを利用した脳内薬物送達技術の開発が世界中で行われている.本稿では,J-Brain Cargo®(JCRファーマ)を含む各種BBB通過技術について紹介する.
著者
桑畑 光博
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.317-330, 2002-08-01 (Released:2009-08-21)
参考文献数
66
被引用文献数
6 7 2

鬼界アカホヤ噴火は,九州の縄文土器編年に対応させると,轟A式古段階から新段階の間に起こったと推定される.また,九州のほぼ全域に展開していた轟A式土器の製作情報が,噴火の影響によって断絶することはなく,土器文化は継続したと推察される.他方,約半分の地域が鬼界アカホヤ噴火に伴う火砕流の直撃を受けたとされる南九州地方を対象として,鬼界アカホヤ降下後の遺跡の状況から生活環境の回復過程をみると,鬼界アカホヤ噴火直後には,南九州中部以北にしか遺跡の分布は認められず,それ以南ではしばらく生活が再開されなかったようである.轟B式中段階(約5,500yrs BP)になると,南九州本土においては,定着的な遺跡の形成が各地に認められる.しかし,鬼界カルデラにより近い大隅諸島や薩摩・大隅半島の南端部では,轟B式中段階になっても遺跡の規模は貧弱であり,定着的な遺跡が形成される時期は,さらにあとの曽畑式期(約5,100yrs BP)以降である.また,鬼界アカホヤ噴火後まもない時期には,南九州のほぼ全域において,堅果類の加工具である磨石・石皿類の割合が極端に少ないという傾向が認められる.このことから,噴火の影響によって,堅果類を生産する森林植生は大きなダメージを受けていたと推察される.磨石・石皿類が増加し,森林植生の回復がうかがわれる時期は,南九州の中部以北では遅くとも轟B式中段階以降であり,南部においては轟B式新段階から曽畑式期以降であると考えられる.
著者
深見 佳代
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.47-56, 2016 (Released:2017-12-01)

スウェーデンの医療制度は、医療にアクセスするまでの待ち時間の長さが指摘されてきた。しかしその傾向は近年改善しつつあるようである。最初に国レベルで対策が行われたのは1987年で、3種類の手術について追加的資金が分配された。1992年には10手術について3か月を待ち時間の上限とする最大待ち時間保証が開始された。1997年にはより普遍的な利益のため、医師に会うまでの時間について、2005年には手術や治療を受けるまでの時間についてそれぞれ保証が拡大された。この保証により実行力をもたせる目的で、2009年には経済的インセンティブを付与する計画が開始され、2010年には保証が「患者の権利」として法制化された。これらは、待ち時間の改善という一定の成果を上げているものとして評価できるものの、根本的な解決につながるものではないため、現場に負担がかかっていることが予想される。今後は待ち時 間の原因についてより詳細な分析が必要である。
著者
山本 征孝 藤本 康浩 森 義統 椿野 稔
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.248-254, 2015-10-01 (Released:2016-10-15)
参考文献数
20
被引用文献数
3

カットダウン可能な時期における急性期脳卒中片麻痺患者を対象に,長下肢装具(以下,KAFO)と短下肢装具(以下,AFO)のそれぞれを用いたリハビリテーションの治療効果の調査を行った.対象は急性期脳卒中片麻痺患者で,AFOを使用した歩行が可能な者14名とした.AFOを使用する群とKAFOを使用する群に対象を分け,練習前後で非麻痺側・麻痺側下肢最大荷重量,歩幅,歩行速度,歩行率を比較した.その結果,KAFO群では麻痺側下肢最大荷重量,歩行速度,歩幅が練習後において有意な差が認められた.KAFOを使用した立位・歩行練習はカットダウン可能な時期を経過した場合においても歩行能力や麻痺側下肢の支持性を即時的に改善することが示唆された.
著者
工藤 雅文 片岡 剛 白神 幸太郎
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.211-215, 2023-07-15 (Released:2023-08-02)
参考文献数
14

[背景]エホバの証人信者は宗教的信条に基づき輸血治療を受け入れない.エホバの証人信者に心臓血管手術を行うにあたり,当院では絶対的無輸血の立場をとっている.[目的]エホバの証人信者に対して当院で行った心臓血管手術における治療戦略は妥当であったか後方視的に検討した.[方法]2013年1月から2020年12月までの間に,7例のエホバの証人信者に対して心臓血管手術を行った.年齢は64±10(49~78)歳であった.術前Hb値が13 g/dl以上になることを目標に,赤血球造血刺激因子製剤と鉄剤の投与を行った.初回外来受診時と術前のHb値はそれぞれ12.3±2.2(7.5~14.5)g/dl,14.1±1.4(11.1~15.2) g/dlであった.術中は入念な外科的止血を重視し,加えて希釈式自己血輸血と回収式自己血輸血を施行した.術後は必要に応じて赤血球造血刺激因子製剤と鉄剤の投与を行った.[結果]全例,無輸血で入院死亡は認めなかった.手術時間は307±103(157~478)分,体外循環時間は137±28(115~178)分,大動脈遮断時間は90±27(68~136)分であった.術後に心筋梗塞,脳血管障害,出血再開胸,急性腎障害,手術部位感染は認めなかった.追跡期間は3.7±2.6(0.3~7.4)年であり,全例生存を確認できた.[結論]エホバの証人信者に対する心臓血管手術において,絶対的無輸血の立場をとる当院での治療戦略は許容できるものと考えられた.
著者
溝川 藍 子安 増生
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.360-371, 2015 (Released:2018-06-19)
被引用文献数
3
著者
高橋 英之 伊豆原 潤星 改田 明子 山口 直孝 境 くりま 小山 虎 小川 浩平 石黒 浩
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.852-858, 2019-10-15 (Released:2019-10-15)
参考文献数
17

コミュニケーションを円滑に行う上で,相手に対する事前知識や信念を互い有し,それを振舞いや発言にトップダウンに利用することは重要である.その一方で,多くの人間とロボットのコミュニケーションにおいては,ロボットに関する事前知識や信念を人間側が持っていないことが多い.本論文では,事前知識や信念が人間とロボットのコミュニケーションに及ぼす影響を調べるために,著名な文豪である夏目漱石のアンドロイドを用いて,被験者が“夏目漱石”や“ロボット”,“人工知能”に対して有している事前知識や信念がどのように“漱石アンドロイドとのコミュニケーション”に対する印象に影響を与えるのかを調べた.その結果,“夏目漱石”に対する事前知識は緩く漱石アンドロイドとのコミュニケーションにおけるリアリティと関連する一方,それ以上に“人工知能”に対する畏怖の念が強く漱石アンドロイドのリアリティと関連していることが分かった.
著者
伊香賀 俊治 江口 里佳 村上 周三 岩前 篤 星 旦二 水石 仁 川久保 俊 奥村 公美
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.76, no.666, pp.735-740, 2011-08-30 (Released:2012-01-13)
参考文献数
23
被引用文献数
35 23 7

It takes many years to recover the initial investment cost for installing housing insulation through savings from energy reduction (Energy Benefit: EB), since construction cost is very high in Japan. This long payback time is the major barrier to the promotion of well-insulated houses. However, it has been found that if Non-Energy Benefits (NEB) of well insulated houses, such as improvement in personal health, reduction of medical expenses and decline in absences from work are all taken into account, the time required to recover the initial investment cost would change from 29 to 16 years. Therefore recognition of NEB is expected to encourage residents to invest in residential thermal insulation. NEB of well-insulated houses is thus evaluated regarding human health in this study.
著者
柿田 公太郎
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.9, no.6, pp.360-367, 1970-12-15 (Released:2018-10-17)
著者
武内 博子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.166, pp.1-14, 2017 (Released:2019-04-26)
参考文献数
20

本稿では,EPAに基づく介護福祉士候補者(以下候補者)が現状をふまえ,よりよく介護福祉士国家試験対策(以下国家試験対策)が進められるよう学習支援者は何ができるかその提言を行うことを目的に,候補者に具体的にどのように国家試験対策を進めたのか,またその過程で思ったことなどを構造構成的質的研究法に基づきインタビューを行った。インタビューデータを修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチにより分析した結果,国家試験対策過程は大きく停滞から促進へと移行することが明らかになった。この結果を受け,①長丁場である国家試験対策期間のモチベーション維持への働きかけ②学習支援担当者が国家試験対策の全体像を見せる③候補者を孤立させないといった3点を学習支援者が意識して進めていくことが必要であろう。また候補者と施設職員の双方にとって,関係性を築いていく力や態度を育成する場が必要ではないかと考える。
著者
小林 映子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.961, 2020 (Released:2020-10-01)
参考文献数
4

妊婦への解熱鎮痛剤の使用について,NSAIDsは流産との関連性を示唆する報告や,胎児動脈管早期閉鎖との関連性によって妊娠後期は禁忌とされ,注意喚起されている.一方でアセトアミノフェンは,より安全性が高いとされ使用経験は多く,欧米では妊婦の半数以上に使用経験があるといわれている.妊娠後期の使用における胎児動脈管への影響との因果関係は認められていないとされているが,ヒトでの研究から胎盤を通過し長期間胎児の血液循環に残るとされる.近年,注意欠陥多動性障害(ADHD)や自閉症スペクトラム(ASD)との関連を示唆する多数の前向きコホート研究の結果が示され,欧米で大きな話題となった.さらにメタ解析によっても胎児曝露との有意な関連性を示した.妊婦の医薬品使用による胎児へのリスク評価については,倫理的視点から介入試験ができないことにより,観察研究の結果に情報が限定されるため正確な評価が難しい.ADHDやASDとの関連性に関するこれまでの研究も,ほとんどが母親の自己申告情報に基づくものであった.そこで今回,子宮内での胎児のアセトアミノフェン曝露による影響を明らかにする目的で,出生時の臍帯血漿中濃度と児の疾患診断との関連性について前向きコホート研究を実施した.特に,本研究は以前の研究で指摘されてきたエビデンスとして用いる上での制限や方法論的懸念に対応すべく研究デザインが設定された.その結果,ADHDおよびASDのリスクに有意な正の相関が確認され,用量反応性も認められたので紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Dathe K. et al., BJOG, 126, 1560-1567(2019).2) Ystrom E. et al., Pediatrics, 140, e20163840(2017).3) Masarwa R. et al., Am. J. Epidemiol, 187, 1817-1827(2018).4) Ji Y. et al., JAMA Psychiatry, 77, 180-189(2020).
著者
平岡 裕章 西浦 廉政
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.72, no.9, pp.632-640, 2017-09-05 (Released:2018-07-25)
参考文献数
41
被引用文献数
3

位相的データ解析と呼ばれるデータ解析の概念が近年注目を集めている.そこでは「データの形」に着目したデータ構造の新たな記述子が開発されており,その中でもパーシステントホモロジーは諸科学・産業界に現れるデータ駆動型の多くの問題へ適用されはじめている.その応用範囲は材料科学,脳科学,生命科学,社会科学,金融など多岐にわたり,方法論としての強力さと普遍性がうかがえる.このパーシステントホモロジーであるが,名前からも想像がつくように,ホモロジーと呼ばれる古典的な数学概念のある種の拡張として定式化される.まずホモロジーとは端的に述べると,入力データ(空間点配置,画像,図形等)の穴の数を計測する道具である.これにより入力データに対して穴に着目した大雑把な特徴づけを与えることができる.このような穴に着目したデータ解析のアイディアは,今世紀に始まった計算ホモロジープロジェクト(計算機を使ったホモロジーの高速計算アルゴリズム開発)の推進と共に,徐々に重要視されはじめることになる.しかしながらホモロジーでは穴の大きさや形について扱うことができず,実際の応用では情報を落としすぎている状況が多々あった.このような難点に対して,パーシステントホモロジーでは入力データを解像度付きのマルチスケール解析ができるように拡張されており,これにより穴の形や大きさなどの定量的な性質を調べることが可能になった.本稿ではホモロジーやパーシステントホモロジーについて予備知識をあまり仮定せずに解説を試みる.まず初めに,入力データのトポロジー情報をうまく反映した解像度付き単体複体モデルであるCěch複体を紹介する.その後に,幾つかの具体的な計算例と共にホモロジーについての解説を与える.その際,単体複体の包含関係から定まるホモロジー間の線形写像についても紹介し,そこで扱う例はパーシステントホモロジーへの自然な橋渡しになっている.パーシステントホモロジーの定義には幾つかの方法があるが,ここではホモロジーとそれらの間の線形写像を一列に並べた代数的対象(正確にはAn型クイーバーの表現)として導入している.パーシステント図などの基本的な概念の紹介の後に,発展的話題として時間発展問題への拡張についても,簡単にではあるが解説を加えた.以上の数学的な話題に続けて,後半ではホモロジーやパーシステントホモロジーの材料科学への応用について幾つかの研究事例を紹介する.ここで扱う題材はシリカガラスおよびブロック共重合体の構造解析である.まずシリカガラスについては,パーシステントホモロジーやそれらに対する統計・逆問題的手法を用いることで,ガラス状態の原子配置構造の新たな特徴づけを与える試みを紹介する.一方ブロック共重合体については,ホモロジーを用いた複雑形態の分類についてまず議論をし,さらにそれらの時間発展を追うことで,遷移的なモルフォロジーの特徴づけや粗視化過程のスケール則などを導く.パーシステントホモロジーを用いて,一見ランダムに見える系に潜む秩序を抽出する様子が本稿を通じて伝われば幸いである.
著者
阪本 州弘 若林 一郎 吉本 佐雅子 増井 秀久 勝野 眞吾
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.635-638, 1991-06-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

柔道や空手など古武道では冬期に川原で寒稽古を行い筋力の増強に努めている。運動と寒冷刺激がテストステロンおよび他のホルモンレベルにいかに影響するかを19才の男子,32名について検討した。自転車エルゴメータによる運動負荷(90watt)によりテストステロン(TS)濃度は20.8%上昇したが,黄体形成ホルモン(LH)はほとんど上昇しなかった。ノルアドレナリン(NA)のレベルは140.0%有意に上昇した。一方,冷水負荷ではTSは10.0%減少し,LHは22.1%上昇し,NAは23.8%減少した。個人で負荷によるホルモンレベルの変化量の関連性をみると運動負荷ではLHとTSとはr=0.40,またTSとNAとはr=0.48の有意の相関がある。冷水負荷ではTSとLHとではr=0.40,TSとNAとではr=0.43であった。これらの結果は,運動はLHとNAの血清濃度の上昇によりTS濃度を上昇させる。しかし冷水負荷ではこの傾向が見出せなかった。
著者
服部 泰典 土井 一輝 川上 不二夫 日浦 泰博
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.23-26, 1997-05-30 (Released:2011-08-11)
参考文献数
3

指末節部の切断指再接着術後のうっ血に対し, 医療用に開発されたヒルを使用し良好な結果を得ることができた。わずか数十分の使用で数時間にわたる出血が得られ, 従来行われていた医師もしくは看護婦によるミルキング等の処置を必要とせず, 医療サイドの負担を大きく軽減させることが可能となった。ヒルの使用による感染の危険もあるが, 第2, 3世代のセフェム系抗生剤に感受性があるため十分予防可能である。