著者
前原 進也 大澤 康暁 佐藤 孝 丸山 武男 大河 正志 水島 正喬 坪川 恒也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. LQE, レーザ・量子エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.62, pp.49-52, 2002-05-10
参考文献数
5

一般相対性理論から導出された天の川銀河の重力場が地球に及ぼす影響に関する報告があり,振り子の変位を観測することで,天の川銀河系の中心核の影響により地球が受ける力を検出することが可能であり,2種類の振り子の観測を行い,周時刻に同一方向への変位が見られたと報告されている.本報告では,この実験結果の検証を目的とし,半導体レーザーを用いた振り子の変位の光計測システムを構築し,外部雑音の影響が非常に少ない国立天文台の観測所のトンネルで観測を行っている.これまでの観測では,地震による影響が観測されており,今回は潮汐力による影響について検討し,重力放射力の検証の基礎実験を行ったので報告する.
著者
前田 昌弘
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

前年度(平成20年度)は、インド洋津波に起因したスリランカにおける再定住事業の全体像を把握するために、政府・統計資料を用いて事業制度の分析、再定住地の建設動向と計画内容の分析、被災地から再定住地への人口移動の分析を行った。また、分析を踏まえ、再定住事業の影響が特に大きいと予想されるスリランカ南部・ウェリガマ郡の津波被災集落と再定住地を対象として、居住者の再定住プロセスと行政・NGOの再定住支援に関する実地調査を実施した。本年度は主に調査結果の分析を行い、再定住事業における環境移行にともなう居住者の環境適応の困難化の実態を指摘するとともに、従前居住地コミュニティ内のソーシャル・キャピタルの蓄積が環境移行の影響を緩和し住民環境適応を促進する可能性を指摘した。本研究は、再定住地の実態を踏まえ、従前居住地コミュニティ内のソーシャル・キャピタルを、世帯間関係(地縁関係、血縁関係、マイクロクレジットの関係)および住宅敷地の所有・利用関係という具体的な関係に着目して把握している。そして、それら関係の再編プロセスの分析を通じて、再定住地に環境適応している住民は従前居住地コミュニティとの関係性を何らかの形で維持していること、従前居住地との関係性は地縁・血縁だけでなくマイクロクレジットのような地縁・血縁によらない関係によっても維持されていることを明らかにした。自然災害に起因した再定住事業は一般的に、「住宅再建」と「住宅移転」の二者択一に陥りがちである。また、居住地の範囲で完結した計画が行われ、再定住地と従前居住地の関係性が無視されがちである。しかし、上記した調査結果は、「住宅再建」と「住宅移転」の二者択一の限界を改めて指摘するとともに、従前居住地と再定住地を補完的に捉えて住宅移転および再定住地を計画することの有効性を指摘しており、自然災害に起因した再定住事業の計画論に関する有意義な研究成果になり得ると考えられる。
著者
前杢 英明 井龍 康文
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は,沿岸の岩礁に付着する完新世石灰岩の形成過程を使って,当該期間にプレート境界で発生してきた地震履歴を切れ目なく解明することを目的としたものであった.13年度は,室戸岬周辺の45地点で採取した石灰岩より,94枚の岩石薄片を作製した.薄片観察の結果,石灰岩の枠組み(フレーム)の形成者として最も多くみられるのはヤッコカンザシとサンゴモで,以下,被覆性底生有孔虫,造礁サンゴ,フジツボ,イワノカワ科の藻類(石灰藻),カキがこの順で続くことが確認された.14年度は,14C年代がほぼ同時代を示す,もしくは同時代と推定される隆起石灰岩ごとに,それらを構成している付着生物の量をポイントカウンティングで決定し,その結果を従来の現生生物の帯状分布データと比較した.その結果,石灰岩を6つの岩型に区分した.それらは,サンゴとサンゴモが卓越する石灰岩(タイプ1),サンゴモが卓越する石灰岩(タイプII),サンゴモとカンザシゴカイとフジツボが卓越する石灰岩(タイプIII),サンゴモとカンザシゴカイが卓越する石灰岩(タイプIV),被覆性コケムシと被覆性底生有孔虫が卓越する石灰岩(タイプV),軟体動物(カキ)が卓越する石灰岩(タイプVI)である.また,エボシ岩付近の岩型の垂直方向の分布は,下から順に,タイプIの石灰岩,タイプIIの石灰岩,タイプIII,もしくはタイプIVの石灰岩の順で分布していることが明らかになった.15年度は石灰岩の内部構造に上記の帯状分布(6つの岩型)を適用し,相対的海水準変動を復元する作業を行った.その結果,コアを形成する石灰岩の中には6つの岩型のうち,タイプIとタイプIIを交互に繰り返すもの,またタイプIとタイプIIIまたはタイプIVを交互に繰り返すものなどがあることがわかった.
著者
信國 好俊 堂前 純子 烏帽子田 彰 藤本 成明
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

大規模ジーントラップ挿入変異細胞ライブラリーを用いたゲノム機能遺伝学的方法で、細胞内コレステロール代謝輸送、そして高脂血症に関与する可能性のある候補遺伝子を探索し、既知あるいは機能未同定の遺伝子を複数明らかにすることに成功した。これまでに188の変異細胞の解析から、細胞内コレステロール代謝輸送関連(候補)遺伝子として49の既知遺伝子と32の機能未同定遺伝子の解明に成功した。
著者
前川 泰之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SAT, 衛星通信 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.380, pp.7-12, 2001-10-17
参考文献数
7

大阪電気通信大学(寝屋川市)構内で過去13年間連続測定した放送衛星電波(11.84 GHz、右旋偏波、仰角41.4°)と通信衛星ビーコン波(19.45GHz、右旋偏波、仰角49.5°)の観測データを用い、各種前線通過時におけるKa帯およびKu帯衛星電波の降雨減衰特性について比較検討を行った。減衰比の年変化には、梅雨期と秋雨期の停滞前線による降雨の影響の大小関係が深く関連しており、梅雨期に停滞前線上を低気圧が通過する際に発生する降雨では両周波数帯の減衰比が大きいのに対し、秋雨期の前線の南側で発生する降雨では夏季の夕立と同様減衰比が小さいことが分かった。この変化は主として雨滴粒径分布の差異で生じることが示された。
著者
小林 正則 國土 典宏 関 誠 高橋 孝 柳澤 昭夫 前川 勝治郎
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.32, no.10, pp.2399-2403, 1999-10-01
参考文献数
17
被引用文献数
10

症例は66歳の女性. 他院にてS状結腸癌にて結腸切除術1年後, 肝転移を来たし当科にて肝左2区域切除, S6部分切除を施行した. 入院時血清AFP1,036.8ng/mlと異常高値を認めた. 肉眼的に根治であったが術後短期間に皮下組織内および残肝に再発し初回手術より1年4か月後(肝切除より94日後)死亡した. 病理組織像では, 原発巣および肝転移巣ともに通常の大腸癌に見られる腺腔形成部と明るい細胞質を持つ細胞がシート状に配列した部(hepatoid differentiation)よりなっていた. AFP産生性は免疫組織学的に原発巣および肝転移巣の両者で検出された. AFP産生大腸癌の報告はきわめてまれであるが, 予後不良なこのようなタイプの大腸癌の存在することを念頭に置き, 診療に当たる必要があると考えられた.
著者
野田 尚史 小林 隆 尾崎 喜光 日高 水穂 岸江 信介 西尾 純二 高山 善行 森山 由紀子 金澤 裕之 藤原 浩史 高山 善行 森野 崇 森山 由紀子 前田 広幸 三宅 和子 小柳 智一 福田 嘉一郎 青木 博史 米田 達郎 半沢 康 木村 義之
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

現代日本語文法, 音韻論, 古典語, 方言, 社会言語学などの各分野から, 述べ19名の研究者の参加し, 古典語など, ほぼ未開拓であった領域を含む対人配慮表現の研究の方法論を次々と開拓することができた。とりわけプロジェクトの集大成である, 社会言語科学会における10周年記念シンポジウムの研究発表では高い評価を得た。その内容が書籍として出版されることが決定している。
著者
安河内 朗 前田 享史 石橋 圭太 樋口 重和 樋口 重和
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究では光、温度、重力の各ストレスが及ぼす生理反応への影響から現代生活における適応性を評価した。その結果以下のことがわかった;1)朝の十分な光曝露と夜の電球色照明の選択は、概日リズムを調整し夜型化を抑制する。2)身体の運動不足や冬季暖房の慢性的利用は基礎代謝量を低下させ、耐寒性、耐暑性を低下させる。身体的運動はこれらの低下を向上させる。3)立ちくらみ頻度は夜型に多く、夜型は重力負荷に対する心拍応答が大きく直立耐性を低下させる。
著者
前迫 孝徳 片山 滋友 山内 裕平 菅井 勝雄 久保 和彦 横尾 能範 木原 俊行 水越 敏行
出版者
大阪大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1993

本研究の目的は、教育現場で利用可能なセンサーインタフェースを開発し、ハイパーメディア上で統合させることにあった。まず、国産のパーソナルコンピュータが現場で扱い易いセンサーインタフェースを有していないことから、パラレルポートを利用してデジタル入出力とアナログ入力を行う汎用のセンサーインタフェースを開発した。次に、センサーのアナログデータを電圧・周波数交換して、微弱電波や赤外線で伝送する無線方式のセンサーインタフェースを開発した。パソコンへはシリアルポートを通してデータを転送する。さらに、これらのセンサーインタフェースを利用する授業実践を行う中で改善を加えた。一方、環境や身体情報り測定が重要な意味を有するようになってきたことを考慮し、簡単な3次元地震センサー学習状況の把握に役立つ心拍呼吸性変動測定装置を開発した。さらに、インターネットの普及の中で重要性が増したHTMLを対象とすることで、センサー情報のハイパーメディアへの統合を実現する基礎研究を行った。すなわち現場校で気象等の授業を行う際、各種の情報や他地域との比較が望まれたことから、センサーの測定結果を扱う分散データベースと、Java及びJavaスクリプトを利用しインターネットを介して情報交換を行うハイパーメディアシステムの試験運用を行った。このように本研究では、ハードウェアとして、測定対象が卓上から屋内、そして屋外の測定へと拡大しつつある状況に対応可能なセンサーやインタフェースの開発と、ソフトウェアとして、インターネット上のWWWサーバを基本要素とする分散データベース上でリアルタイム測定データを扱う統合したハイパーメディアシステムを実現する基礎が確立できたと考える。今後もシステム運用を継続する中で改善等の活動を行う予定である。
著者
中台 佐喜子 金山 元春 前田 健一
出版者
広島大学大学院教育学研究科心理学講座
雑誌
広島大学心理学研究 (ISSN:13471619)
巻号頁・発行日
no.2, pp.151-157, 2003-03-28
被引用文献数
1

本研究では,76名の年長幼児を対象に,仲間集団における同性仲間および異性仲間からの人気度と社会的スキルとの関係について男女別に検討した.相関分析の結果,社会的スキルの高さは男児では同性仲間からの人気度と,女児では異性仲間からの人気度と関係していることがわかった.この結果を指名する方の立場から整理してみると,男児は相手の性にかかわらず社会的スキルに優れているかどうかが遊び仲間の選択に影響するのに対して,女児は相手が同性仲間であっても異性仲間であっても男児ほど社会的スキルを選択の基準としていないことが示唆された.本研究の結果は,幼児の仲間集団における人気度と社会的スキルとの関係を検討する際に性別の要因を考慮することの重要性を示している.
著者
羽石 操 伊藤 公一 千葉 勇 前川 泰之 新井 宏之 高田 潤一 本間 信一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播
巻号頁・発行日
vol.95, no.214, pp.45-52, 1995-08-24

本年のIEEEアンテナ伝搬国際シンポジウム(URSI-Meetingと共催)は、6月18日から23日迄の6日間、カリフォルニア州のニューポートビーチのマリオットホテルにて開催された。本シンポジウムにおいては、103-セッションの通常ミーティングが開催されると同時に、3つのワークショップと7つのショートコースが開催された。また、恒例のAP-S Awards Banquetでは各賞の表彰が行われ、日本人関係者としては、石丸先生(ワシントン大学)がDistinguished Achievement Awardを受賞された。
著者
柴垣 佳明 山中 大学 橋口 浩之 渡辺 明 上田 博 前川 泰之 深尾 昌一郎
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.569-596, 1997-04-25
参考文献数
39
被引用文献数
4

1991年6月17日〜7月8日にMU・気象(C・X・Ku帯)レーダーを用いた梅雨季3週間連続観測を行った. MUレーダーの観測データから, 下部対流圏の降雨エコーの影響を完全に除去して, 信頼性の高い高分解能の3次元風速のデータセットを作成した. 梅雨前線は最初の約1週間(6月17〜24日)はMUレーダー観測所の南方にあり, その後一旦(6月25〜28日)は北方に移動した. 6月29日以後は中間規模低気圧の地上の中心がレーダー観測所近傍を次々と通過し, その際の水平風の変化は, 下層から圏界面ジェット高度にかけて高度とともに遅れて強まる傾向がみられた. 次に, 中間規模低気圧との相対的位置関係に基づいた数時間スケールの鉛直流と降水雲との対応を(i)低気圧を伴った梅雨前線の北側, (ii)地上の低気圧中心付近, (iii)低気圧からかなり離れた梅雨前線南側の3領域について調べた. (i,(ii)のケースでは, 上昇流領域は対流圏界面付近の層状性乱流下端高度(LSTT)と前線面高度に大きく依存し, その後者のケースの上昇流は温暖前線北側では発達した降水雲を伴い, 寒冷前線北側では中規模スケールの領域にわたって卓越しているが, 降雨を伴わないことが多かった. さらに, (iii)の期間ではいくつかの上昇流領域はLSTTを突き抜けていた. これらの中規模変動は, 積雲規模擾乱に対応する上昇流領域のピークを含んでおり, またそれらのいくつかは地上降雨と一致していた. 以上の観測事実に基づき, 梅雨前線近傍の鉛直流変動の階層構造の概念図を作成した. この特徴は, よく知られている中間規模低気圧, 中規模クラウドクラスター, 積雲規模降水雲から成るマルチスケール構造と部分的には一致しているが, 本観測で得られた結果は過去の研究で主に用いられている気象レーダー・気象衛星では観測できない晴天領域についてもカバーしている.
著者
相原 玲二 大塚 玉記 近堂 徹 西村 浩二 前田 香織
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IA, インターネットアーキテクチャ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.440, pp.131-138, 2001-11-14
参考文献数
13
被引用文献数
7

広帯域IPv6インターネット上での高品質画像伝送を行うため、マルチキャスト等に対応するMPEG2伝送システムを開発した。高品質画像をリアルタイムに伝送するには、パケットロスや伝送遅延ゆらぎのないネットワークが要求されるが、現実には実現困難であり、前方誤り訂正(FEC)機能等を持つ伝送システムが必要となる。本稿では、開発したFEC機能を持つMPEG2 over IPv6システムについて述べる。また、アフリカ南部で観測された皆既日食のJGN回線などを利用した中継実験について紹介する。この実験では、全国9地点(広島を除く)および広島市内4地点へMPEG2画像をIPマルチキャストにて伝送し、合計700名以上の参加者が2時間にわたりその中継映像を観察した。その際得られた実測データをもとに、誤り訂正機能が極めて効果的に機能したことを示す。
著者
稲見 昌彦 川上 直樹 柳田 康幸 前田 太郎 舘 暲
出版者
日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.287-294, 1999-03 (Released:2007-06-06)

Conventional stereoscopic displays have inconsistent accommodation against convergance, which dengrades sensation of presence. We developed a stereoscopic display applying Maxwellian optics to avoid such inconsistency by realizing large depth of focus. The display was also designed to provide large field of view (about 110 degree) with the simple optics. And this display allows an operator to observe real and virtual images in focus for wide range of depth.
著者
小椋 好恵 馬場 聡史 後河内 大介 前田 忠彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. A・P, アンテナ・伝播 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.677, pp.191-196, 2005-02-25
参考文献数
16

移動端末において地上デジタル放送を受信する場合, その実用状態での人体手部, 胴体によるアンテナへの影響は無視できず, また指の位置に応じて放射特性が変化することが考えられる.そこで本論文では, 筐体上に設置した平衡給電型折り返しノーマルモードヘリカルアンテナにおける手部, 胴体の影響を計算, 実験により検討を行っている.手部のみの影響はインピーダンス特性に大きく現れ, 指の位置によっても変化が見られたが, 放射特性には手の影響はあるものの指の位置によって指向性利得への影響はあまり見られないことを示した.人体全身の放射特性への影響についても実験的に検討を行い, 胴体による影響を明らかにした.また, これらの筐体や人体の影響を考慮した上で所望の帯域に広げるため, バラクタダイオードを用いた整合についての基礎検討を行い, 保持状態における手の形状によって, 確保できる周波数帯に変化があることを示した.
著者
前田 桝夫
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

水を注ぐだけで生殖現象を観察できる教材をシダ植物ミズワラビ(Ceratopteris richardii)と日本在来種のカニクサ(Lygodoium japonicum Sw.)を材料としてプロトタイプを作製した。観察キットは容器底面に虫眼鏡を当てることにより胞子から発芽し前葉体(配偶体)の成長を観察することができる。さらに、反射鏡を介して倒立型の簡易型複合顕微鏡としての観察ができることも検討した。児童生徒は注射器を使って、フィルターを通して水道水を注げば、実験が開始されるシステムになっている。継続的、発展的な実験への展開のために安価で簡易型のクリーンベンチの試作も試みた。その他、裸子植物イチョウの精母細胞の段階の花粉管を単離・培養し、精母細胞の分裂から2つの精子の形成、成熟精子の過程を容易に観察できるハンギングドロップ法を開発した。
著者
前門戸 任 西條 康夫
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では研究者がすでに作製しているSLPIプロモーターを用いたアデノウイルス(AdSLPI.E1AdB)の非小細胞肺癌特異的腫瘍の腫瘍選択性についてさらに研究を進め、in vitroだけでなくin vivoにおいてもSLPI分泌非小細胞肺癌で複製されていることをその抗腫瘍効果と同時に観察した。SLPIプロモーターのはたらきをその下流にレポーター遺伝子をつなぎマウスの静脈に投与を行うと、肝臓での発現は僅かにしか認められず、気管内投与でも発現する正常細胞は太い気管支に少数の細胞が認められるのみで当ベクターの安全性が期待できる。次に、非複製アデノウイルスであるAdCMV.NK4(NK4はHGFの分子内断片でありHGFのアンタゴニストとしてのはたらきとHGFに依存しない強力な血管新生阻害作用御もつ)とAdSLPI.E1AdBの併用療法を行った。二つのウイルスが同一SLPI産生腫瘍内に感染したとき、AdSLPI.E1AdBより発現したE1A蛋白がAdCMV.NK4にはたらき、単独では複製しないAdCMV.NK4に複製と発現増強が認められた。また、この併用療法を腫瘍に対し試みると単独療法を凌ぐ効果があり、なおかつ通常の遺伝子治療では効果を発揮することが難しい径が1cmを超える腫瘍に対しても十分な効果を発揮することが出来た。腫瘍組織の分析では、AdCMV.NK4の作用である血管新生阻害の増強が認められた。この二つのウイルスベクターの併用療法は非小細胞肺癌特異的な強力な遺伝子治療として期待できる。
著者
藤元 優子 藤井 守男 山岸 智子 ターヘリー ザフラー 佐々木 あや乃 竹原 新 アーベディーシャール カームヤール 佐々木 あや乃 鈴木 珠里 竹原 新 タンハー ザフラー ターヘリー 藤井 守男 前田 君江 山岸 智子 山中 由里子
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究はイランにおける多様な文学的言説を、ジェンダーを分析的に用いて総合的に検証することで、文化的周縁に置かれ、常に歪められてきたイラン女性の実像を明らかにし、ひいてはイスラーム世界に対する認識の刷新を図ろうとした。古典から現代までの文学作品のみならず、民間歌謡、民話、祭祀や宗教儀礼をも対象とした多様なテクストの分析を通して、複数の時代・階層・ジェンダーにまたがる女性の文学的言説の豊潤な蓄積を立証することができた。
著者
前田 幸男
出版者
東京都立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究のデータ収集計画の過程で、従来とは異なる角度から政党支持・内閣支持の意味につき理論的に検討する必要を感じ、集計された世論調査データの推移を実際の国政の変化と対比させつつ検討する作業を行った。1993年以来の政党の離合集散は、政党支持の測定について、いわゆる五五年体制下では必ずしも明確に意識されなかった諸問題を認識する絶好の機会を提供していると考えたからである。その成果は、後掲の「中央調査報」論文に掲載した。また、内閣支持率の推移を検討する過程で、首相・内閣評価の問題について基礎的な情報を収集する必要を感じ、本調査の質問票には小泉首相を支持する・支持しない理由についての自由回答を付け加えた。本研究のデータ収集は計画より数か月遅れたが、予定された三重県松阪市で2004年12月に行われた。2005年1月末にデータは納品され、現在データ・クリーニングを兼ねた記述的分析が行われている。初期段階で注目するべき成果としては、A・Bの分割調査票形式で行った実験において、「政治」と「政府」では、有権者の反応に興味深い差が見られたことである。即ち、「政治」に対する信頼が「政府」に対する信頼よりも若干高めに出るのみならず、「わからない・答えない」の比率は「政治」についての信頼の方が低い。また、社会福祉質問では、「財政が苦しくても」と「増税してでも」という二つの似通った言葉を使い分けたが、そこにおいても統計的に有意な差が確認できた。今後は、分割票の特性を生かして、一体どのような属性の人々が、如何なる条件で異なる反応を示しているのか検討を続ける予定である。本調査で採用した政治知識尺度を利用することで、従来は得られなかった興味深い知見が得られるものと考えている。