著者
平野 浩彦
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.249-254, 2014 (Released:2014-08-12)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

日本の認知症の数は465万人との報告(厚労省研究班2013年)がなされ,“身近な病気:common disease”の一つになっている.歯科医療従事者も認知症を理解し,予知性のある歯科治療,口腔衛生管理を継続的に認知症高齢者に提供することが,超高齢社会での歯科に求められている最も重要なミッションの一つと考える.以上を踏まえ,本稿では認知症高齢者の歯科治療立案プロセスに必要な視点を明確にする目的で,アルツハイマー型認知症に代表される変性性認知症を中心に,その進行とともに変遷する口腔の治療・ケアニーズについて調査知見等を中心に解説した.
著者
篠崎 広一郎 北村 伸哉 平野 剛 吉田 明子 平澤 博之
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.10, pp.573-580, 2005-10-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
15

われわれは縊頸症例の臨床経過を検討し,これらの転帰を左右する因子を見極めることを目的に,実験的に解明している病態生理を考察した。【対象と方法】1998. 4~2003. 8に経験した自殺企図411例のうち,縊頸44例を対象として検討した。完遂率に関しては他の自殺企図手段と比較した。救急隊現場到着時(以下,現着時)cardiopulmonary arrest (CPA)の群とnon-CPA群に分け,転帰及び臨床経過を検討した。後者を来院時の意識障害の程度で2群に分け,年齢,男女比,縊頸形態,死亡率,社会復帰率,遅発性無酸素症後脳症の発症率に関して検討した。また,全縊頸症例において転帰を左右する因子として年齢,男女比,縊頸形態,現着時CPAの有無を取り上げその関与につき検討した。【結果】縊頸は検討期間の自殺企図手段の10.7%を占めるが,完遂率は75%と他の手段に比して最も高かった。現着時CPAの縊頸は33例あり,このうち7例に自己心拍の再開を認め,そのうち1例のみ社会復帰したが6例は死亡した。一方,現着時non-CPAは11例あり,死亡は1例,残り10例は社会復帰した。この11例には意識障害の程度で分類した2群間で背景因子や臨床経過・転帰に有意な差を認めなかった。また,全44例の転帰を左右する因子では,現着時CPAの有無にのみ有意差を認めた。【考察】縊頸で脳血流が途絶し,気道が閉塞すると,中枢神経系の不可逆的障害に次いで,心臓を含めた各臓器の固有機能が停止する。従って,現着時CPA症例の予後は不良であるとともに,CPAの有無が目撃者に乏しい縊頸の転帰を左右する唯一の因子となることが判明した。一方,自律神経反射にて短い経過時間でCPAに陥った症例では,早期に縊頸を解除し適切な処置を施行することで,速やかな心拍再開が見込まれ救命可能である。【結語】今回の検討結果を踏まえ,現着時CPAであった縊頸症例の治療に関しては,慎重に考慮する必要があると思われた。
著者
平野 綾 奥平 奈保子 金井 日菜子 峯下 圭子
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.418-427, 2010-09-30 (Released:2011-10-01)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

単語の復唱・音読は良好だが呼称時のみ音韻探索が著明で,多彩な錯語を呈した流暢型失語の 1 例を報告した。症例は 69 歳,右利き女性,高校卒。左側頭─頭頂葉の脳梗塞で中重度流暢型失語を発症,会話時ほとんど錯語はなく流暢に話すが,指示代名詞の多い空虚な発話だった。呼称時の誤反応を,語彙性,意味的関連性,音韻的関連性の観点から,意味性・無関連・形式性・混合性・音韻性錯語および新造語の 6 つに分類した結果,これらすべての種類の反応が認められた。特に,音節・韻律構造といった語の「枠組み」が保たれた非単語が多数認められた点が特徴的で,これらは,語の音韻形式のうち音節・韻律情報に比べて音素情報が得にくく,回収された語の枠組みを埋めようと音素を探索する過程で表出されたと考えられた。また,形式性錯語や,複数語彙が混合したと思われる非単語が認められたことから,語選択における語彙レベルと音韻レベルの相互的な影響も示唆された。
著者
平野 浩彦
出版者
公益社団法人 日本口腔インプラント学会
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.235-244, 2017-12-31 (Released:2018-02-15)
参考文献数
7

日本の認知症の患者数は462万人との報告がなされ,今後もその数は増加することが推定されている.そういったなか,平成27年1月に国家戦略として7つの柱からなる認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)が発表された.二つ目の柱である「認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等の提供」に,歯科医師への具体的なアクションとして「認知症対応力向上研修」の実施が提示された.さらに今後も「認知症高齢者等にやさしい地域づくり」に向け,認知症の人が住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けるために,歯科医師としての役割が求められることになろう.
著者
高橋 哲也 武居 哲洋 伊藤 敏孝 平野 雅巳 竹本 正明 八木 啓一
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.504-508, 2014-08-31 (Released:2015-01-24)
参考文献数
15
被引用文献数
1

目的:診断が遅延したWallenberg 症候群の特徴を検討すること。方法:2005年4月1日から7年間に横浜市立みなと赤十字病院へ入院した新規発症脳梗塞1,331例のうち,神経内科医によりWallenberg症候群と診断された症例の特徴を後方視的に検討した。また初診時に正診された群(初回診断群)と後日診断が確定した群(遅延診断群)の比較検討を行った。結果:調査期間内のWallenberg症候群は23例で,神経学的異常所見は失調歩行が47.8%と最多であった。遅延診断群は11例(47.8%)で,初診時診断名と外来転帰は末梢性めまい(帰宅3例/入院5例),片頭痛(帰宅2例/入院1例)であった。初診時に頭部MRIを施行された3例中2例に異常所見を認めなかった。遅延診断群は初回診断群と比較し,発症から来院までの時間が有意に短く(4.1 ± 5.7 vs 17.8 ± 19.5時間,p<0.05),神経学的異常所見数が有意に少なかった(1.2 ± 1.0 vs 2.5 ± 1.5,p<0.05)。結論:発症早期に神経学的異常所見が少なく,MRIでも偽陰性となる場合があることがWallenberg症候群の診断遅延の要因と考えられた。
著者
平野 敦史
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.393-398, 2015 (Released:2018-01-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

ホイール剛性の操縦安定性への影響について要因解明のため実験解析を行った.ホイール剛性の補強案別を用いて操安性試験およびタイヤ接地特性試験を行った.ホイール剛性をディスク剛性とリム剛性に分けてそれぞれの影響について比較検証を行い,ディスク剛性とリム剛性のタイヤ接地特性および操安性への寄与を明確にした.
著者
吉永 進一 平野 直子 塚田 穂高
出版者
舞鶴工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本科研では、明治末期より昭和初期にかけて全盛を迎えた民間の精神療法(あるいは霊術)について、同時代における身体技法の世界的な流行、国家主義的運動との関わりという両面から研究を行った。前者では桑原俊郎による催眠術の呪術化、ニューソートやラマチャラカのヨガ呼吸法の流入、後者では井上哲次郎による儒教の近代化、静坐法などの修養の流行という系譜を分析した。これらを元に田中守平の太霊道についての研究を進め、他方では臼井甕男の霊気療法、三井甲之のタナスエの道、そして現在のレイキヒーリングに至る歴史を明らかにした。また、その成果はIAHR(国際宗教史学会)を含む国内外の学会で発表された。
著者
平野 郁子
出版者
北海道大学大学院教育学研究院
雑誌
北海道大学大学院教育学研究院紀要 (ISSN:18821669)
巻号頁・発行日
vol.120, pp.1-22, 2014-06-30

本研究は,発達障害のある人が障害者手帳をもって生きるとはどのような体験かを明らかにする目的で,手帳取得前後のエピソードを4 名の協力者から聞き取り,質的分析を行った。 協力者らは,葛藤の末に複雑な心境で取得を決断し,取得後は,手帳を役立つものとして活用していた。しかし,期待と異なる厳しい障害者雇用の現状や,健常者にも障害者にも成り切れない「どっちつかず」のアイデンティティの矛盾に直面するなかで、複雑な思いも抱いていた。 こうした様々な揺らぎに対し,協力者らは診断以前からある信念や価値観をもとに折り合おうとしていた。そして、本研究で語ることを通じて障害者手帳をもって生きる体験が“葛藤を抱えつつ社会と自分に折り合いながら生きること”として語られていった。
著者
平野 芳信
出版者
佛教大学国語国文学会
雑誌
京都語文 (ISSN:13424254)
巻号頁・発行日
no.27, pp.50-66, 2019-11-30

村上春樹のデビュー作『風の歌を聴け』で、語り手が多大な影響を受けたアメリカ人作家デレク・ハートフィールドは、周知のごとく、実在の作家ではない。一応、「ロバート・E・ハワード」と「ハワード・P・ラヴクラフト」、さらには「ヴォネガット」等々の作家像を混交したものという定説があるが、本稿は、この定説に一石を投じるものである。すなわち、かつてアメリカ進駐軍に接収されていた明治神宮球場で、アメリカ人選手が放ったヒットの快音を耳にして、小説を書こうと思いつきながら、どうしてもうまく小説が書けなかった春樹が、まず英語で書いてみて、それを日本語に翻訳することではじめて『風の歌を聴け』を書き上げることができたという、作者自身何度も述懐しているエピソードに留意した。さらには、それまでの禁を破るかのように身内について多くの情報をさらけ出したことで話題になった「文藝春秋」に発表されたエッセイ「猫を棄てる」において、春樹の祖父が「村上弁識」という僧侶であったことに着目し、「弁識」氏が「ハートフィールド」氏のもうひとりのモデルであった可能性を提案するものである。
著者
植田 睦之 岩本 富雄 中村 豊 川崎 慎二 今野 怜 佐藤 重穂 高 美喜男 高嶋 敦史 滝沢 和彦 沼野 正博 原田 修 平野 敏明 堀田 昌伸 三上 かつら 柳田 和美 松井 理生 荒木田 義隆 才木 道雄 雪本 晋資
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.F3-F11, 2014-10-01 (Released:2014-10-15)
参考文献数
29

2009年から2013年まで,全国21か所の森林で繁殖期の鳥類の個体数変化についてモニタリングを行なった.98種の鳥が記録され,そのうち10地点以上で記録された25種を対象に解析を行なったところ,薮を生息地とするウグイスとコルリが減少しており,キビタキが増加していた.ウグイスとコルリはシカの植生への影響が顕著な場所で個体数が少なく,シカによる下層植生の減少がこれらの種の減少につながっていることが示唆された.しかし,シカの影響が顕著でない場所でも減少傾向にあり,今後のモニタリングにより減少の原因のさらなる検討が必要である.
著者
大塚 攻 宮川 千裕 平野 勝士 近藤 裕介
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.48-60, 2018-08-31 (Released:2018-08-31)
参考文献数
89

Ecto- and meso-parasitic copepod basibionts harbor a wide variety of epibionts. The basibionts belong to the families Caligidae, Pandaridae, Trebiidae, Pennellidae, Sphyriidae, Bomolochidae, Ergasilidae, and Lernaeidae. Epibionts consist of bacteria, suctorian and peritrich ciliates, hydrozoan polyps, udonellid monogeneans, stalked barnacles, and algae. Udonellids and hydrozoan polyps seem to correspond to hyperparasitism, while attachment of some algae is regarded as accidental phoresy. These fish parasites provide unique substrates for epibionts, due to (1) no molting in the adults, (2) provision of relatively long-live and stable attachment sites, and (3) protection from fish immune responses, in addition to advantages of high mobility and dispersal of primary host fish.
著者
平野 哲史 柳井 翔吾 高田 匡 米田 直起 表原 拓也 久保田 直人 南 貴一 広川 千英 山本 杏 万谷 洋平 横山 俊史 北川 浩 星 信彦
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第43回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-252, 2016 (Released:2016-08-08)

【背景】ネオニコチノイドは1990年代に昆虫型ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChRs)を標的として開発された農薬成分である.しかし近年,ネオニコチノイドは哺乳類型nAChRsを介して神経細胞に興奮反応を引き起こすことが示され,昆虫以外の生物に対して不測の影響を与える可能性が懸念されている.我々はこれまでに成熟雄マウスをネオニコチノイドの1種,クロチアニジン(CTD)に4週間曝露すると,新規環境(オープンフィールド)における不安様行動が引き起こされ,その影響は環境ストレス下においてより顕在化することを報告してきた.本研究では,ネオニコチノイドによる行動影響発現に関与する脳領域を明らかにすることを目的とした.【材料と方法】C57BL/6成熟雄マウスに5または50 mg/kgの CTDを単回経口投与し,投与1時間後に高架式十字迷路試験による行動解析を行った.さらに2時間後に脳を摘出し,c-fos発現を指標とした組織学的解析により投与後誘導された神経活動を評価した.【結果と考察】行動解析の結果,CTD 5 mg/kg投与群においては溶媒投与対照群と比較してOpen arm滞在時間および侵入回数の減少がみられた.CTD 50 mg/kg投与群においては,さらに総移動距離の減少ならびに迷路探索時における異常啼鳴(Abnormal vocalization)およびすくみ行動(Freezing)が観察された.組織学的解析の結果,情動およびストレス反応に関与する視床下部,海馬においてc-fos陽性細胞数の増加がみられた.以上の結果から,CTD投与下においては,新規環境ストレスに曝露された際にコリン作動性神経投射を受ける視床下部や海馬における過剰な神経興奮が生じ,不安様行動やストレス応答を濃度依存的に誘発する可能性が示唆された.
著者
菊池(永井) ゆみこ(祐美子) 平野 智紀 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S47064, (Released:2023-10-06)
参考文献数
9

本研究では熟達した応用演劇ファシリテーターと初心者のワークショップ・プログラム中の視線配布傾向とその意図の比較を行った.姫野(2020)の手法を元に,熟達した応用演劇のファシリテーター,初心者それぞれのワークショップ・プログラム実施中の視線映像を記録し,映像を用いた再生刺激インタビューを行った.その結果,熟達した応用演劇ファシリテーターはプログラム実施中に参加者全体に意図的に視線を配布する傾向があること,また視線配布数がプログラムの時間経過に伴い減少することがわかった.
著者
土肥 孝彰 石井 律子 細川 佐知子 平野 尚茂 成瀬 友裕
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.44-50, 2007 (Released:2007-03-05)
参考文献数
22
被引用文献数
2 4

角層内の水分は, 結合水と自由水の状態で存在しており, 結合水はさらに1次結合水と2次結合水に細分化される。また, 角層細胞間脂質はラメラ構造を形成し, 角層内の水分を2次結合水として捕捉し, 水分保持に大きく関与していることが知られている。そこで, 我々はヘパリン類似物質の保湿作用メカニズムを明らかにする目的で, 結合水量及びラメラ構造に対する作用をin vitro及びin vivoにて検討した。In vitroでは, 卵黄レシチンからラメラ構造を作製し, ヘパリン類似物質添加によるラメラ構造中の結合水量の変化を示差走査熱量計により測定した。ヘパリン類似物質は, ラメラ構造中の結合水量を有意に増加させ, その作用は添加水量に応じて増加する傾向が認められた。in vivoでは, モルモット腹部皮膚にラウリル硫酸ナトリウム処置により実験的ドライスキンを作製し, ヘパリン類似物質を含有するヒルドイド®ローションを5日間反復塗布した後, 角層を採取し, 結合水量の測定, 吸熱ピークパターン解析, 及び電子顕微鏡によるラメラ構造観察を実施した。実験的ドライスキンで破綻した角層細胞間脂質のラメラ構造は, ヒルドイド®ローション反復塗布により回復し, 角層中の結合水量も有意に増加していた。以上の結果から, ヘパリン類似物質の保湿作用は角層細胞間脂質のラメラ構造の回復促進と2次結合水量の増加に基づくものと考えられた。
著者
平野 悠一郎
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.1-10, 2016-02-01 (Released:2016-04-06)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

日本では1980~90年代にかけて,林内,林道,里道,登山道等を「野外トレイル」として走行するマウンテンバイカーが増加してきた。しかしその過程では,森林所有者や他の利用(ハイキング・林産物採取等)との軋轢が増し,林内の走行を規制されるケースも目立ってきた。このため,2000年代以降,「野外での走行を継続的に楽しむには,周囲の理解が不可欠」というバイカー側の危機意識を主に反映して,特定の地域に密着しつつマウンテンバイク用のトレイルを確保する動きが生まれている。本稿で扱うB.C. Porter,西多摩マウンテンバイク友の会,Trail Cutter,西伊豆古道再生プロジェクト・山伏トレイルツアー,王滝村の事業においては,このトレイルの確保にあたって,レジャー施設への併設,地元集落・森林所有者との合意形成,地方自治体との連携が積極的に進められ,バイカーを組織して自治体・集落レベルの森林整備に積極的に協力する事例もみられる。この動きは,森林の荒廃や過疎化に悩む山村にあって,自治体・集落や所有者にも受け入れられつつあり,他の利用者との競合を回避した森林の有効利用の可能性をも提示している。
著者
村永 信吾 平野 清孝
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.301-308, 2003-06-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
22
被引用文献数
2

本研究の目的は, 簡便に歩行能力を推定するために開発した2ステップテストと10m歩行速度, 6分間歩行距離, 日常生活自立度, さらに転倒リスクとの関係を求め, このテストの臨床応用への可能性について検討することである.対象は, 健常者108名, リハビリテーション通院患者108名, 合計216名であった.最大2歩幅を身長比で表した2ステップ値と10m歩行速度及び6分間歩行距離はそれぞれ強い正の相関を示した.また日常生活自立度との関係では, 2ステップ値の低下に伴い日常生活自立度も制限され, さらに転倒リスクも高くなることが分かった.これらのことから2ステップテストは, 10m歩行速度や6分間歩行距離, 日常生活自立度, さらに転倒リスクなどを反映しており, 診察室や在宅といった測定空間に制限のある場所での簡便な歩行能力を推定に利用できると言える.
著者
東 由美子 時実 象一 平野 桃子 柳 与志夫
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.35-40, 2019-01-07 (Released:2019-02-18)
参考文献数
20
被引用文献数
1

欧米と比較すると、我が国ではデジタル編集導入以前の過去に発行された地方新聞のデジタルデータは、活用以前に公開自体ほとんど進んでいない。しかし、古い新聞原紙の劣化の進行、地方紙の地域における役割の重要性等に鑑みて、過去の地方紙のデジタル化は今後の我が国のデジタルコンテンツ形成、及びデジタルアーカイブ構築にとって極めて重要な課題といえよう。筆者らは2017年2月から5月に日本新聞協会の協力を得て、協会に加盟する地方新聞社73社に対し、デジタル化に関するアンケート調査をおこなった(回収率64.4%)。本稿ではその概要について報告し、地方紙のデジタル化やデータの公開に関する課題、問題点等を検討する。
著者
平野 智紀 安斎 勇樹 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.43034, (Released:2019-10-16)
参考文献数
25

本研究では,美術教育において広がりを持っている対話型鑑賞ワークショップについて,これを鑑賞者の知識構築の過程として捉え,ナビゲイター(ファシリテーター)による情報提供がどのように知識構築に寄与するのかについて検討した.鑑賞会への参与観察およびファシリテーションを担当した14名の学生ナビゲイターへのインタビューから,鑑賞における情報提供は「考えるための情報」と「確認のための情報」に分類された.プロトコル分析から,「考えるための情報」は,作品の表現内容と組み合わせて知識構築を促すために提供され,「確認のための情報」は議論の押さえとして,それぞれ提供タイミングが図られていることが明らかになった.