著者
平井 松午 鳴海 邦匡 藤田 裕嗣 礒永 和貴 渡邊 秀一 田中 耕市 出田 和久 山村 亜希 小田 匡保 土平 博 天野 太郎 上杉 和央 南出 眞助 川口 洋 堀 健彦 小野寺 淳 塚本 章宏 渡辺 理絵 阿部 俊夫 角屋 由美子 永井 博 渡部 浩二 野積 正吉 額田 雅裕 宮崎 良美 来見田 博基 大矢 幸雄 根津 寿夫 平井 義人 岡村 一幸 富田 紘次 安里 進 崎原 恭子 長谷川 奨悟
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-10-21

本研究では、城下町絵図や居住者である侍・町人の歴史資料をもとに、近世城下町のGIS図を作成し、城下町の土地利用や居住者の変化を分析した。研究対象としたのは米沢、水戸、新発田、徳島、松江、佐賀など日本の約10ヵ所の城下町である。その結果、侍屋敷や町屋地区の居住者を個別に確定し地図化することで、居住者の異動や土地利用の変化を把握することが可能となった。その点で、GISを用いた本研究は城下町研究に新たな研究手法を提示することができた。
著者
服部 典之 玉井 アキラ
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

18世紀英国において大きな社会問題であった「孤児問題」を、ロンドンのFoundling Hospital(孤児養育院)の流れを汲み現在も重要な慈善活動を行うCoram Foundationを調査し、18世紀イギリス文化と孤児問題の繋がりを明らかにした。また同養育院が設立された1745年前後にはフィールディングの『トム・ジョーンズ』など数多くの孤児小説が出版され、これらの小説の孤児主人公の特徴と制度としての養育院を設立させるイギリス文化が密接な関係を持つことを実証した
著者
高橋 悟 佐藤 知久 牧口 千夏
出版者
京都市立芸術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究「感覚のアーキペラゴ:脱(健常)の芸術とその記録法」は、障害という言葉を割り当てられた創造行為について、健常者を中心に構築されてきた知覚・表現論理や個人・表現・受容者を前提とした従来の芸術論による評価とは異なる視点からのアプローチを目指したものである。方法としては、長年に渡り障害を有した人々の潜在的な可能性をアートを媒介にし、自由な手法で支援しつづけている一般財団法人たんぽぽの家(奈良)での実践的フィールドワークと創作過程の行為分析を中心に進めた。研究の方法としては、「関係的な領野の記述」と「創作としての新たな展示モデル」という2つのテーマを設定し、それらに対応するチーム編成により具体的な作業をすすめていった。具体的には、(1)集団の身体をテーマにしたワークショップから他を排除しない集団行為としてのアホーダンスの考案(2)集団コミュニケーションのワークショップから複数の身体、リズム、音によるラップの実験的な公演。(3)上記2つのワークショップの映像メディアによる実験的な記録である。これらは完成された作品(Art-Works)を現場の文脈と分断して記録・展示するという従来の手法ではなく、生の環境を多感覚的に捉える記録方法や関係的な領野の記述を含む(Art-Documentation)としての試行である。以上のように本年度は、作品という完結したモノの分析からではなく、モノ、集団、環境など活動の現場での相互行為や創作のプロセスに着目した分析を中心に研究を進めた。
著者
黒田 晴之
出版者
松山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

昨年度の「今後の研究の推進方策」でも示したように、The Klezmaticsの創設メンバーFrank London氏を5月に招聘し、東京藝術大学・立教大学・広島市立大学・大阪大学・京都大学とのコンソーシアム形式で、「東欧ユダヤ人の音楽「クレズマー」をめぐる対話」と題して、国内の研究者・関係者も加わり、かつ一般市民・学生にも開かれた、研究成果報告会・講演・ワークショップ・実演の場をもった。この機会にLondon氏が書かれた文章や、ご本人から直接伺ったことを元に、クレズマー・リヴァイヴァルを集中的に調査した成果を、「クレズマー・リヴァイヴァル再考」と題して、京都人類学研究会のシンポジウム『共同体を記憶するーユダヤ/「ジプシー」の文化構築と記憶の媒体』(京都大学の岩谷彩子氏がコーディネイト)で口頭発表した。この内容をまとめて、同研究会のオンライン・ジャーナル「コンタクト・ゾーン」に、「クレズマー、あるいは音の記憶の分有 クレズマー・リヴァイヴァルまでの道のり」として投稿した(現在査読中)。「新移民」が録音した音楽は、"ethnic recordings"というカテゴリーに区分され、かれら以外のポピュラー音楽とは明確に区別された。これからの研究調査ではそうした新移民の音楽が、アメリカのフォーク音楽の規範に吸収されなかった事情を、Alan Lomaxらが対象にしたいわゆる「アメリカン・ルーツ」の音楽などと対照させながら、音楽をめぐる言説から裏付けていく作業を進める。これらの研究と平行してギリシアの音楽「レベティコ」についても、従来の研究を歴史学の立場から総括した単著の翻訳を開始し、ミュンヘン大学教授の著者Ioannis Zelepos氏に現地でヒアリングを行なうとともに、頻繁に意見・情報を交換していることを付言しておく。
著者
田中 謙
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、解釈論及び立法論に資するような1環境法学の体系、2解釈論、3立法論の3つを総合した「環境法総論」を構築することを目的とする。当該目的を達成するために、本研究は、(1) 既存の法システムの趣旨や意味を探求する「解釈法学研究」、(2) 新しい法システムを設計する「政策法学研究」のほかに、(3) 法制度の法過程や規制過程に関する体系的な実証研究をする「法社会学研究 」を実施することによって、わが国の立法論に資することを狙いとしている。これらの研究を実施するに際しては、(4) 米国法及びドイツ法も参考にしつつ、(5) 国内外で実態調査を実施する予定である。本研究は、1環境法学の体系、2解釈論、3立法論、の3つを総合した「環境法総論」を構築することを目的とするものであるが、 具体的には、1環境法学の体系(実体法システムの体系化)、2解釈論(合理的な解釈方法の確立)、3立法論(制度設計に役立つ立法政策論の確立)、という3つの視点から検討するとともに、これら3つを総合した「包括的な環境法総論」を構築することを模索するものである。さらに、環境法は、「持続可能な発展」と「環境公益の実現」を究極的な目標としているといえようが、これら2つの目的を実現するうえで要求される「環境法の基本的な考え方」について明らかにするとともに、これら基本的な考え方を「環境法総論」 のなかにどのように位置づけることができるのかという問題についても検討したいと考えている。以上のように、本研究は、最終的には、効果的な環境法総論について検討するものであるが、平成29年9月から米国カリフォルニア大学バークレー校「法と社会」研究センターに滞在しているということで、平成29年9月以降は、米国において、さまざまな文献を収集して論点を整理しているところである。
著者
丹沢 秀樹 佐藤 研一 熱田 藤雄 高原 正明
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

口腔悪性腫瘍は多段階的に発癌すると考えられているが、具体的モデルは提唱されていない。大腸癌では遺伝子的発癌モデルのもとにAPC遺伝子による集団検診も検討されている。口腔癌発生の具体的遺伝子モデルを求めることができれば遺伝子的スクリーニングも可能と考えられる。この場合に使用する遺伝子の候補として、発癌過程の早期に異常を起こすと言われているAPC遺伝子は非常に有望と思われる。我々は既に、口腔癌においてAPC遺伝子異常を高率に報告し、腺癌の癌抑制遺伝子と考えられていたAPC遺伝子が、実は、口腔扁平上皮癌においても重要な役割を果たしている可能性を世界で初めて報告した。本研究において、(1)口腔悪性腫瘍の組織分化度とAPC遺伝子異常の関係、(2)口腔内腫瘍発生部位別のAPC遺伝子異常率、(3)前癌病変におけるAPC遺伝子異常の検出率等を調べた。その結果、APC遺伝子は(1)分化度の高い腫瘍におけるほうが分化度の低い腫瘍におけるよりもその異常率が高く、(2)口腔内のどの部位においても悪性腫瘍発生に関与している可能性があり、(3)前癌病変の代表である白板症においては約8%の異常が検出され、この異常率は推定される白板症の癌化率とほぼ一致していた。今後の課題としては、APC遺伝子異常が癌化の結果なのか原因なのかを考察するために、(1)APC遺伝子周囲のマイクロサテライト領域を調べる、(2)さらに多くの前癌病変を調べる、(3)口腔癌に伴った前癌病変を調べる等が考えられる。また、臨床診断への応用も試みる段階になってきたと考えている。
著者
窪田 充見 磯村 保 中川 丈久 島村 健 島並 良 八田 卓也 青木 哲 池田 千鶴 嶋矢 貴之 興津 征雄 前田 健 田中 洋
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本科研では、社会においては、個人の利益に解消されないが、集団的な利益や集合的な利益があるのではないか、そして、そうした集団的利益・集合的利益を保護するためには、どのような法制度を設計することが考えられるのかといった問題に取り組み、消費者法、環境法、知的財産法などの分野における具体的な問題について成果を公表してきた。これらを踏まえると、私法と公法という枠組みを超えて、法の実現に関わる私人の役割を考える必要があることが明らかとなった。
著者
津川 秀夫
出版者
吉備国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、入眠時の呼吸パターンに着目し、睡眠改善に有効で安全な心理学的手法の開発を志向したものである。本研究により、(1)睡眠段階1と2において、呼気の時間が吸気よりも短くなること、(2)睡眠段階1と2の呼吸パターンに基づく呼吸調整によって、眠気が喚起され入眠潜時が短くなること、(3)精神疾患を有する者に対しても本法を安全に実施できること、が明らかになった。
著者
長岡 浩司 韓 太舜 藤原 彰夫
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、主として量子推定理論と量子相対エントロピーに注目し、統計学的・情報理論的視点を通して量子系の情報幾何学の深化を図るとともに、幾何学的視点を通して量子系の統計学的・情報理論的諸問題に新しい光を当てることをも目指して研究を行った。主要な研究成果は以下の通りである。1.忠実な量子状態(正則な密度行列)全体の成す多様体上に導入されるFisher計量と(α=±1)-接続の成す双対平坦構造の一連の量子力学的対応物をできる限り統一的な視点のもとに整理するとともに、量子情報幾何構造の一般理論といくつかの個別構造の特徴、物理的・情報理論的意義などについて考察を行った。2.無数に考えられる指数型分布族の量子対応物のうち、推定論的に重要な意義を持つSLD(対称対数微分)にもとづいた量子指数型分布族に注目し、特に純粋状態から成る量子指数型分布族上の双対平坦構造が、複素射影空間(=純粋状態空間)上のFubini-Study計量(=SLD計量)の成すケーラー構造と密接に関係することを示した。また、純粋状態空間上ではRLD (右対数微分)に基づいたリーマン計量(RLD計量)は発散してしまうが、複素化された余接空間上ではこの計量は有限にとどまり、かつ推定論的な意義も保たれることを示した。これらの結果は未だ部分的知見に留まっているが、情報幾何の量子化・複素化への一つの方向性を示したものと言える。3.ボルツマンマシンは確率的ニューラルネットワークの一種であり、その平衡分布の成す集合は指数型分布族を成すことが知られている。我々は量子相対エントロピーおよびBKM計量から導かれる量子情報幾何構造の観点からボルツマンマシンの量子対応物を考え、古典的な場合との類似と相違について明らかにした。4.量子通信路の推定問題についてさまざまな研究を行い、情報幾何構造との関連を明らかにした。5.その他、関連研究として情報理論、量子情報理論、確率過程の情報幾何などに関する研究を行った。
著者
今井 亜湖
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

(1)実践事例における教育的効果の分析超鏡システムは遠隔地にある相手像に自己像を重畳表示し、遠隔地で交流する者同士は同一画像を見ながら対話を行うため、身振り、手振りなどの非言語情報や視覚位置情報を伝達しやすいという特徴に焦点を当てた教育的効果の分析を進めた。これまでに実施した超鏡システムを用いた教育実践のビデオ記録より、時間を入れたプロトコルデータを抽出し、通信回線を使用する場合に必ず生じる映像・音声遅延と超鏡システムを介した情報伝達との関係を分析することにより、超鏡システムの教育活動への利用方法とその教育的効果が明らかになってきた。本年度の見学校の実践においても同様の結果が示唆されている。(2)超鏡システムの利用に適した教育の文脈についての検証研究代表者は初等中等教育における超鏡システムの利用を中心に研究を進めてきたが、これらの実践を行う前に超鏡システムを用いて実施していた教員研修が超鏡システムの利用に適した教育の文脈ではないかとの指摘が研究発表の場でなされ、それを受けて多種の実践データの分析結果より、国際間遠隔授業を実施する際に、両校の教員による指導内容の確認や教材の交流といった教師教育につながる場面において超鏡システムの利用が適しているのではないかと示唆された。以上の研究成果は、論文としてまとめる予定である。
著者
鈴木 岳之 郭 伸 佐藤 薫
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

神経炎症を惹起する細胞として、ミクログリアに焦点を当てた。In vitro条件下でミクログリアを活性化処理し、そこから放出される内因性因子を解析した。その結果、活性化ミクログリアよりグルタミン酸が放出され、神経毒性を示すことを明らかにし、この過程にATPが関与することも示した。このグルタミン酸の放出作用はグルタミン酸トランスポーター機能変動を介する作用であることを明らかにした。また、疾病治療にリンクする知見として、抗うつ薬であるパロキセチンがミクログリアの活性化を抑制する知見を得た。これは、神経疾患に対する新たな治療アプローチを示すもので、今後の薬物治療戦略の確立に貢献できる研究成果である。
著者
大田 陸夫 福永 二郎
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

溶融法によるガラスの作製においては高融点系では溶融温度に実験上の制限がある一方,結晶化しやすい系や組成ではガラスを得ることが出来ない,ゾルゲル法においてはゾル溶液からゲルを経て,ガラスを作製するので溶融法における高融点のため実験不能という事態は避けられる。しかしながらゲルの生成能はガラスの生成能と深く関連しており,ゲルからガラスを作製する上でもゲルの熱的安定性が問題になる,本研究では基本的な系として,B_2O_3ーNa_2O,B_2O_3ーNa_2OーAl_2O_3およびSiO_2ーNa_2O系をモデルとしてとり上げ,ゾルゲル法によるゲルの熱的安定性を調べ,ガラス化領域とゾルゲル法によってどの程度広げられるかという問題に答えるための研究を行った。まず上記の系のゲル化領域とゲルの熱的安定性を調べた。ゲル化領域に対する水分,塩酸,アンモニアの添加の影響と検討した。ゲル化領域はB_2O_3ーNa_2O系ではB_2O_3=100および<60モル%以外の組成域であった。B_2O_3ーNa_2OーAl_2O_3系ではB_2O_3ーNa_2O系で結晶化した領域がゲル化するところも現れた。SiO_2ーNa_2O系ではゲル化領域はSiO_2=60ー100モル%組域であった。ゲル化領域は水の添加によって殆ど変化せず,塩酸の添加によってはゲル化領域はSiO_2=100%組成似外は存在しなかった。ゲル化特間は水分またはアンモニアの添加とともに短縮した,ゲルを昇温速度5℃/分でDTA測定を行い,発熱ピ-クから結晶開始温度Tcを決定した。T_LはDTAおよび加熱マテ-ジ付き顕微鏡によって直接観察して求めた。溶融法によっても同上の系のガラス化領を求め,DTA測定を行った。B_2O_3ーNa_2O系のTc/T_L比はB_2O_3=70モル%および80モル%にそれぞれ極大値および極小値が現れた。ガラスについても同様な組成依存性が現れることを確認した,Tc/T_L比はゲルやガラスの熱的安定性を示とと同時にその生成能を示す示標であることが確かめられた。Tc/T_Lー臨界冷却速度Qとの対応関係を実験値から検討した。更に理論的考察を加えた。
著者
嶌田 智
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

緑藻アオサ・アオノリ類は世界中の沿岸域で最も目立つ海藻類で、世界で約200種、日本で17種が報告されている。この仲間は体制が単純で分類形質が少なく、しかもその形質状態が生育環境で大きく変化してしまうため、現在でも分類学的な混乱が生じている。本研究では前年度に引き続き、日本各地での採集、系統分類学的な研究をすることで本類の種多様性を明らかにしようと試みた。その結果、博多湾や高知県の浦ノ内湾でグリーンタイドを引き起こしているアオサが新種であると判明し、新種記載した。また、蓄積されたDNA配列データを元に輸入アオノリや日本各地のグリーンタイド原因種の種鑑定を行った。DNA鑑定については、横浜税関での輸入アオノリ、千葉県三番瀬や愛知県三河湾のグリーンタイドを引き起こしている原因種のDNA鑑定などの依頼を受けた。またスジアオノリは四国・四万十川の高級アオノリとして知られるように低塩分環境の河川においても生育している。このような河川アオノリはこれまで四国でのみ報告されていたが、本研究で北海道、島根(中海)、種子島、沖縄本島、石垣島の河川でも発見でき、河川アオノリは広範囲に分布すると考えられた。これら河川アオノリの種多様性解析を行ったところ、少なくとも4種の存在が確認できた。そのうちの1種、海産ウスバアオノリと同種と考えられた河川アオノリに注目し、さらにその分布域拡大の方向性、環境適応の回数・起源の解明のため分子生物地理学的解析を行った。その結果、河川アオノリと海産ウスバアオノリには遺伝的に大きなギャップが生じており、河川に適応できたのは進化の歴史上たった1回であることが示唆された。
著者
井上 史子
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

今年度は、フィンランド、オランダ、シンガポール、日本の各高等教育機関を訪問し、職業教育やアントレプレナーシップ教育の状況について聞き取り調査を行った。おもな訪問大学は、フィンランドはJAMK University of Applied Sciences、Metropolia University of Applied Science、オランダはAmsterdam University of Applied Sciences、シンガポールはSingapore University of Technology and Design、National University of Singapore、Nanyang Technological University、日本は九州大学QRECの各高等教育機関である。JAMK University of Applied Scienceでは大学における研究開発活動や教育プログラムの外部への提供等について教育開発担当者や質保証担当者にヒアリングを行った。また、当該大学で学ぶ留学生にも学修成果についてのヒアリングを行った。Singapore University of Technology and Design(SUTD)では、教学担当の副学長よりシンガポールにおける専門職養成の現状について話を聞くとともに、カリキュラム担当者より当大学におけるカリキュラム内容についてヒアリングを行った。SUTDでは工学の専門教育に加え、デザイン思考の授業やHASSと呼ばれる教養科目も組み込んだカリキュラムを設計しているとのことであった。教員のFDについては、授業はティーム・ティーチングで行うためそれが相互研修となり、教育力向上に役立っているとのことであった。なお、シンガポールではすべての大学にアントレプレナーシップセンターが置かれている。
著者
早田 幸政 林 透 堀井 祐介 前田 早苗 望月 太郎 島本 英樹 工藤 潤
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本調査研究は、ASEANの急速な経済発展を背景に、活発化している国境を越えた大学間の教育交流や学生・職業人等による人的移動におけるASEAN地域を包括した高等教育質保証の役割を解明することにあった。今回の調査では、国設の大学評価機関である「マレーシア質保証機構(MQA)」の高等教育質保証システムの概要や特質を把握することができた。MQAの中心的役割は、高等教育質保証の基盤であり国の質保証基準に対して基本的視点を提示する「マレーシア資格枠組(MQF)」を運用することにあった。こうした国レベルの高等教育質保証の仕組みを訪問調査、書面調査の双方の手法を用いて把握しその意義の分析に取り組んだ。また、マレーシアにおいて教育研究面で高い評価を得ている「マレーシア国民大学」、「テイラーズ大学」への訪問調査も実施した。これらの調査を通じて、上記MQAによる外部評価に合格するために各大学がどのような対応をしているか、について十分な知見を得ることができた。具体的には、これら大学は、自身の大学の質保証を行うために、独自の「内部質保証」システムを構築し、「ラーニング・アウトカム」の測定・評価を軸に同システムを効果的に運用していることが明らかとなった。このことは、次年度以降のASEAN諸国の高等教育質保証の実態調査を行う際にも大きく役立つ成果であった。
著者
熊崎 博一
出版者
金沢大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2017-04-01

社交不安障害(以下SADと略す)患者の数は人口の約10%という高い有病率であり、大きな社会的問題となっている。SAD患者はヒトから見られているという意識が強く、人前での会話といった社会的場面において強い不安を呈し、職業面・社会生活面で大きな障害をきたす。SADはもっとも生活の質(QOL)を下げる精神疾患の一つとの報告もある。現在まで薬物療法や認知行動療法など効果的な治療もあったが、一方で難治なケースも数多く存在した。人の外観に酷似したヒト型ロボットであるActroid-Fは声の抑揚を調整することで感情的要素を軽減でき、状況・場面・体調・感情によって対応がぶれることもなく、不安が強く変化に敏感なSAD患者にとっても安心して関わることができ、向社会的態度を誘発することが期待できる。“暴露療法”は不安に慣れるための練習法で、敢えて自分が苦手とする状況をクリアしていく事によって少しずつ恐怖を取り除き、病気を克服していくという治療法である。多くのSAD患者にとって心地よく自然にかつ相互にインタラクションするように視線呈示やジェスチャといったActroid-Fの動きを改良し、ノンバーバルな表出を調整する。動きを改良し、Actroid-Fを用いた暴露療法を確立することが目的となった。平成29年度は精神科医の応募者が実験中の経時的変化を詳細に検討し、Actroid-Fに対するSAD患者の反応の分析に取り組んだ。SAD患者の長期的にインタラクションするうえで、Actroid-Fから受ける人間らしさの印象、心理的安心感を指標とした、SAD患者のインタラクションの質を上げる要因を評価し、Actroid-F の動きを改良することでSAD患者と自然にかつ相互にインタラクションするActroid-Fの実現を目指した。多くのSAD患者が適合するActroid-Fが設定することに成功した。
著者
中村 哲 須藤 克仁 松本 裕治 田中 宏季 サクリアニ サクティ 吉野 幸一郎 高道 慎之介
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

①-A)常時音声認識:音声、非音声音響モデルに基づく常時音声認識の検討を始めた。B)自動音声同時通訳:シフトリデュースパーザを音声認識に組み込み、逐次的に音声認識デコーダで構文解析しながら次の文構成要素を予測し、訳出、待機を行う方法の高度化について文献調査を行った。C)機械翻訳の高度化:再帰的ニューラルネットワークの一種であるLSTMによる注意形ニューラル機械翻訳(NMT)の高度化に向けて研究を進めた。D)対話制御:LSTMを用いた対話状態推定法の利用、POMDPを利用した音声翻訳の高度化に向けて検討を始めた。②パラ言語:元言語の発話から強調抽出し、アライメントを求めた後、CRFおよびLSTMニューラルネットで対象言語に強調を付与する技術の改良を進めた。③リアルタイムコミュニケーション:視線検出装置Tobi、モバイル心拍計などを用いてプロの同時通訳者の作業時、および同時通訳ユーザの聴取時の聴取負荷の観察を行うため、実験計画の検討を行った。④コーパス構築:2012年から介した基盤研究Aで収集したコーパスの整理を行い、H29年度に実施すべきコーパス収集の計画を検討した。
著者
小須田 雅
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度は,q=1の場合のParty代数の既約表現の行列表示に関する論文をまとめて外国雑誌に投稿した。昨年以来試みてきたq変型については,共役関係,すなわち「対称群の生成元に対応する生成元で挟んだ場合に,『共役』な関係式が得られる」という性質を満たすものを構成することは出来なかったので,制限付きのParty代数(これらは複素鏡映群のテンソル積表現の中心可環に対応する)の既約表現の構成について考えた。こちらについては,スウェーデンで行われた「形式的巾級数と代数的組み合わせ論の研究集会(FPSAC03)」で,A.Ram氏と討論する予定であったが,Ram氏が欠席したため,思うような成果は得られなかった。Ram氏は複素鏡映群のテンソル積表現の中心可環の特別なタイプである,Partition代数と呼ばれる代数の既約表現の構成について講演する予定であったため,今後の研究についての重要な指針が得られる筈であった。しかしながら,同研究集会に出席していたP.Terwilliger氏との討論を通じて, Party代数の指標表の作成に関する研究について,いくつかのアイデアを得ることが出来た。また,Terwilliger氏はRam氏と同じ大学に所属しており,分野も近いことから,氏の研究についての情報も得ることが出来た。その後,制限付きのParty代数の既約表現の構成について自分なりに良いアイデアが得られたが,論文としてまとめるにはもう少しの進展が必要である。予定していたRam氏との討論が実現しなかったため,期間内に当初の研究計画すべてが実現できたわけではないが,予想された範囲内の進ちょくと言える。今後は「制限付きのParty代数の既約表現の構成」についての論文を仕上げ,Terwslliger, Ramの両氏と討論することで,新しい研究の方向を見極めたい。
著者
金丸 敏幸
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は,英語スピーキングの自動評価を行うための評価指標の作成,および評価目的に応じた適切な評価指標の重みづけを目的とし,英語スピーキングにおける評価指標の整理,評価目的に応じた自動評価用の評価指標の設定,英語スピーキング試験のスコア別サンプルと自動評価用指標でのスコアづけ,評価目的に応じたスコア付けを出力するための各指標の重みづけの調整,を行う.計画初年度は,英語スピーキングの自動評価に向けた評価付きデータの作成に向けて,関連研究の収集およびデータ抽出を行い,外国語学習に関する評価と指標についての整理を行った.また,整理した結果に基づいた研究発表とシンポジウムでのパネリストとしての発表を行った.具体的には,これまで行われてきたスピーキング指導と評価に関する論文を収集し,それらの研究で使用されている評価の記述を抜き出し,項目,観点,レベル,評価の粒度といった分類軸ごとに整理を行った.これにより,現状のスピーキングにおける評価の特徴が明らかとなり,今後の発話データへの評価を行う下地を整えることができた.本年度の研究により,現在,大きな注目を集めている人工知能や機械学習によるスピーキング指導やスピーキングの自動評価についての動向を整理し,今後の展望を中心とした研究発表を行った.外国語教育メディア学会などでのシンポジウムや研究発表を通じて,自動評価や言語処理に関する意見交換や情報収集を積極的に行い,今後の研究活動の発展に向けた取り組みを進めることができた.さらに次年度の研究に必要となるデータ収集の計画を立案し,資料や環境の整備を行った.これにより,今後の研究をより円滑に実施できるものと見込んでいる.
著者
堤 良一 岡崎 友子 藤本 真理子 長谷川 哲子 松丸 真大
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、現代日本語の指示詞の現場指示の方言差を明らかにするとともに、各方言が採用する空間認知の分割方法と、それと連関するような文法現象を見極めることで、日本語の指示詞の現場指示の使用のされ方と、その他の言語現象との関わりを探ろうとするものである。今年度は、次年度以降に実施予定である本格的な実験に向けて、実験のデザインを行った。そして、そのデザインの妥当性を検討するために徳山大学(山口)、尾道市立大学(広島)、愛媛大学(愛媛)の3大学で実験を行った。収集したデータは方言帯ごとにグルーピングし、それぞれの差を見ることとなる。具体的な傾向としては、研究代表者と研究分担者(岡﨑友子氏)が、岡山方言について言及したことがあるように、話し手と聞き手との間程度の距離の対象についてアノで指示する話者が一定数存在し、それは瀬戸内海沿岸の地域の出身者に多いような傾向が見て取れる。しかしこれは今後継続的な実験を続け、データの数をある程度取らなければ断定的なことは言えないというような状況である。実際に実験を行いながら、実験の妥当性、公平性他、様々な点で問題点が見つかったが、その都度微調整を行いながらデータ収集を行った。現段階では、次年度に向けて均等な環境での実験が遂行できる準備が整いつつあると考えている。収集したデータについて、統計的な処理を施すことができるかどうかについて、平成30年3月24日(土)、東洋大学岡﨑友子(共同研究者)研究室にて、検討会を行った。統計学の専門家である小林雄一郎氏から有益なコメントをもらい、データベースの作り方等を今後さらにつめていく必要があることを確認した。