著者
大惠 克俊
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

これまでに喉頭傷害や喉頭癌等により,声帯の音源としての機能を失った患者のための人工喉頭の開発に関する研究を行ってきた.この人工喉頭は音源に軽量小型な圧電発音体を使用しているが,その発生音は人間の声帯音とは異なる.そのためこの音源の音質向上に関する研究を行った.また,発声音の制御を行うことで音声の明瞭度を向上させることが可能であり,頚部の筋電位信号に着目し,その信号を用いた制御に関する研究を行った.
著者
礒島 知也
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

原子気体ボーズ凝縮体中の渦糸についての研究を行った。この凝縮体では、これまでに、2本の渦糸がそれぞれ螺旋状の配置をとる構造や、4本の渦糸が同一面内に平行に並んだ配置をとる構造が実現されている。これらに対する理論的研究をこれまで行ってきたが、それをさらに進めて、2本の渦糸が鎖状の配置をとる構造や、4本の渦糸が編目状の配置をとる構造を実現するための、理論研究を行った。どのような構造が発生するかは、ボゴリューボフ方程式の固有値と固有ベクトルを調べることでおおよそ予測できることを示し、その固有値等の性質によると、実験のための最適な条件は、原子気体凝縮体の、線密度の最大値を調節することで得られることがわかった。また、凝縮体を非調和型トラップに閉じ込めた場合には、凝縮体内の比較的広い範囲で、渦糸が鎖状や編目状の配置をとれることを示した。それらの情報を元に、実現可能な原子数や閉じ込めトラップの配置で、三次元空間で渦糸の位置の時間変化をシミュレーションし、鎖構造と網目構造ができることを数値的に示した。この研究内容の一部は、これまでに国内の学会で発表していたが、今回新たに、渦糸2本や4本からなる構造、ねじれ構造と鎖状構造といった空間配置のパターンごとに、それを実現するための条件を整理し、より精度を上げた数値計算を行って論文として発表した。これによって、海外の研究者に向けても、このような多様な構造の可能性を指摘することができた。
著者
屋井 鉄雄 平田 輝満 福田 大輔 鈴木 美緒 古倉 宗治 高川 剛
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

無数に存在する交差点での自転車と自動車の出合い頭事故を防ぐことを目的とし,自転車を検知するディテクターの諸元の検討,および事故を再現できるシステムの構築を行なった.その結果,歩道上の自転車の検知には70[mm]×150[mm]、300[μH]程度の四角形コイルが適していた。また,動体視野角の概念と実地観測調査結果を用い,仮想空間内で対象とする出合い頭事故の再現を可能とし,ドライビングシミュレータにより左側から進入する自転車を見落とし,衝突に至る過程を再現することができた.
著者
田中 義浩
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2004

本研究は,各種食品の食塊の物性測定を行い,嚥下食前の物性を明らかにし,そこに至るまでの変化を解析して,その動態を調べた.また,義歯装着者に対しても同様に解析し,健常者との比較を試みた.被験食品はせんべい,チーズ,ピーナッツを選択した.被験者は健常者と義歯装着者を,義歯装着者はアイヒナーB4,あるいはC群を選択した.直径12mm,高さ10mmのアクリル製のコンテナーに食塊を格納し,直系5mmのプランジャーを用いて物性を測定した.測定項目は破断エネルギー,弾性率,粘性率,硬さ荷重,付着性,凝集性である.解析には多変量解析を用いた.また義歯装着者の解析には健常者から得られた因子スコア係数を使って,因子スコアを算出した.健常者では凝集性が他項目とは独立していて,咀嚼の進行に伴い収束したが,他の測定項目については,収束しなかったため,残りの5項目について主成分分析,因子分析を行った.その結果,全ての食品において,おおむね因子1は破断エネルギー,硬さ荷重,付着性と,因子2は弾性率,粘性率と相関が高くなった.すなわち,嚥下直前の物性は,食品の相違にかかわらず,各項目の構造的な位置関係が一定になることが示された.義歯装着者は求めた因子スコアから,健常者と比較して,咀嚼回数が少なく健常者の嚥下直前の物性に至る前に咀嚼を終えている被験者,咀嚼回数が多く健常者よりさらに咀嚼が進行した状態で咀嚼の後期に至る被験者の二通り認められた.また凝集性は健常者と同様で,他の物性の項目とは独立して一定の値に収束した.以上結果をまとめると,健常者の嚥下直前の食塊物性は,各項目間の構造的な位置関係が一定になることが示され,いわゆる嚥下閾地の存在が示唆された.また,義歯装着者での解析から,食塊物性からの咀嚼の評価には,凝集性,咀嚼回数,凝集性以外の物性の3者での評価が必要であることが示唆された.
著者
河野 孝太郎 川邊 良平 松原 英雄 南谷 哲宏 羽部 朝男 半田 利弘 川良 公明 田村 陽一 江澤 元 大島 泰 児玉 忠恭 伊王野 大介
出版者
東京大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2008

サブミリ波望遠鏡ASTEに連続波カメラを搭載し、ダストに隠された大質量の爆発的星形成銀河(サブミリ波銀河)を1400個以上新たに発見した。これらの距離や性質を調べるため、多色超伝導カメラ、および超広帯域分光観測システムを開発した。赤方偏移3.1という初期宇宙の大規模構造に付随したサブミリ波銀河の集団の発見、重力レンズによる増光を受けた極めて明るいサブミリ波銀河の発見、非常に赤方偏移の高いサブミリ波銀河候補の発見、など、大質量銀河の形成・進化について重要な知見を得ることができた。
著者
藤澤 政紀 岩瀬 直樹 寺田 信幸
出版者
明海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

視覚刺激と重心動揺に対する姿勢制御との間におけるフィードバックループの研究がなされている.しかし,咬筋の収縮が姿勢制御におよぼす影響についてはあまり知られていない.本研究では,重心動揺に影響を与える3D動画を用い,軽度の咬みしめと下顎安静位という下顎位の違いが重心動揺に及ぼす影響について検討した.被験者は顎関節症のない5名の男性とし,左右の咬筋,前脛骨筋,腓腹筋に電極を貼付し,バーチャル空間内の重心動揺計に立たせた.そして,被験者には軽度の咬みしめとして,最大咬合力の10%MVCを維持する練習をさせた.下顎安静位は上下の歯の無接触状態を指示した,その後ジェットコースターの3D動画を80秒間観賞させ,明らかに姿勢が変化した時間帯の筋電図と重心動揺のデータを分析対象区間とした.その結果,右側の腓腹筋以外は筋電値は下顎安静位よりも軽度の咬みしめ時の方が有意に高く,下顎安静位よりも軽度の咬みしめ時の方が,重心動揺は有意に安定することが確認できた.以上により,上下の歯の接触は姿勢の安定化に影響を与えると考えられた.
著者
戸倉 英美 LI pengfei LI Pengfei
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

本研究は、中国の古典小説が日本文学にどのように受容されたかを、変身の物語という視点から考察するものである。その特色は、唐代.明代、及び清代の『聊斎志異』という、三つの時代の変身譚と、それぞれを受容して作られた日本の作品とを比較することで、両国文学の比較研究を、より高い精度で、総合的包括的に行う点にある。本年度は、昨年度の成果である、六朝・隋唐の小説と、『今昔物語』を中心とする平安時代の文学との関係について、さらに内容を拡充し、「魏晋六朝隋唐小説在日本的伝播和演変論考」として、中国杭州市で開催された中国古代小説第四届国際研討会において、LI,Pengfeiが発表した。本論は高い評価を受け、中国の学術雑誌に掲載を要請されている。また『雨月物語』の「夢応の鯉魚」「蛇性の淫」、中島敦の「山月記」、太宰治の「清貧譚」「竹青」のそれぞれと、原作となった中国の作品を比較し、「試論日本文学中"変身"題材類作品的因襲与創造」にまとめ、戸倉が主宰し、学外の専門家も多数参加する中国古典小説勉強会で発表した。この発表において、LI,Pengfeiは、中島敦、太宰治のような近代作家が、変身のモチーフを題材に、近代的な主題を持った小説を執筆することは中国では殆ど例がないと述べ、参会者の注目を集めた。今回の研究を総合すれば、次のように言うことができる。中国では唐代以降人間中心的な思想が次第に強固なものとなり、異類は人間より劣ったものとされ、人間が魚や虎に変身することは罪障と捉えられるようになった。唯一の例外は、清代の『聊斎志異』である。一方日本では、異類を蔑視する観念は発達せず、むしろ「夢応の鯉魚」が、魚への変身を人間では得られない大きな自由の獲得と描いているように、異類への変身、及び人間に変身して現れる異類との交流は、人間が自分自身と向かい合う場としての機能を保ちつつ、近代を迎えたということができる。LI,Pengfeiは2009年11月、2年間の研究期間を終え帰国したが、戸倉はその後もLIと連絡を取り、研究成果のまとめを進めている。
著者
定延 利之
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

とりたて表現の数量的側面に関する振る舞いを記述し、この振る舞いを成立させている要因として、「体験vs.知識」という言語情報の区別を浮き彫りにした(「11研究発表」の欄の図書を参照)。そして、この振る舞いに関する日本語と中国語の共通点と相違点を明らかにするとともに、それらがとりたて表現だけでなく、他の表現にも並行的に観察されることを論じた(「11研究発表」の欄の雑誌論文1点目)。次に、これらの共通点と相違点を説明できるモデルを考察した。具体的に言うと、この区別がとりたて表現だけでなく、さまざまな言語表現に共通して見られることを論じ、特に体験の関わる言語表現には、これまで考えられていない新しいデキゴトモデルが必要であることを論じた(「11研究発表」の欄の雑誌論文3点目)。また、それらのうち時間表現については、「情報のアクセスポイント」の観点から、特に詳細な論を展開した(論文4点目)。場所表現についても、モノとデキゴトに関する考察に基づき、詳しい論を展開した(論文6点目)。さらに、「体験vs.知識」という区別が言語情報にとどまらない、人間のコミュニケーションに深く根ざしたものであることを論じた。具体的には、この区別が話し言葉・書き言葉という位相差や(論文2点目)、声質のような言語行動(論文5点目)に関与していることを明らかにし、これまでの言語研究やコミュニケーション研究が知識表現に偏って進展してきており、体験表現が不当に無視ないし軽視されてきていることを示した。
著者
佐藤 文昭 見上 彪 林 正信 喜田 宏 桑原 幹典 小沼 操 遠藤 大二 児玉 洋 久保 周一郎
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1987

本研究の主眼は有用な動物用リコンビナント多価ワクチンの作出に必要な基磯実験の実施にある。リコンビナント多価ワクチンはベ-スとなるベクタ-ウイルスとワクチンの決定抗原遺伝子を結合することにより作出される。ベクタ-ウイルスとしてはマレック病ウイルス(MDV)と鶏痘ウイルスに着目し、それらのチミジンキナ-ゼ遺伝子中に挿入部位を設定した。また同時に、MDVの感染から発病の過程に関る種々の抗原遺伝子の解折とクロ-ニングを行った。すなわち、ワクシニアウイルスをベ-スとしてNDVのHN蛋白遺伝子を組み込んだリコンビナントワクシニアウイルスを作出し、NDV感染防御におけるHN蛋白に対する免疫応答が感染防御に重要な役割を果たすことを明かにした。加えて、インフルエンザウイルスおよびニュ-カッスル病ウイルスの感染防御に関る抗原遺伝子の解折により、抗原遺伝子群の変異を検討した。続けて上記のウイルスベクタ-に外来遺伝子を組み込み、リコンビナント多価ワクチン実用化への可能性を検討した。すなわち、ニュ-カッスル病ウイルス(NDV)のヘマグルチニンーノイラミニダ-ゼ蛋白(HN蛋白)とマレック病ウイルスのA抗原の遺伝子をバキュロウイルスベクタ-に組み込み、生物活性と抗原性をほぼ完全に保持した蛋白を得ることができ、ワクチンとしての使用に有望な結果を得た。MDVの単純ヘルペスウイルス(HSV)のB糖蛋白類以蛋白遺伝子をバキュロウイルスベクタ-へ組み込み、高純度の蛋白を得た。さらに、本研究では、将来非常に有用なワクチンを作出するための基磯的な知見とリコンビナント多価ワクチンの実用化を近年中に可能にする実験結果も含むといえる。これらの有用な知見により、本研究は初期の目的を達成したばかりではなく、リコンビナントワクチン実用化への次の目標である野外試験による効用の証明のためにも一助となったといえる。
著者
藤倉 良 中山 幹康 押谷 一 毛利 勝彦
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

世界ダム会議(WCD)は,大型ダムに関する国際的に受入れ可能な基準を開発し,普及することを目的として組織された独立の国際委員会であり,2000年11月にWCD報告書を刊行して解散した。WCD報告書に盛り込まれた基準やガイドラインに対しては,開発途上国政府やダム建設業界が明確に反対する姿勢を示し,国際的に受入れ可能な基準作りは失敗に終わった。WCD勧告を文字通り世界が受入れ可能な基準とガイドラインにするためには,その実施可能性を明らかにすることが必要であり,これが本研究のめざすところであった。本研究は,まず,WCD勧告の根拠が必ずしも明確でないということを明らかにした。WCD勧告はWCD報告書の後半部に記述されているが,それは前半部に記述された研究調査結果に基づいていることになっている。しかし,報告書を精査すると,すべての勧告が調査結果に基づいてはいないことが指摘できた。こうした問題点を踏まえ,本研究では,WCD勧告を実現可能にするための選択肢を示した。次に,実現可能性を高めるための条件を検討するため,本研究では日本のODAプロジェクトにWCD勧告を適用する場合に,どのような課題,改善すべき点があるかを明らかにした。さらに,WCD勧告について最も意見が対立した住民移転のありかたについて,提言を行うための知見を収集するためのケーススタディを実施した。一つは日本の過去の経験である。もうひとつは,現在のダムプロジェクト事例として,インドネシアで円借款により実施されたコタパンジャンダムプロジェクトの現地調査である。望ましい住民移転のあり方を示すためには,今後さらなる現地調査及び検討が必要であると考えられるが,このケーススタディによって幾つかの好事例(good practices)を示すことができた。
著者
鳥居 祥二 田村 忠久 吉田 健二 笠原 克昌 小澤 俊介 片寄 祐作 森 正樹 福家 英之 西村 純
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009-05-11

高エネルギー電子・陽電子の直接観測による宇宙線近傍加速源と暗黒物質の探索を目的として、国際宇宙ステーション日本実験棟に搭載するCALorimetric Electron Telescope (CALET)の開発を実施した。CALETは当初予定の気球搭載型プロトタイプ(bCALET)による観測に対して、30倍以上の統計量が得られるだけなく、宇宙空間での高精度観測が可能である。bCALETによるCALETの観測性能実証と,熱構造モデルによるCERN-SPSでのビーム実験等により、搭載装置性能を確認した。その結果、世界に先駆けたTeV領域における電子観測を実現することが確証できている。
著者
圓谷 裕二
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

近現代哲学においては二つの潮流がある。一方は、超越論的哲学としての究極的基礎づけ主義であり、他方は、経験主義における相対主義あるいは懐疑主義である。本研究の目的は、近代哲学のこれら二つの立場を同時に克服することである。そのためにメルロ=ポンティの哲学に着目した。彼の哲学の特徴は、主知主義と経験主義を彼の独自のパースペクティヴ主義の立場から乗り越えようとすることである。本研究は、この目的達成のために、彼の言語論と歴史哲学に定位するものである。
著者
石田 浩 陳 禮俊 小島 泰雄 川井 悟 潘 志仁
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

平成13年度〜平成15年度の研究実績は以下の通りである。中国農村実態調査は毎年夏、計3回実施し、初年度は上海市奉賢区Q鎮T村、2年目は上海市南匯区D鎮C村と上海市奉賢区Q鎮B村、上海市宝山区Y鎮S村、3年目は上海市松江区X鎮C村と松江区C鎮X村で、村幹部から村経済概況をインダビューし、農家を訪問して直接農民から聞き取り調査を行い、農家アンケート調査を実施した。さらに、比較研究の視点から内陸の成都市近郊農村、青島市近郊農村や杭州市近郊農村でも実態調査を行った。また、農村の工業化と都市化の進展が著しい江蘇省昆山市・蘇州市・呉江市、上海市区の松江区といった長江デルタでの労働力移動の分析を行うため、工業開発区や輸出加工区での聞き取り調査を実施した。特に、こられの工業開発区や輸出加工区に投資する外資系企業を訪問して、労働力の流動を中心に就業者の出身地や雇用条件などについてインタビューを行った。また、長江デルタと珠江デルタの農村開発を比較するために、珠江デルタの深〓市や東莞市などの日系企業と台湾系企業を訪問し、これら企業に就労する内陸農村からの出稼ぎ労働力についてインタビューを行った。これらの調査研究に基づいて、計19回の定例研究会を実施し、そのうち4回の研究合宿と2回の公開シンポジウムを開催した。それぞれの公開シンポジウムでは上海財経済大学の研究者3名と重慶社会科学院経済研究所の研究者3名を招聘して研究報告と討論を行った。これらの研究成果は論文として発表されているが、私たちの共同事業として平成14年度には研究成果中間報告書(全161ページ)を、平成15年度には研究成果報告書(全228ページ)を作成した。研究成果報告書はさらに検討を加え、出版助成金を得て公開する予定である。
著者
野崎 達生 鈴木 勝彦 加藤 泰浩 松岡 篤
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

本研究では,古海洋・古気候変動の原因解明に有用なRe-Os同位体の迅速測定方法を開発した.Re,Osは濃度が非常に薄いためにTIMSでの測定が一般的であるが,MC-ICP-MSと気化法を組合せた分析手法を開発し,従来よりも数倍サンプル処理能力を向上させることに成功した.本手法を美濃帯坂祝地域のチャート試料に適用し,三畳紀の約40 Myrにわたる長期の古海洋Os同位体比経年変動曲線を復元した.本結果から,チャート試料が古海洋のOs同位体比を復元する記録媒体として有効であることが初めて明らかになった.また,三畳紀前期に今まで確認されていなかった還元的海洋環境が広がっていたことが解明された.
著者
喜田 宏 清水 悠紀臣 岡部 達二 関川 賢二 見上 彪 笠井 憲雪 小野 悦郎 大塚 治城 喜田 宏
出版者
北海道大学
雑誌
試験研究(A)
巻号頁・発行日
1993

1.オーエスキー病ウイルス(ADV)の前初期(IE)蛋白IE180の機能ドメインを解析した結果、初期および後期遺伝子の転写活性化に関与する領域、IE遺伝子の転写抑制に関与する領域および核への移行シグナルが明らかになった。2. ADVの初期蛋白EP0が感染細胞の核に局在し、IE、初期TKおよび後期gX遺伝子の転写を増強することが明らかになった。この転写増強作用には、EP0分子のN末端に存在するRINGfinger領域が必須であり、酸性アミノ酸を多く含む領域も関与することが判明した。3.蛋白工学手法によって、ADVのIE遺伝子の転写抑制因子を作出した。これら因子の転写調節作用を解析し、以下の成績を得た。1) IE180のDNA結合ドメインとヒト単純ヘルペスウイルスのトランスアクチベータ-VP16の結合ドメインとのキメラ蛋白は、ADVのIE遺伝子の転写を抑制した。このキメラ蛋白はウイルスの増殖を著しく阻害した。2) IE180およびEP0のdominant-negativemutantはウイルスの増殖を抑制した。4.ウイルスの増殖を最も強く抑制した3-1)キメラ蛋白遺伝子をC57BL/6マウス受精卵にマイクロインジェクション法によって導入した。1系統のF1マウスに本遺伝子が導入されたことを確認した。現在、このF1マウスを用いてトランスジェニックマウスの系統を確立しつつある。今後、系統化されたマウスが本遺伝子を発現していることを確認してウイルス感染実験を行う予定である。
著者
久保 周一郎 八木 康一 小山 次郎 広瀬 恒夫 高橋 迪雄 伊沢 久夫
出版者
北海道大学
雑誌
総合研究(B)
巻号頁・発行日
1987

獣医学は本来,総ゆる動物に係る医学である. 今日の獣医学は幾多の曲析を経て多くの学際領域をもつ. このことは獣医学の多様性と表現され,多様化の傾向は諸外国に比ベ我が国で著しい. 本研究の目的は,獣医学の在り方について獣医学およびその関連領域の研究者が議論し,21世紀に対応できる獣医学の未来像を構築することである. このため,検討すベき領域および分担者を以下のように決め,各領域から見た獣医学の内容を調査分析し,その成果を昭和62年8月25日北海道大学学術交流会館において全国から参集した獣医学会員(約350名)を対象に公開シンポジウムを開催した. 1.久保,伊沢班員(北大・獣),高橋班員(東大・農),広瀬班員が(帯畜大)は獣医学の現状を分析し,比較医学および比較生物学としての獣医学および臨床分野における高度情報化システムの確立の重要性を強調した. 2.深沢利行班員(九大・農),羽田野六男班員(北大・水産),八木班員(北大・理)は動物性タンパク質確保とその生産動物の疾病防除に関し,畜産学・水産学および獣医学の研究組織の連帯の確立を指摘した. 3.日高敏隆班員(京大・理)は伴侶動物および産業動物の精神衛生について動物行動学の関与の必要性を強調した. 4.加藤巌班員(千葉大・医),小山班員(北大・薬)は実験動物あるいは動物実験の分野の発展に対する獣医学のより一層の貢献を要望した. 5.伊藤浩司班員(北大大学院環境科学)は環境科学および生態学の立場から獣医学における動物の生命倫理の確立を提案した. 6.葛西道生班員(大阪大・基礎工)は21世紀の獣医学の発展のため,獣医学領域における生物工学の研究体制の早期確立を強調した.以上の成果を総合し, その詳細を昭和62年度科学研究費総合研究(B)成果報告書(様式1, 冊子)に紹介すべく準備中である.
著者
森脇 和郎 早川 純一郎 山内 一也 藤原 公策 山田 淳三 西塚 泰章
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1986

癌研究者に株分与を行うため19系統のマウス基準系統を指定維持し、40施設に26系統合計371匹のマウスを分譲した。これらの基準系統については定期的に遺伝的モニタリングを行い、基準系統としての維持体制を確立した。また7施設から延46系統のマウスについて遺伝的モニタリングの依頼を受けた。近交系ラットについては委員の確立した近交系ラットを4機関で18系統維持している。これらのラット系統については10施設から8系統315匹の分譲依頼があった。この他にも無アルブミンラットを11施設に875匹供給した。また詳細なラットの遺伝的モニタリングについては生化学的マーカーを中心にパネルを完成し11施設の依頼により11系統について検討を行った。近交系モルモットについては予研の14系統の内13系統177匹を15施設に分与した。これらの違伝的モニタリングのための標識遺伝子の検索を進めほぼ完成に近づき系統別に生物学的特性を明らかにした。癌研究にしばしば用いられるコンジェニック系マウスとしてB10系9系統、A系6系統、C3H系5系統、BALB1C系2系統その他細胞表面抗原に関するもの7系統を定めて維持担当者を決め育成維持を行っている。これらのコンジェニック系統については37施設に53系統595匹の分譲を行った。ヌードマウス系統は遺伝的背景の異る3系を25機関に1707匹を供給した。また、新しく育成した遺伝的背景に特色のあるヌードマウス8系統については20件126匹の株の分与を行った。ヌードラットは遺伝的背景の異る3系を育成中であり6件83匹の試験的な分与も行った。受精卵凍結保存については技術的な改良を続けており、系統差による難易の差異の問題を解決しなければならない。微生物モニタリングについては4種の動物について11種の感染因子の検査を行い、10施設から46件2578検体の依頼を受けた。本委員会の活動を癌特ニュースに掲載し、また実験動物のリストを作成し配布した。
著者
伊沢 久夫 根路銘 国昭 児玉 道 見上 彪 藤原 公策 久保 周一郎 KODAMA Michi
出版者
北海道大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1984

ボツリヌス中毒:動物のボツリヌス中毒の原因毒素であるボツリヌス菌【C_1】型およびD型毒素、その重鎖および軽鎖を精製して單クローン性抗体(以下MAb)を作出し、本邦で保存する菌株の全ての毒素と反応させ、毒素が4つのグループに別れることを明らかにした。マウス肝炎:1株のマウス肝炎ウイルスに対するMAbを作出し、1部MAbはウイルスポリマーと、残るMAbはウイルス核酸と特異性を示すこと、また両MAbは他のマウス肝炎ウイルス株とも反応することを見い出した。マレック病:本病による腫瘍に由来する株化細胞の表面抗原に対するMAbを作出した。MAbは野外発病鶏の腫瘍細胞とも野外飼育鶏の末梢血細胞とも大差なく反応し、陽性例にあっても腫瘍また末梢血細胞を問わず陽性細胞の出現率は低率であることが分った。豚コレラ(以下HC):ブタ白血病由来腫瘍細胞とHC免疫豚の系、また精製HCウイルス免疫マウス脾細胞とP3U1細胞の系では融合は不成功に終ったが、HC感染豚腎細胞免疫マウスの脾細胞を供試し抗体産生細胞を最近樹立した。インフルエンザとパラミクソウイルス感染症:インフルエンザウイルスのHAとNAに対するMAbを用い、本ウイルスの抗原変異と組換え体の起源を、またパラミクソウイルスのMAbを供試して本ウイルスのエピトームの安定性と抗原変異を明らかにした。ウシ白血病:作出した地方病性ウシ白血病腫瘍関連抗原のMAbは、野外発病牛の腫瘍細胞全例と反応し、本病の生前診断や予知に使用しうる可能性を示唆した。伝染性膵臓壊死症:作出した抗体産生細胞はいずれも継代不能あるいは微生物によるコンタミネーションのために維持しえず、研究は不成功に終った。
著者
中村 義一 横山 茂之 渡辺 公綱 志村 令郎 饗場 弘二 多比良 和誠
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

近年のRNA研究の大きな発展を支えた背景には、国内のRNAの基礎研究に関して10年余の間継続して実施されてきたRNAに関係する重点・特定領域研究が果たした役割が大きい。このようなRNA研究に対する熱意は、特に若い研究者の間に大きなうねりとなって現れ、平成11年に日本RNA学会が組織された(初代会長:志村令郎・生物分子工学研究所長)。本基盤研究(C)においては、「RNA研究の21世紀への展開」のために推進すべき課題についての調査と討論を重ね、平成13年度発足特定領域研究(A)「RNA情報発現系の時空間ネットワーク」を申請するに至った。その過程で、本基盤研究(C)に参加し、同時に新特定領域研究の総括班に予定するメンバーは、平成12年に開催されたRNA関連の国際研究集会「tRNA Workshop」(4月、ケンブリッジ)、「RNA Society年会」(5月、マジソン)、FASEBシンポジウム「Posttranscriptional Control of Gene Expression:The Role of RNA」(7月、コロラド)、「Ribosome Biogenesis」(8月、タホ)、「Structural Aspects of Protein Synthesis」(9月、アルバニ)に参加し、最新情報の調査・討論を行った。これらの調査討論に基づき新特定領域研究の申請を準備するとともに、平成13年2月には、国外から12名の研究者を招聘して国際シンポジウム「Post-Genome World of RNA」(開催責任者:東京大学医科学研究所教授中村義一)を東京で開催し、本研究領域に関する最新の発表・討論を実施した。
著者
中村 義一 坂本 博 塩見 春彦 饗庭 弘二 横山 茂之 松藤 千弥 渡辺 公綱 野本 明男 谷口 維紹 堀田 凱 京極 好正 志村 令郎
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

本特定領域研究では、「原子→分子→細胞→個体」と階層的に研究を推進し、それらの連携によって「RNAネットワーク」の全体的かつ有機的な理解を深めることを目的にした。これらの研究成果は、RNA研究にとどまらず、広く生命科学に対する貢献として3つに集約することができる。・第一の貢献は、構造生物学と機能生物学を連携駆使した研究によって、RNAタンパク質複合体やRNA制御シグナルの動的な作動原理に対する学術的な理解を深めたことである。・第二の貢献は、micro RNAを始めとするタンパク質をコードしない「小さなRNA」に関して先導的な研究を推進できたことである。ノンコ-ディングRNA(ncRNA)は本特定領域の開始時には全く想定されていなかった問題だが、ヒトゲノム・プロジェクトの完了によって、ヒトのRNAの98%をも占める機能未知な「RNA新大陸」として浮上した。今後の生命科学の最優先課題といっても過言ではないこの新たな問題に対して、本特定領域はその基盤研究として重要な貢献をすることができた。・第三の貢献は、本特定領域の研究が、意図するとしないとに係らず、RNAの医工学的な基盤の確立に寄与したことである。本特定領域研究では、実質的研究が開始された平成14年度から年1回の公開シンポジウムを開催し、平成15年と平成18年には各々30名程度の海外講演者を含めた国際シンポジウム(The New Frontier of RNA Science[RNA2003 Kyoto]; Functional RNAs and Regulatory Machinery[RNA2008 Izu])を開催した。これらのシンポジウムは、学術的、教育的、国際交流的に実り豊かな第一級の国際会議となった。又、特定領域研究者のみならず社会とのコミュニケーションを目的として、RNA Network Newsletterの年2回発行を継続し、各方面からの高い評価と愛読を頂戴して全10冊の発行を完了した。なお、事後評価においては「A+」と評価され、本プログラムはその目的を十分に達成することができた。