著者
鈴間 潔 赤木 忠道 村上 智昭 宇治 彰人 北岡 隆 藤川 亜月茶 築城 英子 松本 牧子 木下 博文 前川 有紀 劉 美智 高見 由美子 浜崎 幸子 高橋 政代
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

2011年に故笹井芳樹先生らのグループよりマウスES細胞から網膜を組織として3次元的に再生できることが報告された(Eiraku M, Nature 2011:472:51)。我々は再生された網膜の周辺部に形態学的に毛様体組織と類似した構造があることを発見し、故笹井先生らのグループと共同で毛様体組織を効率的に再生する方法を開発することに成功した。本研究は再生毛様体を眼内に移植することにより眼球癆の治療法開発、同時に房水にサイトカインや細胞生存因子を分泌させるという新しいドラッグデリバリーの方法を応用した眼疾患の治療法開発を目指す。今後は動物モデルへの移植研究を行う予定である。
著者
池田 博 岩坪 美兼 矢野 興一 高山 浩司
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

著しい種内倍数性を示すオミナエシ科オトコエシについて、細胞学的、系統地理学的解析を行った。日本および韓国で収集した試料を解析した結果、2倍体 (2n=22)から12倍体 (2n=132) まで連続した倍数体系列が認められ、遺伝的には 1) 九州西部から韓国に分布する系統 (2n=22)、2) 北海道から滋賀県まで分布する東日本系統 (2n=44)、3) 近畿地方から九州まで分布する西日本系統 (2n=66~132) の大きく3つのグループに分けられることが明らかになった。また、オトコエシとオミナエシの雑種とされてきた「オトコオミナエシ」は、オトコエシの種内倍数体間の交雑に由来すると考えられた。
著者
薮田 ひかる 甘利 幸子 デイビッド キルコイン
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、隕石中の始原的希ガス" Qガス"の担体とされる正体不明の炭素化合物" phase Q"を同定するための新たな戦略として、適切な化学・物理的分離法を施しQガスを濃集させた隕石中の炭素質物質を、走査型透過X線顕微鏡(STXM)を用い分析した。その結果、Qガスに富む炭素成分はsp^3炭素に富む分子構造を有することが明らかとなった。
著者
戸田山 和久 久木田 水生 間瀬 健二 唐沢 かおり 鈴木 泰博 秋庭 史典
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、人類よりも知的な人工システムが技術的に可能になる日であるとされるシンギュラリティを巡り、その技術予測としての妥当性、そこで用いられる「人類よりも知的」の意味を明らかにし、その基礎作業の上で、なんらかの意味でのシンギュラリティが起こりうるという仮定にもとづき、予防的にシンギュラリティに人類はどのように対処すべきかを検討し、提言することを目指す。平成29年度は、シンギュラリティの「哲学的問題」として(1)知能爆発の可能性(必然性?)を論証する回帰的議論は果たして妥当か。(2)知性・知能とは何か。そもそも機械はどのような心的能力をもちうるか。(3)知能爆発の結果、倫理や価値(真・善・美)はどうなるのか。(4)シンギュラリティ後の世界において、われわれ人間はどんな役割を果たせるのかという問題群を取り出した。また、これまでに「シンギュラリティ」について書かれた言説について包括的なサーベイを行い、技術予測、シンギュラリティ概念、知性の概念、コンピュータ観、人間観等にかかわる基礎的概念について、著者によって大きく異なることを見出し、それを整理し、「シンギュラリティ」についてどのように論じるべきかというメタ的・方法論的なことがらについて結論を得た。それは、研究代表者により『人工知能学大事典』の「シンギュラリティ」の項目執筆というかたちで発表された。その他、シンギュラリティについて考察するのに関わりをもつ副次的概念や問題(とりわけ機械が犯した失敗についての責任の所在、機械は責任主体になりうるかという問題)について、研究成果を得て、さまざまな媒体で発表した。
著者
古賀 一男
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究課題では,1歳未満の乳幼児の眼球運動を正確かつ定量的に記録するための新しい方法を開発すると共に,その方法を用いて乳幼児の眼球運動から眼科的あるいは認知発達的な見地から発達の不具合を早期に検出するという極めて限定した目的で研究が進められている.本研究課題では,言語的コミュニケーションが不十分な場合でも被験者の眼球運動を定量的に計測する手法を確立することと,その応用例を示すことを採取的な目標としている.特に萌芽的研究の限られた期間内に上記の目標のみをアクション・アイテムとして設定し確実に方法を確立することを目指す.初年度では,赤外光による角膜反射光法をとるため薄暗い中で撮影が行えるよう、現有システムに、リモートコントロール可能な赤外線カメラと、複数カメラ間の同期をとるための装置を追加した.さらにXY-tracker(浜松ホトニクス:フレーム内の最明点を検出し、その座標値をXY軸同時にデジタル出力できる)を用い、XY-trackerで追った眼球運動と頭部運動の軌跡を解析することで眼球の移動量や方向などを定量的に測定するシステムを構築した。このシステムを用いて引き続きデータの取得を継続し,また取得されたデータの解析を行い.新規に考案されたアルゴリズムを用いて,すでに取得された乳幼児の眼球位置の較正を試みた.
著者
石原 孝二 信原 幸弘 河野 哲也 鈴木 晃仁 北中 淳子 熊谷 晋一郎 糸川 昌成 石垣 琢麿 笠井 清登 向谷地 生良
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は4 つの研究領域①生物学的精神医学および認知行動療法の展開による疾患観の変化、②精神疾患症状の現象論的・行為論的・認知哲学的把握、③診断の歴史と科学論、④当事者、家族、支援者の視点:地域社会論と障害学からの検討を設定し、各領域の研究を通じて精神疾患概念の再検討と「精神医学の科学哲学」の展開をはかった。研究の成果は15本の論文と59回の学会等の発表・講演、国際会議Tokyo Conference on Philosophy of Psychiatryの実施などを通じて発表されている。また、本研究の集大成として、全3巻のシリーズ書籍「精神医学の哲学」(仮題)を刊行する予定である。
著者
鮫島 和行 瀧本 彩加 澤 幸祐 永澤 美保 村井 千寿子
出版者
玉川大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-07-10

人と動物間の社会的シグナルの動態を、自然な状況で計測する技術を確立し、人と動物との相互行為とその学習を、心理実験やモデル化を通じてあきらかにする事を目的とする。これまでの研究実績をうけて、本年度の実績は具体的には、1)人=馬インタラクション研究において、調馬策実験課題おける音声指示と動作との間の関係を記述し、人の音声に応じて馬の行動変化までの時間の変化が、馬をどれだけ指示通り動かすことができたか、という「人馬一体間」の主観評定と比較し、人馬一体感に2つの種類が存在することを明らかにした。人=馬インタラクションの実験結果からの知見を応用した車両制御に関するアイデアを特許として共同で出願した。2)人どうしのコミュニケーションにおいて、自然な他者認知の指標としてもちいられている「あくびの伝染」が人=馬間で存在するかどうかの実験を行い、あくびの伝染が人=馬間でも存在する事を示した。3)人=サルインタラクション研究において、人がサルの行動を学習させる訓練において、訓練されるサルの行動だけでなく、人の行動も変化している事を示し、相互学習が人=サル間で起きていることを示唆した。4)人=サルインタラクション研究において、social reward としてのsocial-touchが指刺しかだいにおいての問題行動を減らすことを示した。5)人=イヌインターラクション研究において、保護犬と人との同期動作や視線、および人の指刺し行動の情報が、馴化前後で異なることをプレリミナリーな結果として示すことに成功した。
著者
高倉 かほる 酒井 一夫 朝野 武美 安田 秀世 石川 光男
出版者
国際基督教大学
雑誌
核融合特別研究
巻号頁・発行日
1987

数年前, 賀田らによって発見された, 核酸の形質転換能のトリチウムによる不活化が, 照射線量率が低い程効率よくおこるという研究結果は, 学問的に興味深い結果であるだけでなく, 生物的には重要な発見であると考えられた. 高倉,石川は, 大腸菌とそのプラスミドDNAの系を用いて追実験し, 同様な結果を得て, 昨年の科研費研究報告で報告した. この賀田効果が, トリチウムに特異的な現象であるかどうかは, 大変重要な事であるが, 本年度は, この点を明らかにするべく, Coー60ガンマ線を用いて, 同様な実験を行い, その結果トリチウム照射と同じ様に, 照射線量率依存性が存在することが明らかとなった. この事により, トリチウム水の照射効果のRBEが正しく評価できるよりどころが生じ, 核酸の一本鎖切断のRBEには, 約0.3〜0.4形質転換能の不活化に対するRBEは, 約1であることがわかった.酒井は, 高線量率でトリチウム照射された細胞の中の核酸の主鎖切断を調べた. 照射直後の主鎖切断は, RBEが0.6でX線照射に比べ少ないのに, 10時間の修復期間の後の切断は, RBEが1というように, X線照射と, 同ど程度である事を報告している. 朝野は, 放射線分解を抑制して核壊変効果を観測する「希釈剤添加法」を用いて, とりちうむの糀壊変による〔2ー^<>C,5ー^3H〕ウラシルの分解を酸素胞和水液中と, 脱気水溶液中とで調べた. 核壊変による生成物が5種類検出され, そのうちの1つとしてトリチウムがOH基におき変わった. インソバルビツール酸が推定された. 安田は, 核酸にとり込まれたトリチウムによる主鎖切断を調べる研究に取り組むため, その予備実験をPー32を用いて行った. Pー32でラベルされたdCTPが1ヶ所だけ入ったプラスミドDNAの作成に成巧し, Pー32の崩壊に伴う鎖切断をシークエンスゲルで確認することができた.
著者
宮石 智
出版者
岡山大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

法医学実務においては、着衣等に付着した血痕が月経血に由来するか否かがしばしば問題とされる。従来の月経血痕証明法の一つである血痕からのフィブリン分解産物(FDP;月経血に多量に含まれている)の検出では、月経血は生体末梢血からは鑑別され得たが、月経血同様多量のFDPを含有する死体血との鑑別は困難であった。ところで私は、死体血と生体末梢血のミオグロビン(Mb)含量の差を利用した、血痕からの生体血と死体血との鑑別法を既に考案している。月経血は子宮という平滑筋臓器から出血する生体の血液であり、Mb含有量は生体末梢血と同程度と考えられる。そこで、血痕からのFDPとMbの同時検出によって、生体末梢血、死体血との鑑別を含めた月経血痕の証明が可能であると考えられた。月経血及び死体血の各10mu1を晒し布に付着させて実験的に血痕を作製し、これに200mu1のPBSを加え37℃で一夜静置して得られた抽出液についてFDP-Dダイマー(二次線溶に特異的に出現するFDPの一成分)の定量を行った結果は、月経血では5.94x10^2〜1.27x10^3ng/ml、死体血では5.84x10^2〜1.58x10^4ng/mlと高値であった。一方生体末梢血のFDP-Dダイマー濃度は9.7〜37.1ng/mlに過ぎないことから、血痕からのFDP-Dダイマー検出により月経血及び死体血と生体末梢血との鑑別が可能であった。月経血のMb濃度を測定すると27.2〜53.7ng/mlであり、生体末梢血のMbレベル(35.5±23.9ng/ml)に相当していた。従って血痕からのMb検出により、月経血も生体末梢血と同様に死体血から鑑別され得ることが判明した。以上のことから、血痕からのFDP-DダイマーとMbの同時検出により月経血、生体末梢血、死体血の三者が鑑別され得ること(FDP-Dダイマーのみ検出されたものは月経血、FDP-DダイマーとMbの両者が検出されたものは死体血、いずれも検出されないものは生体末梢血)が確認された。
著者
藤田 敏郎
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

含硫アミノ酸タウリンは, 生体内に広く分布するアミノ酸であり, また魚貝類などに豊富に含まれているが, タウリンは神経組織内でneuromodulatorとして働き, 神経末端からのノルエピネフリン遊出を抑制することが, in vitroの実験にて証明されている. そこで高血圧症における食事療法の一つとして含硫アミノ酸タウリンに着目し, タウリン摂取の降圧効果を明らかにするために, その降圧作用機序における交感神経系の役割について基礎的検討を行った. その結果, deoxycorticosterone acete(DOCA)-食塩高血圧ラットにおいて, タウリンの投与が高血圧の発症を抑制するとともに血圧上昇後にも降圧をもたらし, その機序に交感神経系の抑制が重要な役割を果していることを報告した. さらに, タウリン投与ラットの視床下部ではタウリン含量の著明な増加が認められた.近年タウリンは, 中枢神経系において神経機能調節因子として働いている可能性が示唆されていることから, タウリンの降圧作用ならびに交感神経抑制作用は中枢神経系の変化を介する可能性が考えられる. さらに最近, クロニジンなどの中枢性交感神経抑制剤の降圧作用機序に, 内因性オピオイドペプチドの賦活化が関与するとの報告がなされ注目されている. 本研究はDOCA-食塩高血圧ラットにおけるタウリンの降圧作用機序における内因性オピオイドの役割を検討した.その結果, taurine投与群ではopiate receptor antagonistのnaloxone投与により有意な昇圧が認められたことから, taurineの降圧作用ならびに, 交感神経抑制作用は, 一部脳内opioid活性の賦活化を介する可能性が推察された.
著者
大倉 沙江
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究の目的は、政治エリートとのネットワークや財政基盤などのリソース面で「弱い少数者」であるマイノリティ集団の利益が実現するための条件とその因果メカニズムを明らかにすることである。2017(平成29)年度は、研究実施計画にもとづき、マイノリティの政治参加に関連した基礎的な資料の収集と文献調査を進めるとともに、関係者に対するインタビュー調査を実施した。また、2018(平成30)年度に予定していたアンケート調査の一部を前倒しして実施した。なお、本年度は、マイノリティのなかでも障害者と女性に対象を絞って研究を行った。基礎的な資料の収集については、国内の学術研究機関に加え、最高裁判所や厚生労働省などの公的機関と連絡をとり、障害者の政治参加の実態や政策の動向についての文献やデータの所在を確かめた。また、データの一部については、すでに提供を受けた。さらに、学術研究機関の有識者、政府関係者、メディア、民間企業等から当該テーマに関する情報を多角的に入手し、吟味することで、状況の理解、精査に注力した。インタビュー調査については、2017(平成29)年7月~8月、2018(平成30)年1月の2回にわけ、障害がある議員、障害者団体の関係者、その支援者(弁護士など)に対して実施した。障害者の政治参加の実態、歴史的経緯などについて、立体的に情報を得ることができた。また、研究実施計画では2018(平成30)年度に予定していた「障害がある有権者に対する調査」および「障害がある議員に対するアンケート調査」を本年度に前倒しして実施した。「障害がある有権者に対する調査」は、株式会社ゼネラルパートナーズ・障がい者総合研究所との共同調査である。2018(平成30)年度は統一地方選挙の準備の年にあたるため、議員やその支援者の協力が得られにくくなると考えられるための措置である。
著者
市川 定夫
出版者
埼玉大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1993

本研究では、平成5〜7年度にわたり、ムラサキツユクサの雄蕊毛を用いて、(1)アルキル化剤の変異原性とX線との相乗効果、(2)除草剤として使われているマレイン酸ヒドラジドの変異原性とX線との相互作用、(3)大気汚染物質の変異原性、(4)自然突然変異頻度の変動などを調査するとともに、(5)新しい実験材料システムの開発についての研究も行ってきた。(1)に関する研究では、エチルメタンスルホン酸(EMS)、メチルメタンスルホン酸(MMS)、硫酸ジメチル(DMS)、N-エチル-N-ニトロソ尿素(ENU)、N-メチル-N-ニトロソ尿素(MNU)について調査し、それぞれの変異原性を確かめるとともに、EMS、MMS、DMSとMNUがX線と明らかな相乗効果を示すことを確かめた。(2)については、プロミュータジェンであるマレイン酸ヒドラジド(MH)がムラサキツユクサの細胞内で活性化されて変異原となること、MHがX線と相乗的にも相殺的にも働くこと、MHの活性化にはペルオキシダーゼが関与しており、X線がこの活性化を抑制すると相殺効果が、抑制しなければ相乗効果が現れることを明らかにした。(3)の研究では、ガス曝露装置を用いて、窒素酸化物を窒素中で処理したり、空気/窒素混合気体中で処理したりしたが、安定した結果は得られなかった。オゾン処理については、オゾン発生装置を完成し、現在実験中である。(4)については、安定株でも、温度条件によって自然突然変異頻度がある程度変動することを確かめた。また、(5)についても、培養液循環環境制御栽培装置で栽培したBNL4430株の根付き植物を実験材料とするのが最も有効であることを確かめた。
著者
岡田 智 小林 玄 辻 義人 鳥居 深雪 飯利 知恵子 田邊 李江
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では,日本版WISC-Ⅳの解釈システムの構築のために,発達障害の子どもにWISC-Ⅳを実施し,検査中の行動観察,日常生活における生態学的情報についても収集した。統計解析と事例研究を用いて分析した結果,ASD及びADHD特性をWISC-Ⅳ測定値で判断することには限界があり,ワーキングメモリー指標がADHDの不注意を反映しにくいことなど解釈上での留意点が明らかになった。また,解釈の際には,WISC-Ⅳの測定値だけでなく,CHCモデルによる分析,また,ASD特性やADHD特性を踏まえた生態学的観点,検査中の行動や課題解決などの質的情報も含めた総合的解釈が重要であることが示唆された。
著者
豊見山 和行
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

「尚家文書」を中心に、近世琉球の国家と社会に関する研究を行った。国家の側面に関しては対清朝関係(冊封関係)に関わる僉議を用いて、琉球の政治構造を検討した。社会の側面については、士族・百姓身分が区分される歴史的経緯などを分析した。
著者
高瀬 克範
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

放射性炭素年代測定により,オホーツク海北岸ではトカレフ文化の土器が後3~9世紀,古コリャーク文化の土器が9~13世紀に位置づけられる。カムチャツカ半島西海岸では8世紀に土器が出現しはじめ,少なくとも13世紀まで製作が継続する。東海岸では11~13世紀に縄の圧痕をもつ土器が出現し,13~17世紀前半には貝殻文や刺突文をもつ土器が使用される。千島アイヌの成立とも関係の深いカムチャツカ南部の内耳土器は,15世紀後半~17世紀前半の古い段階と,17世紀後半~19世紀の新しい段階に大きく区分することができる。
著者
下田 好行 小松 幸廣 岩田 修一 四方 義啓 吉田 俊久 榊原 保志 岩田 修一 四方 義啓 榊原 保志 山崎 良雄 長谷川 榮 吉田 武男 黒澤 浩 永房 典之 赤池 幹 青木 照明 岸 正博 中村 幸一 岡島 伸行 熊木 徹
出版者
国立教育政策研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

知識基盤社会を生きるために知識情報を熟考・評価し、表現・コミュニケーションしていく「キー・コンピテンシー」を育成する学習指導法の枠組みを開発した。また、この枠組みにそって授業実践を小学校と中学校で行った。その結果、この学習指導法の枠組みの有効性を確認することができた。
著者
長田 謙一 楠見 清 山口 祥平 後小路 雅弘 加藤 薫 三宅 晶子 吉見 俊哉 小林 真理 山本 和弘 鴻野 わか菜 木田 拓也 神野 真吾 藤川 哲 赤塚 若樹 久木元 拓
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

従来プロパガンダと芸術は、全体主義下のキッチュ対自律的芸術としてのモダニズムの対比図式のもとに考えられがちであった。しかし本研究は、両者の関係について以下の様な新たな認識を多面的に開いた:プロパガンダは、「ホワイト・プロパガンダ」をも視野に入れるならば、冷戦期以降の文化システムの中に東西問わず深く位置付いていき、芸術そのもののありようをも変容させる一要因となるに至った;より具体的に言えば、一方における世界各地の大型国際美術展に示されるグローバルなアートワールドと他方におけるクリエイティブ産業としてのコンテンツ産業振興に見られるように、現代社会の中で芸術/アートはプロパガンダ的要因と分かち難い形で展開している;それに対する対抗性格をも帯びた対抗プロパガンダ、アートプロジェクト、参加型アートなどをも含め、芸術・アートは、プロパガンダとの関係において深部からする変容を遂げつつあるのである。
著者
中西 重忠 森吉 弘毅 横井 峰人 笹井 芳樹 CARON Marc CARON Marc G 影山 龍一郎 別所 康全
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

グルタミン酸受容体は神経の興奮を伝達する受容体として働き、記憶・学習という高次脳機能や神経細胞死を制御する中枢神経系の重要な受容体である。本研究は、Nash博士の参加(平成7年5月から1年間滞在)も含め、相手側MarcCaron博士との共同研究のもとに、グルタミン酸受容体の細胞内情報伝達系と調節機構を明らかにすることを目的としたものである。具体的には、1.受容体の燐酸化による調節機構、2.受容体の活性化による細胞内情報伝達系の制御機構、3.細胞内情報伝達系の調節による脳神経機能のメカニズムを明らかにすることであり、得られた結果をまとめると以下の通りである。1.メタボトロピック型受容体の中で、mGluR1とmGluR5は共にIP_3細胞内情報伝達系に共役し、細胞内Ca^<2+>を増加させる。mGluR1とmGluR5を発現させた細胞を比較することにより、mGluR5はmGluR1と異なりCa^<2+>の増加がoscillatoryな反応を示すこと、又この反応はプロテインキナーゼCによるmGluR5の特異的なスレオニンの燐酸化によって引き起こされることを明らかにした。さらにastrocyteの培養系を用い、mGluR5は神経細胞においてもoscillatoryなCa^<2+>応答を示すことを明らかにした。以上の結果は、Ca^<2+>のoscillatoryな反応をもたらす標的蛋白を初めて同定し、そのメカニズムを明らかにしたものである。2.yeast two hybrid systemを用い、AMPA型グルタミン酸受容体の中でCa^<2+>の透過に重要な役割を果たすGluR2サブユニットと神経伝達物質の分泌を調整するNSF蛋白が結合することを明らかにした。さらにNSFはAMPA型グルタミン酸受容体のチャンネル活性を抑制することを示し、伝達物質放出の新しい調節メカニズムを明らかにした。
著者
高橋 淳 中辻 憲夫 笹井 芳樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

我々は、ES細胞由来神経系細胞移植によるパーキンソン病治療法の開発を目指して研究を進めているが、臨床応用を目指すにはヒトと同じ霊長類を用いた実験が必要不可欠である。そこで、カニクイザルES細胞から誘導したドーパミン産生神経をカニクイザルパーキンソン病モデル脳に移植し、行動解析を行った。カニクイザルES細胞をPA6という間質細胞の上で約2週間培養すると、ほとんどの細胞が神経幹細胞様になる。この細胞をsphere法で培養しFGF2とFGF20を加えると、全体の約半数がニューロン、その4分の1がドパミン神経に分化するようになる。MPTPの静脈内投与でカニクイザルパーキンソン病モデルを作成し、その線状体にES細胞由来ドパミン産生神経(前駆細胞)を移植すると移植群においては徐々に神経脱落症状の改善がみられるようになり、移植後10週目に有意な改善が認められた。その後、F-dopaの取り込みをPETにて評価した。コントロール群においてはF-dopaの取り込みが低下しているのに対し、移植群においては有意な上昇がみられ、移植細胞がドーパミン神経として機能していることが確認された。PET後に脳切片の染色を行った。移植に先立ち細胞をBrdUでラベルしたが、移植群の線条体においてBrdU陽性細胞の生着がみとめられた。さらにTH陽性細胞やDAT陽性細胞も確認された。これらの多くはBrdUと共陽性であり、移植されたES細胞由来のドーパミン神経であると考えられた。また、腫瘍形成は認められなかった。カニクイザルES細胞から分化した中脳ドーパミン産生神経の移植によってカニクイザルパーキンソン病モデルの行動が改善したことは、同じ霊長類であるヒトにもこの方法が適応できる可能性を示唆する。ただし、実際の臨床応用の前には1年以上の長期経過観察によって、その効果と安全性の検証が行われなければならない。と同時に、ヒトES細胞からの中脳ドーパミン産生神経誘導とその移植実験が必要である。
著者
高橋 淳 中辻 憲夫 笹井 芳樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

我々は、2005年5月から再生医科学研究所で樹立されたヒトES細胞(KhES-1,-2,-3)の解析を行っている。これらの細胞株からもドーパミン産生ニューロンが誘導され、培地中にドーパミンを放出しうることを確認した。パーキンソン病モデルカニクイザルの線条体に移植を行ったところ、3頭中1頭で腫瘍形成が認められた。このケースでは、PETスキャンにおいて腫瘍部位に限局して糖代謝の亢進が確認され、細胞分裂を示すfluorothimidineの取り込み上昇も認められた。組織診断では、未分化細胞の増殖が限局的にみられたが、奇形種を裏付ける骨・軟骨、皮膚、筋肉、消化管などの形成は認められなかった。fluorothimidine陽性部位に一致して、ES細胞のマーカーであるOct3/4陽性細胞の集積が認められた。移植細胞の解析を行ったところ、分化誘導期間の違いにより、腫瘍形成がみられたケースでは移植細胞の中にES細胞が混入していたのに対し、腫瘍形成がなかった2頭ではES細胞の混入はみられなかった。つまり、移植細胞へのES細胞混入が腫瘍形成の原因であると考えられた。また、MRIやPETは腫瘍形成を確認する上で有用な手段であることが確認された。これらの結果は現在投稿準備中である。移植細胞による腫瘍形成について、我々はマウスES細胞と正常マウスを用いて検討を加え、分化誘導後に神経系細胞のみを選別して移植することによって腫瘍形成が抑えられることを明らかにした(Fukudaら)。これらの研究によって、安全で効果的なES細胞移植を行うためには、神経幹細胞の純化が必要であることが明らかとなった。現在はヒトES細胞の選別方法開発に取り組んでいる。