著者
今西 俊介 貝沼 修 鍋谷 圭宏 小林 亮介 知花 朝史 石毛 文隆
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.35-37, 2017

<p>症例は68歳,男性。突然発症した強い腹痛と嘔吐で救急搬送された。前日に餅を食べた食餌歴があり,CTでは腸閉塞像を呈し,小腸のhigh densityを呈する狭窄部より口側に複数のhigh densityな構造物が描出された。餅による食餌性腸閉塞(以下,餅腸閉塞)と診断し,絶食・輸液治療を開始した。症状は軽快し退院となった。食餌性腸閉塞は全腸閉塞の中でもまれな病態ではあるが,餅も原因となることが知られている。餅の主な構成成分であるでんぷんはアミラーゼにより分解されるアミロースが少なく,分解されにくいアミロペクチンが多く含まれる。このため餅は膨化性や付着性が高く,不十分な咀嚼などが原因で,腸閉塞の原因となり得る。また自験例のように餅腸閉塞のCTのhigh densityな所見は特徴的であり,食餌歴の聴取と合わせて診断に有用である。</p>
著者
若林 芳樹 西村 雄一郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.60-79, 2010-01-01 (Released:2012-01-31)
参考文献数
109
被引用文献数
5 3

GISとその応用技術の普及にともない,それが地理学研究のみならず社会に及ぼす影響をめぐって,英語圏では1990年代から議論されてきた.本稿は,GISと社会をめぐる諸問題について,英語圏の動向をもとに論点を整理し,日本のGIS研究に対する意味合いを考察するものである.まず2000年以前のこうした議論を「クリティカルGIS」と呼んで整理したSchuurman(1999, 2000)の論考をもとに,三つの時期に分けて論調の変化と影響を検討した.その結果,1990年代初頭の社会理論派との反目・対立から,対話・協調へと移行した結果,GISと社会との関係を包含する地理情報科学が成立した過程が確かめられた.2000年以降になると,参加型GISの実践,フェミニズム地理学が提起した質的GIS,科学技術社会論からみたGISと社会との関わり,監視とプライバシーをめぐる法的・倫理的問題などをめぐって研究が進展している.こうした議論を日本のGIS研究に導入するにあたっては,英語圏での論点を的確にとらえた上で,GIS関連技術の普及や制度的・社会的背景の違いにも留意する必要があると考えられる.

5 0 0 0 OA 本朝通鑑

著者
林恕 撰
出版者
国書刊行会
巻号頁・発行日
vol.第12, 1920
著者
小林 純子 長澤 悟
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.79, no.699, pp.1099-1108, 2014-05-30 (Released:2014-07-15)
参考文献数
6
被引用文献数
1

A toilet of commercial building is used as a safe and clean public toilet when going out, because it is well maintained in order to lead to the pulling in customers. In this article, the author researches on H station building. For continuation of the comfort of its toilet, employees, cleaning staffs and a designer are united, and perform an action of the improvement during 20 years. Through the results of annual questionnaire of users and the record of 66 times of maintenance meetings meantime, problems and evaluation of the toilet design and the cleaning management are clarified and a design method of the commercial building toilet is proposed.
著者
杜 林 田邊 浩 Du Lin Tanabe Hiroshi
出版者
金沢大学人間社会研究域人間科学系
雑誌
金沢大学人間科学系研究紀要 = Bulletin of the Faculty of Human Sciences Kanazawa University (ISSN:18835368)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.45-65, 2018-03-31

障害者権利条約が国連において採択されて以来,障害者に対する差別の解消と障害者の権利擁護は着実に前進してきたが,そこに至るまでには,障害当事者の運動が大きな役割を果たしてきた.中国は障害者権利条約をいち早く批准したが,中国における障害当事者の活動はどのような役割を果たしたであろうか. 本論文では,中国における障害当事者の活動の展開を後づけ,障害者の権利を守るために,どのような成果を上げ,今後どのようなことが課題となるかについて検討した.最初に,障害者の運動がどのようなものであり,どのような意味を有しているのかについて述べ,イギリスとアメリカ,そして日本の障害者運動について確認した.つぎに,中国における障害者運動の展開過程を分析した.その際に,わたしたちが聞き取り調査を実施したワンプラスワンの活動に注目し,そこから中国の障害者がおかれてきた状況について考察した.それらの結果から,中国における障害者の運動がもたらした成果と今後の課題について検討した.最後に中国における障害当事者活動の特徴を指摘した.
著者
海部 陽介 篠田 謙一 河野 礼子 米田 穣 後藤 明 小野 林太郎 野林 厚志 菅 浩伸 久保田 好美 國府方 吾郎 井原 泰雄
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では、旧石器時代の琉球列島に現れた人々がどのように海を渡ってきたかについて、その理論的枠組みを定めるため、文理問わず多彩な分野の研究者が情報を共有して、総合的モデルをつくることを目指した。彼らは草・竹・木のいずれかを素材とした漕ぎ舟に乗り、男女を含む少なくとも10人程度の集団で、黒潮の流れる海を、漂流ではなく意図的に航海してきたと考えられる。このモデルを、現在進行中で連動して行なっている実験航海に反映して、当時の航海を再現してみれば、そのチャレンジがどれだけ困難なものであったのかが見えてくるであろう。
著者
林 大悟 藤田 和之 高嶋 和毅 Robert W. Lindeman 北村 喜文
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.341-350, 2019 (Released:2019-12-31)
参考文献数
25

We explore Redirected Jumping, a novel redirection technique which enables us to purposefully manipulate the mapping of the user’s physical jumping movements (e.g. distance and direction) to movements in the virtual space, allowing richer and more active physical VR experiences within a limited tracking area. To demonstrate the possibilities provided by Redirected Jumping, we implemented jumping redirection methods for three basic jumping actions (i.e., horizontal, vertical, and rotational jumps) using common VR devices. We conducted three user studies to investigate the effective manipulation ranges, and the results revealed that our methods can manipulate a user’s jumping movements without them noticing, similar to redirected walking.
著者
本 秀紀 愛敬 浩二 森 英樹 小澤 隆一 植松 健一 村田 尚紀 木下 智史 中里見 博 小林 武 上脇 博之 奥野 恒久 近藤 真 植村 勝慶 倉持 孝司 小松 浩 岡田 章宏 足立 英郎 塚田 哲之 大河内 美紀 岡本 篤尚 前原 清隆 中富 公一 彼谷 環 清田 雄治 丹羽 徹 伊藤 雅康 高橋 利安 川畑 博昭
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

比較憲法研究・憲法理論研究を通じて、(1)先進諸国が「ポスト・デモクラシー」という問題状況の中でさまざまな問題を抱えていること、(2)各国の政治状況・憲法制度の差異等が原因となって、その問題の現れ方には多様性があること、の2点が確認された。そして、「ポスト・デモクラシー」の状況の下で国内・国際の両面で進行する「格差社会」化の問題は、今日の憲法制度・憲法理論において有力な地位を占める「法的立憲主義Liberal Democracy」の考え方では、適切・正当な対応をすることが困難であることを明らかにした。以上の検討を踏まえて、民主主義をシリアスに受け止める憲法理論の構築の必要性が確認された一方、「政治的公共圏」論を抽象論としてではなく、(日本を含めた)実証的な比較憲法研究との関連において、その意義と問題点を検討するための理論的条件を整備した。

5 0 0 0 OA 海国兵談

著者
林子平 著
出版者
図南社
巻号頁・発行日
1916
著者
高山 林太郎
出版者
東京大学大学院人文社会系研究科・文学部言語学研究室
雑誌
東京大学言語学論集 (ISSN:13458663)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.305-332, 2012-09-30

論文 Articles前部要素中または後部要素との境界に核がある複合動詞のアクセントを「前部アクセント」、全体として次末核または無核のものを「後部アクセント」と呼ぶことにする。東京では表出的な一部の語彙を除けば後部アクセントが支配的である。但し、前部要素が平板型なら後部アクセントは次末核型に、起伏型なら無核型になるという、所謂「山田の法則」が存在する。他方で、東京とよく似たアクセント体系を有する山陽地方では、前部要素の核を保存する前部アクセントとそうでない後部アクセントとが一定の割合で共存していて、地点によっては今後「山田の法則」が成立する可能性がある。東京の周辺地域の証拠から、東京でも古くは山陽地方のような複合動詞アクセントだったと考えられる。本稿は第一に、2単位形から前部アクセントへの変化と前部アクセントから後部アクセントへの変化は、後部要素と前部要素の核と音調句の喪失であり、意味を原因とする音調句の一体化であると説明する。第二に、前部要素が平板型で後部要素との境界に核があるタイプが無核化できないのは、共時的には前部要素の核ではないからだと説明する。第三に、次末核化より無核化が著しく先行しなければ「山田の法則」は成立しないと指摘する。In this paper, "front-accent" refers to the accent of compound verbs which has its descending kernel either in the front-part of the verb or between the front-part and the back-part, whereas "back-accent" refers to the accent of compound verbs which has, on the whole, a penultimate kernel or no kernel. In Tokyo dialect, back-accent is dominant, while some expressive words can be front-accented. In addition, there exists the so-called "Yamada's law", which asserts that if the front-part itself has no kernel, then the back-accent has a penultimate kernel, and if it has a kernel, then the back-accent has no kernel. On the other hand, in Sanyo region dialects, the accent systems of which resemble that of Tokyo dialect, front-accent -- which preserves the kernel of the front-part -- and back-accent -- which do not -- coexist in a certain proportion, and in some dialects of the Sanyo region, it may be that someday Yamada's law will become reality. Evidence from the area surrounding Tokyo certainly suggest that Tokyo dialect formerly had a Sanyo region-like accent system of compound verbs. The present paper points out the following. Firstly, the change from two-unit-accent to front-accent and the change from front-accent to back-accent are indeed the losses of accent kernel and intonational phrase of the back-part and the front-part respectively, and are indeed the unitization of two intonational phrases caused by the meaning of the compound verb. Secondly, the front-accented type which has a kernel on the inner boundary of the compound verb cannot be changed into the no-kernel type of back-accent because the kernel is no longer the kernel of the front-part verb synchronically. Thirdly, the change to no-kernel type needs to significantly precede the change to penultimate-kernel type in order for Yamada's law to hold.
著者
小林 至
出版者
日本スポーツ産業学会
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.241-256, 2018 (Released:2018-08-02)
参考文献数
12

The designation of undrafted player started its history in the Nippon Professional Baseball (“NPB”) when the NPB introduced its entry draft for the Japanese amateur players in 1965. The NPB clubs used undrafted players to gain competitive edges while the draft system was to bring competitive balance on the field. Many top amateur players who were supposed to remain amateur signed with the NPB teams as undrafted players, to many people’ s surprise. The NPB clubs often put undrafted players outside of the roster as practice players.    1990 was the year when historical changes were made to the entry draft system in the NPB. The NPB expanded the number of draft picks and the roster while it banned the teams from signing amateur players as free agents. Carrying practice players was outlawed at the same time.    The demand for another development system had been growing among NPB clubs with the number of industrial league teams diminishing and players losing opportunities to play. That is how the developmental player system was born in 2005. 2005 was also the year the first independent league in Japan was born, in Shikoku Island. As of 2018, 17 teams, in three leagues, are active. There has been a steady increase in the number of independent league players who were picked in the developmental draft.    As the birth of the developmental player system and the independent league happened to be in the same year, both took their roots in the diminishing of the number of industrial league teams and in the players’ losing opportunities to play.    Another significance of this study lies in the fact that a list of all Japanese players who signed with the NPB teams since the first draft is databased in a spreadsheet.
著者
小林 潤平 関口 隆 新堀 英二 川嶋 稔夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J99-D, no.1, pp.13-22, 2016-01-01

日本語の読み効率向上を目的に,文節ごとに文字ベースラインを階段状に下げながら文章をレイアウトする電子リーダーを開発し,その効果を読み速度や眼球運動の点から詳しく調査した.文字ベースラインを階段状に配置したレイアウトでは,直線状に配置した標準的なレイアウトよりも,最大で約11 %速く読めることがわかった.読み速度の向上は停留数の減少によってもたらされており,逆行数の減少と順行サッカード長の伸長が主な原因であることがわかった.
著者
篠塚 真充 小林 久文 小山 晴樹 竹内 大樹 植谷 岳郎
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.O-076, 2020 (Released:2020-01-01)

【背景】夜間痛を呈する肩関節疾患の治療において夜間痛を把握し,介入の負荷量を調整することが重要となる.しかし,臨床における夜間痛の主観的な把握では治療方針の決定に苦慮することがある.近年,夜間痛を客観的に評価する指標として,前上腕回旋動脈(AHCA)収縮期血流速度(PSV)に着目されている.【目的】夜間痛を呈する腱板断裂例に対し,AHCA血流速度に着目し,夜間痛の増減に合わせて負荷量を調整することで良好な治療成績を得たため報告する.本報告はヘルシンキ宣言に基づき本人に説明と同意を得た.【対象・方法】66歳女性.AHCAのPSVは夜間痛出現時と減少時(出現時から17日後),再燃時(27日後),再減少時(41日後)の4期で超音波診断装置(US)のpulse doppler modeを用いて測定した.夜間痛の分類には,林らの分類を用い,疼痛,機能評価にはVisual Analog Scale(VAS)・DASHscoreを用いた.理学療法は夜間痛出現時に就寝時ポジショニング指導・icing指導を行い,減少時に肩関節周囲筋のリラクゼーションを実施し,再燃後,再度icingを指導した.【結果】夜間痛出現時は林らの分類でType3,VAS 1.5,PSV 28.4cm/s,DASHscore 20.5/100,減少時は林らの分類Type2,VAS 0.5,PSV 15.9cm/s,再燃時は林らの分類Type4,VAS 9.5,PSV 22.3cm/s,DASHscore 14.1/100,再減少時は林らの分類でType1,VAS 0,PSV 12.2cm/s,DASHscore 13.3/100であった.【考察】多田らは腱板断裂症例に対する夜間痛有無のAHCA PSVのCut off値は20.5cm/sと報告している.今回,USを用いることで夜間痛を客観的かつ経時的に観察し治療介入を選択した.その結果,夜間痛が減少したため適切な治療が選択できたと考えた.