著者
都筑 俊介 三木 淳 森武 潤 木村 章嗣 下村 達也 木村 高弘 岸本 幸一 頴川 晋
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.106, no.2, pp.71-78, 2015-04-20 (Released:2016-04-23)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

(目的) 東京慈恵会医科大学附属病院および柏病院におけるT1 high grade膀胱癌の臨床的特徴を検討した. (対象と方法) 2006年1月から2012年12月までにT1 high grade膀胱癌と診断された134例を対象とした.治療経過,再発・進展,再発・進展予測因子,生存率について解析を行った. (結果) 観察期間中央値は31.5カ月.2nd TURは,57例に施行し,2nd TURでの残存は33例,upstagingは4例に認められた.再発率は41.5%,再発に寄与する因子は,初回TURで筋層を含まない,非2nd TURおよび非BCG注入療法の3因子であった.進展率は10.5%,進展に関しては,有意な因子を認めなかった.経過中に膀胱全摘を施行した症例は31例(21.8%)であり,全摘病理T stage別の癌特異生存曲線で非upstaging群(pT2未満)とupstaging群(pT2以上)を比較すると,非upstaging群で有意に生存率が高かった(p=0.0027). (結論) T1 high grade膀胱癌の再発に関して,初回TURで筋層なし,非2nd TUR,非BCG注入療法が重要な予後因子であった.多岐にわたる臨床経過を示すT1 high grade膀胱癌の治療成績向上のためには,再発,進展の予防,適切な膀胱全摘の選択など,今後さらなる検討が必要である.
著者
森尾 佳代子 津金 麻実子 岡本 禎晃 糀 桂子 田墨 惠子 上島 悦子
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.381-387, 2013-06-10 (Released:2014-06-10)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

Dacarbazine (DTIC) produces adverse reactions including local venous pain during the intravenous injection. DTIC is reported to be photolyzed to produce certain kinds of pain producing substances. 5-diazoimidazole-4-carboxamide (Diazo-IC) is considered to be a causative photolyte of venous pain. A newly designed cover shield has been used at Osaka University Hospital when DTIC is administered for the last 4 years. This shield comprises black cotton and covers both the infusion bag and route of infusion. We evaluated the effectiveness of this new shield against photodegradation of DTIC by determining the concentration of Diazo-IC. DTIC was dissolved with an injection solvent and mixed with 5% dextrose in water. Prepared samples were divided into 3 groups (without shield, infusion bag covered with shield, and infusion bag and infusion route covered with shield) and exposed under natural light conditions indoors. Prepared solutions ran down through the route and those samples were taken before and after passing the route pipe. Diazo-IC in the samples was measured by HPLC. Production of Diazo-IC in the non-covered bag was significantly increased in comparison with that in covered infusion bags. Diazo-IC production in samples after passing through the route was significantly increased compared with that in samples taken before passing through the route of the non-covered shield and covered infusion bag only. For the covered infusion bag and infusion route, the samples taken before and after passing through the route did not show significant differences. These data suggest that the new shield, which almost perfectly covers both the infusion bag and route of infusion, is effective in preventing DTIC photodegradation.
著者
森 和美 西村 八千代 津崎 美枝子 守本 いづみ
出版者
環境技術学会
雑誌
環境技術 (ISSN:03889459)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.492-497, 1986-06-30 (Released:2010-03-18)
参考文献数
5
著者
大曽根 眞也 森口 直彦 今井 剛 篠田 邦大 伊藤 剛 岡田 恵子 三木 瑞香 田内 久道 佐藤 篤 堀 浩樹 小田 慈
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.127-132, 2015 (Released:2015-08-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1

L-アスパラギナーゼ(ASP)による血栓症は重大な治療関連合併症だが,本邦における発症実態は不明であり有効な発症予防法は未確立である.そこでASP血栓症の発症頻度と発症例の詳細,ASPを投与中に行われる凝固検査や血栓予防法の現状を知るために,JACLSに加盟している96施設を対象にアンケート調査で後方視的に検討した.47施設(49%)から回答を得た.2002年~2011年の10年間にASPを使用した1,586例中,8例(0.50%)で血栓症を認め,うち7例は寛解導入療法中に生じ,このうち6例では中枢神経系に生じていた.血栓症を発症した時,全例でステロイドを併用しており4例は発熱していた.血栓症発症時のアンチトロンビン(AT)活性は中央値71%,フィブリノゲン同93 mg/dL,D-ダイマー同2.2 μg/mLであった.血栓症を発症する前に4例でAT製剤を,1例で新鮮凍結血漿(FFP)を使用していた.血栓症で1例が死亡し1例で後遺症が残った.有効回答のあった45施設中,寛解導入療法でASPを投与する時に40施設がAT活性を週2~3回測定し,43施設がATを補充し,21施設がFFPを補充すると回答した.本邦でのASP血栓症の発症頻度は国外より低かったが,現在の凝固検査でASP血栓症の発症を正確に予測することは難しい.ASP血栓症を予測する新たな指標や適切な血栓予防法の確立が望まれる.
著者
難波 博孝 森 美智代 豊福 晋平 幸坂 健太郎 本渡 葵 菅谷 克行 黒川 麻実 篠崎 祐介 細 恵子 氏間 和仁 高橋 茉由
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2021-04-01

本研究は、小学生児童が、デジタルデバイス(パソコンやタブレット端末)のディスプレイ画面(以下デジタル端末)と紙(本)とで「深く読む」ことにどのような違いがあるのかを明らかにし、デジタル端末で「読むこと」の特徴(強みと弱み)を踏まえ、デジタル端末に習熟しながら「深く読む」ための指導方法の要諦を明らかにするものである。対象は小学校児童とし、読む文章は、説明的文章と文学的文章の両方を対象とする。
著者
山室 匡史 宮本 重彦 立入 直紀 石井 歩 松田 駿太朗 岩田 祐子 瀬川 尋貴 桑山 健次 辻川 健治 金森 達之 井上 博之
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.29-48, 2021 (Released:2021-01-31)
参考文献数
31
被引用文献数
3 1

The forensic identification of cannabis is performed by a combination of chemical analysis and morphological examination. Recently, molecular biological analysis using cannabis DNA information has been noticed as a new approach. In this study, the cannabis DNA detection kit using a DNA chromatography chip was developed, and the demonstration evaluation in the forensic chemical laboratory was carried out. The DNA detection kit of a “four-line version” which had the function to distinguish fiber-type from drug-type cannabis showed as high accuracy (98.3%) as the current identification method on cannabis identification. However, there was a tendency to mistake a part of the drug-type samples as “fiber-type cannabis”. In the kit of a “three-line version” which was specialized for the cannabis DNA detection, the accuracy of 99.0% was confirmed on the cannabis identification. There were no false positives throughout all evaluations. In addition, some of the combustion residues that could not be identified as cannabis by the current identification method were classified to be “cannabis positive” by the DNA detection kit, indicating the effectiveness of a new approach. As a result of this study, it was shown that the quick and accurate cannabis DNA analysis could be carried out by the DNA detection kit even by analytical chemists who didn't have expertise in molecular biology.

1 0 0 0 次元論

著者
森田紀一 著
出版者
岩波書店
巻号頁・発行日
1950
著者
難波 美和子 森本 素世子 小松 久恵
出版者
熊本県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

2018年度の実績を踏まえ、引き続き、インドの英語文学の状況の調査を行った。加えて、2019年度にはインドの英語教育の実情の把握と研究交流を行った。研究交流として、本年度はデリー大学よりMunish Tamang教授を招聘した。Tamang教授をメイン・スピーカーとして2019年10月に熊本県立大学で開催された日本英文学会九州支部大会において、シンポジウム“English Literature Education in India, Past and Present, With Reference to the Japanese Experience”を開催した。シンポジウムでは斎藤一氏(筑波大学准教授)から日本の英文学教育における政治性、青木敬子氏(明治大学講師)からイギリスにおける英文学教育の生成について紹介があり、英文学教育の多層性が明示された。その後、Tamang教授と熊本県立大学、京都府立大学、淑徳大学の各機関で研究交流を行った。そのほか、横浜市大倉記念館で公開講演会を行い、市民向けにインドの英語文学と教育への理解を図った。今後はTamang教授とともにインドと日本の英語文学教育について研究交流を継続する予定である。2月と3月には研究協力者がインドに渡航し、情報収集と研究交流を行ったが、3月に予定していた本年度の研究を総括する研究会は、COVID-19感染防止のため、中止となり中断している。
著者
仁木 一順 澤田 珠稀 多田 耕三 西田 明代 土肥 甲二 光在 隆 奥田 八重子 森川 幸次 前 武彦 黒木 光代 高岡 由美 松岡 太郎 芦田 康宏 上田 幹子
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

【背景・目的】超高齢化が進む現在、個々が主体的に健康の維持増進に取り組むことができる仕組みが求められる一方で、自らの健康について気軽に相談できる場の不足や、SNSなどの普及に伴う信憑性に欠ける健康情報の氾濫などの課題がある。そこで我々は、豊中市、豊中市薬剤師会と連携し、健康サポート拠点として薬局が発信する情報が地域の健康維持・増進に貢献できるのかを明らかにすることを目的とした産官学共同研究を2019年9月より実施している。今回は本研究を紹介するとともに、開始数か月間の経過を報告する。【方法】豊中市の7圏域それぞれ1件の薬局にデジタルサイネージ(DS)を設置し、市や薬剤師会からの健康情報を配信する環境を整備した。配信情報として、健診、予防接種など、薬局から関係機関へとつなぎ、疾病の重症化予防に貢献しうると考えられるものを中心に12カテゴリーを準備した。また、各薬局でタブレットを用い、配信した情報の有用性に関する5件法(そう思う~そう思わない)での14問のアンケートを実施するとともに、タッチ対応DSを使用することで薬局利用者が閲覧した情報履歴を収集し、解析した。【結果・考察】アンケート回答数は延べ339件であり、タッチによるDSの情報へのアクセス数は延べ13980回であった(11月15日現在)。「この情報が役に立ったと思いますか」、「今後も健康情報が欲しいと思いますか」と問いに対し、[そう思う・どちらかというとそう思う]の回答者は、それぞれ302名(89.1%)、311名(91.7%)であった。以上のことから、DSにより薬局が発信する健康情報が薬局利用者にとって有用となる可能性が示唆された。今後は、配信した情報による利用者の行動変容や市が集計する客観的指標なども評価し、薬局を拠点とした情報発信が地域の健康増進に貢献できるのかを検証していく。
著者
森嶋 直人
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.124, no.7, pp.954-958, 2021-07-20 (Released:2021-08-04)
参考文献数
15

末梢性顔面神経麻痺は一般的に予後良好な疾患であるが, 全体の2割程度に Bell 麻痺の重症例や Hunt 症候群などの予後不良例が存在する. 顔面神経麻痺に対するリハビリテーションは後遺症である麻痺の改善や, 病的共同運動・拘縮の予防と軽減という点で推奨されている. 実際のリハビリテーションは, 重症度と予後予測目的にて柳原法麻痺スコア評価と発症後10日程度で Electroneurography (以下 ENoG) 検査を行い, 以後理学療法士が麻痺の改善と病的共同運動予防目的のリハビリテーション指導を行う. 3カ月以内に柳原法麻痺スコア38点以上の場合は終了し, 遷延する場合は病的共同運動評価と治療を継続する. 病的共同運動に対するリハビリテーションの手技として 1) 表情筋ストレッチ, 2) 拮抗筋活動による病的共同運動発現予防, 3) バイオフィードバック療法による病的共同運動抑制があり, 主に家庭内プログラムとして患者本人に実施を励行する. 後遺症改善には長期を要する場合がありこの場合は発症後1年以上を必要とする場合がある. 後遺症残存例にはボツリヌス毒素治療や形成外科的治療が選択される. このように長期にわたる顔面神経麻痺に対する診療チームの構成としては診断・初期治療を担当する耳鼻神経科医, リハビリテーションを担当するリハビリテーション医・リハビリテーション療法士, 心理的なサポートを行う看護師・臨床心理士, 形成外科手術による再建に携わる形成外科医がある. 本稿では顔面神経麻痺に対するリハビリテーションの進め方, そのエビデンス, 診療チームの役割, 保険診療上の注意点について概説する.
著者
葛目 大輔 井上 湧介 森本 優子 吉田 剛 山﨑 正博 細見 直永
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.641-643, 2022 (Released:2022-08-27)
参考文献数
7
被引用文献数
2

【症例】56歳男性【主訴】両下肢脱力【現病歴】鶏肉を好む偏食あり.前医で両下腿浮腫を認め,心不全にて入院した.心不全に対し利尿薬による加療が行われたが両下肢脱力が出現し徐々に悪化したため,当院に転院した.【入院時現症】軽度の意識障害と両下肢の浮腫,筋力低下及び腱反射消失を認めた.【入院経過】脚気ニューロパチーを考えチアミン100 mg/日を開始した.これにより神経症状は改善した.その後,ビタミンB1 12 ng/ml(正常値24~66)と低値である事が判明した.【結論】心不全加療中に筋力低下を認めた際には脚気ニューロパチーの合併を考慮し,ビタミンB1補充に留意する必要がある.
著者
森 照貴 川口 究 早坂 裕幸 樋村 正雄 中島 淳 中村 圭吾 萱場 祐一
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.173-190, 2022-03-17 (Released:2022-04-20)
参考文献数
63
被引用文献数
2

生物多様性の現状把握と保全への取組みに対する社会的要求が高まる一方,河川を含む淡水域の生物多様性は急激に減少している可能性がある.生態系の復元や修復を実施する際,目標を設定することの重要性が指摘されており,過去の生息範囲や分布情報をもとにすることは有効な方法の一つである.そこで,本研究では 1978 年に実施された自然環境保全基礎調査(緑の国勢調査)と 1990 年から継続されている河川水辺の国勢調査を整理し,1978 年の時点では記録があるにも関わらず,1990 年以降,一度も採取されていない淡水魚類を「失われた種リスト」として特定することを目的とした.109 ある一級水系のうち,102 の水系で二つの調査結果を比較することができ,緑の国勢調査で記録されている一方,河川水辺の国勢調査での採取されていない在来魚は,全国のデータをまとめるとヒナモロコとムサシトミヨの2種であった.比較を行った 102 水系のうち,39 の水系では緑の国勢調査で記載があった全ての在来種が河川水辺の国勢調査で採取されていた.一方,63 の水系については,1 から 10 の種・種群が採取されていないことが明らかとなった.リストに挙がった種は水系によって様々であったが,環境省のレッドリストに掲載されていない種も多く,純淡水魚だけでなく回遊魚や周縁性淡水魚も多くみられた.水系単位での局所絶滅に至る前に「失われた種リスト」の魚種を発見し保全策を講じる必要があるだろう.そして,河川生態系の復元や修復を実施する際には,これら魚種の生息環境や生活史に関する情報をもとにすることで,明確な目標を立てることが可能であろう.
著者
増川 克典 白石 晶子 高田 郁美 早瀬 温子 森 卓也 田中 紀行 藤井 健吉
出版者
一般社団法人 日本リスク学会
雑誌
リスク学研究 (ISSN:24358428)
巻号頁・発行日
pp.SRA-0420, (Released:2022-07-01)
参考文献数
39

Aiming at solving a social challenge for compatibility of infection risk mitigation with better QOL to prevent viral contact infection via hands, an effect of ethanol (EtOH) combined with benzalkonium chloride (BC) on inactivation of Influenza virus A (IVA) and SARS-CoV-2 was investigated under conditions of exposure time, 30 sec. Although either just 20–30 vol% EtOH or just 0.05w/v% BC were weak for the inactivation, the combination showed the synergic effects. It was also demonstrated that a commercial hand sanitizer containing both 44 vol% EtOH and 0.05w/v% BC is effective to highly inactivate IVA and SARS-CoV-2. The consideration on the practical usage of hand sanitizers suggests that 20–50 vol% EtOH combined with 0.05 w/v% BC would be effective and beneficial. The COVID-19 pandemic has revealed the emerging importance of community infection control which is different from a long-term challenge on hospital infection management, and a new hand sanitizing-system using lower EtOH combined with BC is expected to be a measure of community infection control.
著者
山田 親代 岩脇 陽子 森本 昌史 山中 龍也
雑誌
京都府立医科大学看護学科紀要 = Bulletin of School of Nursing Kyoto Prefectural University of Medicine (ISSN:13485962)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-14, 2017-12-25

ICUにおけるせん妄および亜症候性せん妄に関する文献を検討し、亜症候性せん妄の発症に関する要因を明らかにする。文献の選定はせん妄は医学中央雑誌Web版(ver.5)を用いて、「せん妄」「ICU」をキーワードに検索期間2000年~2016年で、原著論文・看護文献に絞り込み、この中から36件を選定した。研究内容別に、「せん妄予測に関するもの」「せん妄の発症率、発症要因に関するもの」「看護師のせん妄に対する認識に関するもの」「せん妄評価ツールに関するもの」に分類できた。亜症候性せん妄に関しては、医学中央雑誌Web 版においては1件もヒットしなかったため、海外文献を対象に文献検討を行った。CINAHL、MEDLINE を用いて「subsyndromal delirium」のキーワードで検索したところ97文献が検出された。重複する31文献を除外し66文献から解説、レビュー、介入研究を除外した。また、研究内容が、がん患者、療養場所が緩和病棟および介護施設であるものを除き、英語文献14文献を分析対象とした。研究内容別に、「亜症候性せん妄の発症率に関するもの」「亜症候性せん妄のリスクファクターに関するもの」「亜症候性せん妄の予後に関するもの」に分類することができた。 これらから、日本国内におけるICUのせん妄の発症率は7.6~60.9%であり、発症要因として、「年齢」「睡眠に関すること」「術後ICUへの入室」などであった。また、海外におけるICUの亜症候性せん妄の発症率は7.7~67.9%であり、リスクファクターはせん妄とほぼ同様の「高齢であること」「認知症の既往があること」「多くの既往歴があること」などの要因であることがわかった。ICUにおけるせん妄は多角的に研究されているが、亜症候性せん妄についての研究はまだ多くないことから、亜症候性せん妄の発症率および関連要因、予防的介入に関する研究の必要性が示唆された。
著者
川村 小千代 森岡 郁晴
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.81-95, 2022-03-20 (Released:2022-03-25)
参考文献数
54

目的:高齢者福祉施設の介護職者には,強いストレスがあることが指摘されている.近年,労働者のポジティブな心理的側面に焦点をあてた概念のひとつとして,ワーク・エンゲイジメントが注目されている.本研究では,職場グループでのポジティブな出来事の筆記と読み上げが施設の介護職者のワーク・エンゲイジメントの向上と職業性ストレスの軽減を図る方策として有用かどうかを検討した.なお,本研究は,UMIN臨床試験登録システムに登録(UMIN30333)して開始した.対象と方法:参加者は,和歌山県の7指定介護老人福祉施設に勤務する介護職者173名のうち研究参加に同意した13グループ57名(参加率32.9%)であった.介入方法は,介入群と対照群の2群2期のクロスオーバーデザインとした.対象者の割り付けは,各施設代表者が施設内で勤務する介護職者で,2群が同人数になるようにグループ単位で群分けをし,研究者で全体のグループ数と人数が同一になるように2群に分けた.介入群は,個人が就業中筆記のできる時間にポジティブな出来事を筆記した.さらに,グループで朝礼の時間などを使用してポジティブな出来事を読み上げた.対照群は通常どおり勤務した.A群(24名)は第1期に,B群(33名)は第2期に筆記と読み上げを行った.実施期間は,それぞれ8週間であった.質問紙は施設代表者に手渡した.参加者は記載した質問紙を封筒に厳封し,施設内に設置した回収袋へ投函した.調査項目は,ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメント尺度日本語版(以下,UWES),職業性ストレス簡易調査票(以下,BJSQ),属性であった.介入量の指標として個人がポジティブな出来事を筆記した個数,読み上げを聞いた回数とした.筆記した個数,読み上げを聞いた回数は介入終了時に尋ねた.さらに,介入群と対照群の得点の変化量に有意な差を認めた項目では介入中における得点の変化量と介入量との関連を検討するために,重回帰分析を行った.結果:参加者が介入中に筆記したポジティブな出来事の合計は318個であった.筆記された語句を抽出すると,「ありがとう」「嬉しい」,「笑顔」の言葉が多かった.個人が介入中に筆記した個数の中央値は3個(四分位範囲1個–5個)であった.読み上げを聞いた回数は,「ほとんどなかった」と回答した者が22名(38.6%)であった.介入群と対照群の得点の変化量に有意な差を,UWESの没頭で,BJSQの仕事のコントロール,働きがい,家族・友人のサポートで認めた.重回帰分析の結果,筆記した個数は,UWESの没頭の得点の変化量と,BJSQの働きがいの得点の変化量とに関連を示した.読み上げを聞いた回数はいずれの項目にも関連を示さなかった.考察と結論:就業中にポジティブな出来事の筆記をすることは,没頭を高め,働きがいを改善する可能性がある.職場グループでのポジティブな出来事の筆記と読み上げは,介護老人福祉施設の介護職者におけるUWESの没頭とBJSQの働きがいの向上を図る方策のひとつであることが示唆された.
著者
森内 浩幸
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-7, 2022 (Released:2022-07-31)
参考文献数
12

新型コロナウイルスは罹れば誰もが重症化するウイルスではなく,健康な子どもにとっては基本的に風邪のウイルスである。逆に,感冒コロナウイルスも,高齢者や基礎疾患のある人が罹ると重症化することがあり,重症化はウイルスそのものの性質というよりは宿主側の免疫応答の違いがもたらすものと言える。子どもにとっては,RSウイルスやインフルエンザウイルスの方が遥かに危険なウイルスである。また子どもの新型コロナウイルス感染の多くは大人からもたらされているものであり,子どもの感染は社会における流行の最終ステージと言える。子どもでも重症化のリスクとなる基礎疾患を持っている場合は注意が必要であり,周囲の大人と本人へのワクチン接種が望まれるが,健康な子どもへのワクチン接種はベネフィットとリスクのバランスを十分に検討すべきだ。
著者
加藤 昂希 杉森 絵里子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第15回大会
巻号頁・発行日
pp.32, 2017 (Released:2017-10-16)

Karremans,Claus,&Storoebe(2006)が行った実験によると,パソコン課題をしている被験者の画面に「LiptonIce」という文字を意識下では知覚できない程の短い時間繰り返し提示したところ,喉が渇いている被験者においてのみリプトンアイスティーを飲む人の割合が増えたという。この実験を受け,私は視覚的なサブリミナル効果だけでなく,聴覚的なサブリミナル効果でも同じ様に結果が出せるか否かを検証する事とした。具体的には,喉が渇いている被験者に,サブリミナル音声を忍ばせた音源を聞いてもらい,その後の選択行動に影響があるかどうかを検証した。結果として,サブリミナル効果は出なかったものの,音源をリラックスして聞いてもらった後に直感を頼りに選択してもらう場合において,サブリミナル効果が出やすくなる事が明らかになった。