著者
小田桐 恵美 出村 博 出村 黎子 野村 馨 肥塚 直美 成瀬 光栄 鎮目 和夫 田中 芳雄 大内 広子
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.70, no.11, pp.1573-1580, 1981
被引用文献数
3

妊娠により臨床症状の著明な悪化をみ,妊娠中絶により臨床症状の改善をみたCushing症候群の1例を経験した.さらに本例について妊娠に伴うCushing症候群の増悪因子についても,若干の検討を加えたので合わせて報告する.症例は満月様顔貌,全身倦怠感を主訴として来院した28才,主婦.昭和47年尿路結石.昭和49年重症妊娠中毒症にて第1子妊娠中絶.昭和51年第2回妊娠中に主訴が増悪したため入院精査.血漿cortisoi (以下F),尿中遊離Fは共に高く日内変動が無く, dexamethasone大量にても抑制の認められない腺腫型の反応を示した.本例の臨床経過は妊娠2カ月頃より徐々に増悪したと考えられ,妊娠中毒症状も高度のため妊娠5カ月にて中絶術施行.中絶後は血漿,尿中遊離F共に急速に下降し,変動していた血圧も140/100mmHg前後に安定.中絶後cushing症候群の妊娠による増悪因子について検討した.まずHCGは血中hormone動態に変化をきたさなかつたが, estrogenでは血圧の上昇,血漿,尿中遊離Fの軽度上昇が認められた.さらに娩出時の胎盤をPayne法にて抽出したところACTH活性が証明された.本例はACTH反応型腺腫であつたが, estrogenとACTHの同時投与による血漿および尿中遊離Fの相乗的増加は明らかではなかつた.以上より本例の妊娠によるCushlng症候群の増悪因子の一つはestrogenであり,その他胎盤性ACTHや妊娠時の種々のfactorが本例の臨床症状をmodifyしたものと推測された.
著者
露木 英男 成瀬 宇平
出版者
The Japanese Society of Fisheries Science
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.589-592, 1962

In the ordinary and the red meats of "Higan-Buri" (yellowtail, <i>Seriola quinqueradiata</i>, caught in spring), it was found that the yields (%) of cerebrone sulfuric ester (CSE) from the red meat was higher than that from the ordinary one, and the unsaturation of component fatty acids of CSE from the former was higher than that from the latter.<br> In both types of meat, a main sugar of CSE was galactose while a minor one, glucose.
著者
金山 尚裕 シャイナロン リンバラパス 成瀬 寛夫 山本 信博 藤城 卓 前原 佳代子 森田 泰嗣 寺尾 俊彦
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.477-482, 1992-04-01
被引用文献数
4

切迫早産において頚管に浸潤した顆粒球から放出される顆粒球エラスターゼ (エラスターゼ) が頚管の熟化, 開大に密接に関係することが知られている。エラスターゼのインヒビターであるウリナスタチン (UTI) の腟剤が切迫早産の治療に有効であるかを検討した。43例の切迫早産を4群に分類し次の治療法を行った。A群 (N=12): Ritodorine点滴, B群 (N=9): UTI (1,000U) 頚管内投与, C群 (N=14): Ritodorine点滴+UTI頚管内投与, D群 (N=8): Ritodorine点滴+UTI頚管内投与+全身抗生物質療法。これら4群のエラスターゼ値は治療前A群0.76±0.40μg/ml (Mean±SD), B群0.93±0.43μg/ml, C群0.85±0.40μg/ml, D群0.90±0.41μg/mlで各群間で有意差を認めなかった。治療開始後 (3日目から7日目) のエラスターゼ値はA群0.75±0.47μg/ml, B 群0.27±0.35μg/ml, C群0.27±0.33μg/ml, D群0.30±0.19μg/mlとなりB, C, D群は著明に下降した。子宮収縮の改善度を検討すると, 子宮収縮が30分に1回以下になるまでの時間は, A群65±66分, B群375±336分, C群70±64分, D群58±53分で, B群が有意 (p<0.05) に時間を要した。4日以上子宮収縮抑制が得られた時点で上記治療を中止した。その後の子宮収縮の再発率はA群58%, B群11%, C群14%, D群13%でA群の再発率が高かった。以上よりUTI腟剤の頚管内投与は頚管内エラスターゼ量を低下させ子宮収縮抑制の補助療法として極めて有用であることが判明した。
著者
成瀬 継太郎 久保 正男 佐藤 浩 松原 隆
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.85, pp.51-54, 2008-09-11

本論文の目的は、電子掲示版システム (BBS) におけるコミュニケーションの様相を理解することである.特に本論では次の三点について議論する. (1) 調査:オープン型の BBS のログを分析し、多くの BBS に共通する特性を調べた結果,各々のユーザーによって投稿される一日あたりの記事の数が対数正規分布に従うことを明らかにする.これらの特徴は各ユーザーに明示的にそのように振る舞うように定められたものではなく,自由な相互作用の結果現れた創発現象がもつ性質である.そこで,この現象を理解するために (2) 創発現象を起こす個人特性の提示と (3) 創発現象下のユーザーの振る舞いの定式化を行い,投稿件数分布を導出している.The objective of this paper is to understand an aspect of human social interaction in bulletin board systems on internet. When an individual submits an article to a BBS, it is potentially influenced by articles from other users. A submission sometimes starts a long and hot chain of articles, but often does not. This paper tries to answer the question of why and how such a chain of articles emerges. In other words, we attempt to reveal a mechanism linking the individual voluntary activity of article submission and the social phenomenon of a long article chain.
著者
村上 和人 成瀬 正
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.918-926, 2000-03-25
被引用文献数
11

本論文では, Hough変換を利用した高速な直線検出法について述べる.提案するアルゴリズムでは, 人の視覚の中心視特性を部分的に利用する.すなわち, まず, ある注目する局所的な窓領域内である程度の精度を保証する直線候補をHough変換によって抽出する.次いで, その候補線分を延伸して作られる線分候補存在領域内で, 検証処理を行って直線を検出する.そして, この局所的な窓領域を逐次的・適応的にシフトすることにより, 画像全体から直線検出を行う.これからの処理により, Hough変換の際に生起する量子化誤差の吸収を行うとともに, 従来型のHough変換による直線検出法が苦手とする短い線分抽出も可能にした.全体として, 従来型のHough変換の精度を保証した上で, 高速化(およそ数分の1から10分の1程度の計算コスト)を実現し, 並列処理によるいっそうの高速化の可能性を示した.
著者
成瀬 治興 内田 季延 松本 泰尚 深田 宰史 塩田 正純 北村 泰壽 国松 直 伊藤 和也
出版者
愛知工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、平坦道路を対象とするエネルギーベースに準拠した道路交通振動予測式(INCE/J RTV-MODEL2003)の適用道路構造種別の拡大を目的として、3mプロフィル計に代わる路面平坦性の計測方法として、車載型IRI評価システムの適用を検証し、利用可能であることを確認した。次いで、試験車輛を用いた盛土・切土道路での実測調査により、平坦道路予測式を他の道路構造に適用するための基礎データを蓄積した。
著者
安仁屋 政武 幸島 司郎 小林 俊一 成瀬 廉二 白岩 孝行 リベラ アンドレ カサッサ ジーノ 和泉 薫
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

1998年は北パタゴニア氷原のソレール氷河とソレール河谷を対象とした研究が行われ、以下のような知見を得た。完新世の氷河変動の研究では、ソレール氷河とソレール河谷のモレイン分布調査から、ヤンガー・ドライアス(約10,500前)と2000BPの氷期が推定されるが、詳しくは年代測定結果が出るのを待っている。ソレール氷河では流動、表面プロファイル、歪みを調査し、さらに水文観測と気象観測を行い、氷河のダイナミクスとの関係を考察した。これにより、底面辷りが流動に大きな割合を占めていることが示された。さらに表面プロファイルの測定から、1985年以来、42m±5m表面高度が減少したことが判明した。年平均に直すと3.2m±5mである。1998年撮影の北パタゴニア氷原溢流氷河末端の空中写真から、1995年(前回調査)以後の氷河変動を抽出した。これによると、1つの氷河(サン・ラファエル氷河)を除き全てが後退していた。さらに1999年撮影の空中写真からは興味深いことが判明した。それは1990年以降唯一前進していたサン・ラファエル氷河が、1998年から1999年にかけて後退したことである。このことから、1990年以降の前進は、従来考えられていた1970年代の雨量増加というよりも、フィヨルドの地形と氷河ダイナミクスによる公算が大きくなった。1999年度の調査は南氷原のティンダール氷河の涵養域(標高1760m)でボーリングを行い、現地観察に加えて46mのアイス・コアの採取に成功した。詳しい化学分析はこれからである。ペリート・モレーノ氷河では写真測量によるカーピング活動の記録と氷河流動の推定、さらに湖面の津波観測によるカービング量の推定を行った。また、氷河周辺の湖の水深を測定した結果、深いところで80m程度であった。同じく、ウプサラ氷河が流入しているBrazo Upsalaの水深を測定したが、深いところは700m近くあり、氷河のカービングとダイナミクス、後退などを解析する上で重要なデータとなる。
著者
湯山 賢一 西山 厚 鈴木 喜博 岩田 茂樹 内藤 栄 稲本 泰生 吉澤 悟 宮崎 幹子 谷口 耕生 野尻 忠 研清水 健 岩戸 晶子 斎木 涼子 北澤 菜月 永井 洋之 中島 博 有賀 祥隆 前園 実知雄 東野 治之 根立 研介 藤岡 穣 高橋 照彦 山崎 隆之 梶谷 亮治 杉本 一樹 成瀬 正和 尾形 充彦 西川 明彦 森實 久美子 原 瑛莉子
出版者
独立行政法人国立文化財機構奈良国立博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

「奈良朝仏教美術の主要作例、もしくはその国際性を考える上で重要な周辺作例の中から対象とする文化財を選定し、それらに関する基礎資料を学界の共有財産として提供する」という目的に沿って調査研究を行い、22年度末に5部構成・2分冊からなる研究成果報告書を刊行した。薬師寺に伝来した藤田美術館所蔵大般若経(魚養経)全387巻の撮影及び書誌的データの集成、蛍光X線分析による香取神宮所蔵海獣葡萄鏡や東大寺金堂鎮壇具の成分分析を通した制作地の特定などが、代表的な成果である。
著者
秋田谷 英次 白岩 孝行 成瀬 廉二
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

平成6、7の2年間で札幌市内の雪氷路面の調査を実施し、目視による新たな路面雪氷分類を作成した。これはスタッドレスタイヤと凍結防止剤の普及に伴って頻繁に発生する様になった路面状態に対応した分類である(つるつる路面に主眼)。路面状態は積雪量・気温の気象要素と交通量、及び道路の維持管理作業によって常に変化する。2冬期の観測結果から路面状況を定量化し気象要因と比較した。その結果、車の走行にとって問題となる「光る(すべる)路面」と「こぶ氷」の発生動態が解明された。この結果は、最悪な雪氷路面が発生する前に的確な維持管理作業を開始する指針となるものである。表層雪崩の原因である弱層の調査を本州の多雪山岳域まで広げた。放射冷却に起因する「表層しもざらめ雪」と「表面霜」からなる弱層は北海道以外でも表層雪崩の大きな原因となることが明らかとなった。雪崩災害を防ぐためには登山者・スキーヤへの啓蒙が重要である。普及活動として例えば、平成8年度全国山岳遭難対策協議会(文部省、岐阜県、警察庁等の主催)に招かれ講演した。平成7年は12月末から北海道では近年にない豪雪となり、やがて本州も豪雪に見舞われた。札幌圏ではこれまでの道路管理システムでは対応できず、あらゆる交通網は大混乱を引き起こした。大都市では、これまでのハード中心の対策には限界があり、新たな交通規制、きめ細かな情報公開、住民、ユーザーと行政との責任分担などソフト面での対応が不可欠な事が明らかとなった。10年以上にわたり豪雪がなかったため、住民、行政、マスコミとあらゆる機関の自然に対する危機意識が低下したこと、地方、国などの横の連携が不十分な事も災害要因となった。
著者
成瀬 九美
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

同じリズムで動くとき、我々は共通の感情を表出し、他者との一体感を味わうことがある。リズム同調性のある活動は社会的統合の現われでありソーシャル・スキルの一つである。本研究では2者のコミュニケーション場面を取り上げ、前腕回転課題、タッピング課題、手合わせ課題を用いた実験や、幼稚園児の積み木遊びの観察事例において,動作速度の変化を分析した。同調過程では他者身体に対する自己身体の調整が行われ、この相補的な関わりの中で二者のリズムが形成された。
著者
伊藤 寛 堀内 格 成瀬 博昭 坂上 充志 本多 英邦 長村 洋一 西田 圭志 石黒 伊三雄 山崎 雅彦
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, 1988-08-01

N-acetylneuraminic acid(以下NANA)はαおよびβ-globulin分画の糖蛋白質に含まれ,急性炎症,悪性腫瘍などで上昇するといわれている.その上昇に関与する蛋白質の性状は異なることが推測されることから大腸癌症例における詳細な糖蛋白質の動態の追跡を目的として,糖鎖末端にgalactose(以下GP)およびNANA-galactose(以下NGP)を有する糖蛋白質の定量を試みたので報告する.
著者
成瀬 恵治 毛利 聡 中村 一文 竹居 孝二 山田 浩司 入部 玄太郎 片野坂 友紀
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

生体内では至るところで、重力・伸展や剪断応力といった物理的な機械刺激が生じている。細胞の機械受容システムを介して伝達されるこのような刺激は、単に生体にとって不利益なストレスではなく、発生過程や臓器機能発現に不可欠な生体情報であることが次第に明らかになってきた。本研究では、独自のメカニカルストレス負荷システムおよび評価系の開発を通して生体での機械受容環境を再現し、生体の巧みなメカニカルストレス応答機構を明らかにする。
著者
中村 文明 中島 義仁 竹内 豊生 冨田 崇仁 成瀬 賢伸 大野 修 岡村 正造 前多 松喜
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.6, pp.1112-1114, 2006-06-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

症例は46歳男性. 10年前から再燃緩解型潰瘍性大腸炎で治療中であった. 胸部絞扼感にて近医を受診し, 心エコーにて左室壁の浮腫と壁運動の低下を認めた. 心筋炎の診断で, ステロイドパルス療法施行されたが, 心室頻拍となり当院へと紹介された. 経皮的心肺補助法 (PCPS), 大動脈内バルーンパンピング (IABP) 施行時の心筋生検にて, 巨細胞性心筋炎と診断された. シクロスポリンの投与を試みたが, 心筋の収縮力は改善せず死亡された.
著者
小柳津 周 荻原 博和 成瀬 宇平
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.305-311, 1989-12-20
被引用文献数
1

白焼きうなぎの保存性を高める目的で、低温貯蔵における"たれ"と脱酸素剤封入包装の効果について検討した。白焼きうなぎに"たれ"を塗ったものと、"たれ"を塗らないものについて、それぞれKON/PE製の袋に脱酸素剤とともに包装して、2℃および5℃での貯蔵試験を行い、"たれ"を塗らないPE包装のものと微生物学的、理化学的に比較検討し、次のような結果を得た。1)"たれ"と脱酸素剤封入包装を併用した区で、菌の増殖および脂質の酸化に対する抑制効果が認められた。2)大腸菌群の増殖に対し、5℃においては"たれ"と脱酸素剤封入包装の顕著な併用効果が見られなかったが、2℃においては顕著な併用効果が見られた。3)保存温度では、低温の2℃でより顕著な保存効果が認められた。
著者
COOPER T・D 塚田 章 山口 晃史 成瀬 喜則
出版者
富山高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

外国語教育において,教員と学生の対話時間は教育効果に非常に重要な要素である.大人数のクラスに対する教育にIT技術が効果的である.本報告では,学生の面接テストを評価するためのVirtualInterviewingSystem(VIS)の開発と実践について述べる.本研究の目的は,学生の将来を決定する就職面接やスピーキングテストのために,学生の実践を支援し英語コミュニケーションスキルを高めることである.
著者
若濱 五郎 成瀬 廉二 庄子 仁 藤井 理行 中澤 高清 高橋 修平 前 晋爾
出版者
北海道大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1988

本研究は、南極クィ-ンモ-ドランド氷床、グリ-ンランド氷床、北極氷冠、およびアジア内陸地域の氷河等にて堀削し採取された氷コアの解析を行い、諸特性を相互に比較検討することを目的として進められた。特に、最終氷期以降の大気環境変動の過程ならびに氷床・氷河の変動におよぼす氷の動力学的特性を明らかにすることに重点をおいた。研究成果の概要を、以下の1〜4の大項目に分けて述べる。1,氷の物理的性質の解析:氷床氷中の氷板、気泡、クラスレ-ト水和物の生成過程、ならびに多結晶氷の変形機構や再結晶について新しい知見が得られるとともに、氷コアの構造解析の新手法が開発された。2,氷の含有化学物質の分析:氷床氷中の酸素同位体、トリチウム、二酸化炭素、メタン、固体微粒子、主要化学成分、火山灰等の分析結果から、最終氷期以降あるいは近年500年間の大気環境変動過程について多くの情報が集積された。特に、両極地の比較検討も行われた。3,雪の堆積環境に関する解析と数値実験:南極地域にて観測された気象・雪氷デ-タ等の解析、および数値シミュレ-ションを行うことにより、中・低緯度から極地氷床への物質・水蒸気の輸送過程ならびに雪の堆積・削はく現象と分布について研究された。4,氷河・氷床の流動と変動機構に関する解析と数値実験:南極東クィ-ンモ-ドランド氷床の平衡性、白瀬氷河の変動、山脈周辺の氷床の動力学的特性、深層氷の年令推定法などについて考察された。1990年9月、札幌において本総合研究の全体研究集会を開催し、各研究結果の総合的討論を行った。この成果は、総合報告書(B5版、312ペ-ジ)として1991年3月に出版された。同報告書では、将来の氷床コア研究の展望と諸課題も論じられている。
著者
中西 良太 村上 和人 成瀬 正
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J93-D, no.1, pp.20-28, 2010-01-01

集団行動の特徴を解析するための指標として導入された優勢領域は,サッカーなどのチームスポーツにおける「勢力範囲」や「チームワークの良さ」などの解析に有効であることが示されている.また,優勢領域はパスの成否判定などにも有用であり,対象の行動計画の指標としての活用が期待されている.そのためには,優勢領域の実時間計算が要求されるが,既存の手法ではこの要求を満たすことは困難であった.そこで本論文では,優勢領域の実時間計算手法について述べる.本手法は優勢領域の近似計算を行うものであるが,基本的な考え方は,現時刻からt秒後における対象の到達多角領域を作成し,それをインクリメンタルに合成することである.実験の結果,既存手法と比較して,計算時間が約1000分の1,近似精度が90%強で優勢領域を計算できることが示された.なお,本手法は並列計算を用いることで,更に計算時間を短縮することが可能である.