著者
田村 幸雄 松井 正宏 吉田 昭仁
出版者
東京工芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

外装仕上材からそれらを支える2次部材に変動風圧力が伝達され,最終的に構造骨組を通じて地盤へ伝達されるプロセスを詳細に追い,従来の耐風設計で行われている構造骨組用風荷重と外装材用風荷重の妥当性を検討した。特に,外装材と構造骨組の区別が付かないモノコック構造体や,大スパン屋根の外装材を支持する部材と構造フレームなどにおける構造物全体の挙動と局所的な風圧力が荷重効果に与える影響について検討し,両者を別々に評価する手法を提案し,耐風設計への応用を示した。
著者
田村 幸雄 松井 正宏 吉田 昭仁 小林 文明
出版者
東京工芸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本の原子力発電施設やLNGタンクなどは全て海岸線に沿って建設されており,米国中部の竜巻常襲地域の竜巻発生確率などと較べても,これら我が国の高危険度施設の竜巻遭遇確率は遥に高い。本研究では,従来から設計では採り上げられていなかった竜巻等のシビア・ローカルストームの,原子力発電施設,大規模液化天然ガス貯蔵施設,使用済核燃料再処理施設,有害産業廃棄物処理施設など,被害が発生した際に周辺地域,住民に甚大な悪影響を与える重要施設に対する影響と対策,設計・施工に対するガイドラインを検討した。
著者
大村 智 供田 洋 乙黒 一彦 山田 陽城 宇井 英明 清原 寛章 塩見 和朗 林 正彦
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

我々は天然物由来の新規な構造の抗マラリア剤を発見するために探索研究を行った。4年間の研究期間で、天然物素材等12,832検体を北里研究所のスクリーニングセンターに提供し、in vitroでの抗マラリア活性の評価を行った。その結果、選択毒性の高い抗マラリア活性を有する天然物素材として18種を活性物質取得候補とした。微生物素材からの探索の過程で、放線菌K99-0413株、KP-4050株、K99-5147株、KP-4093株(後に、高生産株OM-0060株を選択)及び糸状菌FKI-0266株の生産する抗マラリア活性物質は各々既知抗生物質のX-206、K-41、polyketomycin、borrelidin及びleucinostatin Aであると同定された。また、抗生物質ライブラリーからは、既に当研究所で発見されたtakaokamycin (hormaomycinと同定)及びoctacyclomycinに抗マラリア活性があることが分かった。さらに、X-206、K-41及びborrelidinはin vivoで既存の抗マラリア剤(artemether, artesunate及びchloroquine)よりも優れた効果を示した。特に、K-41及びborrelidinは新規な骨格の抗マラリア剤としてのリード化合物の可能性があり、今後開発に向けて詳細を検討する必要がある。植物素材からの探索の過程では、ジンチョウゲ科植物根部に含まれる抗マラリア活性物質2種を精製し、既知のbiflavonoid誘導体のsikokianin B及びCあることを同定した。上記の化合物類の抗マラリア活性は新知見である。また、新たにな素材としての海洋生物素材、天然物由来の活性物質誘導体については、現在抗マラリア活性の評価中である。他の選択菌株及び和漢生薬からの抗マラリア活性物質についても現在検討中である。
著者
河岡 義裕 朝長 啓造 澤 洋文 松浦 善治 川口 寧 渡辺 登喜子 鈴木 信弘 高橋 英樹 長崎 慶三 川野 秀一
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2016-06-30

(1)計画・公募研究の推進:計画・公募研究を、研究活動支援システム、領域班会議などを通じて積極的にサポートし、計画研究とともにネオウイルス学創成に目がけた研究を推進している。高度情報処理支援として、計画研究班および公募研究班に対し、スーパーコンピュータシステム・シロカネの利用による高速処理体制を構築するとともに、シロカネ上でデータ解析プログラムの連携・共有を行った。(2)領域班会議の開催:平成30年度は、4月13~15日に高知県において第4回領域班会議、また 11月11~13日に兵庫県淡路島において、第5回領域班会議を行い、 各計画・公募研究班による未発表データを含めた進捗報告を行った。会議では、活発な議論が展開され、共同研究や技術提供が活性化されるとともに、領域内の研究者間の有機的な連携が強化された。また今年度は、 テレビ会議システムを用いて、月に一度の定例会を行い、各計画・公募研究班の研究進捗の報告などを行なうことによって、領域全体の研究の推進を図った。(3)広報活動:本領域の研究活動を国民に広く発信するため、ホームページ/フェイスブックページ/ツイッターにおいて、平成30年度は26/29/169件の記事を掲載した。フォロワー数は平成29年度と比較して、フェイスブックページは160から206名、ツイッターは152から239名に増加した。また平成30年度は、領域の研究内容の概説を掲載したニュースレターを2回発行した。さらに活発なアウトリーチ活動を行なった。
著者
河岡 義裕 渡辺 登喜子 岩附 研子 山田 晋弥 植木 紘史
出版者
東京大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2018-10-09

地球レベルでの環境変化や野生動物との生活圏域の近接化により、新興感染症となりうる人獣共通感染症が、ヒト社会に侵入する可能性は増大している。最近の研究から、アフリカ、南米、アジア等の国々が、人獣共通感染症が発生しやすいホットスポットであると予測されているが、その実態は未だ不明である。そこで本研究では、アフリカのシエラレオネ、南米のボリビア、東南アジアのインドネシアにおいて、人獣共通感染症を引き起こすウイルスの流行状況を把握するために、海外共同研究者と連携して、ヒトや野生動物における血清学的調査、および野生動物が保有するウイルスの分離・同定を行う。平成30年度は、10月に南米のボリビアを訪問し、共同研究者であるガブリエル・レネ・モレノ自治大学のJuan Antonio Cristian Pereira Rico博士および川森文彦博士と共に、野生動物サンプリングのための予備調査を行った。また2月には、アフリカ・シエラレオネを訪問し、シエラレオネ大学のAlhaji N’jai博士の協力のもと、Moyamba地区においてコウモリを捕獲し、臓器サンプリングを行った。現在、採取したサンプルの詳細な解析を行なっている。さらにシエラレオネでは、ヒトにおけるウイルス感染症の流行状況を調べるための血清学的調査を実施する準備として、各医療機関や保健省などを訪問し、協力研究者との研究打ち合わせを行った。またいくつかのウイルス抗原に対するIgG、IgM抗体を検出するELISAの系を確立した。
著者
小野 米一 原 卓志 菅 泰雄 仙波 光明 平井 松午
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

北海道には、室町期ごろから和人が定住し始め、江戸期を通して松前藩が置かれた。しかし、本格的な北海道開拓が進められるのは、明治以後である。北海道への移住者は東北地方出身者が多かったが、四国地方からの移住者も意外に多く、移住者全体の約8%を占める。本研究の研究者5名のうち4名(小野・仙波・平井・原)が徳島県に住んでおり、本研究では徳島県から北海道への移住者に限定して研究を進めた。対象地域が北海道であるため、北海道在住の研究者1名(菅)に参加してもらった。北海道内各地に徳島県出身関係者が住んでいるが、本研究では、北海道余市郡仁木町、旭川市永山、静内郡静内町、中川郡本別町、などで言語調査を行った。いずれも、徳島県からまとまった数の移住者が入植し、定着した地域である。とは言え、移住後100年以上(静内では130年ほど)経て、今は年輩の人でも2世はまれで、ほとんどが3世・4世である。1世によって持ち込まれたはずの徳島方言は相当に影を薄くし、いわば北海道方言が成立してきている。それでも"徳島方言"はそれなりに尾を引いている面もある。北海道に渡った徳島方言と対比するために、主として吉野川沿いの地域を中心に、地元の徳島方言を調査した。また、やや古い徳島方言の姿を知るために、文献による調査を試みた。その結果、たとえば、北海道仁木町には120年余を経過した今日でも3世には明らかに徳島方言の名残が認められ、4世になるとそれが希薄になる。旭川市永山では屯田入植者の3割近くを徳島県出身者が占めたものの3世への名残は仁木町より薄く、4世はいわゆる北海道方言と見なされることばになっている。徳島県から北海道への移住者とその後の動きについては、かなり具体的に把握することができた。
著者
村上 尚 宮本 忠幸 石村 和敬 桑島 正道 田中 敏博 年森 清隆
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

Juvenile Visceral Steatosis(JVS)mouseにはカルニチン輸送担体の活性がない(BBRC223:283,1996)。即ち、ヒトのprimary carnitine deficiencyのanimal modelである。このマウスのオスでは妊よう性の低下があるので、その原因を検索した。研究実績の概要は以下のとおりである。1.原因遺伝子の同定JVSマウスは常染色体劣性の遺伝形式をもつ、単一遺伝子疾患である。原因遺伝子は、第11番染色体上に局在することを、1996年に報告していた。1998年にhuman OCTN2(Na^+dependent carnitine transporter)が報告されたので、mouseOCTN2をclonigし、その第6trnsmembrane domainにあるcodon352のCTG(Leu)が、JVSマウスではCGC(Arg)に変異していることを見い出した。2.精巣の分析JVSマウスのオスは生殖能が極めて悪く、その原因を知る目的で組織学的分析を行った。その結果、精巣上体の体部と尾部の間で、閉塞(6例中5例が完全、1例が不完全)し、完全閉塞の場合、尾部には精子が見られなかった。精巣上体は精子を通過させながら、成熟させていく極めて大切なorganであり、JVSマウスがヒトの閉塞性無精子症のanimal modelになりうる可能性を示した。3..カルニチン輸送に対する阻害剤の発見3-〈2,2,2-trimethylhydrazinium)propionateがカルニチン輸送に対する阻害剤であることを見い出した。将来本研究を推進させるのに有力な武器になりうると考えられた。
著者
星野 光男 藤田 尚昌 阿部 弘樹 古賀 寛尚
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

代数幾何学におけるセール双対の理論をネター多元環の場合に拡張し、この概念を用いて、ネター多元環のゴレンシュタイン性の特徴付けを与え、かつ、ゴレンシュタイン多元環上の与えられた傾斜鎖複体に対して、その準同型多元環がまたゴレンシュタイン多元環になるための必要十分条件を与えた。ここで、ネター多元環とは可換ネター環上の多元環で加群として有限生成のものを指し、ゴレンシュタイン多元環とは可換ゴレンシュタイン環上のネター多元環で導来圏における基礎環上の双対が射影的生成素を移動したものと同型になるものを指す。
著者
高橋 亮
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

(1) 全反射加群の圏の反変有限性が局所環のGorenstein性を特徴付けることを示した。これはAuslander-Buchweitzの定理の逆に相当する。これを用いて全反射加群の個数の有限性による単純特異点の特徴付けも得た。また,Gorenstein Hensel局所環上の反変有限分解部分圏を完全に分類した。(2) 正則環の局所化のD加群構造に関するAlvarez-Montaner-Blickle-Lyubeznikの定理と局所コホモロジー加群の素因子に関するHuneke-Sharpの定理を有限F表現型の環に拡張した。
著者
根本 彰 影浦 峡 青柳 英治 海野 敏 小田 光宏 河西 由美子 岸田 和明 倉田 敬子 古賀 崇 鈴木 崇史 竹内 比呂也 谷口 祥一 研谷 紀夫 中村 百合子 野末 俊比古 松本 直樹 三浦 太郎 三輪 眞木子 芳鐘 冬樹 吉田 右子 今井 福司 河村 俊太郎 浅石 卓真 常川 真央 南 亮一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

5年間にわたる本プロジェクト(通称LIPER3)では、過去2回のLIPER研究で抽出した図書館情報学教育の問題構造に変化を与えるために次の実践研究を行った。第一に、図書館情報学教育の教育内容を見直すために、新しい標準的な教科書シリーズを執筆し刊行した。第二に、この標準的な教育内容に沿って各教育機関がどのような教育成果を上げているかを自己評価できるように、図書館情報学検定試験を4年間にわたり実施した。第三に、外国の図書館情報学教育の状況を把握し関係者と交流するために、アメリカの標準的教科書を翻訳・刊行し、国際学会で日本の図書館情報学教育について発表し、欧米の教育機関での聞き取り調査を実施した。
著者
トレンソン スティーブン 上野 勝之
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、中世日本における密教と神道の交渉史を龍神信仰の観点から再検討した。中世日本では神祇信仰と密教思想は様々な形で結合し、その結果として中世神道の諸流が確立したが、その歴史的展開については未解決な問題が多く残っている。通説では、中世神道が初めて伊勢神宮の周辺に形成され、その後室生山や三輪山などほかの霊地へ広まったとされているが、本研究では、中世神道の言説において龍神信仰に関わる点が多い事実に着目し、そのために古来龍神信仰の聖地とされた醍醐寺の密教の観点から中世神道の様々な信仰を再考した。その結果として、中世神道が醍醐寺の密教から多大な影響を受けたということを明らかにすることができた。
著者
西谷 祐子 高杉 直
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本計画研究は,インターネット上での著作権侵害について,国際裁判管轄及び準拠法のルールのあり方について検討することを目的としていた。本研究においては,まず第一に,アメリカ合衆国及び欧州の判例及び学説の動向について研究を行った。アメリカについては,特にインターネット上での音楽ファイル交換に関するプロバイダー及びプログラム開発者の責任をめぐる連邦最高裁判決について考察した。欧州については,特にドイツの判例及び学説,欧州司法裁判所の判例,そしてスイスの学説について検討をした。また,欧州共同体については,国際裁判管轄及び外国判決の承認に関する一般的なルールである2000年ブリュッセルI規則及び2004年欧州債務名義規則について検討を進めたほか,契約債務の準拠法決定に関するローマI規則,そして契約外債務の準拠法決定に関するローマII規則の制定に向けた欧州委員会及び欧州理事会・欧州議会の動向について丹念にフォローアップした。第二に,アメリカ法律協会(ALI)及びマックス・プランク無体財産法及び競争法研究所(MPI:ミュンヘン)は,各々数年前から国際知的財産法に関する国際裁判管轄及び準拠法決定の原則案(Principles)について検討を進めており,近いうちにルールとして公表する予定である。特にALIルールは,アメリカ抵触法のアプローチを色濃く反映した柔軟なルールで,知的財産権に関する属地主義を緩和するものであり,MPIルールと比較検討することで,非常に有益な示唆を得ることができた。また,MPIミュンヘンとマックス・プランク外国私法及び国際私法研究所(MPI:ハンブルク)は,2007年2月23日に共同で国際裁判管轄に関するブリュッセルI規則及び契約準拠法に関するローマI規則提案について知的財産権の取り扱いに関する意見書を提出しており(http://www.mpipriv.de/ww/de/pub/aktuelles/content3075.htm),本計画研究を終了する直前にまとまった意見書に接し,総合的な検討を行うことが出来たのは有益であった。そのほか,研究全体と関係する論点として,国際私法固有のアプローチの検討のみならず,実質法上のソフトローの形成とそれによる紛争処理の可能性についても考察をした。
著者
中島 紀 川良 公明
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究のテーマは、褐色矮星、近赤外ディープサーベイの星状天体の解釈及びスペースイメージング赤外干渉計の感度の計算に大別される。若い褐色矮星の研究からは、褐色矮星が、星のように単独でも、伴星としても検出されることがわかった。スペースミッションは、多数の冷たい褐色矮星を検出する可能性を持つが、地上観測は、暖かい褐色矮星にしか感度をもたない。低温褐色矮星SDSS 1624+00の時間分解されたスペクトルの変動を調べることで、褐色矮星の気象の研究を行った。観測時間は、80分と短かったが僅かな変動がみられた。狭い領域のディープサーベイは、限界等級を深くしていったときどのような宇宙が見えてくるかを知る目的で、広域サーベイと相補的な役割を持つ。また、そこからスターカウントモデルを構築することで、サーベイ一般がどのような数の星や褐色矮星を見つける可能性を持つのかを予言することができる。我々が構築したスターカウントモデルは、UKIRT Wide Field Surveyの褐色矮星検出効率を予想し、Next Generation Space Telescopeがみる究極の銀河系の姿を描きだした。サーベイにより検出された天体を高い空間分解能でフォローアップするための究極の装置は、スペース干渉計である。また遠赤外線においてコンフュージョンをさけてディープサーベイを行い銀河カウントを行えるのも、スペース干渉計である。まず我々は、スペース干渉計の感度の公式を導いた。そしてその公式を現在計画されているTerrestrial Planet FinderやDarwinに応用した。そして、冷やさない干渉計が冷やした望遠鏡よりも感度が良いこと、冷やした干渉計は、宇宙論的に意味のある観測が可能でるあることを見出した。
著者
佐々木 掌子
出版者
明治大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本年度は,あらたに,一般母集団の7歳児(小学校1年生)の性の諸要素に関する心理指標のデータを取得することができた。これまでは,6歳児(幼稚園年長組)の協力を得ていたため,これにより6歳児から7歳児(就学前と就学後)における性の諸要素に関する横断的発達の諸相を検討することができる。次年度はさらにその協力児童数を増やす予定である。トランスジェンダーの幼児・児童の性の諸要素に関する心理指標も同様に,着々とその協力者数を増加させていている状況である。さらには,幼児・児童期のみならず,青年期として,大学生・大学院生への性の諸要素に関する心理指標についても収集を始めた。今後は,こうしたデータを通じて,幼児期,児童期,思春期,青年期という性の諸要素についての横断的発達を検討する計画である。8月には,インドのチェンナイで開催された15th Asia-Oceania Conference for Sexologyにおいて,A case of early gender transition in Japanと題したケースを口頭発表した。1月には,教育心理学研究に「中学校における『性の多様性』授業の教育効果」というタイトルで査読論文が掲載された。3月には,第42回日本自殺予防学会でシンポジストとして話した内容を「自殺予防と危機介入」という学術誌にまとめた論考が掲載された(タイトルは「出生時に割り当てられた性別にとらわれない子ども」をどう支援するか」)。
著者
田村 隆 折茂 克哉 高山 みさと
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

東京大学駒場図書館所蔵の狩野亨吉文書の書簡に関するデータ入力を約半数終了した。手紙内容の分析により、例えば旧制一高医学部の千葉大学移管にへの関与など、これまで知られてこなかった教育分野における狩野の功績などが徐々に明らかになってきている。また、東北大学や九州大学に所蔵される狩野文庫の多くの書物は、蔵書家としての狩野亨吉の姿を証するが、一方で駒場図書館の狩野亨吉文書からは、上述のように旧制高等学校もしくは京都帝国大学の教員としての狩野亨吉の姿が浮かび上がる。狩野は入学式の祝辞等のメモも几帳面に保存しており、研究メンバーはそれぞれの問題関心にしたがって特に一高校長時代の狩野亨吉について研究を進めてきた。また、昨年度は狩野亨吉の故郷である秋田県大館市で碑文調査および博物館の方々との意見交換や資料蒐集などを行い、知見を深めた。
著者
白木 公康 黒川 昌彦
出版者
富山医科薬科大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

単純ヘルペスウイルス(HSV)は、皮膚・粘膜などのでの急性感染に引き続き脊髄後根神経節や三叉神経節に潜伏感染する。しかし、潜伏感染機構とは対照的に、HSV感染による潜伏感染している感覚細胞機能に関しては知られていない。HSVは、初感染後に感覚神経節神経細胞に潜伏感染し、再活性化により病変を生じる。しかし、このような感覚神経細胞への急性・潜伏HSV感染に伴う感覚異常に関しては知られていない。そこで、この研究の第一歩として、HSV感染に伴う感染部位の痛覚閾値が上昇することを報告した(Neur osci Lett 190:101-104,1995)。そして、この痛覚閾値の上昇と感覚神経節の神経細胞のHSV感染との関係や痛覚閾値の薬剤に関する反応性を検討し、HSV感染に伴う後根神経節の感覚神経細胞の機能に関する評価を行った(Neur osci Res 31:235-240,1998)。そして、本研究ではマウスのHSV皮膚感染モデルを用いて,HSV感染に伴い,感染部位の神経支配領域で,allodyniaとhyper algesiaが認められることを証明した(Pain in press)。このような変化は,後根感覚神経節でHSVゲノムの検出と一致していることから,HSV感染に伴う感覚神経機能の修飾によるものと考えられた。この実験系の開発により,帯状庖疹後に認められる帯状庖疹後神経痛のモデルとして薬効の評価系となりうることが示された。HSVの神経細胞での潜伏感染時にゲノムから特異的に転写されるLatency Associated Transcripts(LAT)のプロモーターを利用して、その下流にβ-ガラクトシダーゼ(β-gal)遺伝子を組込み(Neur osci Lett 245:69-72.1998)、このウイルスの末梢および中枢神経系への急性期と潜伏感染時に、組織破壊を認めずに、神経細胞特異的に、β-galを発現する事を示した。そして,このウイルスをラットの右腓腹筋に接種すると5-7日後に両側の脊髄前角神経細胞にβ-galの発現を認め始め,14日頃まで発現領域が拡大し,それ以降182日以上前角神経細胞中でβ-galの発現が持続し,潜伏感染の持続とともに、発現が増強することを確認した。そして,炎症や,神経細胞の破壊を認めず,導入遺伝子を長期にわたり発現できることを確認した。このことは,前角細胞の変性による筋萎縮性脊髄硬化症の疾患モデル及びその治療モデル動物の作成がこのウイルスベクターによって可能であることを示した(Gene Ther apy in press)。
著者
榊原 健一 林 良子 後藤 多嘉緒 河原 英紀 牧 勝弘 齋藤 毅 山川 仁子 天野 成昭 山内 彰人
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

喉頭音源に関連する声質の客観的表記に関し、生理学的、物理学的視点から、音源となる振動体の分類により(i) 声帯発声 ; (ii) 声帯-仮声帯発声; (iii) 声帯-披裂部発声; の3種類の有声音と,無声音である声門乱流雑音発声と分類が可能であり、有声音源に関しては、物理的・音響的特徴から周期的、準周期的、非周期的の3つの振動への分類を提案した。また、声質表現として緊張-弛緩と声門開放時間率との関係を明らかにし、声質の客観的な表現語として適切であることを明らかにした。声門開放時間率の分析方法として、余弦級数包絡の複素wavelet分析に基づく簡易なGCI, GOIの検出方法を考案した。
著者
黒田 美保 浜田 恵 辻井 正次 稲田 尚子 井澗 知美
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2018年度は,心理士を中心にカルフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で開発された自閉スペクトラム症幼児療育方法であるJASPER日本版を実施し,効果検証を行った。(方法)参加者:介入群は病院や療育施設より紹介を受けた8名で,対象群は1つの療育施設に通う8名。手続き:介入群は,中京地区と関東地区の3施設で実施した。実施回数は週1回で20回,1回のセッションは,UCLAと同じく40~45分とした。対象群は,関東地区の施設で,従来からやっている構造化による療育を週1回20回行った。実施前に,子ども自身に,新版K式発達検査,ADOS-2(自閉症観察検査第2版)を実施。効果検証としては,子どもには,SPACE(Short Play and Communication Evaluation)および「心の理論課題」中のアイトラッキング(視線移動計測)を行った。SPACEは介入前後及び中間点で行う。新版K式発達検査とアイトラッキングは介入前後のみである。保護者には,Vineland-II適応行動尺度およびマッカーサー言語発達検査を介入前後で実施し,これらの変化を比較する。現在は,データを蓄積している段階であるが,JASPERを実施した介入群では,現在までに,要求行動・共同注意行動の改善と遊びの水準の向上が見られた。また,視線移動計測による自閉スペクトラム幼児の「心の理論」の理解については,両群を合わせた初期データを解析した。その結果,自閉スペクトラム児でも近親化課題では全員正解することができたが,「心の理論」課題では正答率は低下し個人差が大きくなった。同時に,SPACEの妥当性を調べるために,定型発達児10名についてSPACEとADOS-2を行い,現在解析中である。また,心理士のJASPERの実施スキルの向上のための勉強会を月1回実施した。
著者
渡部 昭男
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

高等教育費負担を巡り、日韓はともに家族負担主義、高授業料・低補助の国に分類されてきたが、転換しつつある。両国は、共通した国際人権法(A規約13条:教育への権利、漸進的無償化義務)、類似した憲法(能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利)等を法規範として有する。独自開発した「漸進的無償化プログラム(高等教育版)2017」の枠組みを用いて、経済的負担軽減及び修学支援に係る制度・行財政(国家政策・地方施策)を把握し、その意思決定過程を分析する。その上で、日韓の政策転換の特徴(共通性・相違点)を明らかにするとともに、法規範を源泉とみる「法規範⇒意思決定⇒制度・行財政=政策転換」という「問い」を検証する。
著者
片岡 清臣
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

解析的線形偏微分方程式系に対しては初期値・境界値混合問題の座標不変かつ代数解析的な定式化,すなわちD-加群に対する定式化に成功した.同時に佐藤超関数解の境界に沿う解析的特異性伝播など超局所解析的性質を導くための主要道具となる正則関数解の層複体の柏原正樹・P. Schapiraの意味のマイクロ台の評価定理を得た.非線形方程式系については円周上を動き,弱い結合をもつ多数の振動子の共振の数理モデルである蔵本モデルに関する予想の証明に成功した千葉逸人の理論の数学的な不備を発見し修正に取り組んだ.特に主要なアイデアであり鍵となる線形作用素の一般化固有関数展開の意味を正確に与え証明した.