著者
小田 秀典 藤井 宏 秋山 英三
出版者
京都産業大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

研究計画に従って、ATR脳イメージングセンターで不確実性下での意思決定(100パーセントで4000円受けとる選択肢と50パーセントで8000円受けとる選択肢のいずれを選ぶかなど)の脳活動計測実験を実施した。さらに当初の計画にはなかった時間選好の意思決定(今日5000円受けとる選択肢と1週間後に6000円受けとる選択肢のいずれを選ぶかなど)の実験を不確実性下での意思決定と比較可能なかたちで実施した。これは標準理論に対して同様のアノマリー(90パーセントと80パーセントは程度の差だが100パーセントは特別に重視される、明日と明後日は程度の差だが今日は特別に重視される)が観察されている2つを比較することで、不確実性下での意思決定の特徴をはっきりさせるためである。現時点での暫定的結論は、将来の報酬を選択するとき、被験者は(現在の自分から将来の自分への)セルフ・プロジェクションと理解される脳領域をいっそう活発化させ、不確実性な報酬を選択するとき、被験者は計算と評価と理解される脳領域を活発化させるというものである。さらに実験が必要であるが、時間選好と不確実性下の意思決定が異なる脳活動に基づくこと、および時間選好がセルフ・プロジェクションと関係することは脳科学にとっても経済学にとっても示唆するところが大きい。経済理論の観点からは、とくに一貫する個人の意思決定ではなく、現在の自分と将来の自分とのゲームとして時間選好を理論化することに現実性のあることを示唆する。以上の(2008年3月の学会ではじめて報告された)本研究の主要な成果に加え、脳科学の基礎的理論とゲーム的状況(他人の意思決定を推測しなければいけないとき)の脳活動についての研究を実施して発表した。
著者
藤本 武
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

今日のアフリカは解決の困難なさまざまな問題に直面しているとされる。ただしその状況は地域や社会によって決して一様ではなく個々に精細な把握が必要である。本研究課題は社会の持続性という観点からエチオピア西南部の少数民族諸社会を対象に、主食作物の加工調理法の検討や、牧畜民と農耕民の間で発生してきた紛争の比較分析、そして半世紀以上にわたって進行してきたフロンティア地域における集落放棄の考察などを行った。
著者
坂田 泰彦 中谷 大作 砂 真一郎
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

今回、これまでの我々の知見を発展させ、動脈硬化関連因子 LTA に関連してマクロフマージ泡沫化に関わるマイクロ RNA の同定を試みたが、LTA はマクロファージ泡沫化しないことが明らかとなった。そのため途中より研究計画を変更し、動脈硬化の最終段階として生じる心筋梗塞後の心臓死亡に関連するマイクロ RNA を同定した。
著者
ARNER Erik CARNINCI Piero FORREST Alistair SAXENA Alka FAGIOLINI Michela
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2011

レット症候群のマウスモデルについてChIP 配列決定を行い、野生型(WT)とMecp2 欠損(KO)マウスの視覚野におけるMecp2 とFoxg1 の標的を特定。キャップによる遺伝子発現解析(CAGE)でKO の標的の発現レベルを評価した。WT とKO で発現の異なる遺伝子は主に発生後期に見られ、その多くは呼吸鎖等のミトコンドリア・プロセスに関連しており、レット症候群におけるミトコンドリアの関与を示唆している。
著者
影山 隆之 小林 敏生
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

交替勤務者に質問紙調査を行った結果、夜勤に従事している間の眠気は、夜勤連続時の「昼間の就寝前」に飲酒する人、及び次の夜勤前に二度寝する人で強く、就寝前にカフェイン摂取を控える人、就寝前に入浴する人、及び健康感が高い人では弱かった。この結果と先行研究に基づき「交替勤務者のための睡眠教育テキスト」と睡眠日誌を作成し、これを使った睡眠教育を交替勤務者に実施した。その結果、2カ月後には、睡眠によい生活習慣の一部で実行率が上昇し、夜勤連続時の不眠症状と夜勤に従事している間の眠気は減少傾向を示した。
著者
春山 純一 本田 親寿 本田 親寿 横田 康弘
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本件研究課題では、日本の月探査機SELENE(かぐや)の大量のカメラデータを用いて、これまで推定されてきたクレータサイズ頻度分布(CSFD)やクレータ崩壊消滅直径(DL)などを元にした再解析を試みるなどして、月のごく小さなユニットを含めた地質地域の年代推定法の研究を行った。その結果、年代推定精度向上が確認され、その結果を利用して、これまで十分な解像度では得られていなかった地域を含む月の海ほぼ全域の年代について、新たに再推定することが出来た。
著者
川崎 賢一 後藤 和子 河島 伸子 佐々木 雅幸 小林 真理 KWOK KianーWo CRANE Diana MARTORELLA R KIAMーWOON Kw CRANE O
出版者
駒澤大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

今年度は、3年間にわたる共同研究に最終年度にあたり、まとめる方向で研究を行った。初年度は、東京で、まず、芸術文化政策の比較の枠組みについて話し合い、同時に、東京を中心とする日本の文化政策を理解することにつとめた。また、この年度末には、シンガポールで会議を開催し、現地の文化政策関連の人々とも議論を行った。シンガポールは、日本とは異なるアジアの国々のひとつであり、国家を中心として文化政策をここ10年間で積極的に推進してきた社会であり、その歴史、やり方の有効性などをメンバーと共に議論をし、理解を深めた。いづれにしろ、欧米の芸術文化政策を論じる前に、アジアを回ったことは、今までの欧米中心の研究スタイルとは異なるやり方で、メンバーにも好評で、一定の成果をあげることが出来た。2年目は、イギリスのバーミンガムで会議を開き、イギリスの最近の動向について議論をした。その結果として、ロンドンのみならず、多くの都市において、文化を取り入れた都市計画が盛んになり、地方分権や民主化が進み、階級文化の境界がはっきりしなくなるなどの変化が見て取れるようになった。3年目は、仕上げとして、ニューヨークで会議を開催し、アメリカ、特に、ニューヨークの文化政策について学び、また議論することにより、これからの展望をはっきりと描くことが可能になった。それは芸術文化的活動と経済との連携がより深くなるということ、もう一つは、文化政策における、非営利的組織(いわゆるNPO)の重要度が高まり、プライバタイゼーションが進行するということである。しかし、同時に、どの国でも同じことが起こるわけではない。本研究では、さらに、来年度、ファイナルシンポジュウムを東京で開催し、「グローバル化する文化政策」というタイトルで、共同研究の最後を締めくくりたいと考えている。
著者
保田 ひとみ 柳原 真知子 畑下 博世 西条 旨子
出版者
金沢医科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

里帰り分娩は、親からの支援を受けることができる一方、夫の家事育児の減少、夫婦関係や父子関係への影響が懸念されている。そこで、妻が里帰り分娩から自宅へ戻った後1か月における、夫婦の3人の家族作りの体験を、質的記述的研究法を用いて分析した。結果、夫婦は、里帰り分娩をして良かったと捉えており、実家の支援を受けながら、里帰り中は、「頻繁な連絡により夫婦関係・父親の意識を高める」、自宅へ帰って1か月後の頃では、「夫婦が互いに気遣い、初めての子どもを育てていく」という体験をしていた。
著者
大西 直樹 岩切 正一郎 生駒 夏美 佐野 好則 クリステワ ツベタナ 小玉 クリスティーヌ サイモンズ クリストファー 松田 隆美 荒井 直 本山 哲人
出版者
国際基督教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

文学研究と文学教育のあり方を、ことに教養学部の領域で扱うことの問題点と可能性とを国際比較し、今後の展望を探る目的で、イギリス、アメリカ、フランスの主要な大学における経験豊かな文学担当の研究者と直接に長時間の面談による情報集種をおこない、それを日本での現状にどのように反映できるか検討した。
著者
佐竹 真次 関戸 英紀 長崎 勤
出版者
山形県立保健医療大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究では、ダウン症児や自閉症児などの発達障害児へのスクリプトによるコミュニケーション指導の体系性と実用性を、スクリプト指導の系統性とターゲット言語行動の般化、スクリプト指導と学校教育の教育課程との関連性に焦点を合わせて実験・調査することにより明らかにした。佐竹、長崎、関戸をはじめ、多くの事例研究により、スクリプトの体系の、発達の経過にそった「継時的側面」については、乳幼児期の儀式化されたフォーマットに始まり、幼児期の日常生活スクリプト、ならびに、ごっこ遊びやゲームなどの構成されたスクリプト、児童期におけるそれらのレパートリーの拡大と支援の連携の拡大、さらに、自分の気持ちや意志などの内的状態を表現したり、他者の気持ちや意図や信念を理解し適切な応答を行うためのスクリプト、思春期以降における社会生活スクリプトなどへと発展していく筋道が明らかになった。それをターゲット言語行動から見ると、当初は、物の要求、行為の要求、教示要求、あいさつ、報告、感想などの実用的な言語行動が優先され、次に、身体の調子や自他の内的状態の叙述、時間・空間に関する叙述などの習得の方向へ発展していき、命題的な叙述や構文の洗練といった要請はあとになることが示された。一方、同時代の広がりである「共時的側面」については、教育現場で実際にスクリプトがよく利用されている日常生活指導や学級活動、調理学習などの領域と、利用される見込みは高いがあまり利用されていない生活単元学習や作業学習などの領域とが、宮崎による養護学校からの実践報告や、佐竹によるコミュニケーション指導に関する実践研究のレビューによって、相当程度明らかにされた。今後は、生活単元学習、作業学習、その他の領域における指導のスクリプト化に焦点を当てた実践研究の蓄積を目指していく必要がある。
著者
森山 浩司
出版者
白鳳女子短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

長寿として知られている沖縄県においてストレスとライフスタイルとの関連について調査を行った。18年度は主に簡易ストレス調査票により尿測定以前におけるストレスの状況を把握した。結果の一部として、心理的な仕事の負担(量)(2.7±1.1),心理的な仕事の負担(質)(2.7±1.0),自覚的な身体的負担度(2.7±1.1),職場の対人関係でのストレス(3.4±0.9),職場環境によるストレス(2.9±0.9)仕事のコントロール度★(3.0±1.1),あなたの技能の活用度★(2.7±0.9),あなたが感じている仕事の適性度★(2.7±1.2),働きがい★(2.9±1.3),活気★(2.9±1.3),イライラ感(2.8±1.1),疲労感(2.8±1.1),不安感(2.7±1.2),抑うつ感(2.7±1.1),身体愁訴(2.8±1.1),上司からのサポート★(2.6±1.2),同僚からのサポート★(2.7±1.0),家族や友人からのサポート★(3.5±1.0),仕事や生活の満足度★(2.7±1.1)などがみられた。★印については有意差が認められた項目である。活気、不安感、抑うつ感、仕事や生活の満足度、自覚的な仕事の負担(量)に関して相関係数で見た場合やや相関が認められた。今年度は沖縄本島だけにとどまらず、離島を含めた調査対象者から幅広い知見が得られ、今後は離島を含めた沖縄全体でのデータ収集と現在分析中のデータも含め尿中8-OH-dG測定への足がかりとなった。
著者
竹田 直樹 八木 健太郎
出版者
兵庫県立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

都市におけるサブカルチャーのアイコンの存在形態は、さまざまな実施主体による複合的なメディア展開を見せており、それが地域の集客力を向上させ、市民へのサブカルチャーの物語の受容を促すことにより、地域の歴史や風土・伝統に触れる機会を増幅するメディアとして文化的な役割を担い、都市空間におけるモニュメントとしての特質を獲得していることが明らかになった。フィクションとしてのサブカルチャーの物語の受容者は、現実世界をそのフィクショナルな物語に沿う形で読み替えてとらえるようになっており、さらには、フィクショナルな物語に沿う形に現実世界の方が書き換えられているという実態も明らかになった。
著者
二田 貴広
出版者
奈良女子大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

本研究の目的は、文学教材の「読解力」とメディアの表現の1分析力」との相乗的育成および生徒の自己評価力育成について、下記の仮説を検証し、この学習指導方法の意義を明らかにすることである。仮説1:文学教材の象徴的・比喩的・暗示的表現の「読解力」の習得に、メディアの表現での象徴的・比喩的・暗示的な表現の分析および分析力のスキル化を組み合わせると、「読解力」の習得も「分析力」のスキルとしての定着もすすむというように相乗的育成が生じる。仮説2:仮説1は、授業者が、国語の教材を用いた学習とメディアの表現を教材に用いた学習とをくつなげる観点〉を示した場合に、学習集団に遍在的に成立する。仮説3:生徒にメタ認知的に自己の学習活動を捉えさせると、読解・評価のメカニズムを理解したり、自己の学習到達度を検証したり、他の場面への活用ができるようになる。すなわち、ここまでの学習活動で、PISA型読解力の「情報の取出し、解釈・熟考、評価、学習課題の発見、討論による課題解決」が育成できると同時に、「どのような枠組みで学習をおこなっているのか」といったメタ認知によって、PISA型読解力の枠組みを相対化しつつ自己のスキルや態度、能力を把握できる評価力を育成できる。2011年度までに仮説1は実証できた。2012年度は、以下の3つの方法で比較検証し仮説2と3を実証した。A群「千と千尋の神隠し分析」と「新旧ドラえもん比較」、「CM制作」をおこなった後に、文学的文章の学習をおこなう。文学的文章の学習には、「CM分析」の学習を組み込む。メディアの表現と文学教材の学習とがどうつながるのかを授業者が適宜説明して、文学教材の読解とCMの分析をおこなわせる。B群「千と千尋の神隠し分析」と「CM分析」、「CM制作」をおこなった後に、文学的文章の学習をおこなう。文学的文章の学習には、「新旧ドラえもん比較」の学習を組み込む。メディアの表現の学習と文学教材の学習とのつながりを生徒に気づかせるように授業者が支援して、文学教材の読解をおこなわせる。C群「千と千尋の神隠し分析」と「CM分析」、「CM制作」をおこなった後に、文学的文章の学習をおこなう。文学的文章の学習には、「新旧ドラえもん比較」の学習を組み込む。メディアの表現の学習と文学教材の学習とをつなげる観点を説明したり、示唆したりしない。
著者
宮川 修 金谷 貢 大川 成剛
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

微細な非晶質シリカを含む歯磨剤(ETL)と,比較的に粗大な結晶質のリン酸水素カルシウム二水塩を含む歯磨剤(NSA)とによってブラッシングしたチタン表面の微細形態,化学組成,不動態皮膜の化学構造,および歯磨剤中に取り去られたチタンの性状をXGT, EPMA, SPM, XPS, XRDによって調べた.得られた結果を総括すると以下になる.1)ETLではcomet tail様の,またNSAでは平行線状の条痕がそれぞれ,ブラッシングされた面に観察され,後者のほうが表面粗さは格段に大きかった.どちらもpH値が下がるにつれて条痕が不明瞭になっていった.2)ETLではcomet tail状条痕に対応してSiが存在し,Siに対応して高濃度の酸素の存在が認められた.またNSAでは平行線状条痕にそってCaとPが存在し,これらに呼応して高濃度の酸素も存在した.どちらもpH値が下がるにつれて,歯磨剤中の砥粒由来のこれら元素は減少した.3)XPS分析によると,ETLでブラッシングした面のSiは,不動態酸化皮膜中にのみ存在し,最表面近傍においてチタンケイ酸塩として存在することが示唆された.4)NSAでブラッシングした面のCaとPはかなり深くからも検出され最表面近傍ではCaとPを含む複雑なチタン酸塩が生成したことが示唆された.5)プラッシシグに使われた歯磨剤スラリー中には,0.2〜0.3μmの微細なチタン研磨屑が単独の遊離した形で,また砥粒に付着した形で見いだされた.5)ペースト中チタンからのTi_<2p3/2>ピークは弱くて広範囲にブロードしていたが,TiO_2のTi_<2p3/2>より高い結合エネルギーを有する化学種の存在も示唆された.6)XRDはNSA中のリン酸水素カルシウム二水塩のCaイオンがTiイオンで置換される可能性を示唆した.
著者
樫田 美雄 氏家 靖浩
出版者
徳島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

最終年度として、(1)調査としては、補充調査および補充インタビューを、X小学校調査部分に関して複数回行った。(2)学会発表としては、国際学会発表1回(2010年7月、国際社会学会atエーテボリ=スウエーデン=)と、国内学会発表1回(2010年11月、日本質的心理学会茨城大学大会at水戸市)を行った。(3)論文発表については、ミネルヴァ社発行の専門誌『発達』に、研究協力者である山本智子氏が関連特集を企画し、山本・氏家および高森明氏が原稿を掲載した(2010年7月)。また、奈良女子大学『社会学論集』第18号に、3人共著の査読論文が掲載された。さらに現在、2つの原稿(邦文1つ、欧文1つ)を投稿準備中である(2011年度前半に『質的心理学研究』および『徳島大学社会科学研究』に投稿の予定)。学問的発見としては、X小学校の教室内での(発達障害児をめぐる)「スカフォールディング」(足場づくり)が、共同的に達成されている様相が詳細にわたって解明されたこと、および、現場の秩序形成の様相が設計されたものというよりは、各小コミュニケーション領域別のモザイク的なものであることが解明されたことが大きいといえよう。総じて、「発達障害児(者)研究」の今後にむけて、「場面の秩序」研究的観点の重要性が示唆できたのではないか、と思っている。なお、データの再分析に際しては、金沢大学の竹内慶至氏(医療社会学者)、徳島大学大学院の岡田涼子氏(臨床心理士)および、オランダのマックス・プランク高等教育研究所の早野薫氏(エスノメソドロジスト)らからの助力を得ることができた。記して感謝する。これらの研究者との共同も含め、学際的研究のひとつのモデルとしての価値も、本研究にはあるといえるだろう。
著者
柴田 義貞 山下 俊一 前田 茂人 本田 純久
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

低線量率放射線への長期被曝が人体に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、チェルノブイリ周辺地域住民における乳がん、甲状腺がん発生の実態について疫学調査を行った。1.乳がん乳がんの危険因子については、チェルノブイリ原発所在地のプリピャチ市を含む、チェルノブイリ30-km圏内からキエフ市に避難してきた、事故当時15-45歳の女性1997人(I群)と、事故以前からキエフ市に在住していた同年齢の女性1931人(II群)に対して、質問紙を用いて、月経・出産に関する因子、喫煙および飲酒状況、有病状況等についてウクライナ放射線医学究所と共同で調査し(I群は2003年、II群は2004年)、以下の結果を得た。I群はII群に比して、既婚の割合は小さく、離婚および死別の割合ならびに出産回数が有意に多く、閉経年齢も有意に高かった。乳がんの発生率に関しては、1982年から2001年までの20年間を4期間に分けて、ベラルーシ共和国における乳がんの年齢階級別発生率について、州別の期間間の比較および期間別の州間の比較を行った。乳がんの発生率は4期間を通じてMinsk市がほぼ全年齢階級でもっとも高く、その他の州の間には大差はなかった。また、それぞれの州では、ほぼ全年齢階級で乳がん発生率が期間を追って増加する傾向が認められた。現時点では、乳がん発生率に関して、放射線被曝の影響は認められなかった。2.甲状腺がん特定被曝集団の長期追跡調査を行い、国際甲状腺組織登録バンクの管理運営に参画し、収集した標本を基に各種免疫組織化学的解析および甲状腺がん関連遺伝子の解析を行い、次のような成果を得た。(1)ミトコンドリア遺伝子(mtDNA)の部分欠失や巨大欠損の詳細なプロファイル解析を行い、放射線被曝線量との相関関係を示唆するデータを得た。(2)新しいret/PTC遺伝子異常の再配列を発見した。(3)小児甲状腺がん組織を用いて分子生物学的解析を行い、BRAF異常に対する放射線の影響が否定的であることを示した。
著者
西田 利貞 松本 晶子 保坂 和彦 中村 美知夫 座馬 耕一郎 佐々木 均 藤田 志歩 橋本 千絵
出版者
(財)日本モンキーセンター
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

文化とされるチンパンジーの地域変異行動の学習・発達過程、伝播経路、習得率や、新奇行動の発生頻度と文化定着率を、タンザニア、マハレ公園のM集団を対象にビデオを用いて調査した。アリ釣りは3歳で始まり、5歳でスキルが向上し、7-8歳で完成する。対角毛づくろい(GHC)も社会的に学習され、相手は5歳頃母親に始まり、次に大人雌、9歳頃に年長雄となり、認知的に困難とされる道具行動より遅れて出現する。多くの文化行動は5歳以上のほぼ全員で確認したが、年齢や性に相違のある行動もある:葉の咬みちぎり誇示をしない雌がいる、灌木倒しは雄に限られ、水中投擲や金属壁ドラミングは大人雄のみなど。新奇行動のうち、赤ん坊の首銜え運搬、腹たたき誇示や水鏡行動は少なくとも他の1個体に社会的に伝播したが、まったく伝播しなかった行動もある。腹叩き、飲水用堀棒、乳首押さえなどの新奇行動は、個体レベルでは3-10年続くが、伝播せずに廃れる可能性が高い。一方、スポンジ作りやリーフ・スプーン、葉の口拭き、落葉かき遊びなどの新奇行動を示す個体は次第に増え、社会的学習に基づく流行現象と考えられた。覗き込みは子供の文化習得過程の1つで、採食、毛づくろい、怪我の治療、新生児の世話が覗かれる。年少が年長を覗く傾向は学習説を支持するが、大人の覗き込みは、他の社会的機能も示唆する。親子間や子供同士での食べ残しの利用は、伝統メニューの伝播方法の1つだ。新入雌が直ちに示すGHCなどの行動は、地域個体群の共通文化らしい。移入メスの急速なヒト慣れも、M群の態度を習得する社会化の過程と考えられた。ツチブタ、ヒョウなどM集団が狩猟しない動物の死体を食べないのは、文化の保守的側面であろう。一方、ヒヒがM集団の新メニューに加わる新奇行動の定着例もある。尿・糞によるDNA父子判定によると、子供の半数の父親が第1位雄で、集団外雄が父親になる可能性は低い。父子間の行動の比較が、今後の課題である。Y染色体多型分析から、Mと北集団の雄の祖先共有が示された。収集資料:DVテープ750本、写真1万枚、野帳220冊、骨格3体、昆虫標本900点、尿標本112個、糞標本139個。
著者
芦谷 政浩
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本の公営賭博では、「各馬について一番割安な方法で単勝馬券を合成し、1着・2着・3着の着順がどうなったとしても払戻金総額が馬券購入費用を上回るように馬券を買う」という裁定取引が可能である。本研究課題では、荒尾競馬場の2011年9月30日から12月23日までの175レースを分析し、「馬券の最小購入単位」や「裁定取引による馬券購入が裁定利益を減らす方向にオッズを変える効果」を考慮しても、10月20日の第5競争と11月25日の第11競争で上述の裁定取引が可能であったことを発見した。この研究成果は、J. of Sports Econ.という当該分野を代表する査読付き学術雑誌に掲載された。
著者
山崎 伸二 飯島 義雄 塚本 定三 塚本 定三 OUNDO Joseph O. NAIR Gopinath B. FARUQUE Shah M. RAMAMURTHY Thandavarayan
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

インド、ケニアでの主要な下痢原因菌と考えられる下痢原性大腸菌とコレラ菌について解析した。下痢症患者便をマッコンキー寒天培地で培養し得られたコロニーからボイルテンプレートを作製しReal-time PCRで下痢原性大腸菌の病原因子を網羅的に解析した。インドでは、ipaH遺伝子陽性菌(腸管組織侵入性大腸菌)が最も陽性率が高く、次にeaeA遺伝子陽性菌(腸管病原性大腸菌)の順であったが、ケニアではelt遺伝子陽性菌(腸管毒素原生大腸菌)の陽性率が最も高く、次にaagR遺伝子陽性菌(腸管凝集性大腸菌)であった。我が国で陽性率の高いcdt遺伝子陽性大腸菌がインドやケニアではあまり検出されなかった。一方、コレラ菌に関しては、バングラデシュで見つかったハイブリッド型O1コレラ菌(エルトールバリアント)はインドでは1990年に既に分離されており1995年以降分離されたO1コレラ菌は全てハイブリッド型(エルトールバリアント)であることが明らかとなった。ケニアでのコレラの流行で分離されたコレラ菌もエルトールバリアントであり、エルトールバリアントがアフリカ、ケニアでも広く流行に関わっていることが明らかとなった。
著者
青木 多寿子 橋ヶ谷 佳正 宮崎 宏志 山田 剛史 新 茂之 川合 紀宗 井邑 智哉
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

よい行為の習慣形成を目指す品格教育(character education)は,小中連携の9年一貫で,学校・家庭・地域で連携して子どもの規範意識を育む生徒指導体制の確立を可能にする。本研究では,米国の品格教育優秀校の視察を通して,品格教育の実践に関わる具体的な手立てだけでなく,単なる徳の提示にとどまらない品格教育の本質について論考した。加えて,小中学校へのアンケート調査で,品格の構成要素を示した。さらに,品格教育は,1,2年くらいで成果が出るような教育でなく,5,6年目かかること,また特に中学生で大きな成果が見られることを示した。