著者
森 源治郎 平井 宏昭 山口 俊彦
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

Apomixisを人為的に誘導することができれば,これを遺伝的にヘテロな植物の新しい繁殖法として利用することができる.ラン科植物およびヒガンバナ植物を材料にして他種あるいは他属との遠縁交雑において花粉刺激によるApomxis誘起の可能性がについて検討したところ,受粉刺激による果実の発達と種子形成が認められた.また,これらの種子を人工培地に無菌的に播種したところ,正常に正常し,発育した苗の形状Zyg.の自家受粉によって得られた苗と全く同様の形質を維持していることが確かめられた.Zygopetalum × Cymbidiumついて発達中の果実の組織観察を行ったところ,受粉3ヵ月後にはいずれにおいても珠心由来の多胚の形成が確認された.また,染色体の観察においても同様の結果が得られ,結局,得られた種子はApomixisによるものであることが明らかになった.一方、Zygopetalumについて無受粉花に生長調節物質の柱頭処理が果実の発達および種子形成に及ぼす影響について検討したところ,1,2%NAAの効果が最大であった.また,Lycoris3種を用いて種間交雑を行った後,受粉後柱頭にNAA処理を施すと着果率と果実当たりの種子数を増加させ,結果としてApomixisによる種子形成の割合を高めることができた.
著者
蓮池 利隆 岡田 至弘 佐野 東生
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

大乗仏教経典成立の背景にはインド文化の他にイラン文化も存在した。特に、ガンダーラ地域ではゾロアスター教の影響があった。クシャーン王朝は紀元後1世紀から3世紀までガンダーラを中心に統治したが、この王朝のふるさとは中央アジアのタジキスタン・ウズベキスタン周辺であった。その地域の宗教はゾロアスター教であった。この研究では、タジキスタンの遺跡発掘によって、イスラーム化前の中央アジアにおけるゾロアスター教の存在を検証した。ゾロアスター教と仏教の混合によって阿弥陀仏信仰が成立したことを明らかにすることができた。その宗教的交渉においては、インドとイランに共通する神格であるミトラ(ミフル)が仲介となった。
著者
蘇 智慧 八畑 謙介
出版者
株式会社生命誌研究館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

多足類動物は、分類学上多足亜門(節足動物門)として、ムカデ綱、ヤスデ綱、エダヒゲムシ綱とコムカデ綱の4綱を含む。本研究は3つの核タンパク遺伝子を用いて、多足亜門の綱・目レベルの系統関係の解明および分岐年代と祖先形質の推定を行った。その結果、コムカデ綱が最初に分岐し、その分岐はカンブリア紀初期に遡ることが示唆された。この結果は多足類の初期の分岐は海で行い、複数の系統が独立に陸上進出を果たしたことを示した。ヤスデ綱とムカデ綱内の目間の関係については従来の仮説と一致した。祖先形質の推定の結果、多足類の祖先は半増節変態を行っていたことが示され、体節数と足の数が比較的少なかったことを示唆した。
著者
佐藤 全敏
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

各寺院の歴史書(寺誌)に埋もれていて、これまであまり注目されてこなかった古代文書を発掘し、その集成を行った。また、蔵人(平安時代の天皇の秘書)のマニュアルである『蔵人式』は、現在、さまざまな書物に断片的に引用されて伝わるだけだが、これらの集成を行った。その上で、集成したこれらの史料群を活用して、なかなかおもてに現れにくい、平安時代の朝廷の「政治原理」の展開過程について、さまざまな視角から明らかにした。
著者
門田 美貴
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2021-04-28

本研究は、従来の公共空間の私化(民営化)に伴い、憲法上の権利を行使できる場が減少していることから、私有地における集会を例にとって、集会の「場」に対する保障を行う理論を探究する。一方で、本来、国家に対して主張する権利である集会の自由を、私人間でも保護を受けるために、国家のインフラ保障義務などを検討する。他方で、財産権の議論を参照することで、私有地の管理者が有する、管理権ないし自らの望まないデモ参加者を排除する権利を制約し、集会を受忍する義務を導くための理論を構築するものである。
著者
梅野 哲義
出版者
久留米大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

成長・発達前の新生児の声帯を電子顕微鏡下に観察し,その超微構造を学会で講演し論文として発表してきた。本年度の研究実績の概要は,1.電顕的に新生児声帯の模様部は線維成分に比べて基質が豊富であった。また線維成分に関しては,膠原線維は比較的発達していたが,弾性線維は未熟であった。線維芽細胞は成人に比べて多かったが,膠原線維や弾性線維をほとんど産出していなかった。声帯靱帯はまだ形成されておらず声帯の層構造は認めなかった。振動体として新生児の声帯をみると,弾性線維は非常に未熟であり弾性が低く,声帯振動にとって有利な構造ではないと言えた。2.新生児声帯の前端と後端には黄斑がすでに形成されており,その大きさは成人の黄斑とほぼ等しかった。新生児の声帯黄斑は線維芽細胞,膠原線維,弾性線維,基質からなっていた。線維芽細胞の密度は成人に比べて大きかった。新生児の声帯黄斑では線維芽細胞が膠原線維と弾性線維の産生をすでに盛んに行っていた。出生後の声帯振動が黄斑の線維芽細胞をさらに活性化し,成長とともに声帯靱帯を形成し,声帯の層構造が完成することが予想された。新生児の声帯黄斑は声帯靱帯などの声帯の線維組織の成長・発達にとって重要な構造物といえた。以上のような新生児声帯の超微構造が本研究で新たに解明された。現在,研究結果の一部は論文として掲載された。残りの研究結果は現在投稿準備中である。またさらに新生児声帯の超微構造の研究を進めている。
著者
加藤 一郎 関口 時正 重川 真紀 西田 諭子 大迫 知佳子
出版者
国立音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

研究代表者及び研究協力者の関口時正、重川真紀、西田諭子、大迫知佳子は最終年度に『ショパンによるバロック音楽の受容に関する研究』及び『ユゼフ・エルスネル研究』を刊行した。前者は論文集であり、後者はショパンの師ユゼフ・エルスネルの研究書の邦訳書である。代表者はこの他「ショパンとバロックの精神: スティル・ブリゼの応用を通して」北海道ポーランド文化協会,札幌大谷大学,(2016)、「ショパンによるオペラの受容過程に関する実証的研究-ポーランド時代-」国立音楽大学大学院研究年報,28,(2016)、「ショパンによるバロック様式の受容過程に関する研究-ポーランド時代-」同,29,(2017)を発表した。
著者
藤澤 太郎
出版者
桜美林大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、近代日本語文学圏内各地方の地域的な文学活動の研究、及び地域間の文学的交流の研究と中央の詩歌俳句結社のネットワーク網の研究とを結びつけ、中央・地方の相互交流・影響関係について明らかにしていくことを目指すものである。資料調査・収集については、事前・事後調査を合わせて47都道府県立の図書館・文学館について基礎的な作業を終えており、順次収集した資料の整理分析と成果公刊への準備を進めている。現時点では、山形県の詩人を中心としたネットワークについて『山形・詩人と詩誌の系譜―鈴木健太郎と『血潮』・『詩脈』』にまとめた他、各地の詩歌俳壇のネットワーク等に留意した成果物の準備を進めている段階である。
著者
西田 かほる 井上 智勝 岩城 卓二 梅田 千尋 志村 洋 中川 すがね 幡鎌 一弘 東谷 智 山崎 善弘 引野 亨輔 松本 和明
出版者
静岡文化芸術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

夷信仰の拠点である西宮神社(現兵庫県西宮市)が所蔵する江戸時代の日記や神社文書、宮司家文書を翻刻することにより、西宮神社の活動と神社に付属する宗教者の実態を明らかにすることができた。同時に、全国の夷社人関係の史料を調査することにより、その地域分布と差異を明確にすることができた。このほか、西宮神社が所蔵する近代の日誌のデジタル撮影を行うことによって、今後の研究の体制を整えた。
著者
原 卓志 梶井 一暁 町田 哲 刀田 絵美子
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

地方語史研究とともに、地方史・地方教育史研究に資する文献資料の発掘を通して、当該文献の資料的価値を分析・考察し、当該文献を用いた地方語史・地方史・地方教育史について、以下のような調査研究を行った。まず、徳島県における真言宗寺院である無尽山荘厳院地蔵寺の所蔵文献を用い、教団(高野山)に掌握されつつも、中央寺院を本寺としない無本寺寺院であった無尽山地蔵寺の本末関係の形成過程について、藩や、高野山正智院(法流)との関係とからめながら解明した(町田哲「近世前期阿波国真言宗寺院における本末関係の形成―五番札所・無尽山荘厳院地蔵寺を中心に―」鳴門教育大学研究紀要第37巻)。また、同寺所蔵の縁起関係文書を用いて、資料の少ない中世から近世初頭の同寺住職の修学等の事績について明らかにした(原卓志「無尽山地蔵寺住職に関する覚え書き―中世から近世初頭の住職を中心に―」鳴門教育大学研究紀要第37巻)。また、西本願寺学林(京都)の学籍簿にあたる史料『大衆階次』にもとづいて、徳島県における淨土真宗寺院の修学僧について把握し、修学僧の出身寺院,修学期間,身分などを考察した。また,修学僧を近世私塾の学習者との関係において位置づける視点を提示した(梶井一暁「近世阿波国の修学僧に関する基礎的考察―西本願寺学林の事例から―」岡山大学大学院教育学研究科研究集録179巻)。悉皆調査に関しては、徳島県における新安流の拠点寺院であったと目される正興寺(鳴門市)、童学寺(名西郡石井町)の二ヶ寺で着手した。
著者
日野 輝明
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

糞分析によって,ミヤコザサのある森林内ではササ類を,ドライブウェイ沿いではササ類以外の単子葉類を主に採食していた.シカの個体数は,植物現存量と有意な関係があったが,栄養的には植物の含む繊維量が最も重要であり,カロリーや粗タンパク質の量とは関係がなかった。この結果は,シカのルーメン胃内の微生物共生による採食特性と関係づけられた。一方で,脂肪分の多い広葉樹草本や落ち葉はシカの餌としては好まれないことが分かった。ドライブウェイの法面や路傍に生育するササ以外の単子葉類草本もシカの重要な餌資源となっていたことから,シカの個体数管理においては林内だけでなく林外の植生管理が必要である。
著者
村上 哲明 綿野 泰行 角川 洋子 山本 薫 堀 清鷹 森 恵里菜 松本 めぐみ
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

無配生殖(無性生殖の一型)を行うシダ植物の種は近縁な有性生殖種と容易に交雑すること、それらの間の雑種個体からは高頻度で減数した子孫が生じることを我々は明らかにしていた。 そこで本研究では、3倍体無配生殖種のオニヤブソテツ(オシダ科)と、それに非常に近縁な2倍体有性生殖型のヒメオニヤブソテツあるいはムニンオニヤブソテツの間に生じた4倍体雑種個体に生じた胞子を寒天培地上で培養し、F2世代の子孫における無配生殖型と有性生殖型の分離比を調べた。その結果、両生殖型がほぼ1:1で生じ、無配生殖型がただ一つの遺伝的領域(無配生殖遺伝子)によって支配されていることが強く示唆された。
著者
深田 愛乃
出版者
慶應義塾大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2021-04-28

近年、教育思想史研究の一部において、子どもの個性を重視する大正新教育、大正生命主義、宗教の三者の関係性が着目されつつある。こうした動向の中で、本研究は宮沢賢治(1896-1933)に着眼し、新教育的発想と仏教思想、農学的自然科学観が「生命」及び「個性」概念を介して結びつくことで、賢治特有の教育思想が生まれるという仮説を立て、それを検証することを目的とする。具体的には、賢治における「教育・仏教・農業」に関する実践やテクストを横断的・史学的に調査することで賢治の教育思想を浮かび上がらせ、大正・昭和初期における新教育や近代仏教、農村改良をめぐる思想史的文脈に位置付けることを試みる。
著者
岡島 昭浩
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

従来、速記原本の解読は、速記を行った当人によってのみ行われることであった。速記原本を目にしても、どの速記方式によるかの認定法などは考えられてこなかった。それを認定する方法を確立し、解読に繋げようというのが本研究である。歴史的価値のある速記原本が存在しても、速記から年月が経過し、さらに 速記者当人が亡くなると解読は困難となるが、不可能ではないことが示せれば、貴重な資料である速記原本の死蔵・廃棄を抑止する効果がある。また、速記原本や速記教本類を系統的に収集整理することは、いわば速記のロゼッタストーンを残すことになるものであり、しかも、それ自体に解読の鍵を含ませたものともなるのである。
著者
時本 楠緒子
出版者
尚美学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、定位操作の一種である「入れ子操作」用いてデグーの階層的物体操作能力を定量的に分析し、ヒトを含む霊長類と直接比較することにより、ヒト認知能力の特性を検討することを目的とした。実験に先立ち、物体操作におけるデグーの身体的不利を補うため、実験装置の改良を行った。これを用いてデグーに入れ子操作の訓練を行い、得られた結果を、時系列的に記述して霊長類の結果と比較した。結果、デグーの入れ子操作行動は、pairからpotまでの行動の変化がチンパンジーとi類似していることが確認された。また最終的に4個のカッフ.を用いたpot操作が確認されたが、 subassembly操作は現れなかった。これが謁歯類であるデグーの階層的操作能力の限界であると考えられる。
著者
青野 友哉 新美 倫子 澤田 純明 永谷 幸人 篠田 謙一 近藤 修 添田 雄二 安達 登 西本 豊弘 渋谷 綾子 神澤 秀明
出版者
東北芸術工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

「縄文時代には争いや格差はなかった」というイメージは、受傷人骨や子供への厚葬の存在により、どの地域・時期でも当てはまるとは言い難い。特に北海道有珠モシリ遺跡18号墓は、頭部に受傷痕跡を持つ8体を含む11体の人骨が1つの墓に再埋葬されており、集団間の争いを想起させる。墓が作られた北海道の縄文晩期後葉は西日本の弥生前期にあたることから、農耕文化の受容に伴う広域的な社会変容の可能性もあり、解明には受傷痕跡の成因や人の移動、血縁関係など多角的な検討が必要となる。本研究では、骨考古学・形質人類学・法医学の知見と骨科学分析により、縄文終末期の日本列島で起きた社会変容の実態と合葬墓の埋葬原理を明らかにする。
著者
高橋 康介 小川 健二 北川 智利 金子 沙永
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究では知覚像が従来考えられているよりも自由に制御できる可能性について実証研究を進める。構造化を抑制して未統合の感覚信号にアクセスし高感度の知覚像を得る脱構造化現象と、心的イメージと知覚像を合成する信念可視化現象という2種類の知覚像制御過程の解明を目指す。前半は熟達者を対象とした知覚心理学・脳科学研究により知覚像制御の現象理解、心的過程と神経基盤の解明、予測符号化の枠組みでの理論化を行う。後半は非熟達者を対象に知覚像制御の熟達過程や個人差・適性を検討する。以上の研究を通して「不自由でままならぬ」という従来の知覚観から脱却し、ある程度まで自由に制御できる知覚像という新しい知覚観を提案する。
著者
齊藤 稔 青木 孝夫 欒 竹民 幣原 映智 長田 年弘 安西 信一 原 正幸 金田 晋
出版者
広島市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は東西の伝統的学芸の価値概念である西洋の自由学芸、日本の芸道、中国の六芸を対象とし、解釈学的に比較することを意図した比較芸術学的共同研究であり、広島市立大学をはじめ広島大学その他の大学の専門家の協力をえて推進した。ヨーロッパにおいては古代から中世を経て近世・近代に至るまで7自由学芸(septem artes liberales)、文法、修辞学、弁証術、数学、幾何学、天文学、音楽はアルス(ars)として、技術・芸術と学問の不可分の領域と見なされ、哲学とともに人間性を探究するための、また教育と教養を培うための学芸であった。古代ローマ時代のキケロはそのような教育と教養が人間存在にとって必要不可欠な徳としての気品(dignitas)を生み出すことを強調し、ルネッサンスにおいてペトラルカは人間社会のためにそのような倫理の必要を説いた。これはまた造形芸術の美質であり目的でもあった。他方レオナルド・ダ・ヴィンチは絵画を自由学芸と同列に置き、絵画は学問であるとして「絵画学」(scienza della pittura)を主張した。というのは絵画は遠近法や解剖学や光学などを本質的に必要とするからである。日本の芸道は民族的な美的意識であり、芸術の思念と実践を統合する価値概念であった。これはあらゆる美的な生活芸術を貫く芸と術の道としての芸術的営為であり、教化されるべき様式として把握された。また高い徳と美的に教育された人間存在の教養を形成するために求められた。そこでは制作や表現においても、享受や理解においても、つねに帰一すべき根源的自然、あるいは神的超越者を自覚して精進する。芸道は真・善・美を求める人にとって高徳の人間形成のための、また美的形成、美的教養として望まれる必須のアルス(学芸)であった。中国ではさらに古くから六芸として、礼、楽、射、御、書、数の教養思想があり、基本的には人間として修得すべき教養や道徳であり、技芸や学芸であった。その修得は文学や哲学から詩や書・絵画の技術的習練にも結びついた。それは絵画では書画同体、十八画法などの奥義の技法をも含んでいる。本共同研究はこれら3つの概念を比較学的に研究し、それらの類似と相違を明確にするように試みた。それによって3つの美的システムが学芸の領域に属するだけではなく、真・善・美の価値意識の普遍的理念を伴う人間生活全般に深く関わることを理解することができた。そしてこの総合研究の成果は学際的研究への貢献として、それら伝統的学芸とその解釈が美的真実への感性的理性的認識に到達するものであることを示しえたと考えている。
著者
多湖 淳 三船 恒裕 稲増 一憲 大坪 庸介 日道 俊之 小浜 祥子
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2017-06-30

本研究プロジェクトは「集団間の謝罪と赦し」をテーマとして、心理学・政治学の若手研究者が協働し、今までにない分野横断融合研究を実施する。アメリカ政治、国際政治、政治心理学、社会心理学、進化心理学といった多分野の若手研究者が結集し、世界をリードする社会科学研究を推進する。具体的には、心理学のメタ理論を、政治学における集団のアイデンティティや歴史的文脈に関する知見と融合して集団間謝罪の理論として発展させ、文脈や集団の特性を鍵とするような実験シナリオ・刺激を構築し、実験室実験やサーベイ実験により実証する。これにより、集団の抱える歴史的文脈がいかに一般的な心理学的予測を阻害するのかを総合的に解き明かす。