著者
安藤 明伸 潟岡 冴子 鈴木 哲朗 橋渡 憲明 佐藤 陽 村松 浩幸
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.65-68, 2016

近年,SNSの使用に関わる問題が増加し,大きな課題となっている.情報教育の観点からも,中学生がSNS使用のメリット・デメリットを踏まえて,適切に活用できる判断力を持つことが重要であると考えられる.そこで本研究は,中学生を対象に,SNS使用に関わる判断力を育成するシナリオゲーム型教材の開発を目的とした.開発したシナリオゲーム型教材は,中学生を主人公に,SNSのトラブルをテーマにしたシナリオブックおよびカードで構成し,27種類の展開を設定してサイコロによる偶然性も組みこんだ.中学校2学年220名を対象に1時限の実践をした結果,SNS使用に関わる判断力の向上について,一定の教育的効果を確認できた.
著者
根津 美智子 樋口 千鶴 鈴木 耕太
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

<b>【目的】I企業からドレッシング開発依頼を受け演習で取り組んだ。</b><b>I</b><b>企業、</b><b>Y</b><b>銀行、大学との連携から商品化に至るまでの課題を見つけ、今後の活動の在り方を探る。</b><br /><b>【方法】時経列に取り組みと課題を示す</b><br /><b>①</b><b>2</b><b>7年</b><b>6</b><b>月レシピ作成後試食会</b> <b>②</b><b>8</b><b>月S調味料社にレシピ提出</b> <b>③</b><b>再度レシピ作成</b><b><sup>※</sup></b> <b>④</b><b>9</b><b>月</b><b>3</b><b>種をサンプル化</b> <b>⑤</b><b>学園祭にてサンプル試食会</b><b><sup>※</sup></b> <b>⑥</b><b>28</b><b>年</b><b>3</b><b>月新レシピ作成後試食会</b> <b>⑦</b><b>4</b><b>種をサンプル化</b> <b>⑧</b><b>7</b><b>月試食後</b><b>2</b><b>種を商品化</b> <b>チョレギドレッシング依頼も受け,3種の試食後サンプル化</b><b><sup>※</sup></b> <b>⑨</b><b>学園祭で</b><b>⑧</b><b>5</b><b>種の試食とアンケート調査を行う</b><b><sup>※</sup></b><b>。</b><b>⑩</b><b>3</b><b>種</b><b><sup>※</sup></b><b>商品化へ</b><b><sup> </sup></b><b><sup>※</sup></b><b>課題あり </b><br /><b>【結果】</b><b>①</b><b>を経てレシピを</b><b>S</b><b>社に提供。</b><b>③</b><b>商品化不可といわれ連携事業の難しさを知った。</b><b>S</b><b>社に商品化する為の勉強会を依頼し、再度レシピ開発</b> <b>④⑤</b><b>3</b><b>種類のサンプルを作ったが企業・銀行・大学側の連携が取れず年度内の商品化には至らなかった。</b><b>⑥</b><b>~</b><b>⑩</b><b>28</b><b>年に</b><b>3</b><b>種が商品化できる方向性となった。</b><b>S</b><b>社が加わることで急進展し商品化へ繋がった。学園祭で</b><b>5</b><b>種のサンプル試食会を行った。チョレギ</b><b>3</b><b>種の中では</b><b>57</b><b>%と嗜好度が高かったコチュジャン入りを商品化することになった。</b><br /><b>【まとめ】初回から</b><b>S</b><b>会社を加えた4者会議の重要性を感じた。互いへの情報提供を主にどこで行うか、メールを発信しても一方通行になる等、演習授業として進展する中で、どこが中心であるべきなのか戸惑った。利潤を追求し商売として展開する企業のあり方に対し、専門性を含め社会全般を教育する大学が中心となり、学生を主体とした情報発信が良い方向性をもたらしたのではないかと考える。本事業の体験から最も基本的なことであるが、何回も会議を開き連携を深めていくことが大切であることを学生は学んだ。</b>
著者
鈴木 周朔 渡邉 二祐子 眞野 容子 古谷 信彦
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.158-163, 2018-03-25 (Released:2018-03-27)
参考文献数
25

緑膿菌は,びまん性汎細気管支炎(diffuse panbronchiolitis; DPB)等の慢性気道感染症を増悪する主な原因菌である。マクロライド系薬の少量長期低療法によるDPB患者の生存率は,既存の治療法に比べ著しく上昇した。しかしマクロライド系薬は緑膿菌に対して抗菌活性を持たない。マクロライド系薬の作用解明のために様々な検討が行われた結果,緑膿菌の病原因子を抑制することが報告された。しかし,これらの研究は短期間マクロライド系薬を緑膿菌に曝露し評価している。本研究では,マクロライド系薬(エリスロマイシン,クラリスロマイシン)を2年間緑膿菌に継続曝露することによりマクロライド系薬少量長期療法をin vitroで再現し,緑膿菌の外毒素(トータルプロテアーゼ活性,エラスターゼ活性,ピオシアニン産生量),及びマクロライド系薬曝露後の緑膿菌上清の添加がA549細胞へ与える影響について検討を行った。緑膿菌の外毒素産生性,及びA549細胞に対する障害性は,マクロライド系薬の曝露期間延長に伴い抑制が確認された。マクロライド系薬少量長期療法は,経時的に外毒素の産生を抑制することで緑膿菌の病原性を低下させ,DPB等の臨床経過を変化させるのかもしれない。
著者
青木 勝詔 鈴木 恵友 高梨 久美子 石井 一久 SATYANARAYANA B. S. 尾浦 憲治郎 古田 寛 古田 守 平尾 孝
出版者
一般社団法人 日本真空学会
雑誌
真空 = JOURNAL OF THE VACUUM SOCIETY OF JAPAN (ISSN:05598516)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.430-432, 2006-07-20
参考文献数
8

&nbsp;&nbsp;A novel method to make the sharp emitter tips having low threshold voltage of field emission was achieved using nanodiamond particles on conductive amorphous carbon films. A conductive tetrahedral amorphous (ta) carbon film and nano-sized diamond particles with the size of 50 to 200 nm were sequentially deposited by cathordic arc method using a glass substrate at room temperature. Tip structure with the height of 10 to 40 nm was formed by H<sub>2</sub> plasma etching of the diamond particles/ta-C double layer film. The threshold voltage of the field emission from the tip structures formed by the H<sub>2</sub> plasma etching was 3 V/&mu;m that was significantly lower than 10.4 V/&mu;m for the as-deposited diamond particles/ta-C double layer carbon film. This selective dry etching method using the nano-diamond particles could fabricate sharp and high density nano-sized diamond emitters on conductive ta-C films without any photo-masks of lithography processes.<br>
著者
山崎 貴史 中瀬 泰然 小倉 直子 亀田 知明 前田 哲也 佐藤 雄一 高野 大樹 鈴木 明文 長田 乾
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.502-507, 2007-07-25 (Released:2009-02-06)
参考文献数
20
被引用文献数
3 2

急性期延髄梗塞連続114例を対象に臨床症状と画像所見との関連性を解析した. MRI所見は, 内側梗塞 (MMI) と外側梗塞 (LMI) に分類し, 発症年齢はMMI (68.3歳) がLMI (63.1歳) より有意に高齢であった. MMIはさらに錐体限局型と広範囲型に, LMIは背側型, 前腹側型, 後腹側型, 汎腹側型, 前外側型に分類した. MMIでは広範囲型が77.4%, LMIでは後腹側型が45.8%, 背側型が28.8%であった. MMIでは病巣分布にかかわらず顔を除く健側半身の感覚障害が49.1%, LMIの後腹側型で病側顔面と健側半身の感覚障害が55.6%にみられた. MMIは上部病変が66%, LMIは中部病変が66%であった. 上部病変では顔面麻痺, 中部病変で吃逆が高頻度に認められ, 入院時のMRIで偽陰性が有意に多かったことから, 急性発症の顔面麻痺や吃逆を伴う半身の感覚障害を呈するときには延髄梗塞が強く疑われる.
著者
鈴木 裕二 守川 恵助 乾 亮介 芳野 広和 田平 一行
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Da0999, 2012

【はじめに、目的】 起立性低血圧は目眩や失神などの症状を引き起こし、日常生活の大きな妨げになる。この対策として下肢弾性ストッキングが有用とされており、血圧低下を軽減することができる。しかし使用すべき圧迫力に一致した見解は得られていない。今回、3種類のストッキングを使用し、起立時の血行動態の変化について比較、検討を行った。【方法】 対象は健常男性20名(年齢24.9±3.2歳)。足首に対してそれぞれ、弱圧(18-21mmHg)、中圧(23-32mmHg)、強圧(34-46mmHg)の圧迫力が加わる3種類の下肢弾性ストッキングを着用した状態と、着用しない状態(Control)の計4条件でそれぞれ起立負荷を行った。起立負荷は安静座位の後、4分間のスクワット姿勢となり、その後に起立を行う方法で行った。この際、非侵襲的連続血圧測定装置(portapres,FMS社)を使用し、SBP:収縮期血圧、DBP:拡張期血圧、SV:一回拍出量、HR:心拍数、CO:心拍出量、TPR:総末梢血管抵抗を測定し、血行動態指標とした。測定時期は安静座位をRest期、起立直前の10秒間のスクワット状態をSquat期、起立後10秒間をSt10期、11秒~20秒間をSt20期、21秒~30秒間をSt30期とした。また3種類のストッキング着用に対する不快感をVAS(Visual Analogue Scale:0=全く不快感を感じない、10=最大の不快感を感じる)にて評価した。統計方法は、各測定時期における4条件間における各血行動態指標及び、VASに対して反復測定分散分析を行い、多重比較にBonferroni法を用いた。有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、協力していただいた施設の倫理委員会の承認を得ると同時に、ヘルシンキ宣言に基づいて被験者に本研究内容を説明し、署名によって同意を得た。【結果】 SBPではSquat期からSt10期にかけて、Control(150.9±15.3→112.5±11.4mmHg)、弱圧(153.0±16.5→119.5±14.8mmHg)、中圧(151.4±15.4→115.7±12.7)、強圧(151.9±16.0→120.2±13.8mmHg)とそれぞれ起立により低下がみられた。Squat期では4条件間に有意差はみられなかったが、St10期ではControlに比べて弱圧(p<0.05)と強圧(p<0.01)が有意に高値を示し、弱圧と強圧との間には有意差がみられなかった。このSt10期において、SVでは強圧(83.1±11.8ml)がControl(72.7±10.1ml)に比べて有意に高値を示し(p<0.01)、COでも強圧(7.9±1.2L/min) がControl(7.2±1.1L/min) に比べて有意に高値を示した(p<0.001)。弱圧はSt10においてControlに比べて、SV、HR、CO、TPRを高値に保つことができたが、有意差はみられなかった。VASでは強圧(3.9±0.5)が弱圧(2.4±0.4)、中圧(2.7±0.5)に比べてストッキング着用の不快感がそれぞれ有意に高値であり(p<0.01)、弱圧と中圧の間では有意差はみられなかった。【考察】 St10期に弱圧と強圧がControlに比べてSBPを有意に高値に保つことができたのは、ストッキングの圧迫により、起立時の下肢への血液貯留を軽減でき、SVが上昇し、COを高値に保てたことが大きな要因と考えられる。しかし、弱圧ではSV、COにおいてControlとの間に有意差がみられなかった。しかし、血圧の決定因子である、CO(SV×HR)、TPRのすべてが有意差はないものの、Controlに比べて高値を示していたことから、これらの因子の相乗効果により、SBPを有意に高値に保つことができたと考えられる。VASでは強圧の不快感が有意に高値であった。Rongらは本研究の弱圧レベルのストッキングの使用が最も快適であると報告している。このことから、強圧の過度の下肢への圧迫が被験者の不快感を増大させたと考えられる。【理学療法学研究としての意義】 下肢弾性ストッキング着用の不快感は日常生活の着用において大きな問題となる。今回の研究において起立性低血圧の予防に不快感の少ない弱圧のストッキングが十分に効果的であることが示唆された。これは使用者が快適な日常生活を送る上で大きな意義がある。
著者
田坂 さつき 島薗 進 一ノ瀬 正樹 石井 哲也 香川 知晶 土井 健司 安藤 泰至 松原 洋子 柳原 良江 鈴木 晶子 横山 広美
出版者
立正大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、日本学術会議第24期連携会員哲学委員会「いのちと心を考える」分科会委員のうち9名が参画し、同分科会委員長田坂さつきを研究代表者とする。本研究には、政府が主催する会議などの委員を歴任した宗教学者島薗進、倫理学者香川知晶に加えて、医学・医療領域の提言のまとめ役でもあり、ゲノム編集による生物医学研究の黎明期から先導的に発言してきた石井哲也も参画している。医学・医療領域におけるゲノム編集に関する提言に対して、哲学・倫理の観点からゲノム編集の倫理規範の構築を目指す提言を作成し、ゲノム編集の法規制の根拠となる倫理的論拠を構築することを目指す。
著者
平野 順子 東 珠実 柿野 成美 鈴木 真由子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.58, pp.312, 2006

【目的】 近年の消費者トラブルの急増と悪質化に鑑み、一般の消費者よりも不利な立場にある高齢者の実態を把握するために実態調査を行った。本報では、高齢者が消費者トラブルに関する情報と一般的な情報を得る経路についての実態把握を行い、今後の高齢者に対する消費者教育のあり方について検討することを目的とした。【方法】 2005年1月に、全国の65歳以上の一般男女1350人に対して、訪問面接法によってアンケート調査を行った。有効回収率は77.6%であった。本調査は、平成16年度内閣府請負事業として実施されたものである。【結果】 _丸1_一般的な情報の入手経路として多かったのは、テレビ(男性95.4%、女性95.8%)、新聞(男性89.2%、女性81.8%)、友人・知人(男性41.0%、女性46.5%)であった。_丸2_消費者被害情報の入手経路として多かったのは、テレビ・ラジオ(男性91.0%、女性92.9%)、新聞(男性81.3%、女性65.9%)、家族・友人との会話(男性26.7%、女性38.8%)、自治体や自治会の広報(男性24.9%、女性21.4%)であった。_丸3_前述までの通り、高齢者の多くは積極的な入手経路によって情報を得るよりも、メディアや身近な人からの情報入手が多いことが分かった。とりわけ身近な人からの情報によって、消費者トラブルが自分の身近な問題であることを再認識するきっかけとなることが分かっている。今後、高齢者にとってより有効な情報伝達手段を使っての情報提供が期待される。
著者
重本 賢太朗 清水 忠昭 鈴木 慶 吉村 宏紀 松村 寿枝
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.1514-1523, 2016-05-15

我々は,空中手書き文字(AHC)入力システムのための自動的な文字分割手法の開発を行ってきた.これまでに提案した手法では,平仮名のAHCについて高い精度で文字分割に成功したが,連続して入力可能な文字数に制限があった.本稿では,同一領域に重ねて文字を入力する方法により入力文字数に制限のない文字分割手法を提案する.提案手法では,AHCのストロークを評価する5つのストローク評価指標を学習したサポートベクタマシン(SVM)によりストローク判別して文字分割を行う.提案手法によるストローク判別は,学習データでは,移動ストローク87.0%,文字ストローク96.5%の正解率となった.評価データに対しても,移動ストローク84.9%,文字ストローク96.1%の正解率を示した.試作した提案手法のデモ・システムについても紹介する.In this paper, we propose a segmentation method for an aerial handwriting character (AHC) input system. This work is an extension of a previously proposed hiragana AHC segmentation method that achieved high accuracy. However, its number of input characters was limited. In this paper, we propose a character segmentation method without such a limitation by overwriting characters on the same input area. Our method separates an AHC trajectory into characters by stroke distinction using a support vector machine (SVM) trained with five stroke evaluation indexes. The results of the evaluation experiments show that the detection accuracy was 80.9% for transition strokes and 98.1% for character strokes in the closed test, whereas it was 78.9% and 97.7%, respectively, in the open test. We also present a prototype system of the proposed method.
著者
鈴木 晃志郎 鈴木 玉緒 鈴木 広
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.12, 2009

<b>_I_.概説</b><br>発表者らは,文部科学省からの研究助成(研究代表者 鈴木晃志郎:『「開発=保全」問題に直面したコミュニティにおける住民意志決定のメカニズム』(課題番号: 20700673)を得て, 2008年10月下旬,公共事業に対する住民の態度を明らかにすべく住民意識調査を実施した。本発表は,その結果の一部を速報として公表することを目的とする。<br>フィールドは福山市鞆町(=鞆の浦)。昨2008年に公開され,140億円の興行収入をあげた映画『崖の上のポニョ』を,宮崎駿監督は鞆の浦で構想したとされている。このため,鞆の浦は「ポニョの海」として一躍脚光を浴びた。街が抱える港湾架橋問題もまた全国区の知名度を獲得し,『ポニョの原風景が開発で・・』(TBS:10/23)と題する特集が組まれるなど,架橋に対しいっそう厳しい視線が注がれるようになった。<br><br><b>_II_. 問題点の整理</b><br>沼隈半島の南端に位置する福山市鞆町は,城下町特有の細く入り組んだ街路網と狭小な地勢から,慢性的な交通渋滞,船舶の不法係留,駐車用地不足,下水道の未整備などの受苦を長年に渡って被ってきた。1983年,それらの解消を謳って広島県と福山市が計画したのが,港湾架橋計画(正式名称:鞆地区港湾整備事業)である。<br>この種の公共事業が社会問題化するとき多くの場合は,住民(と有識者・文化人)がスクラムを組み,いわば悪玉的存在の行政・企業の地域開発や公共事業を阻止しようとする,といった図式で語られる (長谷川2003)。しかし鞆町の場合,少なからぬ数の住民は,長年に渡る数多の受苦から解放する事業として,むしろ歓迎してきた一面がある。<br>鈴木ら(2008)は各種資料の分析および聞き取り調査をもとに,(1)リーダーの交代によって架橋反対運動の戦略が劇的に変わった,つまり外部有識者や学識経験者,全国レベルの募金や署名活動などを有効に活用し,いわば「外からの声」で事業の白紙撤回をめざす方法になってきたこと,(2) このとき全国から反対の声を挙げたのは,歴史的建築や土木遺構などハード面の景観を専門とする有識者や文化人が多く,鞆の価値が特定の側面からのみ測定される契機となったこと,を明らかにした。一方,多数派であるらしい推進派の声は全く外には届かず,その理由は(3)鞆の社会風土が持つ年功序列・家父長制的な性格と,強固なウチ/ソト意識により,そもそも鞆町内の問題で外部の者に同意を求めるという意識が働かなかったためらしいことも分かった。<br>推進派は,数度に渡る署名活動の結果をもとに,住民の8~9割は計画に賛同していると主張する。反対派は,署名による意志確認は踏み絵に等しいとし,全国からの10万を超える署名や,研究者及びICOMOSによる学術的価値づけを根拠に,事業の撤回を主張する。<br>このような水掛け論は、なぜ続いてきたのか。我々は,可能な限り第三者的な立場に立って,科学的な手続きに則って住民意識調査を実施しようと考えた。<br><br><b>_III_.調査概要</b><br>調査方法と実施状況は以下の通り。<br>・実施日時:2008年10月23~29日<br>・調査形式:訪問配布・訪問回収方式(自記式)<br>・標本抽出:選挙人名簿使用。有権者4434人中600人を無作為抽出(等間隔抽出法:拒否の意思表示がない場合のみ,予備サンプル32名から補充)。<br>・有効回答数441,回収率73.5%(予備標本を含めると69.8%)。<br>・構成比:男性46%,女性54%,高齢者(65才以上)46%<br><br><b>文 献</b><br>長谷川公一2003. 環境運動と新しい公共圏. 有斐閣.<br>鈴木晃志郎・鈴木玉緒・鈴木広2008. 景観保全か地域開発か. 観光科学研究1: 50-68.
著者
佐藤 勝彦 橋本 正章 鈴木 英之 山田 章一 長滝 重博 固武 慶 滝脇 知也 渡辺 元太郎 大西 直文 住吉 光介 藤本 信一郎 木内 健太 岩上 わかな 澤井 秀朋 安武 伸俊 西村 信哉 諏訪 雄大 中里 健一郎 長倉 洋樹
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2007

本研究課題では大質量星が進化の最後におこす重力崩壊型超新星及びガンマ線バーストの爆発機構・源エンジンについて世界最先端の研究を行い、多くの成果を挙げた。大規模数値シミュレーションによる研究を豊富に行い、場合によっては京コンピュータを用いた世界最高レベルの数値シミュレーションを実現した。またこれらの現象に付随して起こる重力波・ニュートリノ放射、r-process元素合成を含めた爆発的元素合成、最高エネルギー宇宙線生成、等々について世界が注目する成果を数多く挙げた。以上の様に本研究課題では当初の予想を上回る、世界最先端の成果を修めることが出来た。また同時にこの分野に於ける将来の課題・展望を提示しつつ5年間のプログラムを終了した。
著者
市森 大地 鈴木 駿介 小島 千里 石森 謙太郎 杉谷 舞 松田 純佳 小野 雄大 松石 隆
出版者
日本セトロジー研究会
雑誌
日本セトロジー研究 (ISSN:18813445)
巻号頁・発行日
no.23, pp.29-33, 2013
被引用文献数
2

10年間通年にわたって津軽海峡で実施している鯨類目視調査計375回で発見された全鯨種について集計し、その出現の季節性と経年変化を検討した。この期間に発見された鯨類は1,876群19,065頭となり、カマイルカ、イシイルカ、ネズミイルカ、ミンククジラ、ハンドウイルカ、マイルカ、シャチの少なくとも7種類の鯨類が発見された。シャチを除く6種が4月~6月に発見頭数のピークを迎えた。一方8月~10月はどの種も遭遇率が少なく、カマイルカとネズミイルカを除く5種は、10年間に1度もこの時期の発見がなかった。ネズミイルカは、遭遇率が年々有意に増加していた。マイルカとハンドウイルカは2004年以降発見されなくなった。一方、シャチは2009年以降に発見されるようになった。
著者
鈴木 麻希 宮田 采実 和田 有史 武藤 孝子 小谷 和彦 永井 成美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.223-231, 2020-10-01 (Released:2020-11-09)
参考文献数
26

【目的】食品に付したエネルギー情報の違いが,摂食者の心理・生理的応答に与える影響を若年女性において検討すること。【方法】ランダム化クロスオーバー試験として実施した。試験食は,466 kcalのフレンチトーストに,500 kcal表示または 1,000 kcal表示のカードを付した2種類とした。異なる2日間の9時前後に,前夜から絶食した若年女性12名にランダムな順序でいずれかを負荷した。官能評価と摂食への抵抗感,唾液中のα–アミラーゼ濃度を摂食前後に測定した。食欲感覚と呼気ガス(エネルギー消費量)は摂食前と摂食90分後まで測定した。呼気ガス測定値より食事誘発性熱産生を算出した。【結果】心理的指標では,甘さ,脂っぽさ,摂食への後ろめたさは,摂食前後ともに 1,000 kcal表示が 500 kcal表示よりも有意に高かったが,美味しさ,摂食への嬉しさ,食欲感覚(空腹感,満腹感)は,摂食前後ともに試験食による差はなかった。生理的指標では,唾液α–アミラーゼ濃度は,1,000 kcal表示のみ食後に有意に上昇したが,食事誘発性熱産生は,両試行で有意な差はなかった。【結論】本結果より,食品に付した高エネルギー情報は,若年女性摂食者の満腹感や食事誘発性熱産生を高めなかったが,甘さと脂っぽさを強く感じさせるとともに,摂食への抵抗感とストレスを高めることが示唆された。