著者
鈴木 靖民
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.152, pp.315-327, 2009-03-31

7世紀,推古朝の王権イデオロギーは外来の仏教と礼の二つの思想を基に複合して成り立っていた。遣隋使は,王権がアジア世界のなかで倭国を隋に倣って仏教を興し,礼儀の国,大国として存立することを目標に置いて遣わされた。さらに,倭国は隋を頂点とする国際秩序,国際環境のなかで,仏教思想に基づく社会秩序はもちろんのこと,中国古来の儒教思想に淵源を有する礼制,礼秩序の整備もまた急務で,不可欠とされることを認識した。仏教と礼秩序の受容は倭国王権の東アジアを見据えた国際戦略であった。そのために使者をはじめ,学問僧,学生を多数派遣し,隋の学芸,思想,制度などを摂取,学修すると同時に,書籍や文物を獲得し将来することに務めた。冠位十二階,憲法十七条の制定をはじめとして実施した政治,政策,制度,それと不可分に行われた外交こそが推古朝の政治改革の内実にほかならない。
著者
中村 浩規 横山 晴子 矢口 武廣 鈴木 優司 徳岡 健太郎 渡邊 昌之 北川 泰久 山田 安彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.131, no.3, pp.445-452, 2011-03-01 (Released:2011-03-01)
参考文献数
15
被引用文献数
4 4

In this study, we investigated the effect of histamin H2 receptor antagonist (H2RA) or proton pump inhibitor (PPI) for the prevention of upper gastrointestinal lesions associated with low-dose aspirin. We carried out a retrospective study of 2811 patients who had been prescribed low-dose aspirin (Bayaspirin® 100 mg) for more than 30 days at Tokai University Hachioji Hospital from 2006 to 2008. We classified them into three groups: aspirin alone group (n=1103), aspirin with H2RA group (n=844) and aspirin with PPI group (n=864). Patients who developed upper gastrointestinal lesions were diagnosed with gastric ulcer, duodenal ulcer, gastritis or duodenitis by gastroscopy. We then compared the incidence of upper gastrointestinal lesions among the groups. The incidence in aspirin alone group, aspirin with H2RA group and aspirin with PPI group was 2.54%, 1.54% and 1.04%, respectively; that of aspirin with PPI group being significantly lower (p<0.05). Additively, the odds ratio (OR) of aspirin with H2RA group and aspirin with PPI group was 0.60 (95% confidence interval [95%CI]: 0.31-1.17) and 0.40 (95% CI: 0.19-0.86) as compared with aspirin alone group, respectively. The upper gastrointestinal lesions were developed within two years in all groups. Our results suggest that the combined administration of low-dose aspirin and PPI is effective for the prevention of upper gastrointestinal lesions associated with low-dose aspirin. Also, the pharmacists should be especially careful for upper gastrointestinal lesions development within two years after administration of low-dose aspirin, regardless of combined whether H2RA or PPI.
著者
斎藤 民 近藤 克則 村田 千代栄 鄭 丞媛 鈴木 佳代 近藤 尚己 JAGES グループ
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.596-608, 2015 (Released:2015-11-25)
参考文献数
39
被引用文献数
24

目的 生きがいや社会的活動参加の促進を通じた高齢者の健康づくりには性差や地域差への考慮が重要とされる。しかしこれらの活動における性差や地域差の現状は十分明らかとはいえない。本研究では高齢者の外出行動と社会的・余暇的活動の性差と地域差を検討した。方法 Japan Gerontological Evaluation Study (JAGES)プロジェクトが2010年~2012年に実施した,全国31自治体の要介護認定非該当65歳以上男女への郵送自記式質問紙調査データから103,621人を分析対象とした。分析項目は,週 1 日以上の外出有無,就労有無,団体・会への参加有無および月 1 回以上の参加有無,友人・知人との交流有無および月 1 回以上の交流有無,趣味の有無を測定した。性,年齢階級(65歳以上75歳未満,75歳以上),および地域特性として都市度(大都市地域,都市的地域,郡部的地域)を用いた。年齢階級別の性差および地域差の分析にはカイ二乗検定を実施した。さらに実年齢や就学年数,抑うつ傾向等の影響を調整するロジスティック回帰分析を行った(有意水準 1%)。また趣味や参加する団体・会についてはその具体的内容を記述的に示した。結果 年齢階級別の多変量解析の結果,男性は有意に週 1 回以上の外出や就労,趣味活動が多く,団体・会への参加や友人・知人との交流は少なかった。ほとんどの活動項目で都市度間に有意差が認められ,郡部的地域と比較して大都市地域では週 1 回以上外出のオッズ比が約2.3と高い一方,友人との交流のオッズ比は後期高齢者で約0.4,前期高齢者で約0.5であった。性や都市度に共通して趣味の会の加入は多い一方,前期高齢者では町内会,後期高齢者では老人クラブの都市度差が大きく,実施割合に30%程度の差がみられた。趣味についても同様に散歩・ジョギングや園芸は性や都市度によらず実施割合が高いが,パソコンや体操・太極拳は性差が大きく,作物の栽培は地域差が大きかった。結論 本研究から,①外出行動や社会的・余暇的活動のほとんどに性差や都市度差が観察され,それらのパターンが活動の種類によって異なること,②参加する団体・会や趣味の内容には男女や都市度に共通するものと,性差や都市度差の大きいものがあることが明らかになった。以上の特徴を踏まえた高齢者の活動推進のための具体的手法開発が重要であることが示唆された。
著者
西川 義文 室井 喜景 鈴木 穣 マフムド モタメド 猪原 史成 西村 麻紀 古岡 秀文 フェレイグ ラガブ 梅田 剛佑
出版者
帯広畜産大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

トキソプラズマは世界人口の3分の1のヒトに感染しており、様々な精神疾患や神経疾患の発症リスクになることが推測されている。しかし、本原虫感染が精神疾患の発症や行動異常に至るメカニズムは解明されていない。そこで本研究では、宿主中枢神経系を支配するトキソプラズマ由来ブレインマニピュレーターの解明を目的とした。脳機能に関与する宿主シグナルに影響を与える原虫分子として、TgGRAIを見出した。TgGRAIはNFkBのシグナルの活性化に関与し、TgGRAI欠損原虫株を用いたマウス行動測定の実験によりTgGRAIの恐怖記憶の固定への関与が示唆された。本研究により、脳機能を改変する原虫因子の存在が示唆された。
著者
上原 静香 吉川 智香子 吉田 美鶴 水野 誠 笠 明美 許 鳳浩 鈴木 信孝
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.33-38, 2019-03-31 (Released:2019-04-10)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

ハトムギ全粒熱水抽出エキスの顔面肌に及ぼす影響を検討した.方法は,28~58歳(44.5±11.6歳)10名にハトムギ全粒熱水抽出エキスを1 g/日,8週間摂取させ,各種皮膚パラメーターを計測した.結果は,肌の透明感の指標である頬内部反射光測定で,摂取8週間後に青色内部反射光の総量が有意に増加した(p=0.011).さらに,肌表面のキメは,摂取4および8週間後に有意な改善効果が認められた(p=0.007, p=0.042).角層剥離状態についても,摂取4および8週間後に有意な改善効果が認められた(p=0.0002, p=0.020).以上のことから,本ハトムギ全粒熱水抽出エキスは,1 g/日と比較的少量摂取でも,優れた美肌効果をもたらすことが示唆された.
著者
鈴木 邦明
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.16-27, 2017-09

Na, K-ATPaseはNa-ポンプあるいはNa,K-ポンプと呼ばれる生理機能を担う酵素である.ほぼすべての動物細胞の形質膜に存在し,ATPの加水分解エネルギーを用いてNa+とK+の能動輸送をおこなう.その結果,細胞内外のNa+とK+の濃度勾配および電位差の維持を担い,細胞レベルでは細胞の容積や浸透圧の維持に関与する.特殊化した機能としては,神経や筋肉細胞の興奮性の維持,腎臓での水やNa+の再吸収に関与する.また,Na, K-ATPaseの形成したNa+の濃度勾配を利用して,小腸における糖やアミノ酸の吸収が行われる.その消費エネルギーは,安静時の代謝エネルギーの3割,神経系においては7割を占めるとされる. Na-ポンプ機能の実体がNa, K-ATPaseであると認められた頃から,ATPの持つ化学エネルギーを,どのようにNa+とK+の能動輸送という物理的なエネルギーに変換するのか,その機構の解明がNa, K-ATPase研究の焦点の一つであり,Na,K-ATPaseの反応機構の解明が進められた.20世紀後半には,Na,K-ATPaseの反応機構はほぼ確立され,その解析に大きな貢献のあった二人の研究者の名前をとってPost-Albersの反応機構と呼ばれる.この反応機構は,ATP加水分解中にATPの末端のリン酸を結合したリン酸化反応中間体(EP)を形成するのが特徴である.この反応機構では,EPの分子構造変化を中心に据えて,ATPの加水分解による,細胞内から細胞外へのNa+,細胞外から細胞内へのK+の輸送,すなわちNa-ポンプ機能をきれいに説明することができる.Na, K-ATPaseはEPを形成することからP型ATPaseと呼ばれる.Post-Albersの反応機構は,同じくP型ATPaseである筋小胞体や細胞の形質膜に存在するCa -ATPase,また,胃粘膜において胃酸分泌を担うH, K-ATPaseの反応機構の解析に大きな影響を与えた. 強心配糖体であるジギタリス(digitalis)やウアバイン(ouabain)がNa-ポンプ機能を抑制することが知られていたが,これらの薬物はその実体であるNa, K-ATPase活性を抑制する.Na, K-ATPaseの研究においてはouabainを使用することが多く,uabainはNa, K-ATPaseの特異的な阻害薬とされる.Na, K-ATPaseの反応機構の研究過程で,ouabainが不可逆的にEPに結合してNa, K-ATPase活性を抑制することが明らかにされ,強心配糖体による強心作用もNa, K-ATPase活性の抑制をもとに説明された.Na, K-ATPaseが全身の細胞に存在し重要な機能を担っているわりには,20世紀末の段階では,Na,K-ATPaseを標的とする重要な薬物は強心配糖体以外には知られていなかった.また,Na, K-ATPaseの反応機構に関する研究も終了した感があった. しかし,21世紀に入り,ここ20年くらいの間にNa, K-ATPaseとouabainを巡って大きな研究の進展があった.それまで,Na, K-ATPaseの機能はNa+とK+の濃度勾配形成の結果に基づくものであったが,その機構とは別に,Na, K-ATPaseが細胞内情報伝達系に作用することが明らかになり,高血圧症や発癌との関係で新たな展開があった.また,生体内にouabainあるいは類似した物質が存在することが明らかになった.これら内在性のouabain関連物質は,ホルモンとしてNa, K-ATPase活性を調節することにより高血圧症や発癌に関与する.また,強心作用薬であるouabainは,現在では,抗がん薬としても期待されている. 本特集では,Na, K-ATPaseおよび関連する薬物の現状と,筆者らが行ってきた研究を紹介したい.
著者
鈴木 チセ
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.187-195, 2017 (Released:2017-11-03)
参考文献数
39

精神的ストレスは精神疾患のみならず様々な疾病の危険因子でもある.健康の阻害要因であるストレスを腸管の側から,すなわち食品によってストレスを軽減することを目的に,マウスのうつ病モデルである慢性社会的敗北ストレスモデルを用いて,精神的ストレスが腸管に及ぼす影響を網羅的に解析した.本稿では,慢性社会的敗北ストレスモデルの実験方法やストレス負荷マウスの特徴について解説するとともに,筆者らの行った盲腸のメタボローム解析,盲腸・糞便の菌叢解析および回腸末端の遺伝子発現のマイクロアレイ解析の結果について,宿主の腸管の遺伝子発現と腸内細菌の構成,宿主および腸内細菌の代謝物という腸内エコシステムの観点から考察する.また社会的敗北ストレスを負荷したマウスの行動変化や身体的な変調を軽減する食品成分の探索について最近の研究例からその可能性について紹介する.
著者
鈴木 里奈
出版者
京都
雑誌
同志社女子大学大学院文学研究科紀要 (ISSN:18849296)
巻号頁・発行日
no.11, pp.27-46, 2011-03

Valperga : or, The Life and Adventures of Castruccio, Prince of Lucca (1823) は Mary Shelly (1797-1851) が歴史を題材にした最初の小説である。この物語の中で Mary は傑出した2人のヒロインを創りだした。フィレンツェの女性指導者 Euthanasia とフェラーラの予言者 Beatrice である。タイトルにある Castruccio とは14世紀イタリアの実在の君主 Castruccio Castracani (1281-1328) であり、英国ではルネサンス期の政治思想家 Niccolo Machiavelli (1469-1527) による伝記を通してよく知られた人物であった。それに対し、Eythanasia と Beatrice は架空の存在であり、Valperga とはこの2人を象徴する架空の城である。タイトルに見られる虚構と史実の並置はこの物語の特徴であり、それは同時にヒロインたちの重要性を示すものでもある。Mary の父 William Godwin (1756-1836) と夫 Percy Bysshe Shelly (1792-1822) はヒロインたちの存在をもって Valperga が彼女の前作 (Frankenstein (1818) よりも優れた小説であると認めている。Godwin や Shelley に加え、後年の多くの批評者の感心を特に呼び起こしたのは Beatrice である。本稿ではヒロイン Beatrice に焦点を当て、このヒロインが歴史小説の新しい局面を切り開くための Mary の試みの産物であることを確認し、Valperga の歴史小説としての特異性とその価値について考察する。
著者
鈴木彰真 野々村翔 村田嘉利
雑誌
マルチメディア、分散協調とモバイルシンポジウム2014論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.100-107, 2014-07-02

近年,様々な食感のグミが販売されており,それに応じて消費者の嗜好も多様化している.メーカーが提示するグミの食感は客観的な表現がされておらず,顧客の求める食感とメーカーが提示する食感が合致していない.そこで本論文では,微妙な差異の表現が必要であるグミの食感を対象に,擬音語,擬態語を表すオノマトペを用いたグミの推薦システムを構築し,その有用性について評価を行った.客観的にオノマトペ表現を用いたグミの推薦システムを構築するためには,使用するオノマトペの数と内容の吟味とグミとの関連付け方法が重要となる.本論文では,複数のアンケートから食に関するオノマトペとグミを関連付け,アンケートの結果から関連度の高い順に複数のグミを推薦した.提案サービスの評価として,選択したオノマトペによって適切にグミが推薦されるかどうか検討した.評価では,被験者にグミの種類を1つ思い浮かべてもらい,選んだオノマトペから推薦されたグミのサンプル上位4品目を試食してもらった.その後,オノマトペとグミの合致度を5段階評価してもらった.評価の結果,9割以上が合致度4以上と回答し,所望する食感のグミを推薦できていることが示された.
著者
神田 賢 北村 拓也 佐藤 成登志 鈴木 祐介 渡辺 慶 久保 正義
出版者
一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
雑誌
Journal of Spine Research (ISSN:18847137)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.902-907, 2020-06-20 (Released:2020-06-20)
参考文献数
23
被引用文献数
1

座位での異なる姿勢における腰部多裂筋の血液循環動態の経時的変化の検証を目的とした.過去1年以内に腰痛症状のない健常男女12名(平均年齢20.9±0.4)に,近赤外線組織血液酸素モニター装置(NIRS)を用い,腰部多裂筋の血液循環動態を,座位体幹中間位,屈曲位,伸展位で測定した.結果,腰部多裂筋のoxy-Hbおよびtotal-Hbが,屈曲では動作直後から屈曲位保持までに減少し,伸展では,姿勢保持後から10秒後まで増加することが示唆された.
著者
菱沼 典子 石川 道子 高橋 恵子 松本 直子 鈴木 久美 内田 千佳子 金澤 淳子 吉川 菜穂子 川越 博美
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.76-82, 2007-06
被引用文献数
1 1

目的:大学内に市民が立ち寄り活用できる健康情報サービススポットが開設されて3年目になる。この健康情報サービススポットの広報活動が,利用者の増加に有用であったかどうかを検討し,今後の広報活動への示唆を得ることを目的に本研究を行った。方法:調査対象期間は2004年4月〜2006年12月であり,健康情報サービススポットの記録と,研究者間での振り返りからデータを収集した。広報活動を時間軸に沿って整理し,来訪者数,リピーター,健康相談者数,ならびに当該地域住民,当該自治体,看護職・司書等からの協力や連携等の問い合わせ件数の推移を調べた。結果:3年間の広報活動の内容は<知ってもらう宣伝>と<来てもらう催事>に大別され,<近所付き合い>から始め<町のキーパーソンとの連携>によって推進されていた。<知ってもらう宣伝>は,ポスターやチラシ,案内板や看板,地域の行事への参加,ホームページの活用で,イメージキャラクターを用い,サービス内容を選択して宣伝内容としていた。<来てもらう催事>はハーブティや抹茶のサービス,ランチタイムミニ健康講座・ミニコンサートの定期的催しであった。健康情報サービススポットの最も重要な活動である健康相談の月平均利用者は,2004年31.7名から2006年88.4名と増加し,2005年の相談者の12%がリピーターであった。宣伝媒体を受け入れている店舗数は2006年現在,ポスター掲示が31件,カードの設置が10件で,自治体や自治体内の諸機関からの連携依頼や専門職の見学もあった。考察:これらの結果から,健康情報サービススポットの利用者が増え,その存在が広く知られてきていることが確認でき,広報活動は有用であったと考える。大学と地域との連携や,広報活動の中での健康情報サービスの実施について考察した。
著者
大久保 正人 高橋 由佳 山下 純 高橋 秀依 宮田 興子 鈴木 貴明 石井 伊都子
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.137, no.6, pp.745-755, 2017-06-01 (Released:2017-06-01)
参考文献数
18
被引用文献数
15 3

Pharmacy education comprises basic pharmacy (organic chemistry, biochemistry, and physical chemistry) and applied pharmacy (clinical pharmacy, pharm aceutics, and chemical hygiene). Students are expected to apply these subjects studied in pharmacy school during their practical pharmacy training. However, knowledge gained in university does not appear to be fully utilized in practice. We hypothesized that this is due to a lack of connection between pre-practical training education and actual practical training. Thus, we conducted a questionnaire study among pharmacy students to verify this hypothesis. We sent a questionnaire to 601 students in their sixth year of the pharmacy course at Chiba University, Teikyo University, or Kobe Pharmaceutical University who had undergone long-term practical training. The questionnaire asked about the utility of each subject of study and the reason for the judgement regarding the utility. Four hundred and forty-two students replied (response rate, 73.5%). A small proportion of students found the basic pharmacy subjects useful: physical chemistry, 5%; organic chemistry, 10%; and biochemistry, 24%. In contrast, more than half of the students found the clinical pharmacy subjects useful: pharmacology, 85%; pharmaceutics, 55%; pathophysiology, 75%; pharmacotherapeutics, 84%; and pharmaceutical regulations, 58%. Analysis of the comments left in the free-description section on the questionnaire revealed that most students did not have any opportunity to use their knowledge of the basic subjects during practical training, and furthermore, did not learn the processes involving the use of such subjects to solve clinical problems. Universities and pharmacists need to collaborate so that students can learn such processes.
著者
安岡 孝一 ウィッテルン クリスティアン 守岡 知彦 池田 巧 山崎 直樹 二階堂 善弘 鈴木 慎吾 師 茂樹 藤田 一乘
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.355-363, 2022-02-15

Universal Dependenciesに基づいて,『孟子』『論語』『禮記』『十八史略』の依存構造(係り受け)コーパスを製作した.さらに,このコーパスを用いて,古典中国語の文切り・形態素解析・係り受け解析を統合的に行う解析システムも開発した.Universal Dependenciesは,書写言語における品詞・形態素属性・依存構造(係り受け情報)を,言語に依存せず記述する手法である.Universal Dependenciesの係り受け記述は,いわゆる動詞中心主義であり,言語横断的であると同時に,古典中国語における動賓終構造の記述にも適している.ただし,Universal Dependenciesにおけるコピュラ文の記述方法は,古典中国語のコピュラ文との間で微妙に齟齬があり,結果として,補語が節であるようなコピュラ文(約1.6%)に関しては,記述は行えるものの記法上の問題が残った.
著者
中西 朋子 小切間 美保 林 芙美 北島 幸枝 大久保 公美 飯田 綾香 鈴木 志保子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.77, no.Supplement, pp.S44-S56, 2019-12-01 (Released:2020-03-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

【目的】本研究は,管理栄養士のめざす姿とその実現に向けて求められる資質・能力,さらに具現化するために必要となる組織・環境・教育について,現役管理栄養士の視点から検討することを目的とした。【方法】対象者は公益社団法人日本栄養士会会員の現役管理栄養士203名とし,自記式質問紙法にて調査を行った。解析対象者は管理栄養士のめざす姿に関する設問に回答の得られた200名とした。自由記述で得られた管理栄養士のめざす姿および求められる資質・能力,組織・環境・教育に対する回答は質的に分析を行った。【結果】管理栄養士のめざす姿は62のカテゴリーが示され,①エビデンスに基づいた知識を有して多職種と連携できること,②対象者に寄り添った支援ができること,③専門的な知識を基に栄養指導を行うことの3項目に大別された。その実現のために求められる資質・能力は「コミュニケーションスキル」「専門知識」「情報収集能力・情報リテラシー」「プレゼンテーション力」が多く,そのために必要な組織・環境・教育は「研修や学会に参加しやすい体制の充実」「多職種連携ができる教育体制」「継続的に学ぶ機会の提供」「養成施設における現場で活用できるような教育」が多かった。【結論】本研究から,現役管理栄養士のめざす姿は3つに集約され,その実現に向けた資質・能力が示されるとともに,組織・環境・教育の整備の必要性が検討できた。
著者
串田 修 新保 みさ 鈴木 志保子 中村 丁次 斎藤 トシ子
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.581-588, 2021 (Released:2021-10-02)
参考文献数
33

本横断研究では、全国の管理栄養士と栄養士を対象に、基本属性、就業状況と職務満足度を把握し、両者の関連を検討することを目的とした。2018年11月にインターネット調査を実施し、就業資格を必要とする15,133人を解析対象者とした。基本属性では、性別・年齢・最終学歴・勤務地域・日本栄養士会の入会有無・研修会の参加回数を、就業状況では、所有資格・就業有無・就業資格・資格手当・優遇措置・雇用形態・実勤務先・勤務年数・年収を尋ねた。職務満足度は、5項目の尺度で評価した。尺度の得点を合計した結果、職務に満足している者は73.9%であった。職務満足度の高さには、年齢の高さ、大学等の卒業、勤務地域、日本栄養士会の入会、研修会の参加、管理栄養士の資格所有、昇給制度等の優遇措置、勤務年数や年収の多さ、勤務先が関係していた(全てp <0.05)。標本の代表性に課題があり、属性を限定した無作為抽出による追試も必要である。